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商品説明
ごめんねといってはいけないと思った。「ごめんね」 でも、いってしまった…。恋をめぐる心のふしぎを描く小説集。「泣かない女はいない」「センスなし」に加え、カヴァー裏に掌編「二人のデート」を収録。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
泣かない女はいない | 5-110 | |
---|---|---|
センスなし | 111-171 |
著者紹介
長嶋 有
- 略歴
- 〈長嶋有〉1972年埼玉県生まれ。2001年「サイドカーに犬」で第92回文學界新人賞、「猛スピードで母は」で第126回芥川賞を受賞。著書に「パラレル」「ジャージの二人」ほか。
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紙の本
にべもなく心にくる
2008/08/06 00:19
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:笑いの影 - この投稿者のレビュー一覧を見る
やっぱり長嶋有だな。
そう思わせるには十分過ぎた、泣かない女はいない。
泣けるでもなく、爽快でもない、そんな話は意外とみんな欲しているのではないだろうか。
睦美はいつも涼しげで、関わるとも関わらないともつかない態度で人と接する。恋人とは上手くいっていて、不満もない。同僚との話を耳にして「SEXの時、私が首を絞めてっていったら絞めてくれる?」電話のついでに訊いてみた。
そんな日常は延々と続き、海も山もない人生は衝撃もなく終わる。
特別良い人も、特別悪い人も出てこないのに、心は高鳴る。そんな物語。
NO WOMAN NO CRY
泣かない女はいない
夫はもうすぐ夫ではなくなる。
でもなぜか悲しみも悔しさも出てこないのは、いやほんとうは悲しいし悔しいのかもしれない。それに気付きたくない自分がそこに居た。
親友のみどりとは世紀魔2で知り合った。突然話しかけてきたみどりに少し距離をおく保子。だけどそんな強引なみどりに少しずつ惹かれていく。
みどりに憧れともつかないような憧れを抱いているのかもしれない。
センスなし、というタイトルなのに、結局保子は泣けなかった。
センスがないのはどれなんだろう。
世紀魔2か、デジカメの写真か、あるいは豆腐屋の笛か。
紙の本
ラストシーンで読者に鳴り響く音楽
2005/06/29 23:27
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yama-a - この投稿者のレビュー一覧を見る
この表題がボブ・マーリーから来ているとは想像がつかなかった。読んでいてその箇所(54ページ)に差し掛かったとき思わず声を上げてしまった。
表題作の主人公・睦美は「ほとんど泣いた記憶がない」(56ページ)。併載の『センスなし』の主人公・保子も泣かない。2人とも泣いても不思議のない、本当に情けない状況に置かれながら最後まで泣かない。それじゃあ本のタイトルと矛盾してるじゃないか、ということになるが、いや「泣かない女はいない」というのは誤訳でやっぱり「女 泣くな」が正しいのだ、と考えれば合点が行く。特に『泣かない女はいない』のラストシーンでは、睦美の胸の中でこの曲が「女 泣くな 女 泣くな」と鳴り響き続けているのではないか。僕にはそれが聞こえる気がした。だからといって睦美に「気丈な女」というイメージもなく、それが不思議でもあり、この作家の真価でもある。
睦美は「『泣かないはいない』というアフォリズムのような言い切りに不快感を覚えたわけではない」し、逆に「『女 泣くな』という真っすぐすぎるなぐさめの言葉に感動しないわけでもない」「樋川さんの口からそれが出たときになぜかどきりとしたというだけのことだ」(57ページ)と言う。この辺の書きっぷりは非常に巧い。その話はこのページで終わりになってしまうのだが、ラストシーンで見事にそれが(どこにもその言葉は再掲されてないが)甦ってくる。睦美が「ほとんど泣いた記憶がない」ことに再び気づいたり「泣かない女はいない」というフレーズを思い出したりするのは、自分が泣いても許されるような状況にあるのに泣いていないことに気づいたときである。
「おいおい、それで終わりか? そりゃないでしょう」と言わずにいられなくなるような、なかなか良いエンディングである。
『泣かない女はいない』におけるKISSといい、『センスなし』における聖飢魔Ⅱといい、少し時代遅れの音楽を配したことが非常に効いている。しかし、それだけにもう20年も経てば、この小説のムードは全く伝わらなくなるかもしれない。今のうちに是非読んだほうが良い作品である。
by yama-a 賢い言葉のWeb
紙の本
泣けない女のきもち
2005/06/26 17:47
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:はなこちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「泣かない女はいない」
たしかに、私たちはあらゆる時に泣いている。生きていく上での、いろんな場面で、女は泣く。悲しいとき、嬉しいとき、気持ちをどうしようにもないとき、私たちは泣く。
ただ、それは、実際に涙をこぼす、というのとはちがう。
私たちは、心のなかで泣いている。そして、ときにそれに気づくことすらない。
泣くことの出来ない女も、たくさんいる。
この作品の主人公も、そんな女のひとりだ。
女には厳しい時代、女としての性を、涙を武器として使いたくないと思うほど、女は泣けなくなった。だけど、それは泣かずに済むようになったということではけっしてない。それどころか、泣きたくなるようなどうしようにもない場面はますます増えている。それはつまり、私たちが心の中だけで流す涙の量が増えたということだ。私たちも気づかぬ間に。
すぐ泣く女は嫌い。だから泣けない。でも、本当は泣いているんだってことをわかってほしい。そんな主人公の、主人公ですら気づいていない気持ちが、「NO WOMAN、 NO CRY.」を当然のように「泣かない女はいない」と訳した男性に惹かれていくことに繋がっていく。きっかけはあるようでない。そんな恋の流れて行く先。
自分の気持ちの表現方法にひどく不器用な主人公の、ピュアで淡々とした恋の話。とくに気分の盛り上がるようなラブストーリーではないけれど、こんな本を読んで、泣けない女のきもちにしっとりと寄り添う時間を過ごすのもなかなかいいものだと思った。
紙の本
空白の余韻
2005/03/17 21:14
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナカムラマサル - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書には「泣かない女はいない」と「センスなし」の2編が収められている。
2作とも、プロットが面白いというよりも、言葉選びのセンスの良さと、一つ一つのエピソードに味がある小説だ。
たとえば、「泣かない女はいない」の中で、主人公・睦美の同僚である樋川という男がボブ・マーリーの「NO WOMAN NO CRY」という曲をカラオケで歌う場面。
タイトルの意味を聞かれ、樋川は「泣かない女はいない」とぶっきらぼうに答える。
睦美は帰宅してCDを引っぱり出し、訳詩を見てみると、「女 泣くな 女 泣くな」となっている。なぜ、樋川は「泣かない女はいない」と訳したのかと彼女は不思議に思う。
この訳の是非について、その後特に触れられてはいないが、大事なのは、睦美が樋川の言葉に心を動かされたということ。
また、「センスなし」では、主人公・保子の夫婦仲とデーモン小暮のエピソードとの間には何の因果関係もない。
エピソードの積み重ねの隙間に生じる、主人公の心の揺れを想像することが読む側には要求される。
その作業が、心地よいのだ。
著者が俳句をやっていることを考えると、一つ一つのエピソードは一つの句のようなもので、作者がどういった事物に心を動かされたのかを感じることにこそ、意味があるのかもしれない。
説明しすぎない文章が、なんとも言えない余韻を残す。
繰り返し読めば読むほど新しい発見があって、噛めば噛むほど味がでてくるスルメのような1冊だ。
この2編のどちらの主人公も、人と群れることが苦手で、どちらかと言えばはみだし者の女性。
それは、自分は他人と違うという傲慢さの裏返しでもあったりする。
2人とも、人と積極的に関わろうとしているわけではないのだが、日々の暮らしの中でふと他人の悲しみに気づいてしまう。
睦美は、リストラされたパートの中年女性の胸の内を思い、保子は、高校時代の同級生が変わっていく姿を見て、少なからず寂しさを覚えている。
体温の低そうな2人は、他人の悲しみを知るうちに、自分のもつ悲しみにも気づいてしまう。
「泣かない女」と思われているであろう彼女たちの涙には、胸がちくりと痛む。彼女たちがいとおしくなる。思わず抱きしめたくなる。
人は生きていれば、悲しいことも、寂しいこともある。それを俯瞰している著者の温かな眼差しが伺える1冊だ。
「泣かない女はいない」というタイトルは、著者のもつ優しさの表れでもある。
最後に、カバーの裏側を見て驚いた。
読んでみて思わずにんまりした。
やっぱりスキだ、長嶋有。
そう呟いてしまった。
紙の本
生きるとは?働くとは?愛とは?「何か変だぞ」と思いながらやり過ごしてばかりでいいのか
2005/07/03 05:52
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:未来自由 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人はみんな、それぞれに暮らし、働き、時には恋をして。そんな暮らしの中で、時には「何か変だぞ」と思いながらも、やり過ごしていることがいっぱいある。
この日頃やり過ごしていることを、理屈や理論を並べずに小説にするのはなかなか難しいだろう。『泣かない女はいない』は、それを一定程度成功させている。
折からの就職難に、就職先を探すのは困難だと自覚している睦美。しかし、案外簡単に採用が決まる。勤めた会社は、出向者が多い下請け的会社。そこでは、それなりのチームワークで仕事が進められ、「勝ち組」「負け組」などの価値観とはいっけん無縁のような会社である。
しかし、そんな会社にも、社会の荒波が押し寄せる。今日押し付けられている価値観が、いかに人間性を失ったものであるのかを、いくつかのエピソードを取り混ぜながら、自然に描きだしている。
リストラや利益優先の価値観が、人を傷つけ、働く喜びを奪っていく。そして、人々がバラバラにされていく。そんな価値観についていけないものには、会社を辞めていく人が現れる。
睦美には、3年間同棲している男性がいる。だが、会社に勤め、他の男性を見ることにより、今までやりすごしていた違和感をはっきりと知ることになる。そして・・・。
「何か変だぞ」と思うことを、やり過ごすのではなく、よく考えてみることが必要だ。そんなことを『泣かない女はいない』で著者は訴えようとしたのではないだろうか。
紙の本
まじめな女にカンパイ
2005/04/16 09:44
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:PNU - この投稿者のレビュー一覧を見る
女ひとり、恋したり失望したり、
でも生きていく。そんな短編2編および、掌編1編を収録。
「泣かない女はいない」睦美は同じ会社の桶川さんに
なんとなく好感をいだく。 睦美のこのなんというのか、
大人になりきれぬ夢見るぼんやりさ加減にはすごく共感してしまった。
たとえば通勤路途中にあるキン肉マンの落書き。
いくらそれが上手かろうと、ふつうの大人はそんなもの
しげしげとは見ないものである。ところが睦美は、
落書きを毎日確認する上に、それらを心のお気に入りスポット
として見なしているのである。どこかピュアでおバカな子供心を
残した人でないと、こんな行動はしないものであろう。
万事そんな感じで、マジメなくせに他人に自分がどう思われるか
気にしすぎる、アンバランスなヒロイン・睦美の感性により、
何気なく見過ごされてしまうような日常の些細なキラキラした
ものが次々書きとめられてゆく、そこが楽しい。
「センスなし」夫と別居中の保子は、ひとりになったことを機に
自分のヒストリーを見つめ直す。これは静かな女の怒りが
伝わってきて、女性としては、感出来るけれど、
男性は身につまされて恐ろしいのではないだろうか。
好きなんだけど恥ずかしいモノというのは読者の共感を
呼びまくりそう。
「2人のデート」書き下ろし掌編である。なんと、
カヴァー裏に2pにわたって書かれているのである。
ごくたわいないデート風景だが、男が今時いるのかというほど
ウブで可愛らしい。あのベストセラー「電車男」のように、
こういうさえないモテない君を自分好みに染めていくのが
よろしいんじゃないかと思うよ>彼女さん。
紙の本
やっぱり泣くんだよね。
2005/08/10 09:57
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yumemun - この投稿者のレビュー一覧を見る
泣かない女はいない」と「センスなし」の2作品が掲載。
いやー。やられた感じだ。最初は淡々としていて気づかなかったけれど、2作品ともに人の寂しさがにじみ出ている。私は「センスなし」でスピッツが出てきて、主人公達が
スピッツやオザケンが好きな「若い子」はセンスがいいとか言っているのにどきっとした。この人たちは、私たちより年上だから、そんな風に思うのだろうけれど、当のその世代の人間たちも自分より若い子たちに同じものを感じているのだ。スピッツにしかり、友達の話ではオザケンの名前を出したら、誰ですか?と知らなかったとか。
ある程度の年齢に差し掛かった時、生きてきた環境が違っても、感じる事や考える事、抱えていく事は結局見た目や呼び方が違っても同じものなのだと思った。
私はこの作品で「寂しさ」が残った。誰にでも、起こりうる寂しさの感情。まさに、泣かない女はいないし、泣かない男だっていないのだ。
読んだあといつものごとくズシンと心に残るものがあった。