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紙の本
2ときゅうりと帽子と。
2005/10/16 00:40
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:豆丸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ホテルカクタス・・・アパートなのにホテルという。
其処には数字の2ときゅうりと帽子が住んでいます。
一階に住む2は几帳面で怒りっぽい。
二階に住むきゅうりは運動好きで奔放。
三階に住む帽子は無頓着で無常感漂っています。
それだけでも奇妙なのに本書はその不思議な人(?)達が
とても普通に生活しているのがもっと不思議です。
きゅうりは金鎖をつけてジョギングしますし、
2はグレープフルーツジュースを愛飲してますし、
帽子はウィスキーが好きなんです。
普通に生活しているだけなのに面白い。
アンバランスなのに調和がとれている。
さすが江國さんはうまいと思わずにはいられない。
読了後。三人(?)の印象がとても平等に残っている。
誰かが主人公なのでなく三人(?)の物語だからだろう。
もう一つすばらしいのは、イラストです。
本書は文庫版でも素敵なイラストがたっぷりといれています。
殆どが階段の絵なのにどれも印象が違っていて、
一見無関係な絵に思えても、小説ととてもマッチしています。
数ページめくるごとに描かれた佐々木敦子さんのイラスト。
とても良いです。惚れ込みます。
こんなに良い本に巡り会えて幸せになりました。
紙の本
君は本当はきゅうりなんだろ?
2010/09/13 08:37
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
アパートなのに、「ホテル カクタス」。登場するのは、「帽子」に、「きゅうり」に、数字の「2」。しかも、作者は江國香織とくれば、興味がわく。
興味がわく、というのは、一体どんな物語が「ホテル カクタス」という書名のついた本のなかで展開されているのだろうという、誘惑めいたものだ。
本がおいで、おいでと誘っている。
そのアパートは、「ある街の東のはずれ」にある。
たぶん地図では探せない「ある街」だ。しかし、読者はカメラのズームがすうと寄っていくように、その「ある街」にたどりつく。そこで、「灰色の、石造りの」アパートの前にいることに気づく。
読書の、気持ちいい導入部である。もう、いま住んでいるところには引き返せない。
そして、耳をすませば、「帽子」と「きゅうり」と、数字の「2」の気の合った友達たちの楽しそうな声が聞こえる。
そう、彼らは「もの」であると同時に「声」ももっている。「もの」が話しをするかなんて思わないこと。だって、ここは「ホテル カクタス」なのだから。
彼らは「もの」なのだが、そっくりの人を誰もが知っているのではないだろうか。
数字の「2」は優柔不断で神経質で、他人がアルコールを飲んでいても片意地になってグレープフルーツジュースなんか飲んでいるような人。ほら、思い出した。「帽子」だって「きゅうり」だって、そう。私たちのそばに彼らはいる。ただ、人間の姿をしているから気がつかないだけだ。
不思議なありえない世界なのだが、童話ともちがう、どこにでもありそうな日常に思えてくるのは、江國香織の巧さだろう。
どこにでもありそうな?
江國香織はそんなどこにでもありそうな日常を描きながら、非日常を描いてきたようにも思える。この「ホテル カクタス」はその反対。非日常を描きながら、どこにでもありそうな日常が潜んでいるのだ。
そういう世界もおわりがきてしまうことは、読書の常。
地図では探せない「ある街」から帰らなければならない。私たちはそこに留まることはできないのだ。人間だから。
でも、もしかしたら、「ホテル カクタス」が懐かしくなって、思わず隣の人に「君は本当はきゅうりなんだろ?」と問いかけたりするかもしれないが。
◆この書評のこぼれ話は「本のブログ ほん☆たす」でお読みいただけます。
紙の本
ホテルカクタス
2005/01/09 15:41
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:せぱっこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
サクサク読めます。帽子・きゅうり・数字の2の3人(?)の何気ない日常が、一つ一つの出来事ごとに小区切りにされているのでスルっと江国ワールドに入ることができる作品だと思いました。
非現実的な主人公の超現実的な日常、江国さんといえば恋愛小説と思っていた自分にはまだまだこの人の作品のすばらしさ・奥深さに気付いていないんだなと少し恥ずかしく、でもそれ以上にわくわくしました。
小説の合間に描かれている絵もすごくいいんです。人物などはひとつもうつってなくて、静かなのに暖かい、そんな絵がいっぱい詰まってます。