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紙の本
被差別部落のわが半生 (平凡社新書)
著者 山下 力 (著)
被差別部落出身者であることに悩み、隠し、28歳にして部落解放運動に目覚める。その後の解放運動の中で「糾弾屋」と呼ばれた著者が、自らの半生を振返りながら、どのように部落解放...
被差別部落のわが半生 (平凡社新書)
被差別部落のわが半生
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商品説明
被差別部落出身者であることに悩み、隠し、28歳にして部落解放運動に目覚める。その後の解放運動の中で「糾弾屋」と呼ばれた著者が、自らの半生を振返りながら、どのように部落解放運動と取り組んできたかを次世代に伝える。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
当事者がバランス良く語った被差別部落問題
2005/01/03 13:49
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:越知 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1941年生まれで被差別部落に育ち、やがて差別を批判する運動に加わって奈良県会議員となり、現在も6期目を勤めている方による自伝的な書物である。
部落差別についてはこれまでにも様々な本が出ている。一方で差別を大声で批判するあまり「被差別部落に生まれなかった人間は潜在的な差別者だ」とするような極端な意見が70年代に大手を振るった歴史があり、他方でそれへの反動から、同和利権を批判する書物もここ数年目立っている。
本書は、被差別部落出身でみずから差別を体験した人の本でありながら、声高に差別者を糾弾するのではなく、おのれの生涯を語りながら被差別部落にまつわる多様な現実を淡々と明らかにし、時として反差別運動のあり方に反省をも加えているところに特長がある。肩肘張らずにこの問題の複雑さを知ることができる好著なのである。
例えば、被差別部落というと一様に貧しいものという考え方があるが、これは誤りである。著者の生家は皮革産業を営んでおり、70年頃まではアメリカへの輸出でたいへんな好況であった。著者も、まだ日本の大学進学率が低かった60年代前半に東京の大学に進学しているが、それだけの経済的基盤を被差別部落は持っていたということになる。
それが変わってきたのは、日本の人件費が高騰したために皮革製品の生産拠点が他のアジア諸国へと移っていったからだ。これが70年頃のことで、実はこの頃から過激な部落差別批判運動が盛んになっていくのだが、それは当時の政治的ラディカリズムによる反体制運動に影響されたためだけではなく、このような経済的な要因にもよっていたことが分かる。
著者はそうした運動に身を投じた経験を持つが、当時よく行われた過激な「糾弾」は、採用差別をするような企業に対しては有効だが、個人に対しては無意味だったと反省している。長らく運動に携わった人の判断として、小さからぬ重みを持つ発言だと思う。
同和利権批判者が非難する同和対策事業特別措置法について、ある時期までは必要で有益だったが、一定の期間を過ぎた後はむしろ廃止して、被差別部落民の自立への意欲を喚起すべきだったと述べている箇所も、著者の見識を示していて説得力がある。
このように、被差別部落問題については全体としてバランスの取れた記述となっていて好感が持てるのだが、ところどころで付随的に女性問題や在日問題に言及している箇所が柔軟性を欠き、全体の印象を若干損なっているのが残念である。被差別部落問題が複雑さや多様性を持つように、女性や在日に関する問題も、単純に男性や日本人を糾弾して済む事柄ではないはずだ。自分が関わりを持った被差別部落問題に対してそうであったように、複眼的な視点をもってこれらの問題に取り組んでいただきたいものである。