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紙の本
一番のドタバタ作品?
2004/04/02 15:04
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:霞 - この投稿者のレビュー一覧を見る
カーの作品では入手困難なものが大変多い。
この「パンチとジュディ」もそう言う入手困難な作品の一つ。
おなじみヘンリー・メリヴェール卿(H・M卿)のシリーズ。
H・M卿の作品はどれもこれもドタバタが多いが、これは一番ドタバタがすごい作品ではないかと思う。
事件が始まる最初からドタバタ。
そのドタバタ状態は最後の最後まで続く。
ノン・ストップのドタバタコメディがこの作品。
しかしきちんと事件も解決されるし、その真相がまた凄い。
読み出したが最後、結末まで読み進めないと気が済まなくなるような作品。
とにかくノン・ストップで事が起こっていくので気が付いたら最後まで読んでいた、と言う状態。
この作品を出版して下さったハヤカワ・ミステリ文庫様には大感謝。
紙の本
なんていうか、外国人の書くドタバタって笑えないなあ、って思うわけで、それがこの小説の評価の分かれ目となる。まさに関が原である。やっぱ、わたしはカーよりクイーンかな
2004/05/30 20:40
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
早川書房から出ているカーの作品は殆ど書棚にあるはず。ただし、読んでいない。ただ、ミステリ文庫シリーズの、カーを示す背の緑が、確かD・フランシスのそれと同だったなあ、と記憶しているくらいである。そのうち新訳がでてきて、あれ、私の本はすべて旧版になっちゃうの?と思ったりしている。でだ、私はカーシリーズのカバーはてっきり辰巳四郎のデザインだとばかり思い込んでいたのだよね、ところがギッチョ、左利き。装幀/the GARDEN石川絢士と書いてある。驚き桃の木山椒の木である(古いなあ…)。
「結婚式前日、かつての職場、英国情報部の上司であるH・M卿に呼び出されたケンは、元ドイツ・スパイの老人の屋敷に潜入を命じられた。その老人が国際指名手配中の怪人物Lの正体を明かすと情報部に接触してきたので、真贋を確かめろというのだ。だが、屋敷でケンが目にしたのは老人の死体。事態の急変にめげず、ケンは任務を遂行し、式を挙げることができるのか? 奇想天外な大犯罪を暴くH・M卿の名推理が新訳で登場」
H・M卿と書かれているのが、ご存知、カーの生み出した迷探偵の一人ヘンリー・メリヴェール卿、陸軍情報部の長官である。で、元情報部部員で明日に結婚式を控えているのがケンウッド・ブレイク。晴れて彼の妻になろうとしているのが、元情報部員でもあるイヴリン・チェイン。そして、人生最大の事件の直前に彼を、奇怪なに巻き込むのがポール・ホウゲナウアというドイツのスパイというか、怪しげな科学者である。
でだ、かなり長めの解説を書いているのが二階堂黎人。ともかく、カーこそは、読者こそ少ないものの、クリスティ、クイーンを凌ぐ作家であると言うのである。で、好き嫌いはあるだろうけれど、戦後日本の推理小説を戦前の探偵小説レベルに引きとどめたというのが、大乱歩を始めとした古きよき時代の大御所たちのカー賛歌だったのではないか、と私は二階堂の文章を読みながら思うのだ。
うん、ちょっと回りくどいかな、要するに面白くないのだ。勿論、この『パンチとジュディ』が、である。そして、私が読んだと記憶するカーの作品全てが。都筑道夫がいうモダン・デテクティヴ・ストーリーになっていないと再認識する。無論、黄金時代の作品だから、いたし方がないとはいえる。それにしてもカーが面白いと思っているだろうドタバタが、ただただ混乱だけであって、読者の笑いを呼びもしないというのは、小説家としての資質の問題だろう。
話の流れは分かるのである。おう、そうひっくり返すか、やるなあ、とは思う。しかし、ヘタだなあ、もっと上手い読ませ方があるだろうに、と思ってしまうのである。だから、再び二階堂の言葉にケチをつけたくなるのだ。クイーンの傑作は『Xの悲劇』『Yの悲劇』で、ヴァン・ダインなら『グリーン家殺人事件』『僧正殺人事件』、クリスティーは『そして誰もいなくなった』『予告殺人』と傑作が分かるのに、カーはどの作品もレベルは高いものの突出した作品がない、というそれに。
違うのである。まず、クイーンとクリスティは作家が読者に仕掛けるトリックを多用する、それが小説を古びさせないのである。犯人が警察にむけて仕掛けるトリック、という日本の古い探偵小説のスタイルに似たカーは、むしろ今では読む人も少なくなったヴァン・ダインのほうに似ているのである。まして、作品の平均点が高いのはクイーン、クリスティであって、カーもヴァン・ダインも落差が激しく、傑作数が少ないから読まれないのである。
故の無い褒め言葉は、却ってカーの作品の面白さを誤解させてしまう。我が家でカーの作品が読まれないままに埋もれているのには、理由がある。むしろ、マニアと割り切った解説が読みたかった。ちなみにクイーンの傑作は『ギリシア棺の謎』『エジプト十字架の謎』、二階堂がいう二作はロス名義の作品である。
紙の本
事件不在のメタミステリ
2004/08/18 18:04
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投稿者:死せる詩人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヘンリー・メリヴェール卿が活躍するシリーズ。今回は視点人物の近くにH・M卿がいる事は少ないので、どちらかと言えば「暗躍」かもしれません。
本書には殺人のトリックとは別に、大きな仕掛が用いられています。その仕掛がこの作品をとても際立たせているのではないでしょうか。読めば直ぐに気が付くのですが、この物語では最後の最後まで、発生している事件をちゃんと認識する事ができません。読者は状況を整理できないまま、物語はどんどん先に進んでいきます。
言わば、事件が不在のミステリなのです。
読者の目から事件そのものを隠してしまうカーのレトリックは驚嘆するべきものがあります。ある種のメタミステリと捉える事もできます。叙述の形態でミスディレクションを行ない読者を騙すトリックの事を叙述トリックと言いますが、騙すどころか事件を認識させないこの作品はディレクションレスなミス
テリなのです。
普通に考えれば、ディレクションレスなミステリでは「小説」は成り立たない筈です(不条理な散文詩のようになってしまうでしょう)。しかしながら、読み終えてみればちゃんと「ミステリ小説」が完成しているのです。それはH・M卿という軸がコッソリ物語を支えているからなのでしょう。
もう少し殺人トリックが不可解なものだったら、傑作と言われておかしくない作品です。カーは「密室の帝王」とか「不可能犯罪の巨匠」と呼ばれトリックの技巧が優れた作家だという評価が一般的ですが、こういったメタミステリ的な視点を、同時代の作家に先駆けて一早く作品に取り込んだ作家なのではないでしょうか。そのメタな視点は『読者よ欺かるるなかれ』や傑作と名高い『火刑法廷』にも表われています。
紙の本
ヒチコック風ドタバタサスペンス
2004/07/16 14:59
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たむ - この投稿者のレビュー一覧を見る
駄作・バカ作との評判ゆえ、いったいどんな珍作なのかと怖いもの見たさに期待していたのだけれど、なかなかどうして巻き込まれ型サスペンス(・コメディ)の佳作ではありませんか。
H・Mからの謎めいた呼び出しを受けたケンは、なぜか犯人に間違われると、何が起こっているのか読者にもわからぬままに、あれよあれよと盗難事件や殺人事件に巻き込まれ、婚約者をも巻き込んだ逃亡劇・探偵劇の果てに、おしゃれなラスト。
そのままヒッチコックの映画にもなりそうな展開・恋愛・ラストシーンです。〈カー〉という作家性を期待すると、なんだこりゃ、と腰砕けかもしれませんが、話自体はけっこう面白いものでした。