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紙の本
「戦間期」の思想家たち レヴィ=ストロース・ブルトン・バタイユ (平凡社新書)
著者 桜井 哲夫 (著)
二つの戦争の狭間で、フランスの知識人たちは芸術・思想においてどのような模索の道を辿ったのか。若きレヴィ=ストロース、ブルトン、バタイユ、マルローたちが交錯した眩いばかりの...
「戦間期」の思想家たち レヴィ=ストロース・ブルトン・バタイユ (平凡社新書)
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商品説明
二つの戦争の狭間で、フランスの知識人たちは芸術・思想においてどのような模索の道を辿ったのか。若きレヴィ=ストロース、ブルトン、バタイユ、マルローたちが交錯した眩いばかりの精神史。
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紙の本
女性を排除する運動体
2004/04/29 20:19
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
第1章「囚われのアンドレ・マルロー」と第2章「レヴィ・ストロースと「建設的革命」」を読んでいるあいだは退屈だった。「思想家たち」の思想の中身ではなく、若き日の交友関係やゴシップ、スキャンダルの類をめぐる話題が延々と続くのに飽き飽きしていた。この本は前著『戦争の世紀』の続編で、やがて書かれる第二次大戦以後の物語とあわせて「二十世紀精神史」三部作の第二部にあたるというのだが、それにしては『戦争の世紀』がもっていた新鮮さに欠けているように思えたし、「精神史」の骨格をなすもの(戦争、革命、政治、結社、ファシズム…、そして「ブルトンらの運動とモースの仕事、バタイユの活動」を結びつけるもの)の輪郭がくっきりと浮かびあがってこなかった。
いったん放りだしたけれど、なんとかバタイユまでたどりつこうと再開した第3章「ブルトンとトロツキー、そしてナジャ」で息をふきかえし、第4章「バタイユと「民主的共産主義サークル」」で加速し、第5章「政治セクトの季節」「エピローグ──戦争が露出する」と一気に読み進んだ。読後、ときおり顔を出すポール・ニザンやジャック・ラカン、『戦争の世紀』でも重要な位置をしめていたベンヤミン、そして本書の影の主役ともいえるマルセル・モースといった役者とともに、ブルトンのナジャ(レオナ・カミーユ・ギスレーヌ・D)、愛人シュザンヌ・ミュザール、バタイユの妻シルヴィア、愛人コレット・ペニョ、ブルトン、バタイユと奇妙な絆をむすんだシモーヌ・ヴェイユ(あの『空の青み』のラザールのモデルだった!)、ハンナ・アーレントといった女性群がとりわけ濃い印象を残した。──以下は、エピローグに引用されたモースの文章とそれに続く一文。
《「ここでは、私は、ギリシャではしょっちゅう起こったような出来事を簡単に見つけられます。アリストテレスが非常に力をこめて描いており、とりわけ古代社会に特徴的なもので、おそらく世界中どこにでもあるものです。つまり、〈男たちの秘密結社(ソシエテ)〉で、公に認められていながらも秘匿されているという同胞組織を持ち、この男たちの結社団体のなかでは、活動するのは青年団体なのです」。
行動的少数派の政治セクトは、「男の結社」であって、女嫌いの結社である。そう考えてみれば、基本的にボリシェヴィキもファシストもナチスもみな女性を排除するセクトであった。それに対抗するセクトも、知らずに感化されて同様な性格を持たざるを得なかったともいえる。バタイユのセクトもまた「男たちの結社的団体」にほかならなかった。ついでにいえば、バタイユと対立したブルトンたちシュルレアリスム運動もまた女性を排除する運動体であった。》
紙の本
著者コメント
2004/03/19 16:18
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:桜井哲夫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
私の新著は、かたちのうえでは『戦争の世紀』(平凡社、1999年)の続編ということになるのだが、まったく独立して読むことが可能である。第一次 世界大戦から第二次世界大戦勃発までのいわゆる「危機の20年」(E.H.カー)の時代に、フランスの青年知識人たちがいかに考え、いかに行動したかを、彼らのネットワークを詳細にたどることで明らかにしようとした精神史である。
「戦争の世紀」は、第一次大戦勃発直前から戦争期、戦後直後の若者たちの反抗を描いたが、今回の本は、彼らの政治的軌跡を描いている。最初は、後にドゴール政権下の文化大臣となり、日本にも何度も来ているアンドレ・マルローの無名時代の盗掘騒動から始まる。さらに全く日本では語られたことのない文化人類学者レヴィ=ストロースの社会党活動家時代の記録、ジャン=ポール・サルトル、レイモン・アロン、ポール・ニザン、シモーヌ・ド・ボーヴォワール、さらにフランス社会学界の大物アンリ・ルフェーヴル、ジョルジュ・フリードマンらの動きを描き、アンドレ・ブルトンの共産党時代とトロツキーへの熱狂、小説「ナジャ」の背景、そして日本ではほとんど語られていないジョルジュ・バタイユの左翼活動家時代の歴史を詳細にたどる。
おそらくこの本を読むとバタイユの印象はまったく変わるだろう。さらにバタイユとシモーヌ・ヴェイユの結びつきもまた意外さを感じるはずである。さらに、『子どもの誕生』の歴史家フィリップ・アリエスの右翼活動家時代のエピソードにも注目。「戦争の世紀」もヴァルター・ベンヤミンの文章で終わったが、この本もまたベンヤミンで終わる。どのように終わるのかは、読むときのお楽しみ。