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  • みんなの評価 5つ星のうち 4 71件
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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:2005.6
  • 出版社: 岩波書店
  • レーベル: 岩波文庫
  • サイズ:15cm/166p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-00-339431-3
  • 国内送料無料
文庫

紙の本

生物から見た世界 (岩波文庫)

著者 ユクスキュル (著),クリサート (著),日高 敏隆 (訳),羽田 節子 (訳)

生物から見た世界 (岩波文庫)

778(税込)

生物から見た世界

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生物から見た世界

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みんなのレビュー71件

みんなの評価4.0

評価内訳

紙の本

久しぶりの五つ星でした

2007/08/13 21:57

7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:仙道秀雄 - この投稿者のレビュー一覧を見る

ユクスキュルはスピノザ主義者だと聞いたことがあり、スピノザを敬愛する者には本書は重要であるが、尊敬する日高敏隆さんの生物学に決定的な影響を与えた一書であると後書きで知って以後、わたしの興味は倍化した。しかしながら、重大問題発生。わたしは生物学にまったく疎く、適切な書評者たりえないのだ。例によって引用に次ぐ引用で本書の驚くべきコンセプトの一部を紹介するしかない。

 ある事象を観察する者がいて、その世界内に起こっていることとしてある事象が理解され、事象の構成要素xもyも観察者の世界内においてあり、事象と観察者を含んだ世界の完全な一致と唯一性が信じられている。ところが本書の環世界はこのような見方を真っ向否定している。

上は機械論か、主体論かという対立でもある。機械論者である生理学者は、「ダニの場合、すべての行為は反射だけに基づいている。反射弓がそれぞれの動物機械の基盤である。それは受容器、すなわち酪酸や温度など特定の外部刺激だけを受け入れ、他はすべて遮断する装置ではじまり、歩行装置や穿孔装置といった実行器を動かす筋肉で終わる。」と言う
p14

主体論者である生物学者は、「事態はまるで反対だ。ダニのどこにも機械の性格はない。いたるところで機械操作係が働いている。反射弓の細胞は運動の伝達ではなく、刺激の伝達によって働いている。刺激は(ダニ)主体によって感じられるものであって、客体に生じるものではない。」と言う。p15

ダニが哺乳類を、血を吸う対象物をどう発見し、どう血にありつけるかを、主体論の言葉遣いで追ってみるとこうなる。哺乳類の皮膚腺が酪酸を発生させる。ダニは酪酸という刺激を知覚器官で特異的な知覚記号に置き換え、それが嗅覚標識に転換される。知覚器官でのこの出来事が作用器官に相応のインパルスを発生させ、ダニは真下の哺乳類に落下すべく肢を枝から外す。ダニはぶつかった哺乳類の毛に衝撃という作用標識を与え、これがダニに触覚という知覚標識を解発し、それによって酪酸という嗅覚標識が消去される。この新しい標識はダニに歩き回る行動を解発しやがて毛のない皮膚に到達すると、温かさという標識によって、歩き回るという行動は終わり、次に哺乳類の皮膚に食い込むという行動がはじまる。p21

ダニにとって知覚標識となるのは酪酸、触覚、温度みっつだけである。これとみっつの作用標識(落下、歩行、食込)だけがダニの環世界をつくっている。これは貧弱で単純な世界であるが、確実に血を吸える可能性を高めている。だが哺乳類がダニのいる枝先の下を通過しなければ酪酸も出ず、落下もせず、毛のない皮膚にも行き着かない。するとダニは餓死するのだろうか。餓死するはずである。しかし本書には18年間絶食しているダニが生きたまま保存されていたと書かれている。ここで驚くべきことが言われている。

人間の時間は、瞬間、つまり、その間に世界が何の変化も示さない最短の時間の断片のつらなりである。一瞬が過ぎ行く間世界は停止している。人間の一瞬は十八分の一秒である。瞬間の長さは動物の種類によって異なるが、ダニにどんな数値を当てようと、全く変化のない世界に18年間耐える能力はダニにはないだろう。ならば、ダニはその待機期間中は一種の睡眠に似た状態だと仮定できる。この状態では人間も何時間か時間が中断される。つまり、十八分の一秒の瞬間の連鎖ではなくなる。この認識から何が得られるか。時間は、あらゆる出来事を枠内に入れるので、出来事の内容がさまざまに変わるのに対し、時間こそは客観的に固定したものであるかのように見える。だが、いまや我々は、主体がその環世界の時間を支配していることを見るのである。生きた主体なしには時間はありえない。p24

空間にも同じことがいえるとユクスキュルはのちの章で語る。どうであろうか、諸兄、精読の要ありとせざるを得ないではないか。

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紙の本

生き物、環境を理解する、世界の見方を広げた古典

2005/09/26 11:32

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 科学の古典は、事実的にはその後の進展で誤りであったり、古くなってしまう部分がでて来るものです。しかし初めて一つの概念が世の中にあらわれる時、どのようにしてその考えに到達したのか、どのような形でそれを伝えようとしたのかを読むものに伝え続けるものが古典として残っているのではないでしょうか。
 この本は生物種それぞれにはそれぞれの「主観的な」環境の世界があり、主観的な環境の違いは同じ人間という種の中でも「物の意味」の違いとしてあること、を説いた生物学の古典です。「わかりやすい科学」叢書の一冊として、「見えない世界の絵本」という副題付きでドイツで1934年に発刊されました。沢山の絵入りで解説されているのでわかりやすい・・・と期待するのですが、文章はそんなに簡単ではありません。よく意味を表現しているたくさんの絵に随分助けられていると思います。その後の実験的証明などで明らかになったことを知識として踏まえて読む現代の読者には、当たり前のことを難しく書いているように思える部分もあります。しかし、新しい概念を世に紹介していく時の、書き手の熱意が伝わってきます。書かれた年代、国などの背景も合わせて考えながら読むと、新しいものが生まれる状況についても考えさせられること、と思います。
 著者の死後出版された「生命の劇場」(博品社1995)では概念を説明するのにガリレオの「天文対話」、プラトンの対話形式をなぞったような方式をとっていて、著者の説はなかなか世に認められず最後まで自説を広める努力を続けていたことが想像されます。
 ユクスキュルの文自体が難解なのでしょう、翻訳者も随分苦労をし、1973年の邦訳版(思索社、現新思索社)に満足できずさらに今回改訳を重ねられたようです。しかし改めてこの概念に当てはめられた「環世界」という単語は、あまりにも長い間日本で「環境世界」として表現されていたものなので、これから認められていくのは難しいかもしれません。
 ヒトも他の動物もそれぞれに固有の世界を生きている、と納得するのは、どこか、小さい子供が他の子供も自分と同じように叩かれたら痛いのだとわかった時とか、自分の親も自分と同じような子供時代があったこと、同じ人間だと気づいた時のような、いきなり世界が広がる体験をくれるものだと思います。もしかしたら地動説が登場した時もそんな風だったのではないでしょうか。新しい視点を感じた時、広がった世界を感じることのできる自分を大きくなったと思うか、世界が広がった分だけ相対的に小さいと思うのか。これは本書の題材とは離れてしまいますが、そんなことも考えさせてくれる本です。
 ハードカバーでなく、比較的安価な文庫にして手に取りやすくされた出版社の心遣いも嬉しいです。

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紙の本

豊饒な思想的広がりをもった古典的名著

2006/01/08 13:52

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る

 生物は機械ではない。主体である。生きた主体なしには空間も時間もありえない。たとえばダニにとっての瞬間(最短の時間の断片)は十八年であり、人間にとってのそれは十八分の一秒である。
 生物は「環世界 Umwelt」という閉じたシャボン玉によって永遠に取り囲まれている。純粋な自然の設計(プラン)によって支配されている。すべてを包括する世界空間とはフィクションである。
 環世界は主観的現実にほかならない(カントの学説の自然科学的活用)。下等動物の知覚世界・作用世界から形と運動という高度な知覚世界を経て人間の環世界へ。ユクスキュルの叙述は、本来見えない世界を鮮やかに、そして平明に解き明かす。
 実に豊饒な思想的広がりをもった古典的名著である。とりわけ12章「魔術的環世界」と13章「同じ主体が異なる環世界で客体となる場合」が素晴らしい。聞き囓りのアフォーダンスの理論や、今読み進めているベルクソンの思索にダイレクトにつながっている。ハイデガーの「世界内存在」への隠蔽された回路は、木田元氏の本でつとに紹介されている。本邦の今西進化論も想起させられる。
 なによりファーブル(昆虫)やダーウィン(ミミズ)や養老孟司(人体)の観察につながっているのが楽しい。科学することの歓びがあふれている。前二者は本書にその名が出てくる。養老孟司の名は、本書と同時に『解剖学教室へようこそ』を読んだがゆえの連想だが、本書末尾次の文章は養老人間科学における「実在(感)」や「自然」の定義そのものだ。
《このような例[天文学者や深海研究者や化学者や原子物理学者や感覚生理学者や音波研究者や音楽研究者の環世界がそれぞれに異なること]はいくらでもある。行動主義心理学者の見る自然という環世界においては肉体が精神を生み、心理学者の世界では精神が肉体をつくる。
 自然研究者のさまざまな環世界で自然が客体として果たしている役割は、きわめて矛盾に満ちている。それらの客観的な特性をまとめてみようとしたら、生まれるのは混沌ばかりだろう。とはいえこの多様な環世界はすべて、あらゆる環世界に対して永遠に閉ざされたままのある一つのものによって育まれ、支えられている。そのあるものによって生みだされたその世界のすべての背後に、永遠に認識されないままに隠されているのは、自然という主体なのである。》

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紙の本

本当に動物には世界がこういう風に見えているのでしょうか。それがどのようにして証明されたのか、わたしは知りたい、とっても、とっても。でも、それにはこの本は答えてくれていないかな・・・

2005/09/11 22:46

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

どうも私にとって誘蛾灯のような働きをするのが、「科学の古典」という言葉のようです。古典=未読、古典=分り易い、という誤解というか短絡があって、それらの字を見るだけで手が伸びてしまいます。そして、性懲りも無く知らない分野に挑んでしまったわけです。勿論、脳裏には大学受験に向けてヨチヨチ歩き始めた長女のことがあるにはあるんですが・・・
「甲虫の羽音とチョウの舞う、花咲く野原へでかけよう。生物たちが独自の知覚と行動でつくりだす〈環世界〉の多様さ。この本は動物の感覚から知覚へ、行動への作用を探り、生き物の世界像を知る旅にいざなう。行動は刺激に対する物理反応ではなく、環世界あってのものだと唱えた最初の人ユクスキュルの、今なお新鮮な科学の古典。」
著者のヤーコプ・フォン・ユクスキュルは1864年エストニアの生まれ。ハイデルベルグ大学で動物比較生理学の研究をし、環世界の発想はこの中で生まれたといいます。ただし、この発想は「科学的」でないと思われたため、大学との関係も断たれ、ふりーの身として研究をすすめたそうです。
彼が62歳の時1926年、「環世界研究所」の名誉教授に招かれ、彼の見解が世の中に多くの影響を与えるようになり、1944年、イタリアで死去。80歳だったそうです。クリサートは、この本の絵を受け持った人で、1906年、ペテルブルグ生まれ。画家ではなくて、1929〜35年にユクスキュルとともに「環世界研究所」で研究、ユクスキュルの死後はスウェーデンの研究所で細胞生理学の研究に携わったといいますから、学者だったわけです。
ここに出てくる環世界ですが、これは「客観的に記述されうる環境」ではなく「その中にいるそれぞれの主体にとってみれば、そこに「現実に」存在しているのは、その主体が主観的につくりあげた世界なのであり、客観的な「環境」ではないのである。」「それぞれの主体が環境の中の諸物に意味を与えて構築している世界のことを、ユクスキュルはUmweltと呼んだ。」
実は、このUnweltに対して今まで「環境世界」という訳語が与えられてきたのですが、環境とUnweltは対立するものであり、今回、新たに「環世界」という訳語を与えたそうです。ここらについては日高敏隆の訳者あとがきに詳しいので、読んでみて下さい。私たちを規定するのは絶対的な外部世界ではなく、私たち自身によって規定される環世界である、というのは結構理解しやすい話だと思います。
この本では、様々な生き物が世界をどのように捉えているかを、クリサートの絵を使って分りやすく示しています。人間とイヌにとっての世界の違いを知れば、私たちが外部世界として確固としてある、と信じていたものですら、揺らぎ曖昧模糊としたものになるのはいたし方ありません。
ただ、あとがきにもあるのですが、当初、ユクスキュルによってこのUweltが唱えられたとき、それを実際に証明する手段があったか、といえば、少なくとも私にとっては疑問です。様々な生き物にとって、私たちの世界がどう捉えられているか、それが具体的に絵で示されはするのですが、絵ではなくほかの手段でなければ科学ではないだろう、そう思うわけです。
それが、多分「この発想は「科学的」でないと思われた」のでしょうし、それが近年、他の手段で証明されることによって、再び注目、再評価されるようになったのだと思います。とすれば、原典としての紹介だけではなく、これを現代の科学がどのように証明しているかを示さない限り、やはりこれを読んでも発想以上としては受け止められないでしょう。
そういう意味で、原典だけを紹介するのではなく、殆ど同じ分量の注記、もしくは現在の論文を付録としてつけるべきではないか、そう思うわけです。

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2013/03/31 01:16

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2005/12/13 18:36

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