紙の本
闇の歯車となった四人の男とその女たちの移り動く心情を絶妙に描いたサスペンス
2010/02/03 18:49
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
<あらすじ>
赤提灯に集まる、話はしたことがないが何となく仲間意識を持っている常連客の四人。
四人は「闇」に落ちかけている。
その四人それぞれの前に突然現れた「闇」が、押し込みの話を持ちかけ、「歯車」になるよう勧める。
押し込みの時刻は「闇」に落ちかける逢魔が刻。
四人はそれぞれに思う女がおり問題を抱えていたが、それを手っ取り早く解決する手段は金。
四人は問題を解決すべく「闇の歯車」となって動きだした。
<感想>
四人の物語と押し込みの展開で味わうサスペンスも面白いが、彼らの心の動きも繊細に描かれていて、深い味わいをみせている。
とくに、「闇」に落ちかけている四人とそれぞれの女、「闇の歯車」になるかなるまいか思案している四人、押し込みを終えた後の四人、「闇の歯車」が止まった時のある男と女、物語の進展とともに移り動く彼らの心情が絶妙に描かれている。
終章の、男に腹の底から突き上げてくる笑いと怒り、寂しさ、やるせなさ、決意は一番の見所。
男の複雑で次々にこみ上げてくる気持ちが強く深く伝わってくる。
他の3人とは話はしないが飲み仲間であり、好意を持っていたという気持ちがこの複雑な感情を生み出している。
また『あんなに意気込んで、押し込みをやりやがって、ばかめ』と思う場面は、織田信長が父の祭壇に向かって灰を投げつけた時の気持ちを思い出させる。
電子書籍
はずれのない作家
2015/09/29 13:13
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:okadanbo - この投稿者のレビュー一覧を見る
ほとんど、紙本で読んだと思っていたが、この本はまだだったので、取り合えず購入。
藤沢周平の作品は、ほとんどはずれがないので、いつか、旅先ででも読もうと思っている。国内より、海外の風景の中で読むと日本の良さが引き立ちそう
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馴染みの店である男の誘いを受けた4人の男達が、それぞれ抱える問題の為に承諾し、押し込みをする話。
人生、善くも悪くもおもうようにはイキマセンナ。てところか。まー、うまくいかない事のが多いんだけどネ・・・。
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ある一膳飯屋で閉店間際にたいてい顔を見せる常連の男4人。それぞれに金への不満と屈託を抱えながらもなんとなく顔見知りという程度の間柄しか持たなかった彼らに、不意に近づいてきた男。簡単に大金が稼げる仕事があると……あまり長くない話で、ちょっとあっさり終わるような気がするのですが、ほのかな終わりの光がさす読後感は悪くない。
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小さな飲み屋で顔を合わせるだけの4人の常連。
浪人,遊び人,隠居,若旦那の4人は会話を交わすこともない。
しかし,4人を押し込みに誘う男が現れ,闇の歯車が回り始める。
江戸市井に暮らす人々の数奇な人生が巧みに描写されている。
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ふとしたことから押し込みに誘われた男達の物語。
それぞれのたどる運命がどれも悲しい。
舞台を現代に変えて、そのままドラマ化できそうです。
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読了。
酒亭おかめに飲みにくる同じ顔ぶれの四人の男。みなそれぞれ生活に苦労があり、ここで飲む一杯にそれぞれの思いがあった。その四人を押し込み強盗に誘う一人の男がいた。盗人で多くの金をたくみに奪い、同心の追跡をかわしてきた腕と頭を持っているという。「手伝ってくれれば百両づつそれぞれに。それで気分のいい、新しい生活が始められる。絶対に捕まることはありません」。言葉巧みに誘われた四人の男たち。そして、その男たちの妻、娘、婚約者達を巻き込み、歯車が回り始める。
押し込みにいたった原因はすべて女がらみだが、四人の男の性格の「よさ」と「だらしなさ」のバランス感が、ことの顛末が皮肉な形になるにもかかわらず一種のすがすがしさを与えている。そのなかでも構成の中心になる佐乃助は雰囲気よく物語を読ませるために配された人物で、彼の「仲間」や女に対する視線は、感情移入をしやすい繊細さを見せ、この本を読みやすく楽しめるものにしている。
娯楽時代小説っていいなぁと思わせる一作。ちなみに藤沢周平はこれがはじめて。もっと読みたくなりました。
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佐之助、弥十、伊黒、仙太、伊兵衛という5人の登場人物がある飲み屋で偶然に出会い、押し込み強盗に加担してゆく。
それぞれ様々な思いから強盗に加担するわけだが、少しの綻びが歯車を狂わせ一枚、一枚と歯車が欠けてゆく。
最後に救いを残している所がよい。藤沢周平さんの作品は女性が大きく包み込んでくれる作品が多いように思う。このあたりが男性のファンが多い理由だろうか。
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登場人物はそれぞれの思惑があって事件に巻き込まれていく。うまくいくのか懐疑的にみる読者をひきいれドラマは進む。さて落としどころはは?というと、さすがは藤沢周平。しぶくも安心なフィナーレを迎えます。
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約250頁程度の小説。
ある居酒屋の常連客4人が押し込み強盗に手を貸す話。
サクサク読めて分け前を待つまでの4人の話は一人分読んだら他の人も気になって一気に読み進めてしまった。
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ひとつの出来事に関わる男たちの、それぞれの理由やそれぞれの想いに泣かされる。
特に浪人伊黒と弥十爺さんにはやられた。
あと佐之助がおくみにかける言葉がかっこいい。
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安定したおもしろさ。はずれがなく、出版されている本も量があり、すばらしいです。藤沢先生。
やはり、簡単には大金を得られない…。
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やっぱり、藤沢周平氏 時代小説良いね!
浪人、遊び人、御隠居、老舗の跡取り息子、の4人が、身辺の問題から、悪の誘いの押し込み強盗に加担して行く事になる。
少しずつ、「闇の歯車」が、回り出す。
4人は、皆、お互いの素情も知らないが、お金が、必要の為に、伊兵衛の先導に従うが、読んでいると、この押し込み強盗が成功して欲しいような気にさせる。
病気の妻を持つ浪人など、最後に、妻へ良い薬を与えたいと、思ったことであろうし、作者自体、若くして、妻を、病気で失くしているので、余計に、そう思って、読んでしまった。
2人は、悲劇の終わり方だが、後は、まだ、生きているだけ幸せなのかも、、、、
張本人の伊兵衛は、どうなったのか?押し込みで奪ったお金は、、、、?と、なぜか、続きは無いの?と、思ってしまった小説である。
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おいおい、畳職人の源助は、一体どこいった?
繰綿問屋のボンと女中が結婚?
話の主人公でもある左之助が現代のピンピラみたいなものだと考えると、水商売のおくえと結ばれるのもありがちな話と思えてくる。
いよいよ堅気になって、果たして真面目なパパになれるのかな?
と、つっこみ所はたくさんあるけれど、終始グイグイ読ませるのでやはり面白い。
出てくる悪党どもがみんな格好いいし、それを書いている藤沢周平も、かっこいい。
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初藤沢。ちゃんとした時代小説は初。森博嗣先生の“ヴォイド・シェイパ”シリーズくらいかな、時代小説らしきものは。いや、普通に面白かった!江戸時代?の人々の暮らしや生活がちゃんと描かれていて、良かった。伊兵衛が呑み屋の常連四名を個々に悪事に加担させる様はとても読み応えがあった^^ これから少しずつ時代小説にも手を出していこう。そう思えた作品であった。