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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:2004.3
  • 出版社: マガジンハウス
  • サイズ:20cm/315p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-8387-1490-4

紙の本

パンク侍、斬られて候

著者 町田 康 (著)

江戸時代、奇怪な宗教団体「腹ふり党」が蔓延する藩に現れた牢人・掛十之進。彼は弁舌と剣の実力を発揮して活躍するが…。『鳩よ!』及び『ウフ.』連載を大幅に加筆修正して単行本化...

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パンク侍、斬られて候

税込 1,760 16pt

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商品説明

江戸時代、奇怪な宗教団体「腹ふり党」が蔓延する藩に現れた牢人・掛十之進。彼は弁舌と剣の実力を発揮して活躍するが…。『鳩よ!』及び『ウフ.』連載を大幅に加筆修正して単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介

町田 康

略歴
〈町田康〉1962年大阪生まれ。高校時代からパンク歌手として活躍。「くっすん大黒」で野間文芸新人賞、「きれぎれ」で芥川賞、「権現の踊り子」で川端康成文学賞受賞など。著書に「夫婦茶碗」ほか。

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みんなのレビュー55件

みんなの評価4.1

評価内訳

紙の本

時代小説の衣を纏った現代小説

2010/01/05 15:23

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yjisan - この投稿者のレビュー一覧を見る

スラングを駆使する独特の言語感覚、テンポの良い会話、痙攣的饒舌、スラップスティックな笑い。どれを取っても町田康の個性は際立っている。その特質は著者初の時代小説である本作においてもいかんなく発揮されている。


時代小説を執筆する時、作家は現在の常識なり価値観を過去に投影しがちである。どうしても江戸時代の武士をサラリーマンのように描いてしまうのである。本書はそういった時代小説の弱点というかいかがわしさを逆手に取り、江戸時代の武士が「マジ汚ねぇよ」と言うわ、ビートルズの「イマジン」は登場するわと、完全に開き直って現代風俗を活写している。その心意気やよし。

本作の前半は登場人物の紹介を兼ねる形で、各々の立場と思惑を丁寧に語っていく。その諧謔と諷刺に満ちた人物描写がマジ笑える。後半は事態が急変し、疾風怒濤の展開。作中世界は加速度的にエントロピーを増大させ、悪趣味と狂気が蔓延していく。この支離滅裂な暴走は凄い。


ピカソの絵が素人目には子供の落書きのごとく映ることがあるように、本作も一歩間違えると中学生が書きなぐった荒唐無稽な創作作文になりかねない代物である。駄作へと落ち込むギリギリのところで踏みとどまり、全体を絶妙な按配で処理するところにこそ、町田康の天才がある。

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紙の本

パンク侍は伊達じゃない

2016/11/25 07:10

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:こけさん - この投稿者のレビュー一覧を見る

自分の世界というのは、自分が信じている世界というものだ。ということをここまでもかとえぐった作品です。わー!!結局、自分が信じるしかない世界の中で自分の矜持と信念を持って生きていくしかないのだなあ。と思った。全部ウソだ、気にしねえという精神の方がそこはかとない潔癖さとまた逆に、矮小な感じがする。

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紙の本

可笑しくって恐ろしくて悲しくて

2004/09/12 19:10

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:hisao - この投稿者のレビュー一覧を見る

可笑しくって恐ろしくて悲しくて。
“牢人は抜く手も見せずに太刀を振りかざすと、ずば。父親の右肩から左脇にかけて袈裟懸けに斬りつけた”
にたと笑って無抵抗の巡礼を切り捨てたのは超人的剣客、炸州牢人 掛十之進、後に遺された盲目の娘一人。
掛は“この者はこの土地に恐るべき災厄をもたらすに違いない”から切り捨てたと言う。巡礼は新興宗教“腹ふり党”の党員である、腹ふり党の党員達はこの世界が巨大な条虫の胎内にあり、この世に興る事は全て無意味と見る。ただ無意味に四六時中“腹ふり”と言う奇っ怪な舞踊をなす事によってのみ条虫の肛門から真実真正の世界に脱出出来る。
隣の藩では既に“腹ふり党”が蔓延、民衆は明けても暮れてもこの虚無的・退廃的にして隠微な“腹ふり”に興じ、藩は壊滅状態にある。
掛いわく 自分は“腹ふり党”対策のプロフェッショナルであり、当藩滅亡の危機を救う秘策を持つのは自分しかいないのだと、まんまと黒和藩の契約社員に仕官します。
荒唐無稽・無茶苦茶のようで理路整然たる批評精神あふれる物語、武家言葉と現代若者語が錯綜・炸裂する文章力が凄い。
パンク侍・掛は剣の実力、いかがわしい弁舌、時に見せる生真面目な優しさ、正にただの若者では有りませんが、大人には敵わないよな。
内藤帯刀なる藩の重役が自らの栄達のため掛をネチネチ・ぐいぐい自家薬籠中の者にする凄さ。
藩主の立派と言うしかないアホさ加減、小心・傲岸・ド真面目な小役人。現代お役人社会は存じませんが、きっとこの様なものだと爆笑させられます。
隣藩の努力で既に壊滅していた“腹ふり党”を藩重役・内藤帯刀は自らの陰謀で招き寄せ復活させます。凶悪にして凶暴、個性的で有能な新党首・茶山を得て、党はまたたく間に民心をつかみます。
“茶山さんはじめスタッフの努力には頭が下がる。こんな美しいイベントを有り難う。最高キモチイイ”
“こんな腹ふりをいままで知らなかった自分が口惜しい”
“気持ちいい空間を共有してるって感じ? 素晴らしい仲間に出会えたことに感謝”
演出される音曲と映像、無邪気な共感の中で、うちつづく喧噪・猖獗・略奪・虚無・荒廃・暴行・殺人・食人。
差し障りない所で一昔前を見てもオウム、中国文化革命、連合赤軍など色々有りましたね。極めて現実的な恐ろしい悲しい世界ですよね。
責任回避、逃げ回る役人達と事態収拾に立ち向かう奇想天外な軍団。
純情な密偵・魂次の魂も裂ける大失恋、ぶつくさ言いながら彼を気遣う掛の優しさだけが救いです。
ごめんなさい、ちょっと喋りすぎました。でも最後のどんでん返しだけでも読んで損のない痛快小説なんだから。

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紙の本

冠状動脈作家の抜刀

2004/06/18 07:48

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:13オミ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 物語の終末に向けてかなりいい線いってたんだけど、最後はまともな落ちで終わらせている。宇宙が膨張していくに任せて強烈な笑いで終わらせるのかと思ったんだけど、やっぱ落語家じゃなく文学者なのか?町田氏は。

 抱腹絶倒から一転していつのまにか恐ろしいほどの緊張感へと移行させる手腕には恐れ入る。いかがわしい宗教腹ふり党大幹部茶山との出会いのシーンや猿大臼と元ご家老大浦とのかけあいでは、それが強烈。コントだと思ったら、人物の語る言葉に神妙に耳を傾けてしまっている。

 人物を次から次へと被せていく手腕には脱帽する。普通これだけ新しい人物を登場させていくと混乱するものだが、全くそういうことはなく新旧ともにストーリー上重要な役回りを確実に占めていくのだ。超能力者の虐げられ方をたった10行程度で表現。出来る上司のあり方についてもほんの10行程度で語っている。最近の若者の傾向をほぼ4ページでまとめあげる。大きな物語の中にまた小さな物語を入れ込むというのも出色だ。

 終末部分の戦闘では、物すごい勢いで人らが死んでいき、人物名と享年を言うところではやけに哀切を感じさせる。主要人物の表と裏の口を語らせて、内面に細かく踏み込み表裏を棲み分けするときの豊富な語彙量はなかなか他の小説ではない。町田氏にネームをつけるとしたら、心臓の冠状動脈作家とでも言ったらいいだろうか? なんか自分の心臓にびっちり言葉が張り付く感じなんだもん。

 こういう楽しい小説はなかなかない。いわゆる時代劇だけじゃなく、いろんな時代、例えば縄文時代とか平安貴族時代とかで、パンク原始人・パンク貴族を再び斬ってもらいたい。

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紙の本

そして物語は虚無の果てに行きつく

2004/06/03 09:54

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:野沢菜子 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 時代小説の体裁を借りて、世渡り上手の詐欺師まがいの牢人、掛十之進を軸に、黒和藩なる藩の(というか、ほとんど現世の)壊滅を描く。対立する家老の片方が、掛十之進を使ってキッカイな新興宗教団体「腹ふり党」のフェイクを藩内に出現せしめ、相手を失脚させようと図るのだが、フェイクのはずの「腹ふり党」はあっという間にコントロールできなくなり、すべては破滅へとなだれこむ。
 藩内の派閥争いだの、保身に汲々とする小役人だの、言葉を額面通りにしか受け取れない四角四面な藩主だの、深い意味のありそうなナンセンスを口にする新興宗教の教祖だの、面白そうな騒ぎには即のってしまう庶民だの、人間よりはずっと賢い人語を発する猿だの、鋭い風刺満載。
 物語の枠組み自体、ひどく面白いのだが、勿論、町田作品の真骨頂はその語りにある。「ござる」「拙者は」といった時代小説語に現代の若者言葉を絶妙につき混ぜ、時代劇で始まった会話がトレンディードラマで終わることもしばしば。これがなんの違和感もなく、心地よい。腹ふり党の茶山が発するナンセンス語もなんともいえず面白いし、全体の言葉のリズムが絶妙に読むものの脳に響く。これって小説のパンク?
 そしてなにより素晴らしいのが最後のハチャメチャ。スパンキィ氏が「時代小説と思いきや実はSFだった」と述べておられるが、SFというより筒井康隆ワールド、というか、それをはるかに凌駕している。突き抜けて、ぶっ飛んで、はるかかなたの宇宙の虚無までいってしまっている。壮絶というかなんというか、私などの凡人の言葉では表しようがない境地である。あたり一面、人と猿の死体の断片でぐちゃぐちゃ。破裂する肉体もあれば、もがきながら虚空に呑まれる肉体もあり。ほとんどの登場人物はバタバタ死んでしまう。
 そして、そんな修羅場のあと、生き延びた掛十之進は惚れていた美少女ろんに「こんな世界だからこそ絶対に譲れないことがある」とあっさり殺され、「二、三歩歩いてろんは立ち止まり上を向き、口からまっ青な空を吹いた。空は美しく嘘くさかった。美しく、嘘そのものであった」で終わる。この最後のセンテンスには、本当にまいりました。町田康さん、あなたは天才です!

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紙の本

負のエネルギーがパワーアップ!

2004/10/17 21:47

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:とみきち - この投稿者のレビュー一覧を見る

町田康の小説が好きな人には、本書の異常なパワーアップぶりに快哉を叫ぶに違いない。根っこはいつもの町田康なのだが、小説の登場人物数はいつもの100倍ぐらい、そしてあろうことか時代はお侍の時代。そして、いつものように、暗く、場違いで、鬱屈した主人公たちが、ぶつぶつ言いながら、あれよあれよとおかしな事柄に巻き込まれ、右往左往する。ベースに流れる悲哀感と疎外感。
『くっすん大黒』を初めて読んだとき、どひゃーーー、何とおもしろいのだろうと度肝を抜かれ、早速周囲に触れ回ったところ、「嫌いじゃないけど、読んだあとどうしていいかわからない」とか「いまひとつ合わなかった」などの反応が多く、この人のおかしみというのは万人受けしないものなのだ、ということを深く心に刻んだものでした。

私が好きなのは、著者が大得意とするところの鬱屈した自己分析。今回もありますよ、たっぷりと。もちろん言葉遊びに至っては、これでもか、これでもかと、やりたい放題。

筋なんぞ説明するのもばかばかしいほどだから、読みたい方は読んでくださいという感じだが、私が感心するのは、異常な自意識の過剰さから、鬱屈し、神経をとがらせて世の中に相対している人間の心の描きっぷり。著者自身、彼らを笑いのめしているけれど、心が寄り添っていることが感じられるのが、こちらの心に響く鍵だろう。町田康自身も多分、徹底的にパンクな人。徹底的に反体制の人。徹底的に卑屈で、世の中逆恨みで、ネガティブな方向にしか物事を見ない人。

そして最も大事なポイントは、そんな自分を突き放して観察することのできる人。こうでなくちゃね。

何かに向けてエネルギーが発散するときに、それが生産的であったためしがない。世のためになど全然ならない。負のエネルギーを暴発させるだけ。それがパンク。それが自己哀惜の小説。どこにも行き着かない。何も救えない。何も約束してくれない。何の光も見いだせない。

でも、その自分を知って、悲しみを抱えて、格好悪くうろうろする心が描かれた小説を読むことで、読んだ側の心は何かの化学反応を起こすんだ。小説を読むって、そういうことなんだろうって思う。

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紙の本

チャンバラ時代劇でありながら

2021/05/20 14:51

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る

内藤と大浦の権力争いは、現代のサラリーマン社会を皮肉っているような気がします。士官先を探してさ迷う掛十之進の後ろ姿にも、モラトリアム青年を重ねてしまいました。

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紙の本

秘剣「哀しみのドランナが心に蜜をもたらす夜」

2004/08/25 20:08

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ナカムラマサル - この投稿者のレビュー一覧を見る

まず初めにお断りを。
「ウウム憎い奴。そんな好き勝手やって余を愚弄する気か。マジむかつく。急ぎ大浦を呼べ」—
このセリフに拒否反応を示された御仁は、本書を読まずにいるほうが賢明。
町田康にマジメな時代小説を期待してはいけない。

本作の中心は、「腹ふり党」という謎の宗教団体。
彼らの教義とは、‘この世界は巨大な条虫の胎内にあり、この世界から脱出するには「腹ふり」をして条虫を苦悶させ、条虫の肛門から排出されねばならない’
この「腹ふり党」が猖獗を極め、ラストはなぜか猿vs人の大乱闘…
よくぞこれだけ荒唐無稽な話を思いつくものだ。
全編、笑い、笑い、笑い、の連続。
「そのとき俺は世界が哀しみに満ちていることをはじめて知ったんだ。」—こんなセリフが大爆笑ものなのである。

「薬種問屋の倉庫でエナジーチャージャーが茶倫を打ち砕く。茶倫ってなんだかあなた分かりますか。茶の倫理です。恵愚母の聖犬です」—意味不明な言葉の魔術師・町田康の天賦の才を思う存分堪能できる本作は、時代小説の仮面を被った痛烈な現代人批判本でもある。

「保身ばかり考えているからそうやって大局を見誤って破滅していくのだ。」
「行列があればなんの行列かわからなくてもとりあえず並ぶし、売れていると聞けば買わなきゃと思う。芝居を真実だと思いこみ、著名人を敬慕しつつ憎悪する。絶対に自分の脳でものを考えないが自分はユニークな人間だと信じている。」
「僕は納得いかないうちは仕事をしません、などと最近の餓鬼はほざくが、そんな70年代フィークソングみたいな心のやさしみを求めて会社に入ってきてもだめだ。」
—笑いが、はたとやむ瞬間。

時代小説の定石をはるかに逸脱した本作ではあるが、結末に、著者の時代小説へのオマージュを感じた。
喩えるなら、シュールな世界に突如現れた中里介山。

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時代小説と思いきや実はSFだったという愉快な肩透かし

2004/04/19 14:22

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:スパンキィ - この投稿者のレビュー一覧を見る

義理人情にあふれる時代小説や剣の達人が懊悩する時代小説なぞを想像して読むと肩透かしを食らう。だいたい町田康がそういうものを書くわけがない。

時代は江戸……かなぁ。黒和藩のとある茶店。牢人・掛十之進が父娘連れの父親の方を「ずば。」と斬った場面から始まる。掛によるとこのところ「腹ふり党」の跋扈によって藩政が立ち行かなくなる藩が出ているという。今斬った男も腹ふり党員であると見て即斬った。このままではこの藩も危ない。

「腹ふり党」とはこの世が仮の世、条虫の腹の中にあるものであるとし、真正の世にするには早く条虫の中から糞となって排出されなくてはならない。それには腹ふりが一番聞く。とにかく馬鹿のように腹をふるのだ、という教義を信じる信仰宗教団体である。彼らがのさばれば殺人や略奪され放題、仕事もせずに腹をふる連中が増えて藩政が立ち行かなくなるという。それを聞かされた黒和藩士・長岡主馬は腹ふり党対策を掛に聞くが、答えてくれない。逆に黒和藩に召し上げてもらえるように藩に陳情せよと言われてしまう。

黒和藩家老の内藤の画策によって黒和藩士になれた掛であったが、密偵・江下レの魂次の調査によって実は腹ふり党はすでに解散状態であることが知らされた。掛を召し上げるように働きかけた内藤は立場が危ないというということで、隣国にいる腹ふり党元幹部の茶山半郎に恰好だけ腹ふり党を復興するよう願う。そうして復興したネオ腹ふり党によって城下は大混乱に……。

時代小説かと思いきやなんとSFだったという怪作。しかも時代小説の体裁をはじめの数ページはとっているのに、会話が現代若者の「っつーかさー」とか「〜じゃん」という言葉になってゆく。外来語しかもオトナ語のようなものも使う。出てくる人物全員が愚痴を言う。戦場で人がたくさん死ぬ。不条理な状況が現出する。

ここまでやられると読む側は、筋うんぬんよりも表現をおもしろがって読むのが一番だろう。現ににやにや笑ってしまった箇所がたくさんあった。
特に密偵・江下レの魂次の内藤に宛てた手紙の文体が変。アイドルのゴーストライターが書くような妙にナイーブな心情吐露に、ハードボイルドな状況説明、結局は話し言葉に落ち着くんだが。手紙の中で説明している状況の中に出てくる事物・人物がテレビ時代劇のものであるというのもまた笑える。
あと、茶山半郎の教義を話している言葉が3:7の割で分からないことが多い。わからないように登場人物に話させるというのはなんだかわからないけどすごいと思った。

町田康の小説についての評や感想はそのほとんどが文体に言及しているが、本書は特に会話や追想部分の妙さ加減を味わうべき本だと思う。

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2004/09/29 22:44

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2004/10/03 22:27

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2004/10/07 14:09

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2004/10/08 22:37

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2006/07/09 12:16

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2006/01/30 20:50

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