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国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて
  • みんなの評価 5つ星のうち 4.3 74件
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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:2005.3
  • 出版社: 新潮社
  • サイズ:20cm/398p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-10-475201-0
  • 国内送料無料

紙の本

国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

著者 佐藤 優 (著)

【毎日出版文化賞(第59回)】有能な外交官として対ロシア外交最前線に飛び出した男は、なぜ国家に裏切られなければならなかったのか…。全てを奪われた男が、沈黙を破り「鈴木宗男...

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国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

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商品説明

【毎日出版文化賞(第59回)】有能な外交官として対ロシア外交最前線に飛び出した男は、なぜ国家に裏切られなければならなかったのか…。全てを奪われた男が、沈黙を破り「鈴木宗男事件」の真実を明らかにする。外務省、検察庁を震撼させる衝撃の内幕手記。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介

佐藤 優

略歴
〈佐藤優〉1960年生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。外務省に入省し、国際情報局分析第一課等に勤務。2002年「鈴木宗男事件」の際、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕、現在起訴休職中。

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みんなのレビュー74件

みんなの評価4.3

評価内訳

紙の本

属国の罠

2005/03/31 19:13

14人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:sheep - この投稿者のレビュー一覧を見る

外務省のエリート東郷和彦と、鈴木宗男、著者らが、賄賂、支援委員会資金背任がらみ、あるいはディーゼル発電関連疑惑等で失脚したのは2002年。
大物政治家らしからぬ些少な賄賂額と共に、不思議に思われたのが、超エリート外交官の東郷和彦が、北方四島ではなく二島返還の方向で強引に動いていたという記事。二島返還で手をうてば交渉は進んだかも知れぬが、その犯罪的行為は末代まで伝えられる。超エリート外交官であればそんな交渉を進めるくらいならむしろ潰すのではないかと思えたからだ。

1956年の日ソ共同宣言第9項に記されている。「ソ連邦は、日本国のにこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただしこれらの諸島は、日本国とソ連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする」。
従い、著者の言う通り、日本としては国後島択捉島が日本領であることを確認することが要諦だ。東郷が二島先行返還によって平和条約締結ができると考えたことはないと著者はいう。著者も鈴木もそうだと。著者らの逮捕当時・以後のマスコミ報道と言い分は大きく異なる。
プーチン大統領と森前総理の会見がセットされていたのが様子が急変する場面の描写にも驚いた。日本から強烈な圧力がかかった為という。著者達らの熱意により日ソ関係が多少なりとも動き始めた、又はパイプができそうになったからこそ潰されたのが真相かとも思える。

118ページに本件の意義が纏められているのを引用しよう。
引用始
小泉政権の誕生により、日本国家は確実に変貌した。
-中略-
冷戦後存在した三つの外交潮流は一つに、すなわち「親米主義」に整理された。
田中女史の、鈴木宗男氏、東郷氏、そして私に対する敵愾心から、まず「地政学論」が葬り去られた。
それにより、「ロシアスクール」が幹部から排除された。次に田中女史の失脚により「アジア主義」が後退した。「チャイナスクール」の影響力も限定的になった。
そして「親米主義」が唯一の路線として残った。
-中略-
第二は、ポピュリズムによるナショナリズムの昂揚だ。
引用終

森喜郎前総理にまでも及ぶか、というところで、捜査は突然幕切れとなる。探偵小説や実際の犯罪では、一番利益を受ける者が真犯人であることが多い。著者が「国策」捜査と称する事件の黒幕、見当がつきそうな気もするが、本書そのあたりは不明だ。ナショナリズムも、国家というより新満州国のそれではないのか。
田中・鈴木の両氏、外務官僚に利用され追放されたということのようで、最終的勝利を得たのは外務省現執行部だと著者はいう。今の外務省、素人には永久戦体制下の某国務省駐日事務所の様に見えるが。

あとがきに「太平記」の天狗の話がある。楠木正成等失意の内に倒れた人物が天狗や妖怪になって現実の政局に影響を与えている様子もおもしろい、と。天狗は世のため人のためによかれと思って事を進め、それは確かに成果をあげるのだが、当時のエリート官僚に認められなかった。日本国家が天狗の力を必要とする状況は今後も生じるであろう。過去の天狗が自らの失敗について記録を残しておけば、未来の天狗は、少なくとも同じ轍は踏まないであろう。それがこの回想録執筆に至った主な動機だという。

基本事実確認の為「日露外交」という本を読んでみた。事実関係の記述は本書と大きく異なっている。さすが「断たれたのは佐藤の将来ばかりではない。佐藤が築き上げた夥しい数の対露人脈のパイプも同時に閉ざされてしまうことになろう」という記述も見えるが、「日露外交」に書かれていることが一般的な理解だろう。機密事項ゆえ、どちらが真実かは時間を経ての文書公開を待つしかなかろう。
著者に全面賛成するわけではないが、せめて外交交渉の事実、この希有な記録こそ真実であって欲しいと願いたい。日本外交を考える際、必読の一冊だろう。

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紙の本

時代のけじめの犠牲者

2005/04/30 00:43

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:良書普及人 - この投稿者のレビュー一覧を見る

この本を読むと、「鈴木宗男という利権政治屋に取り入って自らの栄達を目指す腹黒い外務省職員」というマスコミ的イメージはものの見事に翻り、「事なかれ主義の組織防衛に徹する外務官僚とは異なり、異能な情報収集能力を駆使し、ロシア、の学会、政界の枢要な人脈に食い込み、北方領土問題の解決という国家的課題に取り組む道半ばで、国策捜査に巻き込まれた、真の国益を考えていた国士」というイメージに鮮明に変わる。
取り調べ検事とのやりとりが具体的に記されている。検事の言葉は迫真性を持って読者に迫る。
「これは国策捜査なんだから。あなたが捕まった理由は簡単。あなたと鈴木宗男をつなげる事件を作るため。国策捜査は、時代のけじめをつけるために必要なんです。時代を転換するために、何か象徴的な事件を作り出して、それを断罪するのです」、「運が悪かったとしか言いようがない」、「評価の基準が変わるんだ。何かハードルが下がってくるんだ」、「法律はもともとある。その適用基準が変わってくるんだ。特に政治家に対する国策捜査は近年驚くほどハードルが下がってきているんだ」、「あなたはやりすぎたんだ。仕事のためにいつのまにか線を越えていた。仕事は与えられた範囲でやればいいんだよ。成果が出なくても。自分や家族の生活を大切にすればいいんだよ。それが官僚なんだ」。
佐藤氏の記憶力は抜群で、記憶は「映像方式」、何か切っ掛けになる映像が出てくると、そこの登場人物が話し出すのだそうだ。それにより、検事とのやりとりを克明に再現できている。
佐藤氏の情報収集能力は、目覚ましい実績によって評価が高い。エリツイン大統領辞任とプーチン首相の大統領代行就任を世界の先進諸国に先駆けて入手したのは佐藤氏なのだそうだ。
今回の「事件」で、政府にとっての異能の情報ルートを、国策捜査は絶ちきってしまった。ただでさえ十分でないといわれる日本の国際情報収集の能力が、更に凡庸な情報収集能力に惰していくのか心配である。
佐藤氏は、「時代のけじめ」の意味について、内政におけるケインズ型公平配分路線からハイエク型傾斜配分路線への転換、外交における地政学的国際協調主義から排外主義的ナショナリズムへの転換という二つの線があり、その線の交差するところに鈴木宗男氏がいた、という見立てている。
同志社大学で、組織神学を学んだ佐藤氏は、旧ソ連のゴルバチョフ政権時代、当時のソ連共産党幹部に、キリスト教社会主義、ロシア正教会などの関係について、神学専門家としての初歩的な説明を行ったことから、ロシア政権中枢との深い関わりが始まった経緯が書かれている。共産党幹部に、当時既にイデオロギー的有効性を失っていたマルクス・レーニン主義にロシア政教を再評価することで共産主義イデオロギーを再活性化できるのではないかとの思いがあったようである。深い哲学が佐藤氏にはあり、これが信頼関係に基づく人脈形成に繋がっていったとのことが淡々と描かれている。
512日間の独房生活は、「読書と思索にとって最良の環境だった」と吹っ切れた心境を吐露している。そして、「困難な外交交渉を遂行するためには、日本国家が天狗の力を必要とする状況は今後も生じる」、「誰かが国益のために天狗の機能を果たさなくてはならない」と、自らの国益重視の心情を述べている。佐藤氏は、刑事被告人になったことで、決して自らを卑下していないことが分かる。
非常に読み応えのある本に出会った思いがする。

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紙の本

時代のけじめをつけるため国策捜査の犠牲になった男の自己分析

2005/05/23 00:40

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:格格 - この投稿者のレビュー一覧を見る

著者は鈴木宗男と常にいっしょに行動していて逮捕された外務官僚.背任、偽計業務妨害という罪名で懲役2年6月、執行猶予四年の判決を受けた.逮捕直前からその判決までの拘留生活512日とそこでの回想を描いている.現在、上告、保釈中でどうなるかはまだ分からない.
驚くべきことに、検察官自身からこれは国策捜査であると言われたという.
そして、それがなぜ必要なのかは著者が自分で分析している.国策捜査とは時代のけじめをつけるために必要なもの.内政におけるケインズ型公平配分路線からハイエク型傾斜配分路線への転換、外交における地勢学的国際強調主義から排外主義的ナショナリズムへの転換、という二つの線で「時代のけじめ」をつける必要があり、その線が工作するところに鈴木宗男がいた.そして、著者は鈴木宗男に対し、献身的に働いていたために、巻き添えを食った、という解釈である.たしかにそうとも思えるが、時代がはっきりそう変わったと言えるのは、後になってからであろう.
これだけ冷静な分析ができるというのは、著者のもともと行っていた仕事の関係もあるのだろう.しかし、拘置所の中という特殊な場所にもかかわらず、こういった分析ができる、というのは著者の特別な能力によるものと思える.もっとも、著者の書くように、拘置所がそれほど快適なところとは思えないのだが、どうなのだろうか.
検察は冤罪はやらない、ハードルを下げて引っかけるんだ、という.恐ろしい話であるが、著者が言うように、時代がそれを求めているとも言える.時代の変化を読めないやつが割りを喰うということか.
なお著者は、逮捕されてまで、鈴木宗男を信じ、「国民の利害を体現する外交を実現するためには、政治家の外務官僚に対する圧力は不可欠」とまで言う.すごい信念である.

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紙の本

激しすぎる思い込み、強すぎる自惚れ

2005/07/19 16:11

27人中、26人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る

最近、この佐藤という外務省をクビになりかけた男を「稀に見る優秀な外交官」として持ち上げ、あわよくば外務省に復職させよ、彼を失うことは国家の損失だ、などというちょうちん記事があちこちの週刊誌、月刊誌で目につく。「うさんくさいなあ」と、相変わらずの各出版社の売文業者ぶりに辟易としつつ、あの御厨貴先生までが毎日新聞の書評で取り上げたので、いやいやながら読んでみたが、結果は「案の定」の酷い内容だった。御厨先生は本書をさして「現代の奇書」と表現し、それ以上の突込みを入れていないが、御厨先生の指摘は正鵠を得ている。本書は本当に稀に見る「変な本」なのである。まず驚かされるのは著者の激しすぎる思い込みである。彼は現代を「国際主義が衰退し、独善的なナショナリズムが台頭する時代だ」と決め付ける。小泉批判・ブッシュ批判が大好きで、反中感情の台頭を忌み嫌う朝日新聞が欣喜雀躍して飛びつきそうな結論ではあるのだが、「なぜそう思うのか」について佐藤氏は何も書いてない。ただただ「今は偏狭なナショナリズムが台頭している時代なんだ」とご託宣を述べるのみなのである。なんという傲慢な態度だろう。なんと言う思い上がりなんだろう。「俺が思うから、こうなんだ」という態度なのである。著者・佐藤氏のこの倣岸不遜な断定的態度は本編すべてを通じて一貫している。彼は「自分は、なんの見返りも求めず、ただただ国益のために身を粉にして粉骨砕身する愛国主義者」とする。そして自身が思う国益こそ「真の国益」であり、彼の考える国益以外の国益は一切認めないし考慮もしない。「もしかしたら私は間違っているかもしれないので、相手の意見も聞いてみよう」などという謙虚な姿勢は彼には微塵も無い。「自分は日本の国益のために日夜働いているんだ」という信念は微動だにしない。「俺は何でも知っている」という揺ぎ無い信念、「まわりの奴は何も分かっていない馬鹿ばっかり」と周囲を見下す思い上がり。佐藤氏の書いた文章を読みつつ、私は日本を戦争に引きずり込んでおいて裁かれもせず、戦後までのうのうと生き延びた一人の男・石原莞爾を連想した。石原莞爾もびっくりの激しい思い込みにかかると、あの鈴木宗男センセイは世界のパワーバランスを正確に理解し、その中でどのように行動すれば日本の国益を増進できるからを理解できていたほとんど唯一無二の歴史的大政治家になってしまう。「ちょっと待てよ佐藤」と声をかけたくなるのだが、佐藤氏の耳には周囲の忠告は耳に入らない。「また外交の素人が雑音を出している」程度にしか、彼の脳裡には映らないのだろう。こういう手合いが外務省に入り込み、誰の指図も受けない糸の切れた凧みたいに動かれると組織としてはやりづらい。こんな奴、はっきり言っていないほうがマシなんですな、組織から見ると。周りが迷惑するだけなんですよ、佐藤みたいな奴がいると。確かに馬鹿ではないようだ、佐藤さんは。それだけに始末が悪い。もっとも実名を挙げてはっきりと旗幟を鮮明にしているので検証も反論もやりやすいことはある。とかく伏字や仮名ばかりが目立つ腰が引けた回想録が目立つ中、どうどうと自分の「お考え」を述べているところは評価したい。そこで星は二つとした。

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紙の本

ご本人の雑誌に掲載された文を読んで興味を持つ。

2005/08/09 10:00

13人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:和田浦海岸 - この投稿者のレビュー一覧を見る

2005年9月号の月刊雑誌が注目です。そこには、
高橋哲哉著「靖国問題」への各考察が読めるのでした。
「正論」は長谷川三千子と佐藤優。
「諸君!」では潮匡人。
私に充実感があったのは佐藤優でした。
順をおって印象深い箇所をピックアップ。
長谷川三千子さんの題は
「『哲学で斬る』ですって?
テツヤ君の『靖国問題』は問題ではナカッタ!」
そこには、こんな言葉があります。
「時とすると勝者は、敗者がその戦死者を埋葬するのさへ許さないことがある。ギリシャ悲劇の『アンティゴネー』に描かれてゐるのも、そうした苛酷な【戦争力学】の一つです。そして、第二次大戦の敗者たるわれわれも、敗者をとむらふのは、それ自体、時として命がけの作業なのだ、と心得ておけば、首相の靖国神社参拝について旧敵国が横槍を入れてきたとて、いまさら慌てたりせずにすむ」「テツヤ君の視界のうちには『敵軍』といふものが全く存在してゐません・・・この戦争を『日本の戦争』と言つてしまふテツヤ君は、まさに【他者不在】の歴史認識に陥つてゐると言ふべきでせう」
潮匡人さんは、引用をしておりました。
「筑紫キャスターから『総理大臣がA級戦犯の祀られている靖国神社を参拝することをどう思いますか』と問われたアーミテージ前米国務副長官は、こう答えていた。『先ず、主権国家である日本の総理大臣が中国に限らず、他の国から靖国を参拝してはいけないなどと指図されることがあれば、逆に参拝すべきだと思います。なぜなら、内政干渉を許してはいけないからです。もう一つ、全ての国が戦死者を祀りますが、それぞれのやり方でいいのだと思います』」
私に読みごたえがあって、魅力を感じた文は、「起訴休職外務事務次官」と肩書き示す佐藤優さん。これは、全文を読んでいただきたいのですが、残念。最後の方を少し引用します。
まず高橋哲哉の文の二点を引用します。
「一、政教分離を徹底することによって、『国家機関』としての靖国神社を名実ともに廃止すること・・・・。
一、・・合祀取り下げを求める内外の遺族の要求には靖国神社が応じること。・・・。」
その後に、
「この二点は政治的に受け入れ可能な範囲をはるかに超えているので実現する可能性はないであろう。政教分離原則を厳しく適用しすぎている。私が承知する範囲では・・ブレジネフ時代のソ連にだいたい等しい。私が見るところこの提言は事実上、現行の靖国神社を解体することに等しい。私自身はキリスト教徒(プロテスタント)で神道の神を信じていない。しかし、信教の自由の観点から、高橋教授の提言は靖国神社の信教、布教の自由を破壊する結果をもたらすものなので、反対だ。・・」「民族意識が刺激されすぎると排外主義になり、ジェノサイド(皆殺し)や民族浄化をもたらす。他方、国家に対する忠誠心がある限度以下に下がると、ソ連のように国家が内側から崩壊する。国家が崩壊するとその土地に住む人々が辛酸をなめる。・・・」

最後の言葉も取り上げておきます。
「高橋教授の倫理基準にある」として、まず高橋氏の文を引用しております。
『靖国信仰から逃れるためには、必ずしも複雑な論理を必要としないことになる。一言でいえば、悲しいのに嬉しいと言わないこと。それだけで十分なのだ。まずは家族の戦死を、最も自然な感情にしたがって悲しむだけ悲しむこと。十分に悲しむこと。本当に悲しいのに、無理をして喜ぶことをしないこと』
こうして引用した後に、
『悲しいのに嬉しいと言わない』『十分に悲しむこと』、この倫理基準を守ることができるのは真に意志強固な人間だけだ。悲しみを無視をしてでも喜びに変えるところから信仰は生まれるのであるし、文学も生まれるのだと思う。結局のところ・・耐えることができる人物は、一握りの強者だけになると思う。・・」

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紙の本

権力についての考察

2005/11/25 18:11

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:LYUTA - この投稿者のレビュー一覧を見る

賛否両論ある著作だが、私はこれを、高度な洞察力と分析能力を持った男による「権力」についてのひとつの考察として、面白く読んだ。
佐藤氏の考えには偏りもあるだろうし、鵜呑みにしてしまうとまずいところもあるだろうが、思想・信条的なことはともかく、ひとりの男が権力とどう対峙したかという記録として本書を読み、社会という理不尽きわまりない環境の中で個人がどうすれば強く生きられるか、また、信念を貫き通すためには何と闘わなければならないのか、といったことに思いを巡らせながら読むと、なかなか為になる。
マスコミによる報道は嘘だらけ、とか、検察や裁判所は必ずしも正義ではない、といった当り前のことを再認識するための教材としても良い。
いずれにしろ、私は本書から、ある意味で「生きる勇気」みたいなものを貰ったような感じがしている。

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紙の本

佐藤優という不思議な人物

2006/02/14 20:56

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:喜八 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 『国家の罠』著者の佐藤優さんは1960年埼玉県生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了後、1986年に外務省入省。三等書記官を経て国際情報局分析第一課主任分析官(現在は起訴休職中)。衆議院議員鈴木宗男さん関連の事件に連座し2002年05月に背任・偽計業務妨害の容疑で逮捕され、512日間にわたり拘留されました。2005年02月執行猶予付き有罪判決を受け即時控訴。保釈後に出版された『国家の罠』新潮社(2005)がベストセラーとなり、著者の佐藤さんも「情報の専門家」として一躍脚光を浴びることとなりました。
 佐藤優とはいかなる人物なのか?
 さらに解説をかさねてみます。
・外交官であり、スパイであり、学者でもある。
・鈴木宗男議員らとともに北方領土を「本気で獲りに行った」が、失敗した。
・ロシアで政治家・官僚・実業家・学者・言論人・宗教家・公安関係者・マフィアなど広い人脈をもつ。
・イスラエルのモサド、アメリカ合州国CIAなど各国の諜報機関とも連絡を取り合っている。
・ロシア語・チェコ語・アルメニア語・アゼルバイジャン語・英語に精通。
・学者としては東京大学やソ連科学アカデミーで教鞭をとったことがある。
・キリスト教徒(プロテスタント)である。チェコの神学者ヨゼフ・ルクル・フロマートカ(1889-1969)の強い影響を受けている。
・無尽蔵のエネルギーをもつワーカホリック(仕事中毒)。
・手紙魔・メール魔(らしい)。
・酒はかなり強い。
・新自由主義な経済政策に反対している。
・排外主義的ナショナリズムに反対している。
 ひとことで言えば「不思議な人物」です。日本の歴史を眺め渡しても佐藤氏のような人はあまりいないと思われます。「怪しい人」だとは言えるでしょう。なにしろ自ら「スパイ」を名乗っているのですから(笑)。スパイであるからには「腹黒い人」である可能性も高そうです。と同時に「誠実な人」であるようにも見えますし、子供っぽい部分もあるかもしれません。
 『国家の罠』は敢えて「面白すぎる本」だと言ってもよいでしょう。著者の教養の深さ・強さ・繊細・老獪・愚直・文章の上手さ、総てが興味深いのです。自ら「国策捜査」の対象になったとして、有罪判決が下りた後も即時控訴、徹底抗戦の姿勢を示している佐藤氏。私(喜八)のような素ッ堅気がウカツに近づくと大火傷しそうな「危険人物」という印象があります。

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歴史への酩酊

2006/08/08 18:17

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:hisao - この投稿者のレビュー一覧を見る

ソ連崩壊時、在ロシアの外務省国際情報局主任分析官として類い希な活躍をしながら(同氏の”自壊する帝国”に詳しい)、2002年鈴木宗男氏との癒着を取りざたされ背任容疑・偽計業務妨害容疑で逮捕、2005年2年4ヶ月の執行猶予付有罪判決を受け現在控訴中である。
下世話に申せば“転んでもただでは起きない”人である。控訴中に数々の“内幕もの”を起筆、“歴史証人”の役割を果たす。
本書は北方領土問題、田中真紀子と鈴木宗男の確執、自らの情報活動と逮捕に至った経緯、保釈を拒否しての512日間におよぶ独房生活と検事との闘争、外務省の裏切りなど世間にこんなに喋っても構わないのだろうか思う程書き込んだ氏のベストセラー第1作である。
情報・諜報活動には膨大な“機密費”が必要な事が窺われます。“インテリジェンス”の世界は法を遵守し法を執行する事を使命とする“お役人”なんかに決して出来る仕事じゃないようです。
だから仕事の出来る“情報マン”は世間の暗黙の了解の中で自由で縦横な働きをものにします。
でも危険極まりない仕事です。やりすぎる程やらないと仕事にならないのですが、やりすぎると落とし穴が待っています。
落とし穴を用意したのは“国家”でした。国家にぶらさがる“お役人” の嫉妬と“ごめんなさい”とは決して言わない佐藤氏のタフネスが事態を更に深刻にしました。
はからずも検事自身が口にした“国策捜査”(国家がいわば“自己保存の本能”に基づいて“時代のけじめ”として検察を道具に政治事件を作り出していくこと)
国家が鈴木宗男とそれに連なる佐藤氏をターゲットにして“大衆劇場”と“断罪の物語”を創出します。“国策捜査のターゲットになり検察に蟻地獄を掘られたら、そこに落ちた蟻は助からない、このゲームのあがりは全て地獄の双六なのである“
何故“国策捜査”が行われたか?法廷に於いて情報分析官佐藤氏が怜悧な分析をします。
小泉政権による本格的構造変換によって内政面ではケインズ型公平配分政策からハイエク型傾斜配分、新自由主義への変換が行われ、外交面では排外主義的ナショナリズムが主流となった。
贄にされたのが公平配分論者であり国際協調主義者、悪く言えば地方から選出され地盤の利権を喧しく主張する旧体質保守政治家の鈴木宗男とそれに連なる佐藤氏であった訳です。
にわかに信じがたい思いもしますが、外務省上層部の鈴木氏や佐藤氏への嫉妬・反乱そしてそれを契機としての政治の官にたいする主導権争いと見ればうなずけます。
国家は官僚を直接支配したがるものです。そして国家はその気になれば何でも出来る暴力装置を本質的に抱えているのです。
それにしても佐藤氏のタフネスはどこから出てくるのでしょうか?
近年IT企業に対する連続手入れも“国策捜査”だと言われています。逮捕されたIT企業主が追求したのはあくまでお金でした。しかし佐藤氏はカネや出世を動機とした訳ではありません。
ただひたすらに“国益追求”に走った結果が運悪く法に触れたと言う事を主張されているようですが、佐藤氏程頭の切れる方が単に“国益”のみを信条として逮捕されるに至ったとはちょっと思えません。
私の思うに氏を突き動かしていたものは“歴史への酩酊”のように思えます。
ウオッカを痛飲しながらソ連崩壊を見届けたように“歴史”に立ち会い自ら歴史を創り上げようとする“酩酊”とも言える様な“のめり込み”が氏を行動に駆り立てているように思えます。

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紙の本

国策捜査とは何なのか!?

2006/08/08 19:53

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ワイドイショーなどでは、国会議員の鈴木宗男氏とワンセットに報道されていた外務省情報分析官の佐藤優氏の、内幕ノンフィクションです。
 私自身この事件に関しては、殆どワイドショーで扱われている程度の
情報しかもってなかったのですが、この本を読んでみました。

 前半というか、外務省時代のロシアでの活躍は、凄まじいもので、
物凄い自慢話しのオンパレードでちょっと、ひいてしまったのですが、
 逆にこれが、全て本当の話だと、物凄く有能な外務省職員を
失ったことになります。(現在は、休職中だとか)
 内幕もので、面白かったのは、
田中真紀子議員と鈴木宗男議員と外務省の関係と
勿論、検察による、取調べです。
簡単に言うと、当時不祥事を連発して、(松尾室長の事件)
トラブル続きの外務省に田中議員が大臣としてやってくるのですが、
鈴木宗男議員の政治力で、田中議員を排除しようとするわけです。
 で、田中議員が、排除された後は、検察庁による国策捜査
(これについては、又後に詳しく書きます)
 が始まると、鈴木議員、佐藤優氏ともに、いっしょに切り捨てた
というわけです。
 この検察庁による、国策捜査もそうなのですが、
読んで一番思ったのは、外務省も検察庁も、
結局は、自分の省内庁内の論理、力学でしか、動かないということです。
 検察庁の論理の、「国策捜査」というのも、
その際たるもので、佐藤優氏を取り調べた、検察官が、言っているのですが、
これは、事件があって、その事件を捜査しているのでなく、
時代として象徴的な特定の人を捜査して、例え、軽い罪でも起訴し
時代の流れを検察庁が変える、もしくは、変わったことを、
世論に訴えるためのものだとか。
 国策捜査の対象となる人物は、大概社会的に目立つ、有能な人で
捜査すれば、なにか、微罪でも少しやりすぎて犯しているもので、
それで、事件化し、兎に角、逮捕することが、目的なので、
別に判決で執行猶予がつこうが、検察としては、一切かまわないと。
 これは、人権上も、法的にも行き過ぎの気がしますが、
検察としては、当たり前に行っています。
本書を読んでからは、ホリエモンの逮捕も、村上ファンドの
村上氏の逮捕も、すんなり理解できました。
 外務省のほうも、
褒賞費、機密費で、上司の判子が押されている金は、どんなことに使っても
よいと、いうのは、かなり問題があります。
併し、これも、外務省の論理では、当たり前に行われています。

 話が、少し、大局側に反れましたが、
 著者の佐藤優氏は、本当にかっこいいというか、ストイックな生きかたをする人で
逮捕される時から、そうで、
 検察の逮捕執行時も、検察は、人権には、配慮する省庁だからと
気を使うのですが、(これも、権力で拘束し人権を蹂躙するのに
ちょっとおかしな感じですが)
 全く佐藤氏はお構いなし、
また逮捕後も
 外務省からは、切り捨てられた形で、
佐藤優氏に関する資料をすんなり外務省は検察に渡すのですが、
それでも、佐藤氏は自分を貫き通し、他の幹部に迷惑のかかることは、
一切喋りません。
鈴木宗男氏逮捕に関してハンストしたり、
取り調べをした、検察官も佐藤氏については同僚や上司には、
「変わっている」と、説明しているというぐらいです。
又、検察官から、拘置所で、ストイックに生きても仕方がない、
と諭されたりしてます。
 結局印象に残ったのは、
佐藤優という変わった、人の生きかたと
検察の国策捜査という国家権力が特定の人を捕まえるという
恐ろしいものが、あるということでした。
 なんか、色んなこと詰まった、一冊で
書きたいこといっぱいあったのに、上手く書けませんでした、、。

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紙の本

「罪と罰」

2006/12/30 08:05

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:くにたち蟄居日記 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「獄中記」を読んだ事で 佐藤優という人に非常に興味を覚えてすぐ本書を手に取った。読み出したら 止まらなかった。


 「獄中記」と時期は全く重なっている。但し 「獄中記」では書かれていなかった 検察官とのやりとりが 本書の白眉である。


 主人公と対決する検事というと「罪と罰」に始まる 人間ドラマだが 本書のドラマには 非常に清々しいものがある。
 主人公と検事は利害が相反しており 語られる内容も 「高度にドロドロした」ものだ。しかし そんな対決の中で 両者が友情を育てていく姿は 感動的である。両者とも かたや検察、かたや容疑者という極めて微妙な立場ながら お互いにその立場を超えたところで 人間として 語り合っている部分は実に読ませる。お互いにリスクをとりながら相手を思い遣る姿には 若干目頭すら熱くなった次第だ。


 本書はノンフィクションだ。但し ノンフィクションが語る話が「真実」であるかどうかは また別なのだと思う。佐藤優が言う通り 本書が真実だったかどうかが分かるのには まだまだ相当の年月が必要なのだと思う。
 その意味で 本書の評価も まだまだ将来に行われるべきなのだと強く思った。

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紙の本

官僚としての死を受け入れながらも世界を冷静に分析しつづける男

2007/01/28 21:29

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る

 自らにかけられた容疑とその裁判の記録にもかかわらず、ドロドロした部分がない。論理は明快で読後感はさわやか。不思議なものを読んだ気分だ。外務省主任分析官にして鈴木宗男衆議院議員の腰巾着。逮捕当時、そのような論調で報道された著者による自らの事件の分析記録が本書である。
 「国策捜査」。本書のキーワードとして出てくるのがその言葉である。これは、国民が感じる社会に対する不満を解消するため悪役を作り出し、それを代理で裁くことによって、不満を感じる原因となっている社会構造の不備などを解消しようとする働き(政治的思惑も含まれるだろうが)のことである。
 なぜ鈴木宗男氏と著者はこの「国策捜査」の対象にされたのか。それに対する著者の分析が興味深い。これには、日本社会および国民性の変化の兆しが関係しているという。一つは、日本の社会主義的な利益の平等配分から傾斜配分への移行。もう一つは、協調主義的外交からナショナリズム優先の外交への移行である。この時代変化の潮目にいたのが、旧来の地域利益誘導型(正しい表現かは分からないが)の政治家であり、協調主義的なロシア外交を展開していた同氏だというのだ。そして、この2つの潮流は異なるベクトルを持っており、容易に両立しうるものではなく、いずれ揺り戻しが起こる可能性があると看破している。そして、実際にそれは起こりつつあるのではないだろうか。
 ボクは本作を著者が登場する別の対談集で知った。そちらの対談集で感じる著者の印象は、自らの業績に酔いしれるエリートというもので、若干、鼻持ちならなく感じた。しかし、本作から感じる印象は、冷静な分析者のそれである。一体どちらが本当の姿なのだろうか。

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紙の本

小泉元首相の器の程度

2007/02/27 20:23

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:YOMUひと - この投稿者のレビュー一覧を見る

 世評に違わぬ読み応えのある本である。
 「これは国策捜査だよ。」と検事自身からの発言は、やはりショッキングである。その中立性をかなり信じていた読者は、検察庁もやはり時の政治権力に擦り寄る一官庁に過ぎないのかという感に捉えられざるを得ないであう。
 正直、「国策捜査」という表現を本書の帯の広告文に見たとき、マユツバモノじゃないかと疑ったことは事実である。しかし、本書を読めばこの著者の眼力の鋭さ、深さに舌を巻かざるをえないであろう。この著者の書くことならと読者に思い込ませる力がある。
 メディアに叩かれた外務省職員というイメージは、他国の顔色ばかりを窺う腰抜けであり、他方、外交官というと、何か華やかなエリートというイメージがついて回る。しかし、著者たちは、真に見識ある政治家とともに国益に沿って外交戦略を構想し、行動する泥臭いナショナリストであり、油断ならないタフネゴシエーターである。その例は北方四島返還問題における周到で、デリケートな取り組みに見られるし、イスラエル経由のロシア情報の重要性にいち早く着目し、粘り強く情報のくもの糸を張り巡らし、返還交渉に結び付けていく著者たちの努力に舌を巻くであろう。
 著者のような外交官はごく少数派であり、外務省はあたら有意の人材を失ったと、読者は歯ぎしりするであろう。それにしても、やはり、日本は本当に有能な人材を生かせない国なのであろうか。
 著者が尊敬する鈴木宗男議員についても認識を新たにした。特に、9・11同時多発テロ後、アフガニスタン・タリバン政権攻撃に伴う中央アジアへのアメリカ軍の進駐を見越して、アフガニスタンの裏庭である親露的なタジキスタンに日本と米露を加えた四カ国の反テロ国際協力メカニズムをつくることによって、テロ抑止のため産業を興し、失業をなくし、市民社会が成立する基盤を確保するという鈴木氏の戦略は、これぞ政治家の発想という意を強くする。小泉前首相が嫉妬したということも確かに一理あるのである。小泉前首相の器もその程度ということであろう。
 ただ、鈴木宗男議員と著者に代表されるこの国策捜査が、一つは、国際協調的愛国主義から排外主義的ナショナリズムへの転換という「時代のけじめ」をつけるため行われたという著者の見解には同意できない。例えば、前者の概念は、「プライドは人の目を曇らせる、基準は国益」と断言して国益のため才知を尽くして行動した著者だから言える規定であって、一般に外務省にそのようなものが存在したとは到底思えない。

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紙の本

作られた犯罪から考えさせられました。

2007/03/31 09:12

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:佐々木 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 本書を読み進んでいくうちに、ライブ・ドア事件、ロッキード事件、そして伊藤博文暗殺事件が頭をよぎっていった。
 いずれも現在のロシアになんらかの形で関わっている。
 こじつけかもしれないが、ホリエモンはロシア製の宇宙船で宇宙旅行をぶち上げ話題をよんだが、その後、衆議院選挙に落選、粉飾決算で逮捕、起訴された。
 田中角栄元総理はロッキード社からの裏金で有罪判決を受けたが、以前からシベリアの資源を開発して新潟を経由して首都圏に供給することを画策していた。
 そして、伊藤博文は東アジアの政治的安定を求めてソ連の高官と協議するためにハルピンを訪問したが、そこで暗殺されている。
 本書の著者は鈴木宗男事件の黒幕として逮捕、起訴された。鈴木宗男氏と北方領土返還と日露平和条約締結に向けての交渉の最中である。
 なにものかが、日本とロシアが接近することを意図的に阻止しようとする動きがあるのでは、と勘ぐってしまう。

 およそ四半世紀後には鈴木宗男事件に関する様々な文書が公開されるので、そのときに真相が明らかになることを楽しみにしていると著者はいうが、その頃には世間も世界もなんら興味すら持っていないかもしれない。
 特殊情報を扱う職務であった著者であるが、公開できるものとできない情報があると述べているように、それが更に真実を見えなくしてしまっている。それでも、取り調べの検察官との応酬は緊迫感があって楽しめた。
 また、小泉政権における日本の政治体制の転換の解説は極めてわかりやすかった。
 日本型社会主義が変化したことは格差社会だ、自己責任だという言葉が定着したことからも窺えるが、この鈴木宗男事件が改革の手始めの仕事であるとは誰も分らなかっただろう。郵政民営化法案の可否をめぐっての選挙で平沼赳夫氏ひとりが自民党に復党しなかったが、氏は郵政民営化に反対したのではなく構造改革のありかた、体制の転換に反対していたのだろうか。
 毎日、毎日、満員電車に揺られて出勤し、目先のものごとを処理するだけで世界、アジア、日本のことなど考える余地すらないが、なんらかの策が日常に影響していることに戦慄を覚えた。愚民化によって国民を国家の奴隷に仕立てあげている気がしてならない。著者だけでなく、すでに国民は「国家の罠」にはまってしまっているのだろう。

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2007/08/14 23:30

投稿元:ブクログ

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2005/05/13 18:31

投稿元:ブクログ

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