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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2005.5
- 出版社: 徳間書店
- サイズ:20cm/308p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-19-862008-3
読割 50
紙の本
ルドルフ・カイヨワの憂鬱
著者 北國 浩二 (著)
【日本SF新人賞佳作(第5回)】新生児に先天的な脳障害を引き起こす「ゲノム・ウイルス」に冒された合衆国。弁護士カイヨワの調査は巨大な陰謀につきあたる。近未来ハードボイルド...
ルドルフ・カイヨワの憂鬱
ルドルフ・カイヨワの憂鬱<新装版>
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商品説明
【日本SF新人賞佳作(第5回)】新生児に先天的な脳障害を引き起こす「ゲノム・ウイルス」に冒された合衆国。弁護士カイヨワの調査は巨大な陰謀につきあたる。近未来ハードボイルド。第5回日本SF新人賞の佳作「ルドルフ・カイヨワの事情」を改稿・改題。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
北國 浩二
- 略歴
- 〈北國浩二〉1964年大阪府生まれ。俳優業、フリーライターを経て、「ルドルフ・カイヨワの事情」で第5回日本SF新人賞の佳作に入選。改稿・改題した「ルドルフ・カイヨワの憂鬱」でデビュー。
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紙の本
進歩の弊害を鮮やかに映し出す近未来ハードボイルド
2005/06/09 02:29
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:せどり三等兵 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヒトの生殖細胞に寄生し、7割以上の確立で卵細胞を変質させ、生まれてくる子供に重度の障害をもたらす「ゲノム・ウィルス」。卵子や胎児のDNA検査にて初めて発見できる厄介なウィルスである。このウィルスによって大きな打撃を受けたアメリカでは、妊娠時のDNA検査を義務付けられており、胎児に障害があった場合は堕胎される事が多い。さらに政府は、体外受精を義務付ける法整備を進めており、受精前に正常な卵子を選別でき、受精前にウィルスに対応できることから、指示も厚く成立は時間の問題となっている。そんな近未来のアメリカで、遺伝子関連の案件を得意とする弁護士、ルドルフ・カイヨワはある病院の不正事件を調査するうちに大きな陰謀に突き当たるが。
出生前診断は既に常識となり、体外受精から人工子宮、遺伝子操作へと進みつつある世界の話。他方では火星のテラフォーミングの計画なんかも進んでいる。本書では、ほとんどシミュレーションといってよいほど実現性の高い設定を使っており、既知の、もしくは誰でも想定できてしまう程度のSF的ガジェットである。つまり、センスオブワンダーがあんまり無いわけで、SFをたくさん読んでいる人ほどこういった作品には厳しめの評価を下すかもしれない。そういった側面から、著者があとがきで書いているように確かにSF系の新人賞には向かないと思う。だけれども、そんな不利な作品でも日本SF新人賞というSFを標榜する賞の佳作に輝き、刊行された。これは恐らく、SFとしてではなく、もっと大きな視点で、つまり小説としての完成度や価値を評価しての事だろう。
本書はまた、ハードボイルド的な側面も持ち合わせている。主人公は弁護士だし親友は探偵だし、他の登場人物もアメリカンなハードボイルドでよくあるキャラクターである。ストーリーも割合それに準じたもので、読書量が多い人ほど先が読めてしまうのも確か。だがしかし、それを補って余りある巧みさが本書にはある。SF的なそれもハードボイルド的なそれも凡庸なのだが、どちらも殺さず巧く生かして融合させている。
そして、本書のテーマはいつか私たちが目の当たりにするであろう切実な問題である。いつか来る、必ず来る問題を提示するためにはSFは有効な手段だろう。この種の作品は普段からSFを読む人に限らず広く沢山の人に読んでいただきたいモノである。本書も同様で、SFには馴染みの無い人にも読んでいただきたい。。親切で巧妙な説明と相まってそういった人でも十分に楽しめるだろうし、エンターテインメントとしての完成度も高いので満足していただけるはずである。