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商品説明
驚天動地、奇々怪々、前代未聞、無我夢中、陰翳礼讃、波瀾万丈…。小生と乙一の161日。著者のホームページ及び、Webマガジン『幻冬舎』連載に加筆・訂正を加えて単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
乙一
- 略歴
- 〈乙一〉1978年福岡県生まれ。「夏と花火と私の死体」でジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞し、デビュー。「GOTH」で本格ミステリ大賞を受賞。
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紙の本
このフィクショナルな日記を読みながら、思わず笑ってしまったことが何度あっただろう。天才乙一、こんなにユーモラスな人だったんだ。ずっと九州の片隅で生きていると思っていたぞ
2004/10/02 21:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
本体価格857円の本である。そのわりに、版型はノベルズよりは大きめで、ページ数は250頁を越え、本文の紙質は幾分安っぽいけれど、印刷で工夫したのか二色に見えるし、カバーだけではなくて本文中にも挿絵がいっぱい。画は華鼓、ブックデザインは松田美由紀(幻冬舎デザイン室)とある。
で、この本の価格設定は、これが著者のHP及び、Webマガジン幻冬舎で連載していたものに加筆・訂正を加えたものだかららしい。そういう価格に対する乙一の思いは「この日の日記に限らないが、行数の関係で、ページの大部分が余白のままというのはどうかと思う。たった2文字がぽつんとあるのみで、あとは真っ白だなんて、紙の無駄である。特に219ページなんてひどい。そのくせ小さな文字で脚注にびっしりというのも変だ。この空白がなければ、もっと本の値段を下げられたのではないかと思うと、筆者は、ヒゲが抜け落ちそうである。」というあたりにも伺えて、実に好ましい限り、乙一高感度アップ、といいたい。
でだ、不覚に、とでもいうか久しぶりに笑ってしまったのである。無論、田中啓文『蹴りたい田中』のことではない。乙一『小生物語』のことである。方や、笑いを狙いながら、どちらかというと読者が感じるのは脱力感、そんなのありか?であるのに対して、乙一のそれは、作者の狙いだとすれば、まさに天才としかいいようのない、肩に力の入らない、それでいて読む人が思わず微笑むようなものなのである。
で、この日記の成り立ちは「それでも「小生」という人称を使って日記を書いたのは、自分からかけはなれた呼び方で日々を綴れば、自分とは異なる別の人格がそこに発生するのではないかと思ったからだ。フランケンシュタイン博士が死体を使って人間を創造したように、私は「小生」という呼び方を使って、記述上にだけ存在する「私ではない日記の書き手」を創造しようと考えた。」とあるように、あくまでフィクションである。いや、その言葉すらフィクションに思えるものなのだ。
それにしても、彼の謙虚さは何だ? ちょっと小説が売れる、そのせいで結構なお店で飲食が出来てしまう。無論、彼に事をさせてくれるのは、出版社の人々である。その接待ともいえるただ食いを異常と感じる乙一は、繰り返しその状態を「餌付けされる」と自嘲混じりに書くのである。田口ランディが編集者に「餌付けされる」ことを全く疑問視せずに、知らぬ間に、食事どころか旅の費用まで出版社にもたせて、何一つ疑問を抱かず、美味しいを連呼するのと偉い違い。
ついでに書いてしまえば、椎名誠にもそういう部分はあるのだろうが、基本的には自前で調達である。それがメニューに現れる。例えば、茹でたてパスタ+鰹節+マヨネーズ+醤油=おいしい、などという代物は、絶対に出版社の接待と言うか、取材費で落とされるものではないだろう。釜揚げうどんにしたところで、絶対に自前である。若い乙は、出版社がお金を払うことを拒否はしない。でも、それってフツーじゃない、と思うのだ。それが新鮮なのである。若さというのは、それでなければいけない。
全体は、三部構成。第一部「故郷を離れて 愛知編」。第二部「ラジオがクリアな東京編」。第三部「流れ流れて神奈川編」。それを、まえがき、あとがきが挟むまっとうなスタイル。ちょっと違うのは脚注というか、本の横についているから脇注。これが長い。左右見開き、或は、その次頁にわたる注なら、たまに見ることもある。しかし、それが10頁以上続くと、凄いのである。
紙の本
ますます乙一好きにさせられる
2005/01/07 23:21
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:karasu - この投稿者のレビュー一覧を見る
ついつい笑ってしまう。納得し共感してしまう。「ハイ、うそ」と心の中で突っ込みを入れてしまう。そんな本。
この日記、小生というキャラクターが綴る日記である。なので、有りえない事、現実とも空想ともつかない事、これは現実だと良いなという事が、入り乱れている。
突っ込みどころと、現実どころを探しつつ、読んでいくのが楽しい。
行った先が込んでいたから、何もせずそのまま帰ってくる。ゴミを出し損ねてしまったなどの日々が、やる気を出しすぎず進んで行く日記内容に、共感してしまう。そんなところは、乙一本人の現実どころだったら良いなと思う。天才と称される様な人にも、そんな、ほのぼのどころが有って欲しいという、私の希望。
ますます乙一好きになってしまった。
紙の本
それは「小生」の物語
2004/08/03 21:14
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:祐樹一依 - この投稿者のレビュー一覧を見る
不可思議な半透明の文体が無機質に至らない人間くささを読者に楽しませてくれる乙一。本書は彼の、ウェブサイトにて公開した日記を一冊にまとめたものです。自分のことを「小生」と称して書き綴られる日々は、ナルホド、乙一の文章であると頷くばかりの思考過程、行動過程。危うく生活能力を疑いそうになる駄目駄目っぷりや、変人の周りにはやはり変人が集まるのかと思わせる意外な人間関係、そんな中に不意に紛れ込ませてある鋭い考察。本人も面白い人だった、乙一。そしてそれらは読んでいて、次第に妙な物語味を帯びてくる。
そして最後の最後、後書きに至り、読者はある真実を乙一氏に見せつけられるでしょう。そこで再び、ナルホド。奇妙過ぎる日々の、腑に落ちない部分が全て解き明かされるのです。一体、乙一は何を書いていたのか、何を書こうとしていたのか。それは時折見える現実味のない出来事や、ある日付の中にあからさまに書かれていたのでした。
小生と乙一の161日。これは果たして、本当に日記なのだろうか…。
(初出:CANARYCAGE)
紙の本
乙井の日常と頭の中の交錯。
2005/09/12 11:45
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
乙一作品の面白さは、他の誰も思いつかないその設定だと、常々感じてきた。その天才的発想が垣間見れるかと、普段全く手にしない「日記」を手に取った。
本作品は、作者のHP上で公開されていた日記である。この「日記」と言うもの、どんな大作家の物であっても、ほとんど、大体、つまらない。その作者の大ファンで、少しでもその日常を知りたい
のだ!という人間は別だろうが、人の日常をつれづれと読んでいても何の面白みも無い。
正直言って、本作も特に期待せずに入った。のだが。なるほどそう来たか!日記と言う日々を綴った現実、に乙一の頭の中で生まれた非現実を織り込んで、毎日が短編小説のようになってしまっている。笑える物もあれば、シュールに考えさせられるものもある。どこまでが本当でどこからが創作なのか。その面白さと、危うさ。
本作品、単なる日記ではない。類稀なる才能を持った作者が、自分の日常の記録を素材にして、そこに乙一エッセンスを散りばめ練り上げられた、非常に上等なエンタテイメント本なのである。
紙の本
ファン必読の1冊と言えそうですが、次は小説で頑張って欲しい。ライバルも多くなってるからね…
2004/10/09 22:00
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
その独特の個性で持って多くのファンから支持されている著者であるが、なんとWEB上で書いていた日記が本となって刊行された。
幻冬舎らしいアイデアの勝利だといえそうだ。
乙一さんの小説っていつも面白いあとがきが書き加えられているのがファンにとっても楽しみなのであるが、本日記においてはまえがき・あとがきだけでなく本文の欄外にコメントが書き加えられている。
個人的には本文よりもコメントの方が面白かったような気がする。
だからWEB上で読まれていた方も是非読み直してほしいと思う。
凄い脚色が施されてるから…
個性満点の日記であるが、読まれて満足できるか否かは乙一さんのファン度合いによって変わってくるであろう。
まるで好きな野球チームの応援をしているように没頭できる方もあれば、逆に興味のないチームの場合は試合自体が興ざめしてしまうのであろう。
乙一さんの作品を3冊以上読まれた方なら共感でき楽しめるんじゃないかなと思う。
きっとファンサービスの一環として出されたと納得出来るだろう。
“小生”というへりくだった一人称を使うことによって読者との距離を上手く保っている。
逆にあらたなキャラ(小説の登場人物に近い)を創り出せたといっても過言ではないだろう。
果たしてどこまで本当の乙一さんでどこまでが架空の話であるか。
読んだあなたが探偵役である…
いろんなエピソードが盛り込まれているが、少なくともサイン会での緊張を表した部分は乙一さんの本音であったと受け止めたい。
トラキチのブックレビュー
紙の本
良い。
2019/01/11 22:02
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ROVA - この投稿者のレビュー一覧を見る
ISDN時代(ギリADSLか?)の作家HP上の日記、の
あの独特の感じが凄く出ていて懐かしい感じになる。
とはいえ虚実入り混じってるのが本作の大きな特徴。
本当か嘘かは作者のみぞ知る。明らかな虚部分もかなり楽しめます。
「プルい」で笑ってしまったのはそれまでのユルい流れに浸ってしまっていたからだろうな。
紙の本
物語が生まれる時
2004/08/06 22:36
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:栄太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
物語というのは、二十四時間あらゆる場所に眠っている。自分が体験した一時や淡い空想にもその一欠けらが輝き、其れを文字と言う形而下に置いた途端物語となる。「物語が生まれる瞬間」が顕著に顕れ渦巻いている、其れが日記の他ならない。
そんな面白い瞬間を、数々の日記形式で纏め上げられているのがこの「小生物語」という本なのである。
この本の素晴らしい所は其れだけではない。日記というのは、唯事実を書き連ねただけでも読む者に多大な感心を興させるのに、「小生物語」というのは乙一が“小生”という一人称を使い主観から一歩離れた観点で日記を書いているのである。
現実と非現実が交じり合った、不思議の味わいのする日記。その内容に伴なう小説的娯楽性は、正に“物語”其の物である。
何時も読者に何とも言えないセツナサを抱かせる、作家乙一の物語の原点が垣間見れる。
乙一の物語の魅力に興味の有る方、乙一の空想科学の塊である、161編の“物語”が詰まった本書を一読することをお勧めする。