紙の本
ホラーのテイストを利かせた「奇妙な味」のある作品集。なかでも、掉尾を飾る短篇に惹かれました。
2004/11/16 20:38
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風(kaze) - この投稿者のレビュー一覧を見る
締め切りが迫っているのに話のアイデアが浮かばず、頭を掻きむしる作家。行きたくもないサイン会に出る羽目になり、嫌な予感に怯えつつ出かけざるを得ない作家。
「作家」を素材にして、彼らが抱える苦しみや鬱屈、悩みを描いた短篇が八つ収められています。有栖川さんの専門分野である本格ミステリではなく、ホラー風味を利かせた「奇妙な味」系の作品集でした。
およっ!と思ったのは、ある作品で主人公が語る次の件りを読んだ時。
>(p.104より)
いや、しかし、有栖川さん、それ言っちゃうと……と思いつつ、にやにやしてしまいました。もちろん、作中の人物が言ってるだけのことなのですが、かなり強い口調で「ダイイング・メッセージだけは駄目だ」なんて言わせてるものだから、ついおかしくなってしまって(笑)。
それはさておき、収録作品のなかで気に入ったのは、最後の二篇でした。
「書かないでくれます?」—— 最近刊行された長篇がいい出来栄えだったにも関わらず、なぜか浮かない顔をしている作家。その底に秘められていた真相が明らかになるとともに、ある人物の身に……というホラーです。作中のある小道具(?)が印象的。ラスト二頁のぞくぞくさせられた恐怖の描き方がなかなか巧い。同じ小道具を使った短篇で、エリザベス・ボウエンの「魔性の夫(つま)」(『怪談の悦び』創元推理文庫所収)に似た、ぎくっとする読後感を味わいました。
「夢物語」—— 夢の中に囚われた小説家の物語。不思議な味のする幻想譚と言ったらいいでしょうか。巻末解説で末國善己さんが挙げておられる作品に通じる妙味がありますね。余韻がたゆたうようなラスト一行の優しさ、それが素敵でした。本書で一番気に入った作品と言えば、これかな。
あとがきで有栖川さんが、>と書いていらっしゃるように、この作品の余韻に浸りながら本の頁をそっと閉じると、ぐんと本書の味わいが増します。掉尾を飾るにふさわしい、これはなかなかの逸品でした。
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タイトル通り、作家が出てきて色々な目に合う短編小説集。まあ冗談小説の範疇だけど、ミザリーがそうであるように、ホラーにもなるし、作家という仕事は頭の中で物語を生む作業が中心になるせいで、一種の幻想小説みたいな感じにもなる。中では、コメディホラーとして上出来な「殺しにくるもの」や「書かないでくれます?」、間抜けネタの「締切二日前」「作家漫才」が好き。最後の「夢物語」は日本人作家とは思えないくらい成功した奇妙な味の短編。有栖川有栖って、「ジュリエットの悲鳴」とか、氷村シリーズの短いものとか、短編が上手くて面白いと思うんだけど。
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ベストセラーを生む作家の秘密は……。書かないでくれと言われた話を他人に話した後、行方不明になった男は……。ミステリよりミステリアスな「作家」という職業を描く、有栖川裏ミステリ集。
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「作家」をテーマにした連作短篇集。
切れ味するどいものもあれば、それほどでもないものもある。
つくづく星新一は偉大だつたと思ふ。
2004年9月4日讀了
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かなりの頻度で作中に作家が登場している有栖川先生ならではの作品
「作家小説」という題名の通り作家だらけの連作小説集
火村シリーズの方が馴染み深い人が多いと思うが、ブラックユーモア溢れる本書のような作品もまた別の角度から作家を書いていて面白いと思う
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有栖川氏いわく『ミステリでもホラーでも冒険小説でもなく、SFでもファンタジーでも漫才でもない』"物書き"がモチーフになった短編集。作品ごとに趣向が違うのでだれることなくサクサク読めます。星新一氏のようなブラックユーモア的な作品を書かれているのが意外でした。
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有栖川氏の作品は、短編より長編が面白い、と思い込んでいたので、なんとなく避け続けてきたノンシリーズもの短編集。
読んでみたらかなり面白い。全体的にブラックユーモアテイストだけれど。有栖川さんは、英生さんシリーズの短編も面白いと思うけど、短編ならノンシリーズの方が好きかもしれません。でも、短編てそういうものかもしれない、シリーズのようにキャラクターに囚われない分、必要な要素を凝縮できるから、シリーズとまた違った意味での面白さがでるものなのかも知れない。まぁまた思い込みになると面白い作品を見逃すことになるかもしれないから、出来るだけ固定観念は持たずに置いたほうがいいのだろうけど。さて軌道を『作家小説』に戻して。作家を扱った短編が8編収められた短編集でした。『書く機械』
才能はあるけど遅筆な駆け出し作家を、編集者が大物作家に育て上げようと『書く機械』の部屋へと連れて行く。拷問のような10日間を経て作家が得たものは・・・。◆普通なら良さげなステップアップな話なのですがあの機械が曲者です。あの出版社は危険思想すぎる。読者にとってはアンハッピーエンドだけど、作中の作家にとってはあれはハッピーエンド・・・なんだろう。でもきっとそのうち自分の空けた穴に落ちるんじゃないかと思うとちょっと・・・。
『殺しにくるもの』
作家に書くファンレター・日記と平行に進む連続殺人。場所もばらばら、被害者の共通点も見つからない。二つのストーリーが交錯する瞬間は?
◆短いけど怖い。いつか来ることが分かっているけど、でもその瞬間が怖い。うっかり寝る前に読んじゃったから怖い怖い。最後のあのマーク、下のほうが何か不思議な形だったけれど、何か置いてあったのだろうか?何だろう?それにしても、最後のファンレターはあんまりな内容だと思う(苦笑)
『締め切り二日前』
締め切り直前なのに全くトリックが浮かばない・・・どうする!
◆これほぼ実話なんじゃないかと思えます。出てくるネタ、結構本気で考えてたんじゃないかと思うものがありました。ブラックですが面白い。
『奇骨先生』
気難しいと噂の地元作家にインタヴューすることになった文芸部員二人。‘僕‘にだけ冷たくあたる理由は?
◆この本の中では異質な感じが。
『サイン会の憂鬱』
地元でのサイン会が催される。しかし来る人来る人おかしな人ばかり・・・。
◆漢字間違いの女性辺りからおかしいなとは思いました。成る程、です。それにしても最後の一文がなんとも・・・それまで抱いていた作家像が一瞬で覆りました。なんということだ。何度読んでも最後の一文が巧い。
『作家漫才』
◆漫才でした(笑)
『書かないでくれます?』
「書かないでくれます?」といわれた話を間接的に書いて大ヒットした作家の物語。
◆雪女の話がとても効果的で成る程と思いました。ボウフラのエピソードから最後にかけて、かなりの勢いでぞっときました。
『夢物語』
機械のミスで夢の中から帰れなくなってしまった作家。夢の中を旅して辿りついた場所はは、‘物語‘という概念がない街で。
◆冒頭部を読んでいなければファンタジッ��で素敵なロマンスだと思います。しかしやはり現実世界が気になります。
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初めて有栖川有栖を読んでみたけど、意外と面白くてなんで今まで「ちょっとなぁ」とかおもってたんだろう。狂ってる?ってのが重点みたいですね。
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初読:2007年8月31日
作家をテーマにした短編集。どれも面白かったけど、一番気に入ったのは『書く機械』。ちょっとブラックで、ぞっくとする感じが良かった。
有栖川作品、今まで作家アリス、学生アリスシリーズを中心に読んできたけど、それ以外もほんとに面白い。
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作家という職業に注目したミステリ短編集。皮肉な視線は、このところのキャラクター造型によりかかりがちなシリーズものより面白く読めました。願わくば、15年ぶりの新作の学生編の出来がこれくらいにはよいものであらんことを。
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あとがきで、作者自身が言っている。
ミステリーでもホラーでも冒険小説でもSFでもないと。
あえて言うと、ミステリっぽくて、ホラーっぽくて
SFチックで、幻想的なのや、漫才っぽいのもあるし
ともかく、色々なのよ(^◇^;)
タイトル通り、全て作家を主人公にした小説です。
1. 書く機械(ライティング・マシン)
2. 殺しにくるもの
3. 締切二日前
4. 奇骨先生
5. サイン会の憂鬱
6. 作家漫才
7. 書かないでくれます?
8. 夢物語
色んな意味でオイシイ作品集です。
楽しませていただきました♪
「殺しにくるもの」「書かないでくれます?」と
「夢物語」が好きです。
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作家をテーマにした短編集。
ハズレなしです。おもしろかった!
「殺しにくるもの」のラストには衝撃だったな・・。ちょっとあのページが頭から離れません。「書かないでくれます?」「サイン会の憂鬱」もぞっとしたし。
「作家漫才」も好き。
完全に有栖川ワールドにハマりました。
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作家にまつわる悲哀を軸とした、ミステリアスな短編集。
以前にアンソロジーに入っていた、有栖川さんの話は面白かったんですが、
これはちょっと、私の嗜好ではなかったです。
強いてあげれば、雪女をモチーフにした 『書かないでくれます?』が一番面白かったかな。
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とってもホラーな話もあった。
作家を主人公にした短編集。
ライティングマシーンが一番好き。
頭を殴られる事件のやつ(すでにうろ覚え)のラストも怖くて好き。
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小説家を題材にした短編集。奇骨先生が好きだった。
(書く機械,殺しにくるもの,締切二日前,奇骨先生,サイン会の憂鬱,作家漫才,書かないでくれます?,夢物語 以上8編収録)