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紙の本
今日の味方は明日の敵という時代を
2008/11/03 05:43
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:LR45 - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史というのは、大まかに言って時代が現代に近づくにつれて、客観的な証拠が多くなり、またその信憑性も高くなるので、時代が新しいほど理解しやすくなる傾向があるのはないかと思う。
極端な話をすれば、邪馬台国のことよりも太平洋戦争のことの方が、史料が多いし理解もしやすいということだ。
しかしながら、南北朝時代というのはこの比例関係からかなり逸脱した時代だと思う。
その要因としてはやはり朝廷が南北両統に分裂し、一体誰と誰が何の目的で戦いを続けているのか分かりにくいという点が挙げられると思う。
例えば、源頼朝の戦いの目的は東国武士を束ねて平氏を倒すことという一点に絞って大きく間違いはないだろうが、足利尊氏の戦いの目的を後醍醐天皇を廃し、南朝の諸氏を滅ぼすこと一点に絞れるかというとそうは言えないだろう。
さらにこの時代を難しくしているのは、多くの武士、貴族が必ずしも北朝南朝のいずれか一方と運命を共にするというわけではなく、状況によって北朝側から南朝側に転じることがあったり、さらには、北朝の主人公たる足利家すらも二つに分裂しており、結局、北朝尊氏派(正確には高師直派)・北朝直義派・南朝と三つの勢力に別れ、泥沼の戦いを半世紀も続けたことにあるだろう。
また、この時代が戦前の皇国史観と密接に相まっていることも取っつきにくくしている要因であるのではないだろうか。
そういうわけで、私自身この時代は興味はあるが、苦手という時代だった。
しかし、多くの著名な歴史学者が本書を名著と讃えているように、あらゆる角度からなぜそうなるのかということがわかりやすく書かれている。
なぜその事件が起こったのか、その結果何が起こったのか(大げさに言えば歴史がどう動いたのか)ということが一貫して著述されているので、非常に理解しやすい。
とある現役の歴史学者が「歴史学は化学である」と述べておられたが、まさに歴史の中の化学反応をわかりやすく解説していると表現したらいいだろうか。
この南北朝時代を経て、義満時代の一時的な栄華を誇るものの、基本的には戦乱と混乱が続く室町時代に入っていくわけだが、既に尊氏存命の頃に幕府内の混乱が読み取れるのである。
幕府内の混乱が劇的に表面化するのは、嘉吉の変あるいは応仁の乱であろうが、その前兆は既に幕府草創期に見られており、この辺りから混乱の理由を拾っていかないと、織豊政権に至るまで続く混乱は理解しづらいのではないかと考える。
そういった意味でも本書は極めて秀逸な本であると評価せざるを得ず、一般に中央公論社から出版されている、この「日本の歴史」シリーズは名著が多いと思うがその中でも特筆に値するものであると思う。
紙の本
南北朝時代の全国的動乱の根源は一体何なのか?それを解明する興味深い一冊です!
2020/07/28 10:00
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、長らくベストセラ―を誇ってきた中公文庫の全26巻シリーズからなる「日本の歴史」の第9巻目です。同書は、南北朝時代を中心に解説された一冊で、宿願の幕府打倒に成功した後醍醐天皇は、旧慣を無視して建武の新政を開始します。しかし、それは、もろくも3年にしてついえ、あとに南北朝対立、天下三分、守護の幕府への反抗の時代がおとずれます。この70年にわたる全国的動乱の根元は一体何であったのか?それを解明していく書です。同書の内容構成は、「公武水火の世」、「建武の新政」、「新政の挫折」、「足利尊氏」、「南北両朝の分裂と相剋」、「動乱期の社会」、「直義と師直」、「天下三分の形勢」、「京都争奪戦」、「南朝と九州」、「苦闘する幕府政治」、「守護の領国」、「名主と庄民」、「室町殿」、「王朝の没落」、「日本国王」となっています。