- カテゴリ:一般
- 発行年月:2004.9
- 出版社: 文芸春秋
- サイズ:20cm/456p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-16-366330-4
- 国内送料無料
紙の本
アメリカ帝国の悲劇
9.11以後各国に軍事基地を配する世界帝国となったアメリカ。世界中に広がる基地の実態、大統領の私兵部隊として働く特殊部隊の暴走、国民の目から真実を覆い隠す秘密主義の横行等...
アメリカ帝国の悲劇
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商品説明
9.11以後各国に軍事基地を配する世界帝国となったアメリカ。世界中に広がる基地の実態、大統領の私兵部隊として働く特殊部隊の暴走、国民の目から真実を覆い隠す秘密主義の横行等、その恐るべき現状を詳述し警鐘を鳴らす。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
アメリカ帝国属領の悲哀
2004/10/02 11:25
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:sheep - この投稿者のレビュー一覧を見る
2000年に刊行された『アメリカ帝国への報復』の著者による本。前書原題は「Blowback」。本来軍事用語で、非合法な諜報活動などで他国に仕掛けたことが、本国に逆流して思わぬ結果をもたらすることを意味している。帝国主義的なアメリカのやり方は、やがて諸国に怨嗟を引き起し、必ず報復をうけるという内容だった。911事件の起きた同じビルで以前起きた爆破事件も、そうした報復だという記述もあり、まるであの事件を予見したように思えたものだ。
この新刊、その帝国主義的行動の源である、世界中のアメリカ軍基地という切り口から、アメリカという国の実態を描き出している。著者は海軍士官時代に日本を訪れ深い関心を抱き、除隊後アメリカで日本、中国の政治・経済の研究をして学者となった経緯がある。「冷静な思考と暖かい心」の学者だ。
アメリカが軍国主義的な傾向を露骨に出し始めたのは十九世紀末、米西戦争から。1898年2月15日夜、ハバナ港で謎の爆発によってアメリカの戦艦メイン号が轟沈した。イエロー・ジャーナリズムと呼ばれる「煽情主義的な記事」を推進したことでランドルフ・ハーストの名前は有名だ。彼の新聞ニューヨーク・ジャーナルは、スペインの破壊工作員がどのように機雷を取り付け、海岸から起爆させたかを描いたイラストを掲載した。事実は不明なのに。マスコミが戦争熱を大いにあおったのだ。しかし驚くべきことに、今ピューリッツァー賞で有名なピューリッツァーも、自分の新聞「ニューヨーク・ワールド」で、彼と競って戦争熱をあおったのだ。いずれも発行部数の大きい新聞だった。あの事件を巡るマスコミの様子をみると、百年以上たった今、マスコミも庶民の反応も本質的には何も変わっていないようだ。メイン号爆発と同様、911事件の実態も依然として曖昧なままで、「やらせ説」も根強い。「使命感をもって世界に民主主義を広めるため戦争をする」のは現大統領だけ特異なわけではない。ウッドロー・ウィルソンという先例がある。大統領が代わった位で帝国の基本戦略は変わるまい。
首脳達の経歴を読むと、アフガン、イラク攻撃の背景が透けて見える。軍、軍需産業、石油産業界のトップの癒着。国防長官在任中に軍需企業を育て、長官を辞するとその社長に座る厚顔無恥。戦争という事業の民営化。戦争は、それで儲かる人間達が推進するのに違いない。年金にまつわる日本の汚職など児戯に見えてくる。その日本経済界も武器三原則をかなぐり捨て宗主国に倣うのも間近、ロボット戦士が主要輸出品になるのも遠いことでは無いかも知れない。
帝国は、自らの兵士の血を流さずにすむよう、現地人をてなずけ代理軍として戦争に投入することも多い。イラク派兵、国連安保理常任理事国への立候補、憲法改変の目的は、その代理役実現のためだろう。昔大宰相は、この国を「不沈空母」として差し出したが、現総理は沖縄の基地負担の一部を、本土に引き受ける必要性を言い出した。帝国基地の世界的再編計画に対応する恭順だ。著者は1996年招かれて沖縄基地の実態を知るに至り、沖縄の実情についての本も著している。沖縄に本土に、基地を置くアメリカの公式理由は二転三転しているが、それは帝国維持の為であっても、「日本防衛」でないことは明白だ。中南米諸国や、中東諸国、旧ソ連諸国、ドイツ等の基地と同じく。
忠実に帝国に追随する数少ないプチ帝国もどき属領の臣民として、同盟国(宗主国)の実態、本音を知り、安保条約という同盟、北朝鮮、沖縄、基地移転、外交、軍備、憲法問題等を考えるための最良のテキストだ。事実でありながら、さながらミステリーのように一気に読める。面白いというのではない、戦慄的なのだ。
紙の本
ブッシュは民主主義否定の独裁者だ
2004/12/05 07:09
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:未来自由 - この投稿者のレビュー一覧を見る
彼の前著『アメリカ帝国への報復』は、アメリカの帝国主義的な政策がその被害を受けた国々に怨嗟の種を播き、やがてアメリカ自身にテロ攻撃をふくめた報復となって跳ね返ってくるだろうと主張し、2001年9月11日の同時多発テロを予言した。
本書『アメリカ帝国の悲劇』は、そうしたアメリカの軍国主義と、世界中にひろがる基地の帝国の実態、大統領の私兵部隊として働く特殊部隊の暴走、国民の目から真実を覆い隠す秘密主義の横行といったものをあきらかにした書である。
本書は、軍事帝国アメリカの成り立ちと、全世界を包囲するその恐るべき現状を、詳細なデーターをもとにありありと描きだした好著である。われわれ日本人にとっては、同盟国の真の姿を知り、現在の同盟関係を問いなおすために、ぜひ目を通しておくべき一冊といえるだろう。
上記は、すべて訳者あとがきの抜粋である。これほどわかり易い解説を載せられては、これを紹介するほかはない。
訳者のいうようにアメリカの帝国主義と軍国主義の実態をこれほど詳細なデーターをもちいて多角的に描いた作品は少ないだろう。沖縄や他のアメリカ基地を直接訪ね、アメリカ兵が起こす傷害事件や強姦などの実態を調査し、それを明確に批判している。
沖縄でアメリカ兵が犯した犯罪事件は、私たち日本人には生々しい記憶にも残っている。こうした沖縄の状況は、アメリカ軍の基地があるところではどこでも繰り返されていると著者は告発している。
アメリカは戦争をするたびに基地を他国に増やし、いまでは公式の基地だけでなく、極秘の基地さえ、世界各地にあるという。
現在、イラク占領が強行されているが、アメリカは9・11テロ以前からイラク戦争を予定していた。その口実を探し続けていたというのが実態だ。
大量破壊兵器がないことはわかっていたのに、嘘の報告によって戦争を開始したことは、すでに幾人もの人が語っている。戦争を仕掛ける国が使う常套手段だという指摘に、日本帝国が起こした戦争を思い起こす。
いまやブッシュは独裁者の道を進んでいる。アメリカ憲法には、「議会が宣戦を布告する権限をもつ」とあるが、いまではブッシュが権限をもつと告発する。自由と民主主義が奪われ、憲法を蹂躙するアメリカ政府の実態を描いた書に、ナット・ヘントフ『消えゆく自由』があるが、それとも一致する実態が生々しく描かれている。
アメリカ帝国の危険な状況を知るためにも、本書と『消えゆく自由』を読まれることをお薦めしたい。憲法改悪を日本政府に公言してはばからないアメリカ帝国の脅威の戦略が伝わってくる。