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紙の本
料理の才能を持たぬもの、ただ羨望すべし
2004/05/30 22:12
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投稿者:じゃあな - この投稿者のレビュー一覧を見る
漫画を読んで憧れた、あの料理が自分の家で食べられる! 夢の様なレシピブックの発売である。
口にした瞬間人々が「うもももも!」「な、なんと!」「ダイナマイトー!」と叫ぶほどのあの料理たち。
「ぐりとぐら」のカステラの様に、「エルマーと竜」のみかんの様に、物語の中に出てくる食べ物というのは、想像力という調味料も加わって、なんと魅力的で美味しそうなのだろう。
この本の通りに作れば、あの夢の味が家庭で再現出来るのか! わくわくとページをめくってみると…あれれ? 分量が書いてない。
これは原作者・雁屋哲の意向により、それぞれの家庭の味を取り込んで欲しいからあえて材料や調味料の細かい分量は決めていないのだという。
ちょっと待ってよ。それじゃ、結局うちの嫁さんの味付けになっちゃうんじゃないの。自分で作ろうにも、これじゃ全然わかんないしーと、これを機にキッチンデビューを果たそうかと意欲に燃えていたパパの情熱はクールダウン必至である。
巻頭で紹介されている「鯛の南蛮仕立て」は姑にいびられ続けてきた老舗呉服屋の女将が、お客様を鯛料理でもてなし、女主人としての力量を問われる…という勝負どころで使われた料理だが、はっきり言って漫画の方がよっぽど細かく調理法を説明している。この本のレシピだけで作れるのは、魚料理の心得もある、かなりのベテラン主婦か料理人であろう。キッチンデビューのパパはもちろんムリ。フリルのエプロンが似合う自慢の嫁ちゃんにもぜったい、ムリ。
原作を読んでいない実家のおかあちゃんにこのレシピだけでこの料理を作らせた味では、老舗呉服屋の嫁姑問題は決して解決しない。たぶん今ごろあの夫婦は離婚。おばあちゃんは死ぬまであの店に君臨するに違いない。人間の運命を変えるほどの味。これだけの情報量でそれが作れる料理の腕があるのなら、レシピなんてなくったって人生が美味しんぼである。本著は、元々料理が作れる人の為の料理本。そうでない人にとっては、漫画に出てきた料理がカラー写真で拝める「美味しんぼ写真集」である。
それはそれで、結構楽しいんだけどね…。天才料理人・岡星創作の「イタリア風ドーナッツ」。漫画で読んでも美味しそうだったけど、こうして見てもやっぱり美味しそう。思っていたよりパンっぽい外見の「白いかりんとう」。"究極の豆腐"がなかったらこの味は出ないんじゃなかったの? の「うずら肉と海老の一口豆腐」。「まずサバを三枚におろし」などと「最初に空を飛べ」と言われているのと同じような説明で始まる「しめ鯖のサンドイッチ」は永遠の夢のままになりそうだから、せめてその外見だけでも眼に焼き付けておくとしよう。
ファンなればこそ食べたくて、でもファンなればこそ中途半端な料理で夢見た味を汚したくないジレンマに苦しむ一冊。おチヨさんのご主人、中川さんのファーストネームが「得夫」だという事を知った事が本著の最大の収穫か。