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商品説明
新太が探偵伯爵と出会った夏、親友がトランプの謎と共に次々と行方不明に。彼等は新太とともに秘密基地を作った仲間だった。そしてついに新太に忍び寄る犯人の影!【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
森 博嗣
- 略歴
- 〈森博嗣〉1957年愛知県生まれ。現在、某国立大学環境学研究科・都市環境学専攻助教授。第1回メフィスト賞受賞作「すべてがFになる」で作家デビュー。著書に「そして二人だけになった」など。
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紙の本
美しい装幀・イラスト。考える道筋を示唆する会話。唸るほどに素晴らしい出来映え!
2005/07/24 02:01
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:月乃春水 - この投稿者のレビュー一覧を見る
偶然手に取ったこの本。装幀とイラストの素晴らしさに驚いてしまいました。
ケースは丸く穴が開き、表紙のイラストの一部が見えています。
カバーの後ろ側には、文庫本の裏表紙のように内容紹介があり、はじまりの文章が大きな文字で書かれている。なんて効果的なデザイン!
さらに布製の背表紙を手に取り引き出すと、カラーのイラスト。なんて美しい…!
見返しは幾何学模様、本文は手帖のように角が切り取られてまるくなっている。
ずいぶん昔にこんな感じの本があったのではないかと思う、そんなノスタルジックな雰囲気が今の時代にはかえって斬新。なんとも魅力的な出来映えになっています。
本のつくりだけで、これだけワクワクさせるなんて。
すごいぞ、ミステリーランド!
ミステリーとしてのストーリーもおもしろいのですが、それよりも特筆すべきはちょっと奇妙な探偵伯爵と新太少年のやりとりでしょう。とてもいい味出しています。
探偵伯爵は、新太を決して子ども扱いしていません。どんな質問にも真摯に答えています。それは考える道筋を示唆することになり、新太にも読者にもすこぶる有益なのです。
読んでいて何回も「なるほど〜ふむふむ…そうだ、その通り!」と唸ったり頷いたりしました。
例えばこんな感じ。
「僕も、大きくなったら、探偵になりたいんだけど。」
「私に言っても無駄だ。努力するのは君だ。」
「うん。どんな努力をすればなれる?」
「なりたかったら、なれる。君は何にでもなれる。」
「そうかなぁ。ねえ、探偵にとって、一番大切なことって何?」
「一番なんてものはない。どんなものでも大切だし、時と場合によって、大事なものは違う。決めつけないことだよ。」
「でもさ、行き詰ったりすることがあるでしょう?」
「行き詰ってばかりだ。」
「そういうときは、どうしたら良い?」
「うーん、そうだな。それもそのときどきで違うが、できることを試してみることか。そうだね、ちょっと頭を冷やして、後ろへ下がって、できるだけ高いところから、全体を見る。自分の立場、周囲の状況、とにかく、全部が見渡せる、高い場所から眺めてみることだ。」(P246-247より)
こんな示唆に富んだことばを少年少女時代に読める人はしあわせだ、としみじみ思います。
大人になった今、読めることも大いにありがたいのですが、この素晴らしい本のつくり、デザインもあわせて、若いうちに読み、触れ、それが血となり肉となり、成長していく。
そんな少年少女に嫉妬すらおぼえてしまいます。
我が家の子どもたちにも、いずれ大いに手にとってもらいましょう。
その日までわたしが読み返しつつ、大切に本棚に仕舞っておきます。
【月乃春水 ツキノ・ハルミ 本のことあれこれ】
紙の本
凝っても分かり易い、『詩的私的』は伊達じゃない。
2004/06/05 23:56
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:3307 - この投稿者のレビュー一覧を見る
まじめなのかふざけているのか、それとも真剣にふざけているのか。
飄々とした伯爵、淡々とした「僕」。
二人の関係、この空気は、とてもとても魅力的です。
ミステリーランドが好きです。
その中でも、第4回配本までの12冊なら、森博嗣さんの『探偵伯爵と僕』が好き。
会話・テーマ・設定に惹かれて読み進み、最後の「しかけ」で世界をひっくり返されて、思わずそのまま二周目も読んでしまいました。『探偵伯爵と僕』は、ミステリとしても、児童文学としても、そして森博嗣さんの「私的詩的」な魅力のエッセンスとしても成功しています。
本書を手にとって、ぱっと目に付く魅力を一つあげるなら、伯爵と「僕」の会話になるでしょう。
●引用:P71
■□□「お金ももらったよ。伯爵に会ったら、電話をかけてくれって。」
■□□「何? いくらだ?」
■□□「五百円。」
■□□「小癪な……。」伯爵は舌打ちする。「それで、君は、買収されたのか?」
■□□「売春?」
■□□「違う、買収だ。お金のために自分の主義主張を曲げることだ。」
■□□「よく意味がわからないよ。」
二人の会話はたいてい二重の意味が生じるように書かれています。だからもし、全編を読み終えて、エピローグの高みから振り返ったなら、「あのときの伯爵のズレは、こういう理由だったのか」と、きっと感じることでしょう。
そんな、「今にして思えば」感が、読者の郷愁アンテナを、やわやわとくすぐります。
さて、肝心の物語ですが、夏休みを通して命がけの冒険を体験した「僕」は、伯爵と何度も対話を重ねたことで、ついにこんな考えを抱くようになりました。
●引用:P334
■□□ 一番大事なことは、きっと、自分の命を守るということで、その次に
■□□大事なことは、できるだけ沢山の人の命を大事にすることだと思う。
■□□ 人が人を殺すことは、悪いことというよりは、嫌なことだ。
■□□ 悪いことだからしないのではなくて、嫌なことだからしたくないのだ。
■□□「僕」には、そういうふうに思える。
虫なら殺せる。でも、犬や猫は殺したくない。でも、牛や豚は殺して食べている。
僕らが抱えたこんな矛盾と「僕」が直面した時、傍らに立つ伯爵は「毛とあたたかさ」ってヒントを与えました。
毛の感触と、動物の持つ体温を例に、その動物を抱きしめたなら(抱きしめるような関係になったなら)、もう殺せなくなると示唆しました。
殺された側にとっては、「嫌なことだから殺さない」「嫌じゃないから殺してみた」なんてスタンスはたまったものではないですが、でも、暴力に関する問題を根本から解決するには、一人でも多くの「嫌だなって感じられる子」を増やすのが最も効率的に思えます。
抑止力でも、再発防止策でもなく、素朴に「命の抱きしめ方」を獲得させること。——でも、そもそも僕らはこんなこと、どの場面で学んできたのでしょう……。
・殺すこと、殺されること。
・許すこと、許されること。
・すぐに解決できない問題との向き合い方。
——こんな要素を、「今日は久しぶりに好きなミステリを読んで、どきどきしよう」「児童文学? そんなの大人になってからも楽しめるの?」なんてスタンスで気軽に手に取れる形にまで落とし込んだのは、"森博嗣マジック"です。
森博嗣作品だから、本書ももちろん凝っています。でも、分かり易い。相反する要素がきちんと両立しているのは、「子どもにも、手間さえかければ、分かるように伝えられる」と、森博嗣さんが熟知しているからこそ。
説教せずに、物語の幾つもの層を介して、一気に多くのことを伝えてしまう。こんな作品なら、ミステリはもちろん、児童文学でも森博嗣作品を読む楽しみが増えました。本書は私にとって、熱烈におかわり希望な一冊です。
紙の本
こどもに読んでもらいたいもの感じて欲しいことこどもの定義って?
2004/07/22 01:51
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:海の王子さま - この投稿者のレビュー一覧を見る
炎天下の公園で暑苦しい不思議な身なりをした 探偵伯爵 に出会った 僕 と、僕 の周りから消えていく 友達。こどもの夏休みの宿題“風”に書かれた小説で、ぎゃふん。再三のことではありますが、またもや「さすが」と言わずにはいられない作品です。森ファンも、そうでない人も、ぜひぜひ!
それにしても、森博嗣。作品の中でこれまでに何人も殺している身ながら、「人が人を殺すことは悪いことか?」にとても拘っていらっしゃる気がする。のは、気のせい? 今回も、その話は出てきます。虫は殺すのに、犬や猫は殺さないの? どうしてだろう? どうして、人を殺しちゃいけないの?
最後の方に出てくる「一番大事なことは」と「その次に大事なことは」という部分、とてもダイジな2つだと僕も思います。特に、その順序がポイントだよね。
山田章博による鉛筆画のようなイラストもステキです。けれども、個人的には 探偵伯爵 の姿を克明に描くのは、読者から不思議キャラ(=探偵伯爵)を想像する機会を奪うので。ご遠慮願いたかった…。ちょい残念でした(単に、僕のイメージとはイラストの探偵伯爵が違っていたというダケです、ハイ) 。
紙の本
やっぱり山田章博の絵は抜群。この本には宝物のような挿絵が9枚もついている。いつか抽選で原画をプレゼントしてくれたらなあ、そんな素敵な本。お話も、大人だって楽しめる
2004/12/27 20:35
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
いやあ、上手い絵だよな、これじゃあ児童書っていうよりは完全にヤングアダルトだよな、と思って奥付を見たら、さすがというかやっぱり、あの山田章博だった。知らない人がいるといけないから、分かりやすく言うと小野不由美『十二国記』のホワイトハート版のカバー画とイラスト、或いは宮部みゆき『ドリーム・バスター』のそれを描いている人とである。装幀は勿論、祖父江慎+阿部聡(cozfish)。
ぼくの名前は馬場新太、小学生。公園のところでぼくに声を掛けてきた50歳くらいのおじさんが、自分をアール、伯爵という探偵で、そこでついさっきまで言い争っていたのが、あとで秘書だとわかったチャフラフスカさん。彼女はぼくに、伯爵を見かけたら、電話で報せて欲しいと携帯電話までくれたりする。そんなぼくと彼女の行動を見ていて、注意してくれたのが友だちのハリィこと原田隆昌くんだった。
でだ、これは誘拐事件を解決しようとする探偵と、その探偵を探しているらしい秘書と、そして探偵に声を掛けられたぼくの話である。季節は夏、出会ったばかりのぼくと探偵伯爵は、突然、密室談義なども交わしてしまうくらい、一気に打ち解けてしまうのだけれど、そんなぼくのことを気に掛けてくれるのは、やっぱりお母さんだった。
これは、お話の方もだけれど、山田章博のイラストをワクワクしながら楽しむ本だろう。なんと表と裏のカラーイラスト以外に、9枚もの挿絵を見ることができるのだ。これを幸せと言わずして何とする、ナムー、である。話にも大きな仕掛けがあって、スマートだし、不気味さだってかなりのもの。
ただ、ぼくが親を騙してまで探偵と一緒になって犯人探しをする件を読みながら、こういう子供の暴走振りは、一歩道を間違えれば、すぐ殺人にまで行き着いてしまう、そういう子供の、無邪気さと言うよりは、不気味さを感じさせるというのは、森の意図ではないのだろうけれど、現実はそうなんだよな、などとひとり納得してしまう。
ともかく、大技という点では、シリーズ中、トップにランクされるだろうし、絵の上手さという点でも、トップだろう。ただし、内容ともに小学生向けというよりは、大人が楽しむ、或いは恐怖する本ではないのか、そんなことを思ってしまった。ただ、それを除けば、森博嗣作品には珍しく、天才肌でエキセントリックな人間が登場せず、基本的には万人向けの内容にはなっている。
紙の本
僕と探偵伯爵
2004/05/04 13:23
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:祐樹一依 - この投稿者のレビュー一覧を見る
あの森博嗣が探偵小説を書く?
「少年少女のための」という頭文字が付いたミステリーランドのレーベルでだから、講談社ノベルスみたく好き勝手は出来ないだろうと、ある意味高を括って読んだところ(笑)、見事にしてやられた感じです。森節炸裂。どこがどのように、とはネタバレになりそうなので言えないけれど、本作は主人公の書いた日記、という媒体による一人称視点で進んでいくので、とっつきやすく読みやすいですね、やはり。
如何にも突飛な発想にも思えるその呼び名、「探偵伯爵」という人物(このネーミング、確かに僕は初めて)にも、その存在の必然性があるところが巧い。勿論、その明かし方にはひとひねりあるんですけど。
そして物語が終わりを迎えても、最後の最後まで気を抜いてはいけません。これもまた森氏らしい話の収め方。読了後にまた一読したくなること請け合い。言わずもがな、この本は「少年少女のための」ミステリなのですね。
(初出:CANARYCAGE)