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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:2004.6
  • 出版社: 筑摩書房
  • レーベル: ちくま文庫
  • サイズ:15cm/376p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-480-03963-5

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文庫

紙の本

沈黙博物館 (ちくま文庫)

著者 小川 洋子 (著)

沈黙博物館 (ちくま文庫)

税込 858 7pt

沈黙博物館

税込 660 6pt

沈黙博物館

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みんなのレビュー56件

みんなの評価4.1

評価内訳

紙の本

沈黙と、暴力

2004/10/10 05:30

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:すなねずみ - この投稿者のレビュー一覧を見る

小川洋子さんは佐野元春の歌を元にして『アンジェリーナ』という短篇集を書いている。佐野元春の詩には、アレン・ギンズバーグやらゲイリー・スナイダーやら、アメリカの50〜60年代を彩ったビートニクたちの影響がときに痛々しいほど率直なかたちで現われている。『沈黙博物館』にも、ビートニクたちの声がどこか遠くのほうでかすかに響いている。

「わたしたちは盲目で、盲目のまま最後まで盲目的な生活を送っている。詩人たちというものは呪われているが盲目ではない。彼らは天使の目をもってものを眺めている」
(ウィリアム・カーロス・ウィリアムズが、ギンズバーグの『吠える(Howl)』に寄せた序文より)

「沈黙博物館」はこの世を去った人たちの形見を集めた博物館で、ある博物館専門技師(僕)がある村にやってきて、かなり偏屈な(とてもチャーミングな)老婆の依頼で「沈黙博物館」をつくり、「沈黙博物館」をずっと守っていくことになる。

>

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(村上春樹)とか『愛のゆくえ』(ブローティガン)を思い出す。たぶん沈黙と、暴力について考えさせられる小説だという意味で。

>(『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』)

>

『沈黙博物館』を読んで何週間かが過ぎて、素朴な疑問を心に浮かべながら世界を眺めてみる。人はなぜあれほどに「自分は正しい、きみは間違っている」という空気をあたりに吐き散らして、ちらとも恥じることすらないふりをしていられるのだろう。少なくともそれは、美しくない。べつに美しくある必要なんてない、そう言われればそれまでだけれど。

Poets are damned but they are not blind,
they see with the eyes of the angels.

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紙の本

死の回収

2004/09/17 13:16

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:sanatorium - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「沈黙博物館」とは面白い発想だ。ある豪邸に住む老女が死者の形見を収集し、それを展示する博物館を作ろうというのである。そのために「技師」が村へ招かれる。形見に物語を添え、死者が生きた証とし、それを博物館に収蔵するというのが「技師」の仕事だ。登場人物には他には、少女、少年、庭師、刑事、家政婦などがいるが、皆名前をもっていない。この小説においては、生者には名前がないのだ。死んで形見を回収され物語を付与された時に初めて名前が与えられる。
 「博物館」と別の世界がこの小説には二つある。「沈黙の伝道師」と「技師の兄」の世界だ。「技師」は事あるごとに兄に手紙を書くが、その際話題にされるのが甥の誕生であり、つまり「博物館」を死を待つ世界だとすると「兄」の世界は「生み出す」世界である。しかし、結局「兄」の世界と博物館のある村とは交通がないことが判明する。意図的に遮断されているのかもしれないが。「沈黙の伝道師」とは徐々に言葉を話すことをやめ、最後には何も話さず生きていく修道士のような人達のことだ。口では何も語らぬが故に、市井の人とは違い彼らが死んだ時に彼らについて彼らが何者であったかということを語るのは困難を極める。彼が「沈黙の伝道師」であると書けばよいというのではなく、独自の物語を付与しなければならないからだ。
 付与、とここで書いたが、「物語」は実はフィクションなのだ。形見収集者が感じたことが物語られるのである。形見についても同様だ。死んだ者にとってそれが重要であると判断するのは形見収集者であって、死者の意見は無視される。人の知らぬところで、その死者が別の物に非常な愛着を寄せていたとしても、誰が気づくことが出来ようか。また、その人が死んだという確証が必要になる。例えば冬山で遭難してその人が<死んだ>としても、その人は他人に認知されない限り<死んで>はいない、ということを付け加えておこう。
 死者に意味を与えるのは中世ヨーロッパでは神の役目であり、近代になり国民国家が誕生するようになるとナショナリズムが宗教に代わり、人に死に理由を与える。お前はネイションのために死んだのだと。「博物館」では、「老女」個人が聖書とも言える「暦」をつくり、他人の死を回収している。人の死には意味があり、犬死させまいとする意思のようにも見えるが、<死者>を生産するために「庭師」が殺人を犯しているということが暗示される。死者のための「博物館」が本末転倒して、「博物館」のための死者の生産となる。人はいつか死ぬのだが、死者の上にしか成り立たないシステムというものがあることを示しているようにも見える。
 「老女」が死に、「技師」がその役を引き継ぐところでこの小説は終わる。
 小川洋子の軽妙な語り口の裏にこんな構造を読んでしまうのは野暮かもしれないな。

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紙の本

沈黙博物館

2004/09/12 16:09

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:神田めろん - この投稿者のレビュー一覧を見る

 形見を展示する博物館の「技師」の物語。

 博物館の仕事に誇りをもっている主人公に好感がもて、個性爆発の老婆も、ちょっと可愛い。小さな村では穏やかに時間が過ぎているように見えたのだが、殺人事件や爆発事件が起き、「技師」は「死」と向き合わざるを得なくなる。形見を収集するために、葬式や住んでいたアパートを訪れる「技師」は「生」を感じながら、「死」を知っていく。
 やがて「技師」が住んでいるのが「生」の世界なのか、「死」の世界なのかわからなくなるほど、「この世」と「あの世」の境界がぼんやりしてくる。

 柔らかな「小川ワールド」に、いつのまにか引っ張り込まれていた。とても重いテーマだが、読んでいて苦しくならないのは、著者のふんわりした文章と、個性的な登場人物のせいかもしれない。優しく、作品の世界に導かれている感じが心地良かった。
 
 本を読み終わった後には、自分が生きた「証」を「技師」が収集しに来てくれることを願っていた。

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電子書籍

ちょっと不気味

2017/06/11 01:22

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:プロビデンス - この投稿者のレビュー一覧を見る

この著者の作品には、いつも老人がでてくるような気がしますが、たまたまかな。この博物館の老婆が不気味に力強くてインパクトがあった。

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紙の本

静かに穏やかに満ちていくそれは

2004/12/10 00:17

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る

 コレクション癖というのは誰にもあるものだろうか。僕の場合バルタン星人のフィギュアがご自慢である。これは多くの場合、ウルトラマンのセットを購入してウルトラマンの部分だけを捨てる、あるいはがらくた箱に放り込むというある種狂気に近い過程を経て収集される。どんなコレクションでもその道に入れば、同様の非日常の時間を含みながら成長するのではないだろうか。人間をそんな狂気に引き込んでいくのは、死への恐怖、肉体が滅んでいくことを少しでも物の形にして残そうという欲求なのか、古代の王が生前から自分の墓への埋葬物を用意したように。どんな固体物も永遠にその形を留めることなどないとわかっているのに、なぜ物事の移り変わり、生成消滅をそのまま受け流していられないのだろう。
 博物学、あるいは博物館という存在、その建設や嬉々として鑑賞する気持ちはその最も完成された、そして公認された狂気だろう。陳列を見て勉強になるとか感動するという以上に、歴史を経て存在し続ける何かしら確固たるものがたしかにそこに在ることに安心感を得るのではないか。
 博物館技師というこの主人公も、幼い頃からその魅力に取り憑かれた男だった。ただそれが狂気であると自覚しているところで特異だったかもしれない。明白に死を記録するという意図を持つという、象徴的な意味をまんま体現したような博物館には、人が気をそらすことのできない最強の吸引力があり、蟻地獄に落ちたように逃れられない。人々の中で狂気は月が満ちていくように膨らみ続け、時が移り代が替わっても存在し続ける。たとえその先にカタストロフィーが訪れるとしても、その時こそ解放されることを夢見るのだろうか。
 とまあそんなお話なのです、って全然わかりませんか、そうですか、ごめんなさい。でもそんな村がこの世のどこかにあるんですよ、きっと。「バベルの図書館」ほどには偏執的でない、ほんの牧歌的な暮らしにもそれはじっと潜んでいるんです。

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2004/12/14 22:59

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2005/12/07 13:36

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2005/11/14 09:05

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2006/01/22 08:15

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2008/02/06 20:06

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2011/01/26 15:10

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2008/01/05 17:19

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