- カテゴリ:幼児 小学生
- 発売日:2004/01/16
- 出版社: 福音館書店
- サイズ:30×31cm/1冊
- 利用対象:幼児 小学生
- ISBN:4-8340-0632-8
紙の本
鹿よおれの兄弟よ (世界傑作絵本シリーズ)
【小学館児童出版文化賞(第53回)】【講談社出版文化賞絵本賞(第36回)】シベリアの森で生まれたおれは猟師だ。おれの着る服は鹿皮、おれの履く靴も鹿皮だ−。力強い詩と、はっ...
鹿よおれの兄弟よ (世界傑作絵本シリーズ)
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商品説明
【小学館児童出版文化賞(第53回)】【講談社出版文化賞絵本賞(第36回)】シベリアの森で生まれたおれは猟師だ。おれの着る服は鹿皮、おれの履く靴も鹿皮だ−。力強い詩と、はっと思わせるような東洋的な細密画によって、シベリアの神秘的な森へと、どんどん引き込んでいく絵本。【「TRC MARC」の商品解説】
小舟をこぐ猟師は、川をのぼって鹿猟に出かける。鴨が飛び立ち、魚が跳ねる。猟師は、牝鹿に耳を舐められていた幼い頃の甘い思い出にひたる。父さんも祖父さんもここで鹿を獲った。母さんも祖母さんも焚火を囲んで笑っていた。だがいまは、あちらとこちらの別の世で暮らしている……。 児童文学者の神沢さんが北方民族への深い思いをこめた作品を、シベリア在住の「ロシア人民芸術家」である画家パヴリーシンさんが渾身の力で表現した。【商品解説】
著者紹介
神沢 利子
- 略歴
- 〈G.D.パヴリーシン〉1938年旧ソ連ハバロフスク市生まれ。ウラジヴォストーク総合大学歴史学部で学ぶ。「ロシア人民美術家」などの称号を持ち、100点以上の画集や絵本作品がある。
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紙の本
命をつなぐもの、つむぐもの、育むもの
2009/11/11 21:53
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:wildcat - この投稿者のレビュー一覧を見る
表紙の鹿、そして、1枚1枚の画を、ただただ美しいと思う。
鹿の毛並み、木の皮、一筆一筆が描き出したものが、生きている。
これはシベリアの森で生まれた猟師の言葉。
おれの きる ふくは 鹿皮 おれの はく くつも 鹿皮だ
どちらも 鹿の足の腱を 糸にして ぬったものだ
おれは 鹿の肉を くう
それは おれの血 おれの肉となる
だから おれは 鹿だ
なんとまっすぐな、生命の礼賛だろう。
自分の身を纏うもの、自分の命を支えるものに感謝し、
自分はそれそのものだと言う。
これは、本書のシベリア先住民だけでなく、
アメリカ・インディアンにも、フィンランドの森の人にも、
アイヌにも共通して流れている、何かだ。
『エゾオオカミ物語』、『カラスとイタチ』、
『ナヌークの贈りもの』、『アイヌ神謡集』、
『フィンランド・森の精霊と旅をする』、
そして、『おれは歌だおれはここを歩くアメリカ・インディアンの詩』。
どの作品の中にもあった。
その何かは、狩りをするときに、
命を与えてくれる生き物に対して敬意を払う姿になる。
自分が獲物に勝ったから狩れたということではなくて、
相手が目の前にやってきてくれたから、命を与えてくれたから、
今日も自分や家族は生きていけるのだと感謝する気持ちが常にある。
本書では、「おれは 鹿だ」ということを、
大人になってからの狩るものと狩られるものとしての関係だけではなく、
子どもの頃の彼が、自らを鹿だと感じられる出来事が、
ある意味、官能的に描かれている。
生き物の種を超えて、母は命を育んでいくことを、
牝鹿と子ども時代の彼、
そして、大人になってからの彼の妻とその息子の関係を描くことで表現している。
本書で使われる擬音語/擬態語は、非常に独特である。
黙読しながら、頭の中で音を作り出していくと
なんとも不思議な気持ちになってくる。
だが、きっとその音しかありえないのだと思う。
ずっとここまで絶えることなく命をつないできてくれた祖先、
育ててくれた両親、
今日まで育んできてくれた食物から知識からすべてに、
そして、今ここに生きていることに、
感謝せずにはいられなくなる1冊である。
紙の本
この見事なアイヌ叙事詩は『くまの子ウーフ』の兄弟でした。
2009/11/04 11:19
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:wildflower - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の神沢利子さん、というお名前をこの本に見たときに
ちょっと意外な思いがよぎりました。
というのも「かんざわとしこ」さんといえば、評者にとっては
子どもの頃の自分と、自分の子どもがともに小学生の国語の教科書で
習ってきた『くまの子ウーフ』のシリーズやブック・ファーストで戴いた
『たまごのあかちゃん』のほのぼのとした
印象がとても強かったからでした。
まったく勝手な先入感だと今では思うのですが
あれ、毛色が違う。別のひとの作品では?と見直すほどに
カラーが違って見えました。
テーマはアイヌ。その若い家族の父親が狩りにでかけてゆくときの
情景が淡々と、詩文のかたちで描かれていきます。
雄々しく、冴え渡る月夜に鹿を撃ちにゆく若い男のその心情は
ただ「食べるために殺す」というのではなく「おれの兄弟よ」と
呼びかけて、もっともっととても近い存在として鹿を敬い
寄り添うような存在として扱っています。
そしてうたうように家族の由来をものがたりながら
そのいのちを戴いていくのです。
家族みながそうしたように、鹿もそのいのちを贈ってくれたように
今またわたしもそうするのだ、と。
それはまるごと祈りのようでもあります。
まるごといのちを戴き、少しの無駄もなく使い切る。
その文化がうたに編み込まれています。
その不思議なアイヌの調べを織り交ぜて展開される世界は
絵を手掛けられたロシアのG・D・パヴリーシン(Gennadiy Dmitriyevich
Pavlishin)さんによる細やかで叙情的な趣と共鳴し合って見事です。
奥付によれば神沢利子さんは福岡の方ですが幼少期を樺太で過ごされた
ご経験があるそうなので、ほんとうのアイヌの人々との交流があったかも
しれません。
この作品がいかにも流れるように自然なのはそれゆえなのでしょう。
新しい世界を識った喜びを本作に戴きました。
紙の本
シベリアの森を舞台に、人間・動物・自然の関係を朗々と謳い上げた壮大な叙事詩
2004/04/30 22:06
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Misa - この投稿者のレビュー一覧を見る
シベリアの森でうまれたおれは猟師だ/おれのきるふくは鹿皮おれのはくくつも鹿皮だ/どちらも鹿の足の腱を糸にしてぬったものだ/おれは鹿の肉をくう/それはおれの血おれの肉となる/だからおれは鹿だ・・・一人の猟師が鹿を獲るために小舟をこいで川をのぼっていく。父さんや祖父さんが鹿を獲り、母さん祖母さんと共に焚き火を囲んだ幼い頃の幸せな光景を思い出しつつ…。銃口に口をあて牝鹿のこえをまねる。やがて静まりかえった森のなかに牡鹿の声、枝をふむ音。息をのみ、その姿にみとれ、やがて銃を放つ・・・。
シベリアの森を舞台にした壮大な作品。朗々と謳いあげられる力強い詩と繊細に描きこまれた美しい細密画。サハリンで幼少期を過ごした児童文学者の神沢利子氏とシベリア出身でBIB金のリンゴ賞ほか数々の賞を受賞しているロシアの国民的画家G.D.パヴリーシン氏の見事なコンビネーションによる素晴らしい絵本の誕生である。
神沢氏の少数民族の生き方やシベリアの大自然への熱い思いがパヴリーシン氏の芸術性の高い絵によって見事なまでに描き尽くされている。言葉は幼いこども達にもわかるように平易で、オノマトペも効果的に使われており、声に出して読むのが楽しい絵本でもある。
★★★★
(Misa/図書館の学校・児童書選書委員会)