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商品説明
ある日突然「僕」を訪ねてきたのは、自殺した親友のひとり娘だった。少女の手首にはリストカットの傷跡が…。表題作ほか、それぞれの「卒業」に臨む4組の家族の物語。『小説新潮』掲載に加筆して単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
まゆみのマーチ | 5-74 | |
---|---|---|
あおげば尊し | 75-144 | |
卒業 | 145-224 |
著者紹介
重松 清
- 略歴
- 〈重松清〉1963年岡山県生まれ。出版社を経て著述業に。「ナイフ」で坪田譲治文学賞、「エイジ」で山本周五郎賞、「ビタミンF」で直木賞を受賞。他の著書に「日曜日の夕刊」「送り火」ほか。
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紙の本
私にとって生きていくうえでの教科書のような存在になっているのが重松作品です。
2004/08/18 11:31
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エルフ - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題の「卒業」よりも「まゆみのマーチ」が兎に角心に響いた。
久々に涙を流しながら読んだ1冊である。
重松氏の本を読むと「子を持つ」ことの難しさを思う。
周りの友達が躊躇いなく母になっていくのが不思議でもあり、またちゃんと母親をしていることに尊敬の念すら覚える今日この頃だ。
もし私が「まゆみ」の母親だったとしたら…きっと困り果ててしまったであろう。
我が子ながら何故学校のルールを守らないのかと恥じる気持ちの方が勝つと思う。
きっと幼き頃の「僕」と同じ気持ちになってしまうだろう。
だから「まゆみのマーチ」の意味を知った時、思わず涙があふれてしまった。
「頑張れ」と言わずに愛情だけを注ぐその深さに参りました。
この「まゆみのマーチ」以外も「死」をテーマにした短編なのですが、「追悼」では親子の繋がりが決して血だけではないことを教えてくれます。
正直重松氏の作品に登場する四十代の男性像は情けないタイプが多いんですよね。
でもこれこそが世の中の多くの人が抱えている悩みであり現実なのではないでしょうか。
親になるのは簡単、だが親でいつづけるのは困難、そして子供でいれる時間も限りがある。
オブラートに包んで美しい物語にせずに生々しく問い掛ける重松氏だからこそ読んでいて心を打たれるのだと再確認した1冊。
紙の本
誰もさけてとおれない「老い」や「死」を家族をめぐる物語にまとめた
2004/03/31 07:41
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオトリさま - この投稿者のレビュー一覧を見る
「卒業」という題名と10代の少女の表紙から青春小説かと思ったが、「死」をモチーフにした4編の短編集だった。
危篤の母の病室で思い出を語り合う優等生の兄と落ちこぼれの妹。
ささいな事から登校拒否になってしまった妹にそそがれる母の絶対的な愛。
ひきこもりになった息子に悩む兄は子供と真正面から向き合う決意をする「まゆみのマーチ」
在宅で最後のときを迎える事を選んだ元教師の父と現役教師の息子。
厳しい指導が子供の為という信念で厳格な教師だった父。現代っ子の扱いに悩む息子。
「死」に興味を持つ児童に父の姿を見せる事により起こるちょっとした変化。「あおげば尊し」
ある日突然自殺した大学時代の親友の娘が訪ねてきて、死んだ親友についてふりかえる「卒業」
小学1年生で実母と死別した作家が死んだ母を自分の筆の中で生き返らせてエッセイを書く。
どんどん美化されていく実母となんとなくそりの合わない義母との確執を振り返りながら、義母の心情に理解を示すようになる「追伸」
作品は重松さん得意の「家族」をテーマにした物だが、誰もが避けて通れない「死」を味わい深い物語にまとめた重松清さんの手腕はさすがだと思った。
40代になった重松清さんの新境地だと思った。
紙の本
重松さんの“集大成的な作品集”である。現時点での最高傑作であると信じたい。
2004/02/24 03:11
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
4編からなる“死”をモチーフとした中編集である。
主人公はみな40才前後。
それだけ誰もが人生の折り返し地点を過ぎ背負ってるものも大きいことの証拠かな。
前半の2編ではこれから受け入れなければならない親の死を…
後半の2編では遠い過去の親友と母親の死を…
従来の重松さんの作品は“身につまされる”話であったが、本作でのテーマは“人生において避けられない”テーマである。
そこに本作のスケールの大きさと重松さんの成長が窺い知れる。
だが読み終えた人は本当のテーマは“前向きな人生”であることに気づくはずだ。
★卒業
主人公の渡辺は40才で課長代理。ある日突然、亜弥という中学生が会社に訪れる。彼女の亡き父親はかつての親友で彼女が生まれる前に自殺をした伊藤であった…
古くからの重松ファンは感慨深い作品かもしれない。
文庫本の『ナイフ』のあとがきに書いているS君のことがオーバーラップされた方も多いことだと思う。
悲しみを背負いつつ生きて行く亜弥ちゃんの気持ちと、過去の親友を知りつつも自分の身の周りの変化(リストラ)に戸惑う主人公の葛藤。
あるいは現在の父親である野口さんの心の葛藤など…
途中でイジメにあってる亜弥ちゃんと春口とカラオケを楽しんでいる若い女の子、対象的なようなんですが紙一重かもしれません、実際は…
きっと亜弥ちゃんも幸せだし、亡き父親の伊藤も親友に恵まれて天国で喜んでいる事でしょう。
読ませどころが多いというか本当に問題提議の出来ている傑作短編だと言えるでしょう。
私の拙い文章では伝えきれないのが残念である。
★追伸
個人的には本作において最も感動的な話である。
主人公の敬一は現在40才で作家を営む。6才の時に母親がガンで亡くなった。父親は数年後に再婚し新しい母親が出来たのであるが、敬一の心の中では母親はひとりしかいない。いつも母親が病院で書いた日記を心の糧として生きていたのである…
とにかく敬一とハルさんの少年時代からの“確執”がいかに“和解”し“心を開きあう”かを見事に紡いでいる。
本作は血のつながりの重要性を謳っているのではない。むしろ、私たちが忘れている“本当の心の触れあい”の大事さを教えてくれている。
敬一の妻の和美の“出来た妻ぶり”も印象的だった。
他2編収録。
最近涙腺が弱くなった。
涙を流すことによって“希望”と“勇気”が味方についたような気がする。
明日からの人生を“少しでも恥ずかしくない人生を送りたい”と肝に銘じたい。
トラキチのブックレビュー
紙の本
前半の二編は満点、後半の二作品はちょっとわざとらしさが気になるかな、でも久しぶりに泣かせてもらいました
2004/04/09 21:12
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
泣いた。久し振りに、泣いた。遠くで、あおげば尊しが聞こえてくるような、そんな話だった。母も今までになく体の不調を訴え、自分の葬式費用について話し出し、義母も前から以上に言うことに繰り返しが増え、めっきり老いた。父は私が高校生の時に事故で亡くなり、義父も孫の可愛いさかりを目に焼き付けるようにして、逝って久しい。そんな話がたくさん詰まった一冊。この涙は『流星ワゴン』以来かもしれない。
カバー装画は日置由美子、装幀は新潮社装幀室。装画はとてもいいけれど、正直、本のデザインとしてみた場合は、古い。さすがの新潮社も、偶にはこんなこともある。ま、古くて野暮だから駄目というわけではないのが本のデザインといえば、それまで。ただし、横書きの目次、網がけの各章の扉のタイトルは、技と言うほどでもないものだけれど、心地よい。ちょっと古臭くて、でも心動かされる。これだから本つくりは面白い。
四年前に逝った父に次いで68歳の母が迎える死。病院に見舞った40歳の主人公大野幸司の脳裏を過ぎるのは、小学生時代の五歳年下の妹まゆみの振る舞いと、彼女をしつけることの出来なかった甘い母親の姿、そして現在、学校に行くことの出来なくなった息子の亮介のことである。授業中も歌をうたい続け、担任に罰をうける妹に母が歌う「まゆみのマーチ」。厳格ゆえに生徒からは愛されることの無かった教育者の父が、68歳を迎える最後に望んだのは自宅で迎える死。教え子が一人として見舞いに訪れない死を待つ部屋に、小学校の教師である40歳になる峰岸光一が招き入れたのは「あおげば尊し」。
40歳の課長代理である渡辺、14年前に自殺した伊藤真、野口亜弥、中学二年生、本当の父親の姿を知っておきたい、8年の薄い付き合い、親友、同期で上司でもある春山、思春期の自殺願望とイジメ「卒業」。少年が6歳の時に、母は癌で亡くなった。病んだ姿を記憶に残して欲しくない、と最後は子どもを面会に連れてこないでと願った母。そんな彼女が少年に遺したのは『わたしの宝物の敬一へ』と記された一冊のノート。40歳になって作家として陽の目が当たり始めた敬一の「追伸」。
本のタイトルは、中に収められている中編の題というだけではなく、四篇全てにからむもの。語り手が僕である点と40歳という主人公の年齢が全ての話に共通する設定で、「卒業」というのは、主人公やその周辺の人間が過去や現在の状況から抜け出ていくことを指すのだけれど、では卒業後の人生が薔薇色かと言えば、学生生活の卒業後に厳しい現実が控えているように、あくまで一つの世界からの「卒業」に過ぎない。
で、私に言わせれば、皮肉にも前半の「まゆみのマーチ」「あおげば尊し」のできの方が、表題にもなっている後半の「卒業」や「追伸」より上だという気がする。後の二作に、どうしてもわざとらしさを感じてしまうのだ。それは先日見たドリフターズのいかりや長介さんの葬儀での加藤茶の弔辞を聞いている時の、なんとももどかしい感じに似ている。昨日、褒めた角田光代『トリップ』と比べてみれば、よくわかる。
はっきり言う、「卒業」から主人公が14歳の少女に付き合う心情が見えてこない。芝居をしている、それもヘタな芝居を、そうとしか思えない。慟哭が伝わらない。よくも無駄な言葉を連ねるものだ、それほど悲しいのなら、辛いのなら、同情するなら、言葉より先に溢れるものがあるだろう! おまけに、少女が繰り返し使う「むかつく」という言葉が、しっくり来ない。
女子中学生を毎日見ている私には、少なくとも「卒業」は今までの重松作品になく、作為が目立つ気がする。むしろ、そのラストの歌声の唐突さには戸惑うけれど、教師のあり方を問う「あおげば尊し」、あるいは学校生活の明暗を描く「まゆみのマーチ」こそ、いかにも重松らしい、主人公の慟哭が聞こえる傑作だと言いたい。あなた、どう思います?