紙の本
掏摸と占い師
2020/08/20 13:48
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
昔、「デパ地下のお辰」のような名前の老女掏摸のニュースを見た記憶があります。掏摸のマッキーと警部のやり取りを読んで思い出しました。オレオレ詐欺のように人間味がない犯罪ではないかもしれないなどと、ついマッキーに感情移入してしまいましたが、やはり掏摸には気を付けなければと思います。占い師の博打好きにもつい共感。面白かったです。
紙の本
スリと占い師
2018/01/17 22:22
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投稿者:melon - この投稿者のレビュー一覧を見る
スリをワークと呼称し、仕事のようにしている主人公マッキーこと辻。そんな辻が出所したところから物語りは始まる。あろうことか傍にいながら育ての母がスリ被害にあったのだ。犯人を追いかけて追い詰めるも暴力により取り逃がす辻。そこに占い師昼間がやってきて助けられ、それから奇妙な同居の生活が始まる。
本作の主人公はスリをしていて冷静に考えれば悪人である。しかし辻のキャラクターからなのか、筆者の力量からなのか、読者は辻に魅力を感じてしまうだろう。少なくともハルやヤスといった危険人物の敵となった辻が彼らほどには悪くないからという理由だけではあるまい。一方で辻や西方はやっぱり悪人なのだと感じるのが、彼ら犯罪者をスリだということで仲間意識を勝手に抱き、彼らの情報を警察に言わずに、どこか温かい目線でみていることだ。そしてどんな状況でもスリをやってお金を手に入れることを正当なことだと思っているようになっている。実はハルやヤスよりも本当は辻が最大の悪人なのではないかと、客観的に冷静に考えるとそう思えるのだ。
紙の本
占い師とスリの物語
2008/11/05 13:03
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投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
神様がくれた指 佐藤多佳子 新潮文庫
読み始めからしばらくは、なめらかに流れる文章です。美しい記述です。そして巧妙な展開です。作者の素質でしょう。努力の結晶でもあります。感心します。言葉づかいがいい。理屈でモノを考えてはいけない。感覚で運ぶという手法です。いったいどうやったらこういう機知に富んだすばらしいセリフが頭に浮かんでくるのでしょう。
しかし、100ページを過ぎて興味が落ちていきます。スリの話です。わたしは賭博(とばく)とか占いとかに疎(うと)い。作者はトランプ占いを詳細に説明してくれますが、目の前にカードの一覧が浮かんできません。説明形式文章の開始に伴って、前半の清流のような文章運びが影を潜めてしまいました。現実離れした舞台設定でもあります。身近な世界ではないので、読んでいても感情移入がむつかしいです。
294ページにある占い師マルチェラの言葉は的を射ています。相手の悩みを受け取って捨ててあげることが彼の役割です。300ページを過ぎて核心が迫ってきました。竹内少年の正体が判明しつつある。文章にも凄み(すごみ)が出てきました。ここまで読み継いできた苦労が報われます。
後半は別の本のようになります。全体で641ページあります。東野圭吾作品を読むようでもあります。追跡シーンは圧巻です。少女永井を見失ったマッキーは、生きる希望を見失った人のようです。太宰治著「走れメロス」が基盤にあります。「神様がくれた指」このタイトルをどう解釈すればいいのでしょう。マルチェラが糸を引っ張っていた物語でした。
紙の本
良い本です。たぶん
2005/10/03 00:47
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投稿者:豆丸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
神様がくれた指の才能はスリ。
とっても腕のいいスリと、見た目が男だか女だかわからない不思議な、占いをあまり信じてない節のある人間観察眼の優れた占い師との2人の視点で書かれた小説。
スリが出所した直後少年スリ集団に関わってしまうのだけど・・・。
社会的には「良い人間」が殆ど出てこないのに、登場人物は主人公2人を含め、憎めない人たちばかり。かたぎの人間も少ないというのに不思議なことです。
読了後、向こう側を自由に歩いてたはずの、主人公達が不意にこちら側に来てしまって、寂しいやら、安堵感やら。
ごちゃごちゃした者を持ちつつも、さっぱりとした気分になる。
そんな不思議な話です。
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この人の本は好きなので、文庫で見つけて即買い。主人公はスリなので普通に考えれば犯罪者なのに、感情移入はこの人にしてしまいがちな不思議な本。(苦笑)電車でカバンが気になってしょうがなくなりました。財布はものすっごい奧まったところに入れて、カバンから目を離さないように…。
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スリと占い師のお話。それでもなんだかカラッとした話だ。展開的にはありがちとも言えるが、それだけに安心して読める。まぁ、設定自体がいかにも物語というものだけど、人間味がよく書かれていてすんなりと物語に入り込めた。
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最高におもしろかった。
歯切れのよい文章に、スピード感、巧みな人物・内面描写。
単にエンターテイメントとしてだけでなく、グッと響いてくる言葉もそこここに。
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本屋で何となく手にとった本。だけど昔高校で借りて気に入った『しゃべれどもしゃべれども』の作者の本でした。
スリと占い師という、普通に生きててもなかなか知り合えない人たちのお話だけど、感情の流れとかすごく伝わってきて、身近な感じがしました。スリの世界も占い師の世界も覗けた感じ。
スリなんて犯罪だし、出所してすぐにまたスリを始めちゃうダメな男なのに、そんな辻のスリとしてのプライドが、とてもかっこいいです。
でも読み始めたら、電車の中が怖くなりました(笑)。チャックがあるバッグだからって、安心しちゃダメだね!
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右手が疼く。
スリの主人公である辻牧夫が”仕事”を働くシーンの楽しさ、面白さに私の右手は疼いてしまったのだ。
もちろん、スリは犯罪である。才能も練習も無くやったら、100パーセント捕まるだろう。
では天分があって、職業としての訓練を積んでいたら?
スリの視線とその心を読ませてくれるのだから、それだけでもツマラない訳が無い。
本作にはもう一人主人公が居る。マルチェラの源氏名(と言うのだろうか? そもそも何故お水の名前が源氏と関係あるのだろうか? ホストなら平氏名なのだろうか。本作とは関係の無い話だ)を持つ占い師、昼間薫。
超能力が無い占い師であることに、疑問と罪悪感を持っている若者だ。
スリと占い師、全く関係の無い二人に共通するもの。
”神様がくれた指”
片方は、しなやかな手付きで盗みを働く為に。
片方は、混ぜたタロットに意味を持たせる為に。
物語は、スリの辻が出所したシーンから始まる。
血の繋がりがない”お母ちゃん”に迎えられ、お母ちゃんの家へと帰る途中に事件が起こる。
冴えない女子高生、二組のカップル、筋肉質の男。
彼らに”スリ取られ”無かったのなら、辻と昼間が出会うことさえなかったのだ。
そしてマルチェラの”客”である一人の女子高生。
辻と昼間。
二人の行く末を占うタロットカードに出るものとは、
ご自身の目で、是非ともご覧あれ。
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マッキーこと辻牧夫は刑務所から出てきたばかりだった。
刑務所に迎えにきた「お母ちゃん」と一緒に電車に乗っていた辻は、高校生らしき少女が「お母ちゃん」の鞄から財布をスろうとするのを見てしまう。
職人気質のスリである辻は、それを見過ごすことが出来なかった。追いかける辻。しかし、シャバに戻ったばかりだったせいか、逆に相手にやり込められてしまう。しかも、大事な右手に怪我までさせられて。
何とか家に電話をかけようとしていたところで、辻は中性的な占い師・マルチェラこと昼間薫に助けられるのだった。
簡単に言うと、スリの話です。なんだけど、物凄く面白かったです!
辻の仕事ぶりとか、人柄がまたカッコイイのですよね。
もともと辻に仕事を教えたのは「おじいちゃん」という人物なんですが、彼がまた職人気質のスリで。だから、辻も同じように職人気質なスリをする。
そして、人としてとても魅力的なんですよね。
裏の世界で生きているんだけど、優しさとか人を思いやる気持ちと言うのは忘れてなくて。
昼間もまた、人としてとても魅力的でした。
自分が他人に受け入れられなかったことがあるせいか、占いのお客さんに投げかける言葉がとても優しくて。占いをしている間はどんな人でも受け入れてあげようとする。
そんな二人だからこそ、同居している間も上手くいっていたのではないかなあと思う。
ラストにかけては本当にもう、はらはらしっぱなしでした!
何だか、この本を読んでいるうちに、「スリってかっこいいなあ」と思えてきてしまえるから不思議です。実際は犯罪ですけども。
占い師も素敵だなあと思いました。マルチェラは、人の気持ちを受け入れてくれる天才だなあと思う。
古本屋で100円で手に入れたのですが、良い買物でした。
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佐藤多佳子作品は初読み。ちょっと危ない道に、踏み込んでしまった感じになった。犯罪者に魅力を感じるなんて…。個人的なことだが、聞きなれた地名や駅名が多く出るので、ちょっとワクワクした。
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「あなたに向いていると思う」と図書館の司書の先生に勧められて読んだ覚えがある。
佐藤さんの作品で一番最初に読んだ本。
展開が速くてスリルもあって、ドキドキします。主人公が擦りっていう話はいままであんまりなかったから新鮮だった。
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凄腕のスリ師と街角の占い師が偶然出合い、なりゆきでしばらく占い師の家に同居することに。はじめは性格が合わないと思っていた占い師だが、徐々にスリ師の人の良さに気付きだんだん居心地のいい関係に。
スリ師が巻き込まれる事件に、知らずしらずにいつしか占い師も関わることに・・・これは偶然なのか必然だったのか?
二人のなかなか表にはださない、心暖かな雰囲気が本を読み進めていくうちにだんだん分かり、読み終わるとなんだかスッキリした気分になりました。
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うーんと、実際にスラれたことのある人間にとっては、なんとも…。やられたほうの身になってみろ!と思っちゃうので(あ、恨みが…)、あまり同調できませんでした。すみません。
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紛うことなき犯罪者がすごい魅力的なのって危険だなーと思いながらもどんどんと好きになるすごい主人公二人(一人はノット犯罪者)佐藤さんの描く若い子の言葉遣いはどうしようもなく鼻につくから、これくらいの年齢設定だとほんとに文句なしに楽しめる。そういえばマルチェラでマルチェロ物語を思い出したのだけど全く関係ありません。