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あぶない脳 (ちくま新書)
あぶない脳
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紙の本
脳から見た世界。
2005/12/22 12:41
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:求羅 - この投稿者のレビュー一覧を見る
近年、脳科学に関する本が多く出版されるようになったと思う。
それは、痛ましい犯罪が後を絶たず、ストレス社会にさらされている私たちが、意識的または無意識に幸福を希求し、その答えを人間の内面(脳や心)に求めている表れではないだろうか。
もちろん、脳科学だけで全ての問題が解決できるとは思わない。しかし、「脳科学は人生の多くの側面に深く関わってくる」ものだから、「人生に関わる問題」にアプローチし、ある程度説明できるのはまぎれもない事実だ。
本書は、人の営みに関わる諸問題・現象を脳科学の観点から考えるキッカケ本である。
思い込みはどうして起こるのか?なぜ人はブームに巻き込まれるのか?精密に働いていると思われていた脳が、実は微妙なバランスの上に成り立っている「危うい」ものだという論は興味深い。情報を鵜呑みにせず、普段から深く思考し、判断する訓練の必要性を痛感した。
その中で、「心の理論」、いわゆる「他者の心を理解できる能力」が人類の心の中核をなしていて、その欠如が現代社会を蝕んでいる、という著者の主張は傾聴に値する。
確かに、今世間を騒がせている耐震強度偽装問題や、児童殺害、虐待などの犯罪から、平気で電車の中で化粧をし、あたりかまわず携帯電話で話すといった眉をひそめたくなるような行動に至るまで、全て「自分さえ良ければいい」という「心の無理論」で説明できる。
思うに、この「心の無理論」は個人レベルの問題で済まされるものではなく、社会全体で真摯に考えていかなければならないのではないか。
例えば、教育のあり方を見直す必要がある。また、子育てで悩む人を周りでサポートする環境作りもさらに重要になってくるだろう。
人間は「自分の遺伝子を残す」という戦略の下、進化してきた。だから、「人間は、本来、殺さない脳をもつ」のだ、という著者の言葉に希望を見出し、それを現実のものとするために考え、行動していきたい。それこそが、人間らしい姿なのだから。