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商品説明
ホームレスだけが売れるストリートペーパー『The big issue Japan』とは? 個性あふれる路上書店、ビッグイシューで復活戦に挑む販売員。ホームレスにだって夢がある!【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
櫛田 佳代
- 略歴
- 〈櫛田佳代〉1976年神奈川県生まれ。法政大学法学部卒業。システムエンジニアとしてシステム構築に従事、その後フリーライターに転身。
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紙の本
先日、大阪駅北口で女の人がビッグイシューを売っていました
2006/02/11 12:00
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:栗山光司 - この投稿者のレビュー一覧を見る
僕は最初本書を読み始めるに構えていた。メッセージ性が強いんではないか、それとも主観的に思い入れが過剰で鼻白むのではないかと、でも、嬉しく裏切られました。表紙のあまりにも笑顔満開のホームレスたちの顔が僕より元気そうで、そんなに年の差がないのに若く見え、おいおい、この人たちは本当にホームレス?僕が明日から街頭に立ってビッグイシューの天売をした方が違和感がないんとちゃう?って思いました(笑い)。
先日も街場で、ビッグイシューを売っているホームレスに遭遇したが、彼らの取り分は200円で売って、110円が収入です。システムは独立自営経営で福利厚生というスタンスでなく「自立を支援する」という方針がビッグイシュー佐野代表のこだわりなのです。
だからNPOを立ち上げた経験があるにもかかわらずあえて会社組織にしたわけ。それは「Win&Winの事業」で立派なビジネスなのです。本書を読み初めて次第にこれはプロジェクトXではないか、僕が現役の書店員だったら、社会問題の棚に陳列するだけでなく、経営・ビジネスの棚に本書を平積みすれば面白いと思いました。事業立ち上げに関するヒントが結構あるのです。 勿論、作者は社会問題を啓発するために本書を書いたと思うのですが、読み手はそんな思いも寄らぬ脇道に入り込むことが出来ます。少なくとも僕はそうでした。最終章の「ホームレスがサッカーだって?」はスウェーデンで開かれたホームレスワールドカップのドキュメントなのですが、キャプテンの伊藤さんを始めとした物語は感動もので、何故日本のマスメディアは積極的に取り上げなかったのか、そのような「メディア論」に深入りしても良かったのですがそこは、問題提議だけにして伊藤さんの言葉を結語としている。
≪帰国してから一ヶ月、みんなで試合のビデオを見るために集まった席で、伊藤さんがゆっくりと言葉を選びながら言った。
「みんな知っていると思うけど、俺の場合は、子供が死んで、女房が自殺して、俺は、そういうことを、そういう今まで辛かったこととか忘れたいことを。全部。この場所に置いていってしまおうって思ったんだよ。もうすべて。すべてをここに置いて、この先、生きていってもいいんじゃないかって、あっちに行って思ったんだ…」≫
作者はビッグイシューと出会うことによって様々な入り口を発見している。その作者の素直な驚き、変貌ぶりが単なる社会問題啓発書の領域を超えて作者自身がホームレスの一人一人に対峙して例えば伊藤さんに対する思い入れを増幅させてノンフィクションでなくともフィクションとして作品化したものを読みたいと思ったし、書けるんではないかとそんな予感に満ちたデビュー作でした。
僕はビックイシューの創刊号を御堂筋で買っているが、もう最新号は43号なのです。今号の特別編集長は茂木健一郎です。芸大の茂木特別授業でホームレスの販売員が講師として喋ったのが収録されています。彼らがこんな風に表通で主張するのはとてもいいことだと思う。
千人印の歩行器
紙の本
「BIGISSUEって雑誌を知っていますか?」
2005/01/01 23:06
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ポルチェスと現代思想 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は2003年より主に大阪と東京で、ホームレスの「支援」を目的に発刊された雑誌『BIG ISSUE』にまつわるルポタージュであり、良質のドキュメントである。去る12月上旬、私の仕事場である練馬区の某大学の正門前で『BIG ISSUE』が販売されていた。
『BIG ISSUE』について雑誌そのものをご覧になったことがない人に簡単に説明すれば(本当はほとんど知識はないのだが)、一部200円。硬派な社会問題を扱った記事や、アーティストのインタビュー記事が載っていたりする。私もだいぶ前にダイドが表紙に載っていた号を買った。そのほかに表紙を飾るのは矢井田瞳、メグ・ライアン、ビョーク、ジョージ・マイケル、ブラッド・ピットなど主にアメリカ・ヨーロッパで絶大なる人気をもつアーティスト、ミュージシャン、俳優など。雑誌そのものはホームレスの自立支援を目的としているため、200円のうち110円が販売員の収入になり、それを元手に新しく雑誌を仕入れたり、生活費に充てたりするシステムになっている。大本の発祥は英国のロンドン、1990年代前半に一企業家の呼びかけにより始まった。
著者である櫛田佳代は1976年生まれで、本作がデビュー作。2004年の春に渋谷で英会話学校に行くちょっと前に変わった雑誌を見かけたことから、日本における『BIG ISSUE』の関係者や販売員の人たちの語りを収集している。
彼女の基本的なスタンスは、社会問題についての意識にあふれたそれとは異なり、初期には販売員であるホームレスに「話しかけづらい」感情を持っていたり、取材を通じて自身の偏見を再認識するもので、何かを書きたいときに偶然、おもしろい現象を見つけて、それにどっぷり浸かっている。時折、彼女は泣いたり、笑ったり、とまどったりする。その一つ一つのしぐさを読み進めていくうちに、読み手である私もその場面に一緒にいるような錯覚を抱いてしまう。だが、単純に主観的なレポートだけでなく、ホームレスたちの集住地域(大阪の「釜ヶ崎」←この地名は現存の地図にはないが、周囲の人々の心的地図にはマッピングされている)の社会的背景や、販売方法やシステムの大阪と東京の比較、販売員ではない事務局の人たちの語り、販売員の生活状況(収入、支出の内訳、寝泊まりしている場所)、ホームレスを取り巻く社会(家を借りる時の問題や、他の業種との関係性)なども丁寧に記述している。その意味で、『BIG ISSUE』という媒体やその販売員たちから観た現代日本のさまざまな諸相を明らかにしている。
課題を挙げるなら、販売員であるホームレスはすべて男性で、これはジェンダー的に言えば、つっこみどころ。実際に池袋西口公園には女性のホームレスの姿もある。そして『BIG ISSUE』の販売員は私の知っている限り男性だけ。女性の視点でどのようなことができるのかは今後に期待したい。また、これは無い物ねだりかもしれないが、『BIG ISSUE』が帰るのは日本においてごく限られているということだ。この本を手に取ったとしても、具体的な東京・大阪ローカルの話は思い浮かびにくいのではないだろうか? それはまさしく、「ホームレス」と呼ばれる人々が都市部に集中しているからに他ならないのだが。
でも上記の課題を差し引いても、この本ははっきり言って、オススメ!! 著者と同じようにはじめに偏見があっても是非読んでほしい。べつに偏見を直そうという意図よりも、偏見が明らかになり、それとどう向き合うのかその著者の姿を追いかけるだけでもこの本は価値があります。
紙の本
知ることで何かが始められそうな気になる
2005/06/23 22:39
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
新宿小田急百貨店の近辺で、黙って「ビッグイシュー」という雑誌を右手に掲げて立っている初老の男性を随分前から見かけていました。雑誌の表紙写真はケビン・コスナーなどハリウッドスターなのですが、どことなく安っぽさを感じさせるくすんだ色合いの写真です。10年ほど前にはその近くで宇宙人を信仰対象とする宗教団体がパンフを掲げていたので、「ビッグイシュー」もやはり宗教団体の宣伝誌だと思って通り過ぎていました。
本書によれば、これは英国でホームレスの就業支援を目的に創刊された雑誌の日本語版とのこと。ホームレスはまず一人10部を無料で受け取って街頭販売します。売価は一部200円なので10部売り切れば2000円が収入になります。これを元手にして以後は1部90円で仕入れて販売するという制度です。誌面構成は表紙写真の著名人の単独インタビューを中心とした、いたってまじめな情報誌だとか。
本書はこのビッグイシュー誌の取り組みを東京と大阪に取材してまとめたものです。
こうした就業支援活動が自分が行きかう路上で、目の前で展開されていたとは知りませんでした。そうした「身近な未知」を知らせてくれる読書というのは楽しいものです。身近であるからこそ、知ることで何かが始められそうな気がしてきます。
ただし本書が一作目であるだけに、著者の取材には詰めの甘いところが見られます。ホームレスの男たちにかなりウェットな形で関わってしまっていて、必要以上に肩入れしたり、無邪気に感動の涙を流したりしています。取材対象との距離のとり方が気になりました。
ホームレスのことを単に怠惰で不潔な人々という風にしか見られない市民の生理は確かにあります。読者の否定的な思いを払拭するためには、彼らの多くがなぜホームレスとなったのかついてもっと突っ込んだ記述が必要です。「あることがきっかけで」(120頁)と一言で片付けるのは損です。
紙の本
ビッグイシューと陽気なホームレスの復活戦
2004/12/28 11:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:著者 櫛田 佳代 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ホームレスなのに、大笑い?
ホームレスなのに、真剣に話し合い?
ホームレスなのに、通る人を励ます?
そんなホームレスがいることを、あなたは信じることができますか?
ビッグイシューというストリートペーパーを売る販売員がいます。彼らは全員ホームレスで、「生きなおす」チャンスとして、ビッグイシューの販売という仕事を選びました。彼らは「雨が続いたら雑誌が売れん、首吊らんといかんかな」と冗談を言い、仲間同士で大笑いをし、そして売上げ向上のために真剣に話し合いをします。今までホームレスと結びつかなかった「一生懸命」という言葉を思い起こさせます。また、私たちが当たり前だと思っていることの重要さを改めて実感させてくれるのです。
もちろん、『ホームレス』という言葉を聞くと、
「逃げ出したんだろう?」
「上司に怒鳴られることもなく気楽にやってるんだろう?」
「なれるものなら俺だってなりたいよ」
という思いをほんの少しでも持つ人が多いのではないでしょうか?私自身も、正直「自分が原因を作ったんだから」と思わなかったわけではありません。
リストラ、金、逃避、喧嘩、酒、ギャンブル、大切な人の死、孤独…。原因はそれぞれ、さまざまあって、どう考えても本人に原因があることもあれば、誰もが犯しそうなほんの不注意であることもあり、外的な要因であることもあれば、それらが相互作用していることもあります。
でも、どんな原因で路上に出たとしても、ホームレスと呼ばれる彼らには生きなおすチャンスがほとんどありません。今、彼らはビッグイシューを売る仕事を知り、仲間と一緒に敗者復活戦に挑んでいます。そんな彼らの熱意を感じ、販売場所を通る人は励まされています。
私はホームレスなんて別世界だと思っていました。普通に生活していれば関わることもないし、関わりたいとも思っていませんでした。ただ街で見かけた販売員が、ホームレスとはあまりにギャップのあるカッコいい雑誌を売り、とても前向きに明るく、人生を生きなおそうとしているのを見て、ホームレスのイメージを180度変えられました。そしてみなさんにそんな彼らを知ってもらいたくなりました。そして生きることに必死な彼らと一緒に笑って欲しいと思っています。