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商品説明
朝鮮戦争最中の1952年、2つの事件が起きた。労働者や在日朝鮮人が反戦デモを敢行した吹田事件と、旧陸軍工廠での兵器製造阻止のためダイナマイトが爆発した枚方事件−。その動機や時代背景を探り、歴史の闇に光をあてる。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
西村 秀樹
- 略歴
- 〈西村秀樹〉1951年名古屋市生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業。毎日放送に入社し、報道局社会部、経済部で放送記者を務める。著書に「北朝鮮抑留−第十八富士山丸事件の真相」がある。
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紙の本
埋もれた歴史を発見、人間ドラマに圧倒される
2004/07/18 14:28
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:狸汁 - この投稿者のレビュー一覧を見る
大阪・十三に「一平」という、在日の老夫婦が営んでいる焼き鳥屋さんがある。焼き鳥だけではなく、韓国(朝鮮?)家庭料理も出している。個人的な経験で恐縮だが、焼き鳥が本当においしくて、大阪に住んでいたころ、時々行っていた。このマスターの夫徳秀さんが、こんな激烈な過去を持っているとは知らなかった。
本当に凄い本だ。ジャーナリスト魂にあふれた素晴らしい仕事と賞賛したい。
1952年に朝鮮戦争への反対闘争として二つの事件があった。ひとつは、労働者・学生・在日朝鮮人が、吹田で大規模なデモ行進をした吹田事件。もうひとつは、枚方の旧陸軍工廠でダイナマイトが爆発したのが枚方事件である。吹田事件では大量に逮捕されて、十年以上の裁判闘争の末に騒擾罪では無罪になるのだが、事件の真相については当事者たちがあまり語らず、いわば闇の中にあった。
著者は毎日放送の記者で、在阪のマスコミ関係者たちと吹田事件研究会というものをつくり、勉強会や証言者探しを共同で行う。夫徳秀さんは吹田事件のリーダーの一人なのだが、最初は事件のことを語ろうとしはしない。しかし、研究会の熱意にうながされ、重い口を開いていく。
事件が当時武力闘争路線をとっていた共産党の指導で動き、その後路線変更した共産党が事件の被告を見捨てていくことなどが明らかになっていく。共産党の学生リーダーがイムジン河のプロデューサーだったり、詩人金時鐘もデモに参加し、研究会をきっかけに済州島の四・三虐殺の証言をしはじめるなど、衝撃的な事実もある。
歴史的発掘のみならず、事件の後の人間ドラマも、胸を打つ。吹田事件の被告のなかで、ひとり「転向」(といっても仲間は売っていない)した活動家がいた。本人は釜ケ崎の労働者となり、実家の寺に預けられた息子は、吹田事件の関係者の家族として、左翼への風当たりがきつい大阪・泉州で「決して目立たない」ことを子供から選ぶという痛々しい人生を送り、世界放浪の後にようやく仏教的な精神の安寧を得るなど、歴史がさまざまな人の生き方を変えていったさまが、じつに丁寧で情熱のある取材で明らかになっていく。
日本人そして在日の若者たちが、歴史とたたかい、そして運命に翻弄されていった青春の重みに圧倒される。