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  • カテゴリ:一般
  • 発売日:2004/09/07
  • 出版社: 講談社
  • サイズ:20cm/288p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-06-212536-6

紙の本

アフターダーク

著者 村上 春樹 (著)

真夜中から空が白むまでのあいだ、どこかでひっそりと深淵が口を開ける−。「風の歌を聴け」から25年、さらに新しい小説世界に向かう村上春樹の書下ろし長編小説。【「TRC MA...

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アフターダーク

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商品説明

真夜中から空が白むまでのあいだ、どこかでひっそりと深淵が口を開ける−。「風の歌を聴け」から25年、さらに新しい小説世界に向かう村上春樹の書下ろし長編小説。【「TRC MARC」の商品解説】

真夜中から空が白むまでのあいだ、どこかでひっそりと深淵が口を開ける。

「風の歌を聴け」から25年、さらに新しい小説世界に向かう村上春樹書下ろし長編小説

マリはカウンターに置いてあった店の紙マッチを手に取り、ジャンパーのポケットに入れる。そしてスツールから降りる。溝をトレースするレコード針。気怠く、官能的なエリントンの音楽。真夜中の音楽だ。――(本文より)

【商品解説】

著者紹介

村上 春樹

略歴
〈村上春樹〉小説家。著書に「ノルウェイの森」「ねじまき鳥クロニクル」「アンダーグラウンド」「レキシントンの幽霊」など。

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みんなの評価3.4

評価内訳

紙の本

タイトルはいい!

2004/09/27 13:51

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:山  - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「アフターダーク」って、まずマッキントッシュのスクリーンセーバーが思い浮かんだんだけど、そんなのが小説のタイトルになるわけないので、辞書を引いたら「日没後」。
 わお!と思いました。
 なんて思わせぶりなタイトルなの。昼じゃなくて夜。太陽の光が届かない闇の世界。使い古された熟語なんだろうけど、今これをタイトルに持ってくるなんてセンスいい!
 想像力がグイグイ掻き立てられました。しかも25周年記念ときてる。こりゃ傑作に違いない。と、予約して心待ちにしてたのに……。
 なにもかもが放りっぱなしで終わっちゃってる。作者はレトリックの天才だから、なんとなく最後まで読ませられてしまうんだけど、消化不良です。未解決だらけ。
 しかも「長編」ということになってるのに3時間ぐらいで読める。短編ではないかもしれないけど、よくて中編てとこですよ。これって今話題の「かさ高紙」使って本を分厚く見せかけてるんじゃないの。
 とまあ批判めいたことばかり感じたくせに、デニーズで「チキンサラダ」や「かりかりのトースト」食べたくなったりする、村上ワールドにはまっちゃったところもあり、どっかでは楽しんだことも確か。
 これって何が言いたいんだろう? そういう「答え」を小説に求めるのは読者なら当然なのに、ぽいっと突き放された感じ。いや突き放されたというより、書いている時点で作者が「答え」なんか放棄してるんだろうな。
 小説というのは「答え」なんか書いてなくても、「ただ読む」ことに意味を発見できればそれでいい。純文学の世界では今そんな考えが多く見られる気がするんだけど、この小説はそれに当てはまらない。「私たち」とかの意味を持った布石がたくさん打ってあって、それの後始末をしないでジエンドになっちゃうのは、卑怯だと思う。
 そのうちエライ批評家が、この小説の意味を読み解いてくれるかもしれないけど、そういうのを信じてはいけない。「アフターダーク」は、最初に思わせぶりなタイトルが決まっていて、それに刺激を受けて作者が文章を紡いでいった結果、失敗したのだ。

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紙の本

これでいいのか

2004/09/14 23:52

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:夢の砦 - この投稿者のレビュー一覧を見る

村上春樹の作品を是まで愛読してきたが、そろそろ考えねばならぬ時がきたのかもしれない。思わせぶりな描写、結末らしきものが存在しないことなどは許容できるが、面白くないものは面白くない。時代考察はなされているのか。ラブホテルの描写は、とても現代のものとは思えない。「わたしたち」とは誰だ。読者をなめているのか。編集者、出版社は読者のことを大切にしなければ、見捨てられる。期待が大きい作家だけに関係者に切にお願いしたい。「だめなものはだめ」といえる勇気を持ってください。

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紙の本

感覚だけの未完成ノート

2004/11/13 10:39

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:melt_with_you - この投稿者のレビュー一覧を見る

それが魅力だ、と言ってしまえばそれまでだけど、感覚中心で決して完璧に完成されない作品、これが春樹ワールドの魅力でもあるけど、この作品は未完成ノートだ。
この本は1枚の紙が厚くて、文字も大きい。カバーは和田誠。複雑な心境だ。
相変わらずの登場人物の言い回し、時計表示という仕掛け…。
言いようのない不安感とそれに隣接する安らぎをかろうじて感じられたのが救いだ。

でも、これが第三期春樹ワールドだとしたら、20年来のファンを考えないといけないなあ…。この本の厚さで2年以内に続編が出たら怒るよ、私は。

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紙の本

まさか村上作品をbk1さんに投稿出来る日が来るとは思わなかった(笑)

2005/02/20 19:34

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る

“読みやすいけど理解し辛い。”
従来から村上作品に対する私が持っていたイメージである。

どことなく翻訳本を読んでいるような感じで自分の中に消化できない。
ファンの方には申し訳ないのだが、自分の追い求めてる読書スタイルと村上春樹さんが醸し出すイメージとが微妙に(というかかなり)ずれており、何度か挑戦しつつも一冊も読破したことがなかったが、本作に関してはなんなくクリアした。
本作はまるで“春樹初心者”をターゲットとして書かれたようにも感じられたのは気のせいであろうか?
いや、単に以前の残念ながら村上氏の他の作品を読んでいない私には、たとえば氏の変化や進化論等を論じることはできない。
言い換えれば、“楽観的な読者”とも言える。
実際、本作がストレート作品か、あるいは変化球作品か検討もつかない。

--------------------------------------------------------------------------------

物語に登場する浅井姉妹(マリ&エリ)は本当に対照的である。
主役ともいえる妹・マリは深夜にデニーズで読書に耽る。
一方、姉のエリは終始ベッドで眠っている。
姉妹の関係(特に姉の状態)は物語が進むに連れて明らかになって行くのであるが、マリがわずか一晩のあいだに遭遇する事件や人々によって自分自身を見出し、姉との関係の修復に立ち向う点をいわば村上春樹スタイル(と呼ぶのであろう)で描かれている。
失われつつある姉妹の関係の修復が本作の最も読ませる部分である。

失礼な言い方かもしれないが、意外な発見もあった。
たとえば本作に登場のカオリ・高橋・コオロギ。
いずれもが、“人間臭い”のである。

さて、わたしたちのまわりにも取り返しのつかないと思い込んでそのままにしていることってないであろうか?
時代は暗澹としているが、心の持ちようでどうにでもなるのである。

少し“希望”を見出せる所が共感出来た。

率直な村上作品の感想として“人生”というより“世の中”というものをクールかつドライに描写してるなと思う。
ただ、“ハルキスト”のように何回も村上作品を読み返したりするほど感動的な側面を本作には見出すことが出来なかったのも事実である。

“若葉マーク”の私にとっては(笑)、いろんな意味において有意義な読書であったような気がする。
読書の幅が広がったのは事実である。

トラキチのブックレビュー

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紙の本

ひとつの観念のなかで演じられた抽象的な殺戮劇

2004/09/20 16:57

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る


 都市を闇が被う。あたかもスクリーンセイバーのように。巨大な生き物を包み込む皮膚のように。
 都市が纏う皮膚は言葉だ。肉体を離れ純粋な観念的視点となって、二つの世界(あちら側とこちら側、死と生)を隔てる壁を通り抜ける言葉(『アフターダーク』の語り手である「私たち」)が、都市を覆い尽くしていく。あたかもスクリーンプレイのように。聞こえないBGMのように。

 真夜中。深まっていく暗闇の中で、二つの世界を結ぶ回線が繋がる。
 物語の第一の層。読書する女の子(浅井マリ)と凡庸な名前を持った若い男(タカハシテツヤ)が出会う。ラブホテル(アルファヴィル)の部屋の中で、知らない男(白川)に殴られ裸で血を流していた中国人娼婦と本名を捨てた女(コオロギ)が登場する。
 第二の層。海の底に沈んだ心とともに純粋で完結的な眠りに陥っている美しい娘(マリの姉エリ)。深夜のオフィスで仮面をかぶせられた「顔のない男」が、娘の部屋のテレビの画面越しにその姿を凝視している。やがて娘はあちら側へ移動する。二つの部屋は、同じ時間性の中にいる。
 二つの層を結ぶのは、防犯カメラに隠し撮られた白川だ。白川が一人キーボードに向かい、古典音楽を聴きながらシステマチックに腹筋運動をこなす深夜のオフィスは、エリが見えない血を流しているもうひとつの「アルファヴィル」であり、顔のない男とはあちら側の世界に住むもう一人の白川である。

 フィッツジェラルドが「魂の暗闇」と呼んだ時刻。二つの世界を結ぶ回線が揺らぐ。
 深い沈黙に支配された部屋の中で、浅井エリが目覚める。顔のない男は姿を消し、あの純粋な視点としての「私たち」だけが彼女を観察している。やがて彼女の輪郭が鮮明さを失い始め、ブラウン管の光が消滅する。「あらゆる情報は無となり、場所は撤収され、意味は解体され、世界は隔てられ、あとには感覚のない沈黙が残る」。
 それはひとつの「小さな死」の情景である。村上春樹はかつて「午前三時五十分の小さな死」(『遠くの太鼓』)に書いていた。朝が訪れる前のこの小さな時刻に、僕はそのような死のかたまりを感じる。長い小説を書いていると、よくそういうことが起こる。
 白井とは、シネマ・コンプレックスのように重層的な物語を分泌する作者、つまり「長い小説」を書いている村上春樹その人の影だ。論理と作用の相関関係について思考を巡らせ、観念的な暴力(作中人物の死)をふるい、「何か別のもの」の出現を期待する小説家。

 明け方。新しい時間と古い時間がせめぎ合う。
 物語の第一の層では、高橋が法律家を志し、マリが中国留学を決意する。第二の層では、エリの目覚めを通じて「何か別のもの」が胎動するささやかな予兆が現れる。「ねえ、僕らの人生は、明るいか暗いかだけで単純に分けられているわけじゃないんだ。そのあいだには陰影という中間地帯がある。その陰影の段階を認識し、理解するのが、健全な知性だ。そして健全な知性を獲得するには、それなりの時間と労力が必要とされる」。だから「ゆっくり歩け、たくさん水を飲め」。

 ひとつの闇が死に、次の闇が訪れるまで。村上春樹は沈黙し、読者は途方に暮れる。
 村上春樹が『アフターダーク』で描こうとした「予兆」が、意識の直接的な一体感や身体の共有的な状態のようなものを指しているのだとしたら、そしてそのような「何か別のもの」の胎動を「研ぎすまされた純粋な視点」としての言葉を通じて、つまり「マジ怖い相手」(作者の影としての白川、白川の影としての顔のない男)の露呈とその消失を通じて描こうとしているのだとしたら、それもまたひとつの観念(もうひとつの「アルファヴィル」)のなかで演じられた抽象的な殺戮劇でしかない。

★全文掲載

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紙の本

大いなる長編への序章なのか

2004/09/16 20:12

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:katu - この投稿者のレビュー一覧を見る

そもそも「作家デビュー25周年記念作品」というのが解せない。書きたいときに書き、書き終わったら出版していた(ようにみえる)村上春樹にとって、こういう出版の仕方はどうにもそぐわない。「25周年記念ということで何か書いてくれませんか」と頼まれたので、仕方なく書いたような気がしてならない。まあ、それは言い過ぎなんだろうけど。

『神の子どもたちはみな踊る』以降、村上春樹が三人称を用いること自体はもはや珍しいことではないが、視点が宇宙的というか映画的になっており、その視点による見え方をいちいち説明するというのは今までにない書き方である。また、ジュンパ・ラヒリの影響というわけでもないだろうが、全編現在形で押し通している。

読み進めていくと、ああアレにも似ているコレにも似ている(例えば「TVピープル」「加納クレタ」「眠り」などなど)と感じるのだが、読み終えてみるとどれにも似ていないという気もする。そして、この話をどう解釈していいのか戸惑うのだ。細かいことを書いていけば、「逃げられない。どこまで逃げても逃げられない」というセリフからは、もうこの社会とのコミットメントを断ち切る訳にはいかないのだというようなことが見えてこないこともないし、その他示唆的な記述は色々とあるのだが、総じて何を言いたいのかがよく分からない。

ここで、最初の話に戻るのだが、どうも本作はもうすこし大きなアイディアをとりあえず小出しに出したような気がしてならない(長編というには短いし)。つまり、次なる長編(本当に長い長編)への序章なのではないだろうか。私はそう思いたい。

k@tu

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紙の本

深夜から、空が白むまで。

2011/01/11 13:41

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:かず吉。 - この投稿者のレビュー一覧を見る

アフターダーク。

そのタイトルからなんか、ちょっと怖い話を想像してしまって、
読み始めるのに少しだけ勇気がいりました。

読んでみたら、登場人物がとても印象的な小説で、
怖い小説ではなかったのでほっとしつつ読めました。

人の繋がりにはいろんなパターンがある事を
なんか読み終わってから考え、そしてもっと今ある人間関係を
大切にしていこうと強く思えた小説です。

1Q84のBOOK3を読み終えてすぐ読み始めたので、
行間がとても広く、文字が大きく見え、そして、この小説は
行間を読む小説だなぁとふと思いました。

深夜の雰囲気、街の雰囲気がとても上手に書けていて、
登場人物が魅力的でした。

多分、再読なんだけど、始め再読だってことさえ忘れていて、
途中のある場面で再読だって気づきました。

また忘れた頃に読み返すことでしょう。

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紙の本

記憶に残る、深夜から早朝まで

2004/12/20 23:58

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ツキ カオリ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 例えば、一晩一人で過さなければならなかったりする。

 どこに泊まろうか、何を食べようか。
 そして、何をしようか。

 各自のスタイルがあるだろう。

 この物語の主人公、浅井マリは、デニーズで読書をすることを選んだ。

 ほっそりとした小さな顔。黒縁の眼鏡をかけている。眉のあいだにときどき、きまじめそうなしわが寄る。
 彼女はずいぶん熱心に本を読んでいる。ほとんどページから目をそらさない。分厚いハードカバーだが、書店のカバーがかかっているので、題名はわからない。真剣な顔をして読んでいるところを見ると、堅苦しい内容の本なのかもしれない。読み飛ばすのではなく、一行一行をしっかりと噛み締めている雰囲気がある。
(中略)
 入り口の自動ドアが開いて、ひょろりと背の高い、若い男が中に入ってくる。(中略)大きな黒い楽器ケースを肩にかけている。管楽器。そのほかには汚れたトートバッグを下げている。中には楽譜やらその他細々したものが詰め込まれているようだ。右の頬の上に、人目を引く深い傷がある。尖ったものでえぐられたような短い傷跡。それをべつにすれば、とくに目立ったところはない。ごく普通の青年だ。
(中略)
 彼は声をかける、「ねえ、間違ってたらごめん。君は浅井エリの妹じゃない?」
              
 声を掛けて来た男、タカハシと出会い、言葉を交わさなければ、ほぼ確実に、デニーズで読書をし続けたまま、夜明けを迎えるはずだった浅井マリの「アフターダーク」に、変化が訪れる。
 都会の、ファミレスから始まった、ありがちな夜は、濃密さを保ったまま、夜明けへと移行するのだ。

 新しい太陽が、新しい光を街に注いでいる。高層ビルのガラスがまぶしく輝いている。空には雲はない。今のところひとかけらの雲も見あたらない。地平線に沿ってスモッグの霞がたなびいているのが見えるだけだ。(中略)ビルのあいだにはさまれた多くの街路は、まだ冷ややかな陰の中にある。そこには昨夜の記憶の多くが、手つかずのまま残っている。

 ファミレスで、一人で読書をし続けなければならない一晩があったとしたら、少し読むのに飽きてきたり、疲れてきた瞬間にのみ、異性に、それもなるべく魅力的な異性に(笑)、構ってもらいたい。
 複数の人数で来店した訳ではないのだし、構ってもらえる時間はそう長くなくていい。目的はあくまでも一人で読書に没頭することなのだから。

 そんな些細な願い(?)を、作者は叶えてくれた。
 365日のうちの一日、たった一晩だけでも、こんな「アフターダーク」があったなら、その年は、忘れられない年になるだろう。

 さて皆さんは、どのような、記憶に残る「アフターダーク」を過したいだろうか?
 作者の提示した一例を参考に、ぜひ考えてみてほしい。

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紙の本

思いつきでも力ずくでもない何か

2004/09/13 21:35

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yama-a - この投稿者のレビュー一覧を見る

 1行目からちょっとびっくり。おや、村上春樹はかなりスタイルを変えてきたな、って感じ。ここで言うスタイルとは文体と構成。なにせ主語が「私たち」だ。今までこんなスタイルはあっただろうか? 一人称単数以外で書かれた小説って少なかったのでは?
 「いや、あの小説は三人称だった」みたいな指摘は多分マニアの方がやってくれるだろうから僕は穿鑿しないが、村上の小説は大体が主人公自身が語るか、そうでないにしても(そうでない小説が実際にあったかどうか僕はちゃんと憶えていないのだが)語り手は主人公にかなり近い場所にいたはずだ。それが今回は「私たち」であり、しかもその語り手はカメラという、かなり引いた位置にいて観察し、語る。うーむ、今までとはかなり違う。
 そして、冒頭から9ページの1行空けてあるところまでのいくつかのパラグラフは今までならなかったのでは? その次の段落の冒頭はこうだ──「彼は声をかける、『ねえ、間違ってたらごめん。君は浅井エリの妹じゃない?』」──そう今まではここまで直截ではないにしても、ほぼこれに近いくらい直截に物語は始まった。少なくとも、この『アフターダーク』のように夜の街をクドクドと描写するばかりで殆どストーリーが進行しないままなんてことはなかったはずだ。
 普段の翻訳調も少し押さえ目だ。今までみたいに日本語の文章を読んでいてその英訳文が頻繁に浮かんでくることがない。
 読み進むと小説の骨組みが見えてしまう(これも今までなかったことだ)。「ははあ、こういう意味づけでここにこれを持ってきたか」とか、「なるほど、これにはこういう想いが込められているんだな」なんて余計なことを考えてしまう。もちろん村上春樹が本当にそう思って書いたかどうかは知らない。しかし、そう読めてしまうのである。語り手である「私たち」がなにかと判断したり解釈したりしてくれるのも気になる。「おいおい、今までみたいに読者に自由に想像させてくれよ」という気にもなる。
 ひとことで言うと、村上春樹も随分オッサン臭くなってしまったみたいだ。なんだか説教じみてきた気もする。即ちそれは村上春樹も歳を取ったということだ。
 そんな風に少しずつ不満を覚えながら最後まで読み通すと、(あまりにベタな評価なので適切でないかもしれないが)村上春樹も中年としての役割を、若い人たちに対して年長者の役割を引き受け始めたのかなあ、という感想に行き着いた。
 そこには思いつきでも力ずくでもない何かがあった。意外に深い、深い読後感が残った。
 村上春樹と同様、僕も歳を取ったのかもしれない。

by yama-a 賢い言葉のWeb

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紙の本

長女に言わせると、なんだかなあ、だそうである。無論、今までのパターンに陥っていない点は評価するそうだ。うーん、わたしはこの作品の視点が、なんとも不思議だなあって

2004/11/28 19:04

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

村上春樹本らしくないブックデザインは和田誠。といっても文句をいっているわけではない。ちょっと幕を透かして見るような、夕闇というよりは、小説の内容の通り日の出直前のちょっと湿り気を帯びたような空気を思わせる紗の向こうに、どこかミロのビーナスを連想させる婦人の坐像。写真 稲城功一とあるから、本当は人物なのだろう、そのひそやかさ。無音が滲み出して纏わりつく。

その、紗幕を通したような印象は、小説を読んでいても変わることは無い。それは「わたしたち」という主人公たちの周囲を浮遊する、時にブラウン管のこちら側から眠れる美女を見つめ続ける、神ではなくもっと不確かで秘めやかな視点のせいだろう。

一章は十二時五分前の時計の文字盤のイラストで始まる。わたしたち、というデニーズの中を浮遊する視点が、窓際に座る一人の女のこに目をとめる。彼女の名前は浅井マリ、19歳。人は彼女を可愛いと思うけれど、彼女自身はそんなことを思っていない。それには彼女の21歳の姉、大学二年生のエリの存在が大きいけれど、それは頓狂な男の手によって徐々に明らかにされていく。

浅井エリは幼いときは評判の美少女で、その後、雑誌のモデルなどをし、今でもTVに顔をだす、陳腐な表現をしてしまえば絶世の美女、二歳年下の妹は常にそんな姉の陰にいた。で、そんな彼女に「浅井エリの妹じゃない?」と、おまけに名前をユリと勘違いをして声をかけてきたのが姉の同級生で、二年前に品川のホテルのプールでマリよりは、エリの小さな水着ばかり見ていたタカハシである。

この軽薄としかいいようのない男は早々に深夜のレストランから姿を消すけれど、入れ替わるように中国語に堪能なマリに救援を求めてきたのがラヴホテル「アルファビル」のカオルである。29歳で女子プロレスから引退した身長175の彼女は、ホテルでトラブルに巻き込まれた娼婦の話を聞いて欲しいと頼み込む。

活字がゆったりと配置された本なので、簡単に読むことができるのであとは読んでもらおう。マリを中心に複数の糸が、決して絡みつくことなく、絶妙な距離をとりながら進行していく話で、その中で浮遊するというか、例えば映画なのでたまに見る幽体離脱した人間のような視点が、読者の感情移入に微妙な制動をかける。

だいぶ前のことで恐縮なのだけれど、まだクラウディオ・アバドがミラノ・スカラ座を率いていたころ、日本で引越し公演をしたヴェルディの歌劇『シモン・ボッカネグラ』の映像を見たことがある。闇の底のような暗い舞台だけれど、それだけでは済まない見難さがある。何だろうと夫に聞いたら、実際の公演をみた彼は「あれは舞台の前面に薄い幕が懸かっていて、それ越しに見るものだから、初めてそれに出会った僕は、嫌でも身を乗り出して意味も分からないイタリア語に耳を傾けなければならなかった」と脱線交じりに説明してくれた。

そう、私は村上のこの『アフターダーク』に、ゼッフィレリだかポネルだったか忘れたけれど、有名な演出家の手になる『シモン・ボッカネグラ』の仕掛け、読者が取らざるを得ない距離というものを感じてしまう。それが、小説を読み終わったときの、エリとマリの二人の目を覚まさないように、思わず本から顔を離しながら静かに息をつく、ということに繋がる。

もう少し、この薄明の中を彷徨っていたかったなと思い、あらためてカバーを見たとき、そのデザインが本当に上手に小説の内容を表わしていることに、静かな驚きを覚えるのである。過ぎた時間は5時間。この静けさはだてじゃあない。

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紙の本

近未来感の滲む一冊

2023/04/08 19:02

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る

書棚からとってパラパラと頁をめくっていたら、
中国語を話す登場人物が出てきたので
読み始めたのを思い出しました。

20年近く前に物された作品ですけれど、
今年執筆されたものだと言われたとしても、
個人的にヮそれほど違和感を感じないように
思います。

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紙の本

EUの少女はフランス語訳でハルキにハマっている

2004/12/02 11:42

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:栗山光司 - この投稿者のレビュー一覧を見る

「ゆっくり歩く、たくさん水を飲む」何て、年寄りのぼくが出来るだけ実践していることです。タカハシ君の箴言はぼくが言いそうな台詞だとほくそ笑みしました。最初に買ったアルバムが『ブルース・エット』で、『ファイブスポット・アフターダーク』はぼくの定番メニューだし、ゴダールの『アルファヴイル』から採ったらしい連れ込みホテルの看板もぼくと同世代、同文化の装置なのに文中で少女がこのホテルの元女子プロレスラー店長に映画説明をする。

《「たとえば、アルファヴィルでは涙を流して泣いた人は逮捕されて、公開処刑されるんです」/「なんで?」/「アルファヴィルでは、人は深い感情というものをもってはいけないから。だからそこには情愛みたいなものはありません。矛盾もアイロニーもありません。ものごとはみんな数式を使って集中的に処理されちゃうんです」》

マリは19歳の女の子なのですが、どうも、ぼくらと同じ文化装置に馴染んでるみたい。村上春樹は、こんな風に自分の得意な時代、文化背景に取り込んで、若者達を描いてしまう。その辺が問題ありとは思うのですが、若者達がそれでも読んでくれるのですから、成程、村上春樹の語り口を通して、表現すれば、若い人たちは耳をそばだててくれる。ムラカミワールド、春樹節といわれる所以だ。他のオヤジたちが同じ装置で語ってもそっぽをむかれてしまうでしょう。この微妙な差異が他の作家たちの半ば揶揄、嫉妬、冷笑を生むのかもしれない。作家は評論・批評のたぐいは読まないらしいが、確固たる支持基盤があるから無視も出来るのでしょう。レビューアップ件数は相変わらず多い。村上さんの本は何か言ってみたくなるし、書いてみたくなるのです。恐らく作家村上春樹は優秀な精神分析医になれるんじゃあないかと、そんな感が本書で益々深まりました。

ヴィム・ヴェンダースの映画『ベルリン・天使の詩』で、二人の不可視のオヤジ天使が登場しますが、本書の視線はそんな見えない「トウキョウ・天使」達ではないか、冒頭、<私たち>という不可視の複数形が登場する。《目にしているのは都市の姿だ。/空を高く飛ぶ夜の鳥の目を通して、私たちは……》、読み手の眼、作家の眼、堕天使の眼、無数系のゼロの眼、眼印のUFOに乗った酔いで読み進みました。本書に『ベルリン天使の詩』を連想するのは、ぼくの理由なき飛躍かもしれないが、冒頭の“私たち”は、そんなオヤジ達の説教節が聴こえそうでした。高橋君でなく、もろに春樹さんと同年代のオヤジを登場させればよかったのに、その辺りにリアリティのなさを感じましたが、そんな無理な飛躍は春樹ファンに御馴染みのハルキワールドで易々と感応させていく、もはや春樹全体が小説言語なのでしょう。

フランス語圏の友達の15歳のお嬢さんが、フランス語訳で村上春樹を全点読んでいてハルキに嵌っているのですが、彼女はドストエフスキーを初め、古典を系統的に読んでいる、そんな文学史の流れで、村上春樹を評価して日本を代表する作家だと信じている。そんな便りを聴くと、やっぱ春樹は国際的な作家でノーベル賞もあながち夢でないと、思ってしまう。ただ、わが国では村上春樹を読み解く本は目白押しですが、深読みすればするほど、春樹から遠くなることがわかってはいても、深読みして、勝手に謎を発見というより、捏造して楽しんでいるのが実情でしょう。まあ、ぼくを含めた素人レビューアーを刺激する作家であることは間違いない。千人印の歩行器

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紙の本

冥界はすぐ隣にある

2004/11/19 04:09

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:時計 - この投稿者のレビュー一覧を見る

妹は深夜の町で時を過ごし、姉はベッドの上で昏々と眠る。
妹は音楽を愛する青年に出会い、ラブホテルを管理する元女子プロレスラーに出会い、一夜のうちに少しの変化を経験する。
姉の魂は彷徨い続けていて、もう少しで向こう側=冥界に行ってしまいそうだ。その魂をこちら側につなぎとめることができるのは妹だけなのかもしれない。
中国人の若い売春婦、その売春婦に乱暴を働くシステムエンジニア、売春婦を管理する中国マフィア、名前を消してラブホテルで働く女性。すでに何かが壊れてしまった人たち。すでに向こう側を経験してしまった人たち。
青年と妹が出会って、この世は少し安定した重石=アンカーを得たようにも見える。でもまだ冥界はすぐ隣にある。
村上春樹が25年(ですかもう!)続けて描いてきているあちら側とこちら側の近接性/侵食性を簡潔に味わえます。観客=神の視点の導入によってその近接性/侵食性はセンチメンタル性を排してよりクリアに描かれています。

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紙の本

静の中の動、動の中の静。

2004/11/16 15:09

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投稿者:オレンジマリー - この投稿者のレビュー一覧を見る

 待ちに待った村上春樹の新作。当初、私の本書に対するイメージは『ノルウェイの森』に似たものだった。しかし雰囲気は村上春樹がかもし出すものに違いないが、全体的な流れ、展開は大きく違っている。

 ある姉妹に起こる、一夜の出来事の話だ。一章ごとに姉と妹の話が展開されていくが、とても読み易くて良かった。姉は深い眠りの海に浮かび、妹は夜の街の脈に揉まれて行く。
 登場人物一人一人がどこかしら、誰かしら繋がっていて、絡まった糸を解していくように読み進めていけた。妹は淡々としているが、徐々に波に飲まれていくし姉は微かな異変に遭う。妹の話はなんだか都会の真夜中、人の知らぬところで起こり得るものだ。ひどく現実味がある。どう説明していいか分からないが、読んでいても肉体的な感覚が生きているような感じだ。姉の方は明かりを消した民家で、沈黙の中ひっそりと起こるだろう非現実的でイメージ的なできごとだ。肉体的な感覚は働かないが、脳がそれを観てしまうような妙な感じ。
 相変わらず終わりのない、エンドレスなストーリーを紡いでくれる村上春樹。そして相変わらず第3の視点からものをとらえた描写は素晴らしい。一見、物語に脈絡はないようだがとらえ方は読者次第だ。
 終始第3の視点となって、冷静に物事を観ている気分だった。村上春樹の本を手に取ってから正直、一度だってちゃんと理解できた試しがないがそれでも読まずにはいられない。『ねじまき鳥クロニクル』の主人公が井戸の壁を通り抜けたのと同じように、本書でも読者が浮遊して自由に物質を通り抜けられるようだ。意志を持った、形のない者のように。
 そしてタイトル通り、闇の後にはまた光が満ち、再び闇がやってくるまでには時間がある。妹が眠り続ける姉のベッドにもぐりこみ、安眠について目覚める頃には太陽は照っている。
 静寂の中でも時は刻まれ、動きをみせるものがあり、雑多としている都会にも深海魚のようにじっと身動き一つしない静寂はある。

 友人が本書を読み持った感想が、訳が分からない、だったがそれでもなんとなく、どことなく惹かれている私だった。村上春樹の本って、とても不思議だと思う。明確な理由なんてないが、読みたいと思う。少なくとも、私にとってはそういう存在だ。

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紙の本

ささやかな胎動へ

2004/10/13 23:52

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投稿者:すなねずみ - この投稿者のレビュー一覧を見る

浅井マリと姉エリの関係がふと『ノルウェイの森』のなかの直子と姉の関係とパラレルなものに思えてしまって(77頁あたりから)、気がつくと読み始めの頃の違和感もほとんど気にならなくなっていて、しっとりと身体にしみ透ってきた感じ。

>(『ノルウェイの森』)

そして直子はある日、部屋で首を吊っている姉を見つける。『ノルウェイの森』ではそうなる。でも『アフターダーク』ではそうはならない。

>

(『ノルウェイの森』では、直子は姉ではなくワタナベのベッドにそっと入ってくる。姉はすでに死んでしまっているから。)

失ってしまったもの、取り返しのつかないもの。乗り越えたつもりでいても、それは、よりによってこんな時にって思うような場所で人を狂わせたりするものだったりする。そういう個人的なものを、クールに突き放しながら(ベタつかない感じで)やさしく掬い取ってくれるのがこれまでの村上春樹の小説だったように思う。『アンダーグラウンド』でオウム信者へのインタビューをしたあとに書かれた小説もその点ではあまり印象は変わらなくて、あくまでも個人的で潔い優しさを僕は受け取ってきた。(そして、確かに何かが足りないような気がしていた。)
でも『アフターダーク』は違うように感じた。たとえば、ラブホテルで働きながら怖い人たちから逃げ回っているコオロギというあだ名の女性の台詞。彼女はある意味とても村上春樹っぽい登場人物で、たぶん「鼠」とか「羊男」系列のトリックスター(はぐれもん)的なキャラクターにあたるんだろうなと思う。が、大阪弁である。女性である。村上春樹らしくない。(と僕は感じた。)

>

こういうことは小説自体とはあまり関係ないことかもしれないけれど、村上春樹自身は小説家として、自らの切実な喪失体験のようなものを『ノルウェイの森』までのいくつかの小説を書くことで乗り越えて、「自己療養へのささやかな試み」(『風の歌を聴け』)というプロセスを終えて、(『アンダーグラウンド』を境にして)社会へのコミットメントという方向へ新しい一歩を踏み出した。そして『海辺のカフカ』までの小説を書くことで「(社会への)コミットメント」というプロセスに一区切りをつけて、もう一度自分が小説家としてスタートした場所に戻ってきてくれたのではないかと思う。あえて初期の小説と同じような道具立てを使って新たなスタイルを実践しながら。

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