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喪失 (小学館文庫)
喪失
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紙の本
これもまたもうひとつの「北欧」の姿
2016/07/03 17:51
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
個人的にヘニング・マンケルブームの中、同じ訳者の柳沢由実子さんが手がけたこっちも読んでみることに。
ある事情でホームレス生活を送っているシビラ。
ホテルのレストランに客として入り込み、お金のありそうな男性にうまく食事を奢ってもらうことに成功したある日、その男性が残忍な方法で殺害され、自分がその犯人として指名手配されていることを知る。 シビラは逃げるが、犯人は犯行を繰り返す。
ミステリとしては弱さを感じますが、これは「ある女性の喪失と回復の物語」なんだろうな、と。
ま、逃げることを覚えてしまった人は次からまず最初に逃げることを選ぶ、ってことだな、と自戒をこめるけど、シビラの自分勝手さというか狭量さというか、大変きびしいものがある。 社会に適応できない人がいるのはわかるし、そういう人でも普通に生きていけるのが「成熟した社会」ってやつだと思うけど、適応できないことを本人が武器にしてしまうのはいかがなものか。
「与えられなかったもの」=「あらかじめ失われたもの」を自分の力で獲得するのは難しい。 けれどそのために物語はあるのではないだろうか。 空想・想像・共感、自分の中にたくさんの感情をつくれる。
仮に社会からドロップアウトしたとしても、ものすごく傷ついて誰も自分のことはわかってくれないと思っても、文化から自分を切り離しちゃいけない。そう感じさせられた本作。(2009年5月読了)