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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:1997.1
  • 出版社: 中央公論新社
  • レーベル: 中公文庫
  • サイズ:16cm/321p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-12-202784-5

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紙の本

ノラや 改版 (中公文庫)

著者 内田 百間 (著)

ノラや 改版 (中公文庫)

782(税込)

ノラや

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ノラや

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みんなのレビュー100件

みんなの評価4.2

評価内訳

紙の本

悲しくて悲しくて悲しくて、やりきれない

2003/05/27 20:45

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:アベイズミ - この投稿者のレビュー一覧を見る

私がこの本を読み切ったのは、随分前のことになる。いたく感動もした。是非是非レビューを書こうとしたのだけれど。挫折をした。どうにも上手くいかなかったのだ。冷静に文章が出てこない。書こうと思って、必要なトコロだけでもと、読み返そうとすれば、泣けて泣けて泣けて。とてもレビューどころではなかったのだ。

「ノラやノラやノラやノラや」

この本「ノラや」が、泣ける本であるということは、噂には聞いていた。聞いてはいたけれど、通り一遍の「泣ける本」ということだろうと、私は高を括っていた。良い話なのだろう。目頭が熱くなるのだろう。猫好きにはたまらないのだろう。私だって泣いちゃうかもしれないぞ。そんな暗黙の承知をしていたことに、読み始めてすぐに気がついた。それどころではなかったのだ。この本にはそんな常識は全く通用しなかった。私は慌ててしまったのだ。とにかく一言で言ってしまえば、この本は度を超えている。度を超えて嘆いている。度を超えて嘆き悲しんでいるだけの本と言ってしまっても、間違いはないとさえ思うのだから。

「ノラやノラやノラやノラや」

とにかく何よりもまず、この本を書いている百?先生の悲しみがり方は尋常ではない。常軌を逸している。馬鹿げている。きっと手に余る。手の付けようがない。子供のようと言ってよいやら、ボケ老人のようと言ってよいやら、分からなくなる。もちろん同情してしまうし。可愛らしいなあとも思う。時には困った人だなあと苦笑いも浮かぶのだけれど。それでも当の本人は、ひたすら泣きに泣き、泣き暮れているのだから。やはり二の句が付けなくなる。何にも言えない。私は言葉を失ってしまうのだ。

「ノラやノラやノラやノラや」

本当に本当に本当に悲しいとき。人はきっと壊れたように泣くしかないんだ。気が済むまで。例え気が済むなんてことがなくても。涙が止まらないんだ。どうしようもないじゃないか。だから大の大人が手放しで、オンオンと声を上げて泣いている。

「ノラやノラやノラやノラや」

そのあられもない姿をみていると、どんどん垣根が無くなっていくのを感じるんだ。いろんなモノが関係なくなっていくのが、私には分かるんだ。泣いているのが大の大人だとか。一人の年寄りだとか。猫を飼っていたからとか。猫をなくしたからとか。そんなモノがすべてストンと抜け落ちていって、深い深い悲しみだけが見えてくる。だから私まで丸裸みたいな気分になって、ただただもう悲しいのだ。悲しくて仕方がないのだ。

そして私を心底悲しがらせたのは、ノラの代わりに住みついたクルツに話しかけながら酒をのみ、肴をつまむ場面でした。

先生はノラを忘れない。クルツにもわが家の猫はノラが一番だからと言い含めてる。ノラの由無しごとをクルツに話す老先生。聞くともなしにただいるクルツ。その日は珍しく、泣くでも嘆くでもなく、淡々と訥々とクルツに話しかけている。その場面の、先生も、クルツも、ノラも、すべてが悲しかった。帰ってこないノラも、そこにいるクルツも、待っている先生も、クルツを撫でる先生も、それを読む私も、私の横に寝そべる猫も、すべてが悲しかった。生きとし生けるものすべてが悲しかった。

「クルや。クルや。猫や。お前か。猫か。猫だね。猫だらう。間違ひないね。猫ではないか。違ふか。狸か。むじなか。まみか。あなぐまか。そんな顔して、何を考へてる。」

ああ、また私は泣いてしまいそうだよ。

「クルや、雨が降ると淋しいね。」

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紙の本

深い愛情を注いでいた存在を失って、うろたえ嘆き悲しむ百間先生の姿に、我が身を重ね合わせてしまい、涙涙。

2012/02/06 08:14

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:道楽猫 - この投稿者のレビュー一覧を見る

何事も、経験してみないとわからないものだと思うが、"猫を失う"というのも、経験した者でないとその悲しみは理解できないものだろう。

いいトシをした爺さんが、いなくなった猫を思って身も世もなく泣き崩れる。
愛猫のお気に入りだった寝床に突っ伏して、「ノラやノラや」と近所に聞こえるほどの声で毎晩号泣するのだ。
その姿を見て「滑稽だ」と嗤う者もきっと多かったに違いない。ましてそれほどまでに取り乱しているのは、頑固一徹と言われた百鬼園大先生なのだ。口には出さずとも、「いい気味だ」と溜飲を下げた向きもあったようだ。

だが、私は笑えなかった。
それどころか、百間先生と一緒になって、「ノラやおまえはどこへ行ったんだ」とめそめそめそめそ泣いてしまったのだ。
だって猫を失って嘆き悲しむ先生の姿は、そのまま私の姿そのものなのだから。

実家に、ノラと同じような猫がいた。ヒメという名の雌猫だった。
百間先生の奥様のように、母はよく
「いい子だいい子だヒメちゃんは」
と猫を抱っこして歩いていた。
ノラとヒメは共通点がたくさんある。
ヒメはノラと同じくとても頭の良い猫だった。
バスマットの上に粗相をした時、それを上手に足で蹴ってくるんで隠したこともまったく同じ。
その上、ノラと同じくある日ふいっと家を出て、そのまま二度と戻らなかった。
「ノラや」を読みながら、私はどうしても、いなくなったヒメを思い出さずにはいられなかった。

私と家族は、「あれは覚悟の上の家出だ。何故って、前の日、いつもは愛想なしのあの子が、こちらが驚くほど擦り寄ってきていた。あれは別れの挨拶だったんだろう。それにごはんもいつもよりたくさん食べていた。食べ溜めしていたんだ。」と口々に言い合ってお互いを慰めた。

だから、どこかで元気に暮らしているに違いない

そう思うことで心に折り合いをつけた。
それでも喪失感は大きく、なかなか気持ちの整理がつかなかった。

その後、はからずも、百間先生はクルツという、ノラに良く似た別の猫を飼うことになるのだが、クルを可愛がりながらも、決してノラのことを忘れていなかった。
ノラのために毎日続けているおまじないを欠かさない。何かの拍子にふとノラを思ってはまた涙する。

昨年、私は18年間連れ添った最愛の猫を亡くした。
行方不明の猫を思って流す涙は、可哀想な猫のための涙だが、亡くした猫に流す涙は、それはどちらかと言えば人間の側のためのものだろう。私は絵に描いたようなペットロス状態に陥った。毎日毎日うっかりすると人前だろうとどこだろうと涙が頬を伝い、慌ててそれをぬぐう。
ふすまを閉めるとき「あ、もう猫が通る隙間を開けておく必要なかったんだ」と思っては涙、魚を食べるとき「これ、あの子が大好きだったなぁ」と思っては涙、もう心置きなく旅行にいけるんだなぁと思ってはまた涙。涙涙涙。
だからクルの描写は、本当に読んでいて辛かった。

「クルやお前か」
このひと言に胸が締め付けられる。
「ノラや」を読んで「笑った」という感想を読んで私は憤った。人の悲しみをなんだと思っているのだ。
深い愛情を注いでいた存在を失って、うろたえる姿がそんなにおかしいか。悲しんで何が悪いのか。

正直、読んだ直後は、去年亡くなった猫を思い出して辛くてしょうがなかったし、読むんじゃなかったなぁと後悔もしたけれど、そうやって事あるごとに思い出して涙を流す、それ自体が、逝ってしまった猫たちへの、そして自分自身への供養になるんじゃないかと思い直した。
そうしてもう一度最初からゆっくり文字をたどり、可愛いノラとクルに思いを寄せた。

ノラもクルも百間先生も、いまはもうみんなこの世にいない。

それでも、その深い想いは、時を超えて私の心に沁みてきて、知らずまた涙を引き寄せる。
本は凄い。

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紙の本

大作家の可愛らしさと悲しさ

2001/11/20 18:14

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:きんぴら - この投稿者のレビュー一覧を見る

 大の大人が泣くのだ。それも猫が帰ってこないといって、風呂にも入らず食事も取らず、泣き暮らすのだ。
 もともとノラは作者の庭に遊びに来た野良猫の子供だった。いつか懐いてしまった猫だった。ノラは風呂桶の上で眠る。寿司が好き。些細なことまで覚えており、いつか消えてしまった後、思い出しては涙する。何だ猫くらいと思っていても思わず共感し、目頭が熱くなるのは何故だろう。猫を飼った事のある人も無い人も、作者が必死に猫の行方を捜す様を見て、笑えはしないだろう。新しい猫との出会い、別れ。悲しみや、その悲しみを忘れる時の恐怖。文壇で恐れられていた内田百間の意外な一面がかいま見える作品である。

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2010/05/15 01:40

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2004/10/04 01:12

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2004/10/31 11:15

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2006/02/17 00:36

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