紙の本
書簡インタビューにこそ谷川俊太郎の姿が見てとれるようです
2005/11/04 23:29
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
『谷川俊太郎詩選集』第3巻は、1980年代後半から現在に至る作品を集めた1冊となっています。『詩選集』の最終巻でもあります。おおよそ今の谷川俊太郎が収められていると言えるでしょうか。
前2巻と同様に、様々なスタイルの詩が収められていますが、読み進めるうちにしばしば「詩」が「死」に通じているように思えてなりませんでした。決して、詩の中にそのような直接的な表現があるわけではないのですが、「詩」のことを語っているものに「死」の匂いを、「死」が表現されているものにこそ「詩」を感じてしまったのです。どちらも”shi”と発音されるのだから、何か共通するものがあるのだろう、なんていう解釈は余りにも谷川俊太郎の言葉遊びみたいで実も蓋もないのですが、「詩」をもって自分の存在そのものを語り続けてきた谷川俊太郎ですから、60代から70代と年齢を重ねてきた中にどうしても「死」の姿が見え隠れするのは自然なことなのかもしれません。
この第3巻巻末には、編者の田原と作者谷川俊太郎のメールによる書簡インタビューが載せられています。田原の問いに微妙にずらしながら答えているのが、実はどんな作品よりも彼らしさが出ているようで、一番おもしろく読んでしまいました。ここまで含めて初めてこの『詩選集』が完成するのではないかとも思われます。
電子書籍
生と言葉との関係
2020/06/20 13:11
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:やっこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
谷川俊太郎さんと田原さんの書簡インタビューが巻末にあります。
詩集だけでなく、それも楽しかったです。
そこで、谷川さんは「私にとって本当に問題なのは、生と言葉との関係なのだ」と仰っています。
これは、とっても大切なことだと思いました。何か大切なことを伝えたくても、言葉は不完全だということの意識を常に持つことの大切さを教えてくださっている気がしました。
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“真っ白でいるよりも”の一番最後だけを最初に知って、この詩を読みたくて買った本。
読んでみて物事を見る視点が好きだって改めて思った。
世界ってこんな見方もあるんだなぁと感じられます。
でも全部読んでません。。。
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一から三までよみおえて、谷川俊太郎の詩がものすごく好きになりました。作品自体を買おうかなと思案するほどに…
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クレーは言葉よりもっと奥深くをみつめている。それらは言葉になる以前のイメージ、あるいは言葉によってではなく、イメージによって秩序を与えられた世界である。
言葉によって感染した病いは言葉によって免疫するしかない。
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現在の谷川俊太郎に最も近い作品集。だいぶ高齢ともなり、すっかり谷川スタイルは確立されたかのように見えるが、彼の挑戦は留まるところを知らない。問題作として一部で話題になった詩「なんでもおまんこ」も収録されている。個人的なおすすめは「三つのイメージ」。
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わたしは かじりかけのりんごをのこして
しんでゆく
いいのこすことは なにもない
よいことは つづくだろうし
わるいことは なくならぬだろうから
わたしには くちずさむうたがあったから
さびかかった かなづちもあったから
いうことなしだ
わたしの いちばんすきなひとに
つたえておくれ
わたしは むかしあなたをすきになって
いまも すきだと
あのよで つむことのできる
いちばんきれいな はなを
あなたに ささげると
(p.173 「しぬまえにおじいさんのいったこと」)
ぼくのはなしもきいてほしいな
おとなみたいにはなせないけど
やなことばかりがいっぱいなんだ
あそぶものにはこまってないけど
きょういきるだけであしたがないよ
どうしてなのかおしえてほしい
きもちのふかみにおりていきたい
そこにはにじもほしもないから
かえってこえはよくきこえるんだ
まっくらのなかでじっとしてると
おとなもこどももきっとおんなじ
こわいこともたのしいことも
いつしんだってかまわないんだ
だけどできたらいきていきたい
かみさまなんていないんだから
(p.176 「きもちのふかみに―― a song」抜粋)
―――――
魂のいちばんおいしいところ(p.39)、人を愛することのできぬ者も(p.115)、夕焼け(p.145)etc.と一個一個固形物にして棚に飾っておきたいような良い詩がいっぱいです。真っ白でいるよりも(p.139)はちょっと寺山修司っぽいかな。しぬまえに~は『みんな やわらかい』収録時に小学生時に図書館でちらっと読んでからどの詩集に載っているのかわからないまま探してなかった詩なので、本書を読んでて見つけたときはキター!状態でした。わたしにはくちずさむうたが~からの二行が哀愁漂ってるけど満足気で好きで好きで。(そして続きにうっかりホロ泣きした過去)
現在の国語の教科書には谷川氏の作品は掲載されていない?らしく?私の時代は『生きる』が載ってたなあ、あれで谷川詩を知ったなあ、ていうか学校で初めて読んだときこっそり泣きそうになったよなああれもまた思い出、というのを思うと、ううん、少し淋しくなるような、間に合えたとほっとするような、ちょっと不思議な気持ちになりました。さて、次に読みたい谷川詩はマザーグースです。のんびり買い求めますか。
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「まだ二〇世紀なのね
未来ってなんてゆっくり来るんだろ
待ってらんないな」
「真っ白でいるよりも」を読んだとき、ずきゅうううぅーんと心をうたれた。
「花が咲いてて、そよ風に吹かれて、それだけで幸せって思ってて、だからうしろめたいの。ひとりぼっちが。」
それでもそれだから、「あなたの色とまざって、嫌いな花の色になるほうがましなの。真っ白でいるよりも」ね。
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向井承子さんからいただいた、『脳死・臓器移植 私たちのメッセージ』(「臓器移植」の性急な立法化に反対する連絡会編)の冒頭に、谷川俊太郎の「誰にもせかされずに」があった。連絡会主催の、「脳死・臓器移植」を考えるシンポジウム(1994年10月8日)で朗読されたものだという。
どれかの詩集に入ってないかと探したら、この詩選集に、単行本未収録詩篇として収められていた。
「誰にもせかされずに私は死にたい」から始まる詩の、最後の2連はこんなだ。
…
誰にもせかされずに死にたいから
誰もせかさずに私は死にたい
丸ごとのただひとつのいのちのままで私は死にたい
限りあるいのちを信じるから 限りあるいのちを慈しむから
今も そして死のときも
誰にもせかされずに私は死にたい
扉の外で待つ者が私をどこへ連れ去るとしても
それはもうこの地上ではないだろう
生きている人々のうちにひそやかに私は残りたい
目に見えぬものとして 手で触れることの出来ぬものとして(pp.235-236)
この詩選集には、『世間知ラズ』より「父の死」も収められていた(この詩集は、15年くらい前にもらって、うちにある)。
高校のときに、母の友人から贈られた『よしなしうた』に始まり、うちにある谷川詩集を寄せ集めたら十数冊になるが、この詩選集3の巻末を見ているだけでも詩集のほかに単行本、絵本、翻訳など膨大な冊数の本があって、ちょっとびっくりした。
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子ども向けのものから散文詩まで、様々な詩が集められた一冊。特に最後のインタビューは、研究したい人は必読。
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201802読了。
この詩集を読んで、私は谷川俊太郎氏の児童文学の顔しか知らないんだなと痛感した。先生の大部分を占めているであろう難解な部分を、この詩集で初めて知った。…つまり何が言いたいか。教科書と翻訳の力ってすげぇってこと(笑)
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3巻も色々な色の言葉たちでした。やわらかかったり、ちくちくしたり、ドキドキしたり。クレーの絵に付いているのであろう詩も素敵で、絵と一緒に見たくなりました。短い中にも世界が広がります。好きなシリーズです。
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少し前に一度読んだのを再読したら微妙に惹かれる詩が変っていました。
1や2より3はボリュームもあって読みごたえがありました。
好きなものを挙げると
「魂のいちばんおいしいところ」
「詩を贈ることについて」
「虚空へ」
「あい」
「天使、まだ手探りしている」
「泣いている天使」
「醜い天使」
「あのひとが来て」
以前に、『クレーの天使』を読んだときは違うものに惹かれました。
巻末に中国人文学者の田原(ティアンユアン)さんによる谷川さんへの書簡インタビュー、解説があり、興味深く読みました。