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紙の本
天使なのか!?悪魔なのか?!戦場を駆ける異能者の冒険譚
2009/11/20 13:31
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ジーナフウガ - この投稿者のレビュー一覧を見る
BOOKOKAの企画している【福岡の書店員100名が選んだ激オシ文庫フェア】。
書店員さん達それぞれが帯に書かれた素晴らしい紹介文。
中でも、『不親切な小説?お勧めはしない。』この紹介文は断トツに強い異彩を放っていた。
題名・天使から受ける印象と、紹介のされ方に、随分な違いが感じられるではないか!?。
結論。読めて良かった!!。
心情や状況の説明がバッサリと削られた文体の独自性。確かに親切だとは言い難い。
けれども、読み進める内、最低限の事だけ濃縮し書かれた文章が、
場面毎に密接な結び付きを持っていた事が分かり始める。そこからは小説の虜。
劇薬のように、じわりじわりと全身の細胞へと世界観が浸透して来るのだ。
300頁足らずの分量でも充分に極上の長編映画に匹敵し得る、スリルやサスペンスが展開される。
文字を読む瞳の中くっきり、物語の舞台や人々の姿浮かび上がるのを体感出来る程だ。
ここまで立体的な奥行きを持つ作品には初めて会えたように思う。
作品全編を通じてのキーワードになる特殊能力『感覚』。
五感を自由自在に制御出来る様になった先に在る超自我の世界。
第一次世界大戦前夜のオーストリア。諜報機関の顧問官にスラムから拾われた少年こそ
生まれついて天才的な感覚を持っている、主人公ジェルジュ。
研ぎ澄まされ過ぎた自身の感覚に振り回され悩んだり。
滅び逝く帝国の中、自己保身ばかり考えている貴族達から便利な政治の道具として
危険極まりない任務を押し付けられたり。死と生は紙一重、隣り合わせの世界。
孤独や不安、絶望を生きる事で成長するジェルジュ。超能力と言えども、扱うのは人間。
SF風の設定が決して絵空事にならないのも、人間がキチンと描けて在るからだと思う。
特に終盤。ジェルジュの実の父が敵か味方か
区別しにくい形で登場、親子が様々な国家の陰謀を煙に巻くシーンは飛び切りのカッコよさ!!
時代小説でスパイ小説で、純文学にして、究極のエンターテイメント!!
本を読む醍醐味を存分に味わえる作品、痺れます。
紙の本
この世界観に浸れ!!
2007/12/19 18:29
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「バルタザールの遍歴」なんていうとんでもない本で
1Rで軽くノックアウトされた、私としては、
佐藤亜紀さんという存在は再戦を申し込みたいけど、
どんどん強くなられて、練習試合の申し込みもなにやらおそれおおい感じ、、、。
「戦争の法」とか、この天使のシリーズ(姉妹編の雲雀が、出ました)
それに、ユリイカに連載していた、小説のスタイルについての偉く難しいけど、
読んでみたい、テキスト。(これは、単行本化したおりには、是非読みたい)
後、超毒雑天下無敵スタイルのエッセイでも知られています。
一応、読んでないけど、フォローはしていましたよ、、。
と、へらへらした、にやけ笑いをうかべるのが、精一杯なのです。
で、シンジ君じゃないけど、逃げちゃダメだと、、。
(エヴァ新映画9/1公開だとか、、。)
思い立ったのが、先日の「ミノタウロス」の出版です。
とりあえず、天使シリーズから行こうと、
本書を手にとってみました。
第一次世界大戦を舞台にしたサイキックものと一応
下準備というか、下知識はもっていたのですが、
相変わらず、超ハードSのついてこれる人だけ、ついていらっしゃいの
佐藤式特別強化合宿スタイルでした。
プロットは、
特別な感覚(簡単に言うと、超能力)を持つ
ジェルジュは、貧しいバイオリン奏者の下で生活をしていたのですが、
オーストリアの顧問官に拾われます。
そして、選ばれし特殊能力者として諜報活動に従事するするのですが、、。
です。
戦争がはじまる前のどこか破滅的
(実際、この対戦の後、オーストリアは小さく分割されてしまいます)
退廃の匂いのするオーストリアを舞台に、美少年ジェルジュが(多分、いや絶対)恋をしたり、特殊な能力を持つゆえにニヒリズムに陥ったり、
恐らく戦争に行くことが英雄的行為だと、戦前は信じられていた
最後の戦争に冒険として参加したり、
それほど、性的な描写はないのに、
どこか、頽廃的で耽美的でエロティックです。
それと、超ハードSと書きましたが、
えらい、わかり難いです、この小説。
これはわざと、だと思いますが、
周囲の描写というか、状況の描写が殆どなく
わけもわからず放り込まれた、ジェルジュの
主観のみで、どんどん話は進んでいきます。
実際スパイって自分が見られることがすべてで凄いスパイほど、
自分がどっちサイドにいるのかさえわからないっていいますが、
正にそんな感じ、、。
それと、解説で豊崎さんも書いていましたが、この特殊能力の描写が、
恐ろしくすごいです。
能力者どうしの心での会話は、地の文で書かれ、
これぐらいは、よくあるのですが、
自殺一歩手前になる、感覚を開いていく
(これは、本書特有のサイキックの表現です)
シーンやサイキックバトルのシーン。
これは、ほんと、読んで感じて下さい。
バルタザール、、のときもそうでしたが、
短い本のわりに、読み終わると、どっと疲れます。
それだけ、濃密な一冊なのでしょう。
兎に角、佐藤ワールドを御堪能あれ!。
紙の本
少女漫画のような歴史ビルドゥングスロマン
2005/03/21 19:18
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わたなべ - この投稿者のレビュー一覧を見る
前半は独特の文体と物憂い内容にかなり読みにくかったのだが、後半は展開も早くなり一気呵成。非常によくできた豪奢なエンターテイメント小説である。ほとんど少女漫画かと思わせるような人物と物語で、無駄のない描写が緻密に計算された場面構成にはめ込まれ、「〜た」という語尾を多用する畳み掛けるような文体が行間から多くを読みとらせるスタイル。読みとらされるのは「感覚」というこの物語の主人公をはじめとする多くの登場人物たちが有する一種の超能力である。背景にあるのは一つの文明の終わり、ここではオーストリア帝国の終わりで、野生児たる主人公が見る絶滅寸前の貴族たちの姿は、能力者たちよりも異形のもののそれに近い。女達との情事、男たちとの友情もじめじめしていなくて良いし、絶妙な伏線が張られた親子関係の物語の取り込み方も巧い。一つだけ不満があるとしたら、最強の敵との戦いをラストに持ってきたことで、帝国の落日をもっと勇壮に最後まで描き尽くして欲しかったということである。