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ナラタージュ
  • みんなの評価 5つ星のうち 3.9 600件
  • あなたの評価 評価して"My本棚"に追加 評価ありがとうございます。×
  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:2005.2
  • 出版社: 角川書店
  • サイズ:20cm/373p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-04-873590-X
  • 国内送料無料

紙の本

ナラタージュ

著者 島本 理生 (著)

大学2年の春、高校の演劇部の葉山先生から泉に電話がかかってきた。高校時代片思いをしていた先生からの電話に、泉は思わずときめく。だが、先生の過去には大きな秘密があった−。一...

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ナラタージュ

1,512(税込)

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商品説明

大学2年の春、高校の演劇部の葉山先生から泉に電話がかかってきた。高校時代片思いをしていた先生からの電話に、泉は思わずときめく。だが、先生の過去には大きな秘密があった−。一生に一度の究極の恋を瑞々しい感性で描く。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介

島本 理生

略歴
〈島本理生〉1983年東京生まれ。立教大学文学部在学中。01年「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作、03年「リトル・バイ・リトル」で第25回野間文芸新人賞を受賞。

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みんなのレビュー600件

みんなの評価3.9

評価内訳

紙の本

ギュンとした、凄く。

2017/05/05 20:32

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る

久しぶりに心がギュンとする小説を読みました。泣くに泣けず、息苦しくなるくらい心が締め付けられました。
相思相愛で運命とも言える相手と一緒になれない。
離れてても相手もずっと思っててくれる、その事実だけで全てと思える、それくらいの運命の相手。
叫び出したくなるくらい辛いけど、そんな相手に出会えた事が羨ましくなります。

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紙の本

優しさ、それとも弱さ

2005/03/03 21:49

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ナカムラマサル - この投稿者のレビュー一覧を見る

正統派の恋愛小説だ。
どうしても捨てられない異性がいるにも拘わらず運命の人と思える人に出会ってしまったら…
もしくは、どうしても捨てられないパートナーがいるような異性を心の底から好きになってしまったら…
そんな切なさを含んだ小説だ。

「あの日から私はずっと同じ場所にいます。」
「私ではあなたの力になれませんか。」
「どうしようもないほど、あなたが好きです。」
「お願いだから私を壊して、帰れないところまで連れていって見捨てて」

淡々とした印象の主人公が、堪えきれずに吐露する率直な愛の表現が胸を打つ。
主人公・泉が恋をする葉山という高校教師の謎めいた過去や、演劇部所属の柚子の抱える秘密など、謎解きの趣もあるところが読ませる。


「ナラタージュ—映画などで、主人公が回想の形で、過去の出来事を物語ること」と表2にあるように、同僚と結婚を決めた現在の泉の、過去の回想という形をとっている。
彼女は、大学2年の時に、母校の高校の演劇部の公演に助っ人として出演した過去のことを回想する。そして、大学2年の泉は、さらにその過去(英文法で言うところの過去完了)である、高校時代のことを回想する。
この体裁をとることによって、高校時代から現在に至るまでの、主人公の愛の深さが感じられ、「年齢に関係なく愛したりはすると思うけど」というセリフに説得力がある。
少なくとも本書を読む限り、まだ高校生の子供に恋愛の何が分かる、という気持ちにはならない。


女性にある、セックスに対する嫌悪感についても踏み込んで書いているところに、きれいなだけの恋愛小説には終わらせていない著者の意気込みを感じる。


読んでいる間、ずっと葉山をズルい男だと思っていたが、そうではないと分かるラスト。
本書の難点を挙げるとすれば、「切なすぎる」という点だけだ。

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紙の本

静謐に、激しく

2005/03/08 00:10

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:けんいち - この投稿者のレビュー一覧を見る

 女性作家は恐ろしい。
 そのことは、千石英世が『異性文学論』1冊をかけて現代女性作家について述べているのだけれど、島本理生もまたそうした作家なのだと気づき、さらに、年齢に関係なく、女性作家は恐ろしいのだと、切実に思う。もちろん、これは差別ではなく区別で、ある種の女性作家が垣間見せる、現実と小説の境目がないようなタイプの「リアリティ」には、現実世界などなく小説だけが世界であると思わせるに十分で、火をつける女性や突如周囲から切り離された場所で泣き続ける主人公の激しいと言えば激しすぎる情動は、しかし、とてつもなくいとおしく読む者の身に迫ってきて、我を失わせる。

 映画へのオマージュに彩られ小説『ナラタージュ』は、オビのコピーが少し下品にみえるほど、上品な静謐さに満ち溢れ、そうした平穏な水面の底にうごめく狂おしいまでの「愛」を、しかし急がずあわてず静かな筆致で描ききった、佳作に違いない。とはいえ、一歩距離を置いてみれあその骨格となる物語は、割とよくある話だ。それでも、『ナラタージュ』がこんなにも感動を呼び起こすのは、それが幼き者たちの恋愛を描いているからでも、主人公の恋の相手が教師だからでもなく、そこに関わる人々が疲れ・諦め・心を閉ざすほどの傷を負っていながら、にもかかわらず力強い単純さでもってその恋が「見境のないもの」として素直に、熱く書かれているからに他ならない。

 そして、先に女性作家の系譜に島本理生を位置づけようともしたけれど、「第三の新人」と呼ばれた作家のある時期の小説に『ナラタージュ』の感触はよく似ている。小島信夫や庄野潤三の書く、平穏な日常と水面下の危機をテーマとした小説群だ。しかし、それよりも自由なところ、つまりは危険なところで、島本理生は何物にも守られることのない魂の、せっぱ詰まった人を求めるありさまをリアルに捉え、恋する者たちの薄氷の上を歩くような危機感を、緊張感として文体に潜ませながら、しかもあたたかな自然描写と共に穏やかにゆるやかに描き出してみせるのだ。こういう小説を前にすると、小説家、特に若き女性作家ほど恐ろしいものはないと改めて思うが、しかしその前に、心の襞のふるえに、どうしようもなく涙がとまらないのだった。

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紙の本

純愛恋愛小説の第一人者として確固たる地位を築いた作品。

2005/04/17 22:53

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る

前作『生まれる森』が芥川賞候補に上がった時、残念ながら他の若い同世代作家(綿矢さんと金原さん)が受賞された。
選考委員に先見の明があったのかどうかはここでは語りたくないが、自分の作品スタイルを若くして構築されている島本さんの実力を深く認識された読書好きも多かったはずである。
私も“5年後10年後どんな作品を書いているのか?”と興味を抱いたのであるが、なんと1年後に本作で若手作家から実力派作家いや“純愛恋愛小説の第一人者へと大変身を遂げた”と言っても過言ではないような大作を上梓してくれたのである。
本作は芥川賞の枚数を超越して果敢に島本さんが挑戦し見事に描き切った“恋愛小説の王道作品”だと言えそうだ。
主人公の泉は20歳の女子大生。
物語は高校時代の演劇部の顧問である、葉山先生からの後輩たちの卒業公演に参加してくれないかという電話で始まる。
こうして2人の再会は始まったのである…
自分の気持ちに素直になるってむずかしい。
もしこの作品を読まれてたとえばあざといとかつまらないと感じ取った人がいれば、その方は“純愛小説が根本的に合わない人”か“物事を斜に構えて考えている人”か“一生ひとりの人を現在も愛し続けることが出来ている幸せな人”このいずれかであろうと思ったりする。
主人公と同年代の方が読まれたらことさらに強く共感出来るはずだ。
同年代で現在恋愛をしていない人がいれば、こんな素敵な恋愛をしてみたいと思うことであろう。
主人公以上の年代の方が読まれたら、懐かしい自分の過去を想い起こしたり、あるいは今の自分のそばにいる人をないがしろにしていないかを考え直す絶好の機会となりうる恰好の小説だと言えそうだ。
男性読者が読まれたら、もし人生をやり直せるなら、主人公のような子から愛されたいと思われた方も多いであろう。
とりわけ、“ラストの清々しさ”と作中の“痛ましい三角関係”が読者の心に永遠に残るのである。
--------------------------------------------------------------------------------
島本理生21歳。主人公と同年代の本当に人生において多感な時期を生きている。
若さが最大の武器である点は明らかである。
なぜなら彼女の人生も小説も“現在進行形”であるからだ。
たとえば40歳ぐらいの作家が20歳前後の主人公を描いた場合と比較してほしい。
はたして本作のようにリアルな恋の痛々しさを描写出来るであろうか?
答えは本作を読み終えた方なら誰でもわかるであろう。
若さゆえの特権である、傷つけ傷つきながら成長できる。
それが人生においてきっとバネとなるからだ。
本作の登場人物は総じて“不器用”な人が多い。
恋愛をしている時って、あなたも自分が不器用だと感じませんでしたか?
島本理生は読者にそう問いかけているように感じた…
読み取り方によれば、葉山がずるいと思って読まれた方も多いんじゃないかな…
恋愛小説は読者のその時の状態(年齢・性別・恋人の有無・独身か既婚かなど)によって受け止め方が違ってくるのは間違いないところである。
果たして人は“一生一人の人を愛せないのだろうか?”
私的には葉山と泉、お互いにお互いを大事に出来、成長できたと捉えている。
本作は恋人・夫婦間で回し読みして熱く切なく語り合って欲しい一冊である。
私にとっては恋をすることの素晴らしさを教えてくれた、心に突き刺さる1冊であることを吐露したく思う。
トラキチのブックレビュー

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紙の本

今年最高の恋愛小説はこの本ではないでしょうか?

2005/04/20 20:57

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:エルフ - この投稿者のレビュー一覧を見る

以前から注目していた若手作家の島本理生氏。彼女は本作で一気に化けましたね。
この化けようはスゴイです。
ここ数年の間に読んだ恋愛小説の中で一番切なく、また一番泣けた本かもしれません。
今まではどこか子供の雰囲気が残っていた作品に比べこの作品は恋ではなく「愛」。
まさしく今年最高の純愛小説なんですよね。
最初の数ページを読むだけで物語の中に呑み込まれていき、いつの間にか主人公の泉と同化していきます。
静かに、そして激しく思う葉山先生に対する気持ち、それは忘れることはなく、また薄れることもない想いでした。
再び出会う二人は時に近づき時に遠のく、そして先生の秘密にはある隠された部分がありそのことを知ってしまった泉は先生に二度と会わないことを宣言してしまう。
新しい恋人・小野との出来事、演劇部の後輩の死、そして泉自身に起きていたイジメ、自殺しようと思っていた日々のことなど恋愛以外にも心を痛める箇所が沢山あるのですよね。
また隠されている部分が多いのでその謎解きという意味でも続きが大変気になる作品になっています。
きっと読んでいると葉山先生に対して多少狡さを感じるのですが、きっと泉以上に葉山先生は泉のことを大切に思っていたのかもしれないと最後に感じさせてくれます。
どうしても捨てられないものがあるのが大人の世界、だからきちんと責任を取るために葉山先生が選んだ道は読者が望むものではない。
またナラタージュとは過去の回想を語るという意味なので現在の泉が過去のこの恋を語っているのだが決してそれは過去の出来事と終わってしまったものではなく、消えることなく痛みを伴いながら胸にいつまでも残る恋なのだということをラストで再び読者の胸をうつ。
本当に切なくそして哀しい、そして美しい恋愛小説でした。
実は恋愛小説ってあまり好きではないのですが彼女の作品は別かもしれません。
しかし若いのに情緒溢れる綺麗な文章を書く方なんですよね。
そして彼女の作品に登場する人は今時の格好つけた無関心を装うような若者ではなく、他人と関わり合いながら生きていこうとする人ばかりなのでその部分も同じ年代の作家との違いを感じてしまいます。
恋愛小説が読みたい方にオススメ。今年最高の恋愛小説はこの本です

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紙の本

初々しさと、瑞々しさと

2005/07/25 23:57

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ツキ カオリ - この投稿者のレビュー一覧を見る

新刊の小説を読む場合、基本的には、まず図書館で借りることにしている。この作品は、あちこちで絶賛されていたせいか、予約がずいぶんと多く、私のところに回ってきたのはごく最近のことだった。

読み始めてまず気になったのは、鍵括弧が多かったことだ。すなわち、会話が多いのだ。どの頁を見ても、圧倒的に会話が多い。会話が始まるとそれがしばらく続き、途切れると、「私」こと、主人公の工藤泉の心情が挟まる。もちろん会話以外のスペースには、他の登場人物たち(と工藤泉と)の位置関係、状況の説明、描写なども加わるのだが、それらはかなり少ない。

かつ、裏表紙の部分には、「ナラタージュ」という語句の意味が記載されており、「映画などで、主人公が回想の形で、過去の出来事を物語ること」とある。

すなわち、この小説は、主人公たちの会話を中心に、過去を回想した形の、実にシンプルな作法の小説だと言えよう。

結婚を控えた「私」工藤泉は、大学生の頃を思い出す。高校時代、演劇部に所属していた「私」は、当時から演劇部の顧問だった葉山先生の依頼により、他の卒業生たちと共に、母校の芝居の発表に協力することになる。大学1年の「私」は、今でも、葉山先生のことが気になっていたのだ。

正直私は、会話が多い小説は苦手である。会話が多いと、読みやすくはあるが、物足りなさも募ってしまうのだ。なので、この小説も、滑り出しは、物足りなさ感が、かなり高かった。ところが、読み進めていくうちに、この感覚はどんどん減っていって、ついには、なくなってしまったのだ。

なぜだろう、と考えてみると、学生の頃こそが一番会話を交わしていた時期なのではないか、と思い当った。
社会人になって、年齢を重ねていけばいくほど、心の中では沢山の言葉が蠢(うごめ)いても、それを口に出していく度合いは、個人差こそあれ、減っていくのではないか。

作者は、高校生から大学生までの、極めて限定された年齢の登場人物たちの会話を、押さえた筆致で、写し取ることに成功している。よって、彼等の、初々しさ、瑞々しさが、際立ってくるのだ。
そのことが、このシンプルな物語を、ありがちなもので終わらせずに、記憶に留(とど)めさせるのではないか。

初々しさ、瑞々しさを踏まえた今後への期待により、切り上げで四つ星とした。
不思議な読後感をもたらした小説だった。

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紙の本

主人公に心が重ならなかった

2005/07/27 07:18

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る

主人公の工藤泉は婚約者と新居を見に来ている。そこでふと思い出した大学生のころのあの思い出。高校時代の演劇部顧問の葉山先生、そして演劇を通じて知り合った大学生の小野君。あの頃は子供だったから愛とは違うのかと思っていたけど、子供だったから愛していることに気づかなかっただけなのかもしれない…。

 最近マスコミが盛んに取り上げる二十歳前後の作家の中ではきちんとした文章が書ける人だなという印象がまずあります。途切れ途切れの感覚的なケータイ日本語を使っていない点は好感が持てました。

 しかし、この主人公が恋する葉山先生と小野君はどちらも私の目にはひどく幼い人物に映りました。大学生の小野君は仕方ないかなとは思います。相手の女性の気持ちなどよりまず自分の欲望、という態度の性行為など、二十歳そこそこの学生はそんなものです。そこに若干の既視感を覚えないでもありません。
 ですが、葉山先生は三十二という年齢には似つかわしくないほど地に足がついていません。妻との痛ましい過去があるということを差し引いても、理解する気にはなりませんでした。

 ことほどさように、この切なくほろ苦くあるはずの若い恋の物語は、私に擬似恋愛感を与えてくれませんでした。主人公とともに惑い悩みながら歩むこともなく、あまり魅力的ではない男性二人の間で揺れる泉を、私はただひたすら冷静に傍観し続けていました。

 読了後、この小説で最も魅力的な言葉は実は冒頭の頁にあったのだということに気づきました。

 「きっと君は、この先、誰と一緒にいてもその人のことを思い出すだろう。だったら、君といるのが自分でもいいと思ったんだ」(4頁)

 この言葉を口にするのは泉の婚約者です。泉は結果的に素晴らしい人と出遭ったのだということです。それならばこの物語には救いがあると思いました。

*「エル・スール」の監督名はエリセです。エルセ(24頁)ではありません。

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紙の本

痛みが残り、痛みが甦り、そして、その痛みをしっかりと受けとめる

2005/08/25 23:45

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yama-a - この投稿者のレビュー一覧を見る

 クッソー、これは歳を取って感性が鈍ってしまったということなのか?ちっとも共感できん!というのが読み始めて暫くの感想だった。何と言っても「本の雑誌」が選ぶ2005年上半期ベスト10の第1位である。なのに魅力が感じられん!何故だ?
 それは、「どんなに筆を尽くしたって結局は甘っちょろい十代の恋の物語だから」とバッサリ斬ってしまうことも可能かもしれないが、僕が不満に思ったのはむしろそういうことではない。文章がぎこちないのである。考えて考えて書いているところが読み取れてしまうのである。
 僕ら素人が小説を書こうとすると同じ様相を呈してしまうものだ。ストーリー上この辺で布石を打っておこうとか、台詞が続いたのでちょっと情景描写に転じようかとか、長文が多くなってきたので短文を挟んでリズムを変えようとか、そういう風に作品の向こうに作家の意図が透けて見えてしまう文章は良い文章ではない。別にそんなもの見えないと言う読者もいるのだろうが、僕にはそれがすごく気になったのである。
 ところが、中盤から人間の醜い面、弱い面に焦点が当たり始め、プラトニック一筋だったストーリーにセックスが絡み始めたあたりから、俄然小説らしくなってきた。もはや作家の姿は見えなくなり、作中の人物が自分の足で立ち上がって、自分の口で喋り始めたのである。
 思うにこの作家は一途な恋や燃えるような思いを描かせると巧いと言うのではなく、人間の否定的な面や痛みを描くことに長けているのではないだろうか?
ところが、最後まで読んでもやはりこの話は純愛の話である。「おいおい、そんなにいつまでも思いを引きずってどうする?」とおじさんは問いたいのであるが、恐らくこの小説こそが、この小説を書くと言う行為自体が、その問いに対する答えなのだろう。
 痛みが残り、痛みが甦り、そして、その痛みをしっかりと受けとめる小説である。
by yama-a 賢い言葉のWeb

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紙の本

美しい恋愛小説

2005/12/02 23:53

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:由季 - この投稿者のレビュー一覧を見る

この人の文章、とにかく綺麗。
表現や登場人物、設定、なにもかもが優しくて美しく、写真集を見ているような感覚に陥りました。
そしてこの本当に切ないラブストーリー。ラブストーリーに限らず、ストーリーが透明感に溢れていて、心穏やかに読む事が出来ました。

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紙の本

ナラタージュ〜

2005/12/10 13:19

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:はなこちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

 久しぶりに読んだあと、何日も胸の痛みが繰り返す本に出逢った。

作者はまだ20代前半。高校在学中に書いた作品が認められ、すでに2回の芥川賞候補となっている。同世代で、同じ文章を書く(全くその質は違うが)人間としては、うらやましいばかりの経歴の持ち主だ。

だが、そんな嫉妬の混じった気持ちも、この本をしばらく読み進めるうちに、軽く吹き飛んでしまった。
昨今の「行間を読ませる」タイプの小説とは違い、まるで映画の一場面をそのままっきりとってきたかのような、緻密で美しい情景描写を背景に、主人公の抑えきれない想いがあふれ出すように綴られる、正統派の恋愛小説。書いても書いても書き表しきれないように、作者の瑞々しい感性が文章となって迸り、読み手を一気に飲み込んでしまう。
少女から大人の女性へ変化していく、そんな20歳という不安定で直向な時期の、切ない切ない恋の話。読み手は主人公と同化し、自分も身を切られるかのようなやるせなさに包まれながら、この小説の世界に溶け込んでいくことができる。

文字の詰まった373ページを一気に読み終えた後、私はなかなかこの小説の世界から抜け出ることができなかった。読み終えて何日た経った今もなお、小説の場面場面がふとした弾みにフラッシュバックし、思わず本を手に取りその場面を読み返してしまう。

読む本読む本全てがこうだととても疲れるだろうが、たまにはこんな本との出逢いもいいものだと思う。

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紙の本

わたしを壊して。あなたにはそうする義務がある。

2006/07/29 08:46

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:よし - この投稿者のレビュー一覧を見る

高校卒業から1年。「母校の演劇を手伝って欲しい」と葉山先生から頼まれる。葉山先生こそ泉にとってかけがえのない男性だった。しかし、葉山の気持ちを知り、別れる決心をする。そうした時、演劇を手伝ったことが縁で、小池という大学生と付き合うことになるが泉の気持ちは葉山先生から離れられない。
心が痛く、切ない。こんなにこれでもかと攻めて来る小説にめったに出会えません。あきらめかけてはまた芽生えてしまう恋心。そうした泉の気持ちと行動に涙します。
浴室で葉山の髪を切るシーンでは息苦しいようなドキドキ感と切なさ。別れの駅のシーンで泉が再び帰ってきて、号泣する場面。そして、年を経て偶然であった葉山の知人との話のラスト。
お互いの気持ちが分かり合えたときの泉の狂おしいばかりの言葉。これで最後だからもう会えないからと切ない気持ちが一気に噴出します。「わたしを壊して。あなたにはそうする義務がある」
小池とのつかの間の恋。葉山に気持ちが行っている小池は泉を引き止めるため、強引になってきます。最初の方のとってもいい人だった小池は泉との恋でだんだん性格が悪くなるんです。これも若さを描いています。
もう一人のダメ男、葉山。基本的に優しさがある人なのでしょうけど、自分の気持ちとは裏腹に、ある事件が理由により妻への思いを断ち切れない。だったら、泉に電話なんかしなければいいのにと思いますがこれも恋のなせる技。泉が必要なんですね。ずるい男ですが、なんとなくわかってしまう自分もいたりして。
恋をし焦がれる思い、待つ思い、そして別れの悲しさの中で、それでもあの人しかいないと思う泉の気持ちにもうやめておけともいいたくなるほど切ない。
恋の本質を切なく書ききった、島本さんはとんでもない才能をもった作家です。
さすが芥川賞候補になるだけの実力がある。
この作品は現代小説と恋愛小説をかね合わせた作品です。
恋をしている人、これから恋をする人、恋をしていた人、恋をしたい人、そう全ての大人に読んでいただきたいなー。この作品の中にきっとあなたもどこかにいると思います。

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紙の本

一見、二十歳のみずみずしい恋だけど、ほんとうは、どろどろの恋です

2007/11/27 00:40

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 芥川賞の受賞こそしていませんが、二十歳そこそこの若さで、芥川賞候補になること幾度という文壇の若手実力派作家の島本さんです。
 「リトル・バイ・リトル」より、本書のほうが、世間での知名度では、
上ではないでしょうか?。(当社比)
つまりエンタメ性が高いということだなぁと勝手に推測して読んでみました。
 
 文学賞メッタ斬りの大森望御大と豊崎さんが、
けっこういろいろ、けなしていて(そう感じました当社実感)、その後に
でも、世間のみんなは、島本さんのこと好きだから、
気にしないで、、てどんなフォローなんですか、、。
まぁ、いいのですが。

 泉は現在大学生、高校の演劇部のOGです。
部員が足らずに、活動に四苦八苦している母校の演劇部の活動に
参加してくれないか、とお誘いがあり、なつかしの母校に
そこには、あの人も、、、。そして、あの人も、、、。
 泉が好きだった(今も好き)葉山先生。
そして、泉のことを好きな小野君。
二人の間で、泉は揺れ惑うのですが、、。

 演劇部の中の恋愛ということで、
わりとあっさり味のピュアな純愛っぽいのかなぁ、読んでいましたが、
実は、けっこうハードなといいますか、どろどろした恋です。
 葉山先生のほうは不倫だし、小野君は途中から少し変化してきます。
性描写もあるし、恋イコール壊れるってことでしょ!!みたいな、
けっこうテーマは心にずびずば入ってくるかんじなのに
 どこか、さらっとした読後感なのは、
この小説が、破綻なく、あまりにもキレイにまとまり構成されているからです。
 いい意味でも、わる意味でも、人物描写、構成、ストーリテリング、
よく纏まっていて、お若いのに作品は物凄く老成していて、安心して読めます。
逆にそこが、弱点かと、、、、。
 高い平均点を取られる、優等生タイプですね、、。

 もっと、色々冒険して欲しい気がしますが、
テーマからいくと、充分チャレンジしている気もするので、
うーん難しいところ。
 本、小説としては、大変よく出来ていて、リーダビリティも高く、すらすら読めて、恋愛小説として万人にオススメできます。

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紙の本

ルーは少し甘かった

2007/12/06 12:44

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ろでむ - この投稿者のレビュー一覧を見る

今日、細々?と読み終えた。



        
ってなること多々あると思う。
そんな時は、小説読んでみては??
と、最近常々感じとる。



小中学生の頃、字ばっかりの本読んどる子って、
国語のテストがよかった(ハズ)。
それは、文章力とか語源数の多さだったりとか、
ただそれだけじゃなくって、ひっくるめて、
具現化することがうまかったんじゃないかって考えとる。



見るもの、聞くもの、香るもの、触れるもの、
5感でインプットする情報を、的確というより
解り易いカタチでアウトプットするのが
上手になれるんじゃないかな。



前置きは長くなったけど。
『ナタラージュ』は、そんな表現がいっぱい詰まっとりやした。
ほんと、喉に引っかかってうまくとれない魚の小骨を、
やさしく、そして繊細にとってくれた。



【一節】


どうやって帰ったのかはよく覚えていない。気が付くと誰もいない家
の明かりを点けてシャワ-浴び、濡れた髪のまま食卓に向かっていた。
目の前のお皿には、自分で温めたレトルトのカレーが湯気をたてていた。
こんなときでも空腹になるのだと思うと不思議な気分だった。コップに
牛乳をついでから、一人でカレーを口に運んだ。ごはんの温かさが優し
かった。パッケージに中辛と書かれたルーは少し甘かったが、残さず
食べた。

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2005/08/17 19:51

投稿元:ブクログ

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2005/04/19 23:53

投稿元:ブクログ

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