「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
人間を極限の状態におかないために、いますべきことを考えさせてくれる
2006/06/03 09:05
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:未来自由 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1945年8月13日、ソ連軍と戦闘。梶の部隊は全滅し4名だけが生残る。ここからの描写はすさまじい。社会主義の理念を支持しながらも、スターリンに懐疑心をもつ梶は、降伏することをためらうばかりか、信じることができない。
戦争という極限の中で、理念だけでは解決できないものがある。それを本能的に感じた梶の行動は、ただ生きるだけに集中される。読むのが辛くなるほど、生きることに執着する梶の姿に翻弄される。愛する人のもとに帰るため、ただその一念で殺人さえ犯す人間へと変貌する。
日本軍敗残兵の掠奪、強姦。そしてソ連軍の略奪、強姦。戦争という状態のなかで、いずれの兵の行動も、人間の最低限の条件さえ奪っていく。この下巻は、あまりにも辛い。戦争がもたらす人間性の喪失を余すところなく描き出している。
それでも、人間として生きようとする人々も描かれる。しかし、多くの矛盾ある現実に翻弄される。人間らしく生きようとすればするほど、矛盾が激化する。何がそうさせるのか。それは戦争である。戦争を正当化しようとする驕りから、人間性が奪われていく。
戦争によって、人間らしく生きることはできない。それをとことんまで突き詰めた小説。下巻の梶の行動には賛否両論あるかもしれない。それでも、戦争と人間を描いた本小説から考えさせられることが沢山ある。そして、人間を極限の状態におかないための、日頃の努力こそが大切なことを考えさせてくれる。
その大切な時は今だろう。憲法を変え、人権と自由を奪い、戦争のできる「普通の国」になったとき、普通の生き方はできなくなる。生きるとは何か!普通に生きるために最低限しなければならないことは何か!そんなことを考えさせてくれる。