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菩薩にも杯を
2005/06/13 11:23
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村静英 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人は、独りでは生きていけない。
使い古された言葉の意味を思ってみる。
生きていることと死んでいないことの違いを、並べてみる。
共に泣き、笑い合える至福の存在。
そんな愛すべき人を、彼らは天使と呼んだ。
規格外の天使達。
アル中寸前のサラリーマンと感情を忘れたヤクザ。
普通というものが多数決で決まる世の中では、多いに外れている二人。
さらに、多くの恋人達が男女であることを思えば、同性である彼らは、ここでも常識から零れている。
ゆがんだ人間の心には、満たされない歪な隙間がある。
そこを埋めるのは、同じ空洞を持つ者なのだろう。
虐待され、心を凍らせた神を信じない子供。
神はいないが天使はいると答えた牧師。
その言葉にすがり、淋しい子供は、天使の刺青しょった大人になった。
長い孤独の果て、恋いつづけ手に入れた天使は、リストラされ妻にも逃げられた若くない男だった。
社会に疎まれた心やさしい男が、彼の天使になって隙間をふさいだ。
辛い現実に蓋をした子供は、幸せにも気付けない。
けれど、天使に出会える未来があった。
可哀想な子供の天使、閉ざされた蓋をそっとはずす…なんてことはせず、酔ったはずみで叩き壊して乗り込んできた。
重なる優しさが全身を覆うとき、不器用なヤクザ、美しいものを美しいと感じる心があることを知る。
きっと誰も、幸せの可能性を持っている。
いつか天使に出会える未来。
いつか天使になれる未来。