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金貸しの日本史 (新潮新書)
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紙の本
金貸し・高利貸しという業種ひとつを通史としてまとめた珍本
2005/08/04 08:57
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SnakeHole - この投稿者のレビュー一覧を見る
金貸し・高利貸しという業種ひとつに絞って歴史資料を漁り,通史としてまとめた珍しい本。著者が歴史研究の専門家ではなく,消費生活アドバイザーというどちらかと言えば金融の専門家なので,その史料解釈の信頼性などについてはかなり怪しく感じられる部分もないではないが,逆にほとんどの歴史学者は金融の専門家ぢゃあないわけで,これはこれでなかなか興味深い読み物になっている。
特に面白かったのはガキのころ社会科で習って以来ただ強権的で乱暴な政策とだけ理解していた鎌倉幕府の「徳政令」の詳しい内容と,それが発想され,そして実施できた背景の説明だ。まず徳政令の内容,大きく分けると「御家人所領の取り戻し」と「借金に関する訴訟の不受理」である。前者はつまり,生活に困って所領を売り払ってしまった御家人にそれを返せ,というもの。後者は借金を返さない借り主に対して,貸し手が返済を求めて起こす訴訟を幕府は受け付けない,お上は借金取りの手伝いをしない,ということである。……こう書くとやっぱりずいぶんと乱暴な政策なんだが,こういう制度が発想される裏にはニホン古来からの仏物,神物,人物という物の区分に根ざす深層心理があるんだというんだな。へえ。他にも金融に関わる目ウロコ話満載,全体としてはやや散漫な印象もあるが退屈しない本でありました。