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ウォーター・ビジネス (岩波新書 新赤版)
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紙の本
卵一個に「水190リットル」が必要!
2005/09/07 22:34
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アリョール - この投稿者のレビュー一覧を見る
ウォーター・ビジネスの現状を通して「水」の将来を見定めようとする本である。
たとえばアメリカは、地下水を使いすぎたせいで“水涸れの危機にある”という。中西部の穀倉地帯で利用される「センター・ピボット灌漑施設」が猛烈な勢いで地下水を費消しているからだ。その量は、なんと一基で1日「82トン」。それが毎日、広大な綿花畑に撒かれているのである。
しかし、いうまでもなく地球上の水の量は限られている。およそ14億立方キロだ。ウォーター・ビジネスは、その限られた量の水を「巨大な利益追求の道具」に変えてしまった。
一例を挙げれば「ニワトリの卵」がある。ニワトリ一羽分の餌をつくるために必要な水の量を計算すると、卵一個あたり「190リットル」を越えるというのである。2リットルボトルで90本以上だ。
そういった怖くなるような報告が次々に展開する本である。
取材中、何度となく強固な「取材拒否」にあったというが、著者はその障壁を見事に乗り越え、情報公開を嫌うウォーター・ビジネスの本質に迫る。
紙の本
穀倉地帯での水不足が心配
2011/01/20 22:43
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書が取り上げる水の話題は、主にミネラルウォーター。20年前、30年前には、確かに日本人にはミネラルウォーターを買ってくるという習慣はほとんどなかった。水源地はだいじょうぶなのかという著者の視点はいい。
山梨の水源地で、飲料メーカーをはじめとする各社が一斉に大量の水を汲み上げ始めたとなれば、問題意識も生まれるだろう。ただ、著者の取材時点では、水位の低下を招くほどの水の汲み上げはない。本書が刊行されたのは2004年なので、その後がどうなのかがわからないが、飲料用水でもめ事が起きているという話は聞いたことがない。
世界の水問題は、多くの場合、工業用水や農業用水としての利用が過剰になり、不足感が生じていることにある。本書でも後半の章に、アメリカの穀倉地帯で地下水の利用が行きすぎて、一部で枯渇のおそれが出ていることが報告される。
効率よく畑に水を撒くために、散水器具がどんどん改善されていっているのも具体的なレポートで分かりやすい。少しの無駄もなく、作物の根に向けてきちんと水が供給されるように工夫が凝らされているのは、それだけ地下水が貴重なものになっている証拠だろう。
この穀倉地帯では、小麦、大豆、綿花、トウモロコシなどが栽培されている。そして、ここで収穫された穀物はアメリカ国内の消費にとどまらず、日本をはじめとする世界各地に輸出されている。いわば世界の食料庫のような存在だ。
ここでの農業が地下水に完全に依存しており、その地下水源が井戸を深く掘らねば行き着かなくなり、将来的な枯渇の心配も生じているのだとすれば深刻な話になる。著者もその点に言及しているが、この問題は継続して追いかけてほしいと思う。
おそらくミネラルウォーターよりは、こうした農業用水の不足、工業用水の不足が食糧問題に発展し、経済発展のボトルネックになることへの懸念の方が大きな問題となりそうだ。
著者は、中国北部での水不足も取材している。ここには華北平原という穀倉地帯があるが、やはり農業用水が不足している。華北平原では、1997年時点で260万本の井戸があるが、22万本の井戸が新たに掘られる一方で、10万本が放棄されている状態だ。北京での地下の帯水層の低下も著しい、
世界の水問題は、食糧問題に転化したとき、よその国の話題として片づけられなくなってくる。日本にとっても大切な話のはずだが、2011年の初頭時点で、あまり注目を浴びていないのが不思議な感じがしてしまう。