紙の本
笑いとばすほうを選ぶわよ!
2004/03/30 06:49
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アルテミス - この投稿者のレビュー一覧を見る
有名なので、知っている人も多いだろう。第二次大戦中のドイツでのジョークである。
真夜中に空襲があった。防空壕に集まった人の中で、「こんばんは」と挨拶した人は、まだ寝ていなかった人。「おはよう」は、既に充分に眠った人。
「ハイル・ヒットラー!」は、まだ目が覚めていない人。
本書には、この種のジョークがてんこ盛りである。
どんな独裁者も戦争も、それを完全に封じることは不可能。何しろ、あの北朝鮮で聞いたという、金正日をおちょくったジョークまで収録されている。
人は、どんなに息苦しい生活をおくっていようと、笑うことをやめられない。いや、それだからこそ、笑い飛ばしてしまうことが必要となるのだろう。
スターリン時代の旧ソ連のものもいくつか載っているが、だいたいは私もリアルタイムの記憶のある時代のものである。
イラク。パレスチナ。アフガニスタン。旧ユーゴ。
ただし、イラクと言っても湾岸戦争後のフセイン政権下のもので、さすがにイラク戦争後のものはない。が、自衛隊を派遣している今、日本をネタにしたジョークがもし生まれているとしたら、ぜひ聞いてみたいものだ。怖い気もするが。
数々のジョークを読んでいると、そのジョークを発する国や民族の性格や、登場する国への見方や力関係などが垣間見える。
パレスチナでは、パレスチナ人を押さえつけようとするイスラエルのやり方の愚かさを笑い敵対意識むき出しなのに、イスラエルではユダヤ人はアラブ人を見下した形で笑う。パレスチナ人がイスラエルを敵とみなしているのに、イスラエル側は対等な敵とは見ていないということだろう。
日本が登場するものも三話ほど収録されている。それによると、やはり日本人は勤勉で勉強熱心、正確さを求めると思われているらしい。
笑い飛ばす対象として登場するのでない点が少々残念なのだが、これは著者の自主規制か、それとも、日本人である著者に、日本をネタにしたジョークを教えるのを世界中の人が遠慮したためか。
本書を読んでいて、二冊の本をしきりに思い出していた。
一冊は、日本発の困難の中の笑いとして、藤尾潔氏の『大震災名言録』(光文社・知恵の森文庫)である。阪神・淡路大震災をネタに、笑いを誘いながら人のたくましさを謳い、同時に、日本のさまざまな問題点を提起してもいる。大地震にみまわれたときのさまざまな知恵が得られるので、お勧めである。
もう一冊は、私の好きな漫画家・獣木野生氏の半自伝作品である『青また青』(新書館・ウィングス文庫)。著者はずいぶんと大変な半生を過ごされたらしいが、この本に、こういう台詞がある。
「自殺するか笑い飛ばすかない状況に追い込まれりゃ、タマナシでもない限り誰でも笑いとばすほうを選ぶわよ!」
紙の本
なじみの薄い国々のジョーク集
2004/04/20 22:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:APRICOT - この投稿者のレビュー一覧を見る
中近東、旧ソ連・東欧、アジアの各国のジョークを集めたもの。必ずしも紛争地とは限らないし、紛争ネタや政治ネタはそれほど多くないので、タイトルから期待していたのとはちょっと違う。まあ、あまりなじみのない国々のジョーク集と思えば、それなりに楽しめる。
気に入ったのを1つ、かいつまんで紹介する。レバノンのジョーク。なお“アブ・アベド”とは、アラブ系ジョークの定番キャラクターとの事。
***
朝の5時、ホテルのフロントに、宿泊客のアブ・アベドから電話がかかってくる。
「ホテルのバーは何時に開店するの?」「午後2時です」「じゃ、待ってるよ」
だがその後、アブ・アベドから何度も何度も、バーはいつになったら開店するのかと、催促の電話がかかってくる。フロントが音を上げて
「もう勘弁して下さい。ご希望のお飲み物を、お部屋にお持ちしますから」
「いやいや、そうじゃないんだ。昨晩酔いつぶれて、バーに閉じ込められてしまったんで、開店するのを待ってるんだよ」
投稿元:
レビューを見る
中近東、旧ソ連、東欧、アジア等の紛争地から採取されたジョーク集。
正直に言うと、何が面白いのかよく分からないものもあるし、基礎知識がないと笑えないのも多いので、結構難しい本かもしれない。
それでも悲劇をも笑い飛ばせる逞しい人々がいるのなら、まだ世の中は大丈夫。
投稿元:
レビューを見る
ジョークを楽しむというだけでなく、その背景にある情勢なども解説されており、分かり易くそして色々なことを考えさせられる本。
投稿元:
レビューを見る
紛争地域のジョークを主にまとめた本。中には意味のわからないものとか、別にそこの地域じゃなくてもいいような(どこでも使えるような)ジョークとかもある。ストーリー系のジョークは、星新一の世界を思い出すようなものが多い。結構世界の紛争地帯の勉強とかにもなるし、逆にその知識がないとわかりにくい箇所とかもあるけど、それでも笑いは人間に必要です。
投稿元:
レビューを見る
読んでいて「ふっ。」と笑いたくなるようなジョーク満載。笑えるだけじゃなくてその国の地域事情もわかる(ここポイント)し、読んでみる価値絶対あります。
投稿元:
レビューを見る
2004年3月初版,2年半で5版に〜中近東・東欧・旧ソ連・アジア・国を持たない人々のジョーク〜一番笑ったのはアルバニアの軍隊がネタ「問:2004年アルバニア軍のコンピュータ系統が一斉にダウン。原因は? 答:2000年問題」。悲惨だったのは旧ユーゴの紛争みたいだ。それを考えると,北朝鮮による拉致問題なんかは小さく感じてしまう。ルーマニアではロマ(ジプシー)への差別が強い,というのも思い出した。身内や知り合いが皆,殺された人々には笑顔がなく,そういう人々こそ笑いが必要なのだと著者は考える。日本人ジョーク集や反米ジョーク集に先行する本。
投稿元:
レビューを見る
世界各地の紛争地について、それを皮肉っぽくとらえたジョークが集められている。当事者同士の争いが如何にこっけいなものかと思わされるが、ただ、この笑い話のように単純に片付けられる問題でもないのだが。
投稿元:
レビューを見る
世界の日本人ジョーク集 ・ 世界反米ジョーク集 と読んでおもしろかったので,読みました。この本ももちろんおもしろかったです。
おもしろいだけではなく,紛争地について勉強にもなります。
紛争地でもこのようなジョークで笑っているのですね。
声を出して笑ったもののなかからいくつかピックアップします。 もっとほかにも笑えるのがたくさんありますよ。
--------------------------------------------------------------------------------
イラク
[誘拐事件]
ある時、サダム・フセイン大統領が何者かによって誘拐された。
数日後、犯人グループから大統領宮殿に脅迫電話がかかった。
「いますぐに百万ドル用意しろ。さもなければ大統領を生かして帰すぞ」
--------------------------------------------------------------------------------
シリア
(鶏の運命)
ホムシーは鶏をニ羽飼っていたが、ある時そのうちのー羽が病気になってしまった。
彼はー羽を捌いてスープにし、病気の鶏に飲ませた。
--------------------------------------------------------------------------------
ロシア
(罪状)
酔っぱらいが酒場でこう叫んだ。
「スターリンの大馬鹿野郎め!」
すぐさまやってきたKGBの手によって酔っぱらいは取り押さえられた。
酔っぱらい「ちくしょう!何だよ俺が何をしたって言うんだ!」
KGB「機密漏洩罪」
--------------------------------------------------------------------------------
ハンガリー
(ハンガリー人とロシア人の会話)
ハンガリー人「今度、我が国に海軍省ができるんだ」
ロシア人「何だって? でもハンガリーには海がないじゃないか」
ハンガリー人「でも君の国に文化省があるんだぜ」
--------------------------------------------------------------------------------
クロアチア
(埋葬)
ある時、ザグレプ郊外にミロシェヴィッチの死体が転がっていた。それをニ人のクロアチア人が見つけた。
「大変だ。埋葬しなくては」
「いや、待て。俺たちが殺したと思われたら、ややこしいことになるぜ」
二人は結局、死体をそのまま放っておいた。
次にニ人のムスリムが死体を見つけた。
「大変だ。埋葬しなくては」
「いや、待て。俺たちが殺したと思われたら、ややこしいことになるぜ」
二人は結局、死体をそのまま放っておいた。
次にニ人のユダヤ人が死体を見つけた。
「大変だ。埋葬しなくては」
「そうだな。とりあえず、街の人たちに知らせよう」
ユダヤ人の通報によりたくさんの人が集まってきた。ユダヤ人は言った。
「それでは私たちが責任を持って埋葬しますから」
するとー人の街の人が言った。
「冗談じゃない。それだけはやめてくれ。君たちには絶対に任せられない」
ユダヤ人は不思議に思って聞いた。
「どうしてですか? 馬鹿にしないでください。しっかり埋葬しますよ」
男は首を横に振りながら言った。
「困るんだよ。だって君たちユダヤ人がかつて埋葬した人物は、後に復活したじゃな��か!」
投稿元:
レビューを見る
深い読みと、クスッと笑えて終わる軽さ。どっちも当てはまるもの。若干ダークなジョークにはまる。紛争があったとしても、人はしたたかで強く生き抜いていくんだなぁって実感できた本。
投稿元:
レビューを見る
『世界の紛争地ジョーク集』(早坂隆、2004年、中公新書ラクレ)
本書は、紛争下にある各国を訪れた筆者の早坂氏が現地の人から集めたジョークを収集したものです。中近東から東欧、アジアまで、様々な国の簡単な現状紹介と、ジョークが載っています。本書を読めば、紛争下にある国の現状と、それを諷刺する人々の心までをも知ることができると思います。
ジョークとは国民性を表すだけではなく、その国の現状や文化をも表すものです。例えば、サダム・フセイン下のイラクではこんなジョークがあったそうです。
サダム・フセイン大統領が何者かによって誘拐された。数日後、犯人グループから身代金の要求があった。
「1000万ドル用意しろ。さもなくば大統領を生かして帰すぞ」
このジョークは、サダム・フセインをジョージ・W・ブッシュに変えたりと、様々なバージョンがあります。フセイン統治下の国民がいかに大統領の圧政に苦しんでいたかを表しているジョークではないでしょうか。
(2009年5月5日)
投稿元:
レビューを見る
ニュースを見ていて「今この国でこんな事が起きている」という部分は分かっても、「何故そういう事が起こったのか」というのは調べてみないと分からないのと同じで、この本に書かれているジョークそのものは理解出来ても、何故そのジョークが生まれたかというのは、やはりその国の情勢を知らないと分からないですね。
同じようなジョークが登場人物の名を変えて、色んな国にあるのが面白い。以前米原万里氏の著作で登場したジョークも幾つかありました。
人間の考える事やる事というのは、国や言葉や宗教が違っても、余り大差ないのですね。その事が面白くもありますが、少し哀しいような気もします。
投稿元:
レビューを見る
[ 内容 ]
イラク、北朝鮮…紛争、圧政、貧困の地にある無数の悲劇。
そこで民衆の心を絶望、怒り、憎しみから解放してきたジョークの名作、秀作を多数収録。
日本人のストレスにも効きます。
[ 目次 ]
第1章 中近東(イラク パレスチナ ほか)
第2章 旧ソ連(ロシア エストニア ほか)
第3章 東欧(チェコ ポーランド ほか)
第4章 国を持たない人たちのジョーク(ロマ(ジプシー) クルド人)
第5章 アジア(朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮) ミャンマー ほか)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
投稿元:
レビューを見る
うひひ。こっちはニヤリレベルだけど、笑いがWWに広がっているから、背景とかが気になって勉強になるかも。