- カテゴリ:一般
- 発行年月:2005.3
- 出版社: 朝日新聞社
- サイズ:20cm/420,44p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-02-250010-7
- 国内送料無料
紙の本
スー 史上最大のティラノサウルス発掘
著者 ピーター・ラーソン (著),クリスティン・ドナン (著),冨田 幸光 (監訳),池田 比佐子 (訳)
1990年8月、サウスダコタ州の荒野で、一体のティラノサウルスの化石「スー」が発見された。だがまもなく、地主と発掘者のあいだで所有権をめぐる裁判に発展…。夢と闘争のスー全...
スー 史上最大のティラノサウルス発掘
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
1990年8月、サウスダコタ州の荒野で、一体のティラノサウルスの化石「スー」が発見された。だがまもなく、地主と発掘者のあいだで所有権をめぐる裁判に発展…。夢と闘争のスー全物語。現場写真、骨格図等、付録満載。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ピーター・ラーソン
- 略歴
- 〈ラーソン〉化石発掘家、研究者、ブラックヒルズ地質学研究所社長。
〈ドナン〉ジャーナリスト。
関連キーワード
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
史上最大のティラノサウルス・レックス発見と裁判の物語。暴君竜の世界を身近にさせてくれる良書!
2006/03/17 00:00
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Skywriter - この投稿者のレビュー一覧を見る
百獣の王、といえば現生生物ではライオンである(実際には最も強く、かつ威厳に満ちて美しいのはトラなのだが)。しかし、絶滅済みの生物も含めるのであれば文句なしにティラノサウルス・レックスこそ、その座に相応しいであろう。
そんなティラノサウルスは意外と思われるかもしれないがあまり研究が進んでいない。その一番の理由は、彼らが強大な捕食者だったことに起因する。いつの世も食べる者よりも食べられる者の方が多い。ライオンよりシマウマのほうが多いのと同じだ。ティラノサウルスは、そもそも少数精鋭だったのだ。そして、動物が化石になるのは非常に珍しい。死体がすぐに土に埋もれなければ、風化作用によって骨はあっというまに失われてしまう。ただでさえ少なかったティラノサウルスが、わずかな可能性で化石になって、それを運良く発見できる可能性ともなると極小であることが分かるだろう。おまけに、幸運にも化石が見つかっても、体の一部だけであることが多い。何らかの理由によって他の部位は失われてしまっているのだ。
だから、どんな化石でも貴重な研究材料である。化石が発見されるたびに彼らの生態について多くの知見が得られのだ。たとえ、それがわずかな断片であったとしても。そんな状況で、ほぼ全身の骨格を保った、最大級のティラノサウルスが発見される。発見者であるアマチュア研究者、スーザン・ヘンドリクソンにちなんでスーと名づけられたティラノサウルスは、研究者の垂涎の的となる。だから、であろうか。スーの発掘は複雑怪奇な裁判闘争へとなだれ込むこととなってしまう。
本書はスー発掘を指揮したピーター・ラーソンとその妻だったクリスティン・ドナンが体験した、スーの発見から彼らが巻き込まれていった裁判の過程と、これまでに明らかになってきた(あるいはそうであると推測される)ティラノサウルスの生態を丁寧に追いかけている。アメリカの裁判制度になじみのない身には驚くような理由でラーソンらは追い詰められていくが、それでも恐竜、わけてもティラノサウルスへの愛情が曇ることはない。圧巻なのは、これらのわずかな骨から実に豊富な情報を読み取り、ティラノサウルスの世界を我々に見せてくれるところである。恐竜を、これまでよりもっと身近で想像しやすくしてくれたことに感謝したい。恐竜好きはぜひ一読を。
紙の本
古代へのロマンと現実のしがらみの向こうに見えるもの
2005/03/19 12:30
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:苦楽 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「苛政は虎よりも猛し」とは中国の諺であるが、さしずめ「人間はティラノサウルスより凶悪である」とでも言うべきだろうか。
1990年8月にサウス・ダコタで調査隊のパンク修理の合間に発見されたスー(SUE:発見者の名前を取って命名された)は、これまでに見つかったティラノサウルスの化石の中で、最も大きく、そして全身の骨格の殆どが揃った最も完全な標本というとてつもない発見だった。およそ恐竜に興味がある者でこの発見に興奮しない者はいないであろう。
しかし、あまりにも貴重な化石故に所有権に関する争いが勃発して事態は裁判にもつれ込み、その間は誰もFBIに押収されたスーを研究・展示することができなくなった。
本書は、そのスーの発見、裁判、その後を、当事者達──ピーター・ラーソンは発掘を行ったブラックヒルズ地質研究所の所長でもあり、裁判でも矢面に立たされたまさに事件の中心人物である──が綴ったドキュメンタリーである。
所有権を巡る裁判に関しては何というか、いかにもアメリカ的、としか言いようがないが、その現実を片方におきながらも、スーやそれ以降のティラノサウルスの化石の発掘によってわかったティラノサウルスに関する新たな知見──雌雄の判別や社会生活、食事内容や怪我の状況──、ティラノサウルス発掘・研究史などが詳細な注や図解、コラムと共に記述され、ティラノサウルスについての新しい知識を得ると共に、現実に苦しめられながらも失われない関係者の恐竜への愛と化石発掘への情熱やロマンが伝わってくる。
文中に、タイムマシンは必要か、との問いには、既に持っていると答える、という一節があるが、まさにそこに書かれた通り、科学的想像力こそは我々が既に持っているタイムマシンであり、その自家製タイムマシンの燃料となってくれる一冊である。
折しも、2005年3月19日から7月3日まで、国立科学博物館で恐竜博2005が開催され、そこにスーの全身複製骨格や門外不出だった実物化石の一部がやって来ている。
展示に関する裏話なども書かれているので、本書を読了後、恐竜博2005に出かけてみるのがお勧めである。
現物には体験しなければ味わえない確かなインパクトがあるのに対して、書物で得られる知識や思い入れ、現物を支える人達についての知見がある。
その両方を味わえば、かつて地上を闊歩していたこの巨大な生き物、ティラノサウルス・スーと恐竜に魅せられた人々がより一層身近に感じられるはずである。