紙の本
プラナリア・・・幸せになれない存在と意識
2005/10/12 18:50
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひまわりまるこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
新刊書の方には15の書評が付いているようですが、あえて読まずに書こうと思います。 昔から、私は文庫本書評しかしないし、書店に寄っても新刊書コーナーを通り過ぎて文庫本コーナーへ引き寄せられる(選択の幅もありそうで、、、)習慣があります。 お小遣いの足りなかった子供のころの名残りとも言えるし、持ち運べる手の平サイズが好みと言いつつ、結局公園のベンチや待合室や車中よりも自分の部屋で文庫本を読んでいる、読書家ではない文庫本好きだからです。
で、本題。 乳癌の進行状態と平行して精神の癌が進行し、ずるずる引き込まれてゆくように不安定の度を増してゆく主人公。 ああ、これは私かもしれないと感じる女性もいれば、乳癌の経験もなしでこんな不幸な感覚は持てないわと言う健全な女性もいるかもしれないけれど、決して乳癌と女性をテーマにした小説ではない。
幸せになれない存在、、、依存なのか適応に問題があるのか、無意識領域での基本的信頼感の欠如、生きずらさを常に感じている人間が引き篭もりもせず社会に出ている悲劇と言うべきなのか? 懐疑心が強く愛されても不器用にしか応えられず、同調出来ずに相手から敵意を引き出してしまう女。 バランスがとれず、右の羽を切り左の羽を切りして血を流しながら飛び続ける鳥のようだ。
プラナリアの『再生』と『分裂』は主人公の精神状態を解く鍵となる。 生の痛みは減ることなく、再生しては分裂増殖してゆく苦悩。 再生のきっかけは恋人であったり、永瀬さんという人であったり、それでも分裂が始まる頃には誰も手を出せなくなる。 プラナリアの宿命、意志のない命のように、分裂は止まらない。 分裂自体が運命となる。 だから、「乳癌は私のアイデンティティ」と言いながら、乳癌にも精神の癌にも真っ向から向き合おうとはせず、恐いもの見たさの子供のような態度をとってみたりする。
自己嫌悪は自己欺瞞からくるのか? 自分自身を扱えずにパターン化した人間関係に傷ついてばかりいる危なかしさに肉体的苦痛が重なって、救われようとしては同じことの繰り返しで終わる。 それでも自殺を計ることなく生きるしぶとさに、彼女は自分を悩ます乳癌と、プラナリアと、自分自身とを、かけているのではないか。 生まれ変われるならプラナリアになりたいのではなく、彼女はプラナリアに自分を癌を見ていたはずである。
紙の本
共感しづらい
2020/04/12 16:23
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投稿者:あおたいがー - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公たちがそれぞれ屈折したなにかを抱えているのだけれど、それにいまいち共感できず、作品にはまっていけなかった。
誰にでも心に抱えているものがあって、ぶつけどころのないものの出口を捜しているのだけれど、結局見つけられないままに終わってしまっているようですっきりしない。
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女性たちの日常を描いた短編集。なんか特に別にって感じ。本来なら、「ここに出てくる女性達は自分と似てて〜」なんて思うのかもしれないけど。そう思う人こそ、この本に出てくるかわいくない女性ではなく、まっとうに生きてる女性なんじゃないかな。私は、自分とは似てるなんて思えなかった。だって、ここに出てくる女性は、みんなかわいくない自分を演出してる女性ばっかりに見えたから。でも、山本さんから見る男性には、結構共感する部分もあったけど。安直な男性、多いですよね…。素直と安直は違うんですよ、男性諸君。
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「無職」がテーマの小説。
主人公の女性はみんな無職。働くって健康的なことで、そして幸せなことだな、と思った。
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現代人のなんとなく生きている人たちをスポットにした短編集。ひねくれてしまった女の子や、日々の生活に追われて生活をせざるをえなくなった主婦や、ただ時間をもてあましてだらだら生きているニートとかが主人公です。個人的には囚われのジレンマが一番良かったです。
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なんとなく人間の持つ日常的な醜さみたいなモノに焦点が当たっていて、あんまり好きじゃないかも。文章は良いのですけどね
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ずしーんと心に来ました。「プラナリア」が一番好きだった。「ネイキッド」「どこかではないここ」を読んで、母親を大事にしたくなった。めっちゃウチの母親と被るとこがあったから。結末がハッピーではなくて、主人公たちの、この先の物語、を自分で想像するような短編集。
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山本文緒さんの作品は久しぶりに読みました。女性の心理の奥深くに潜む感情をうまく引き出して、本音の、ほんとの自分を見つけていくっていう、そういう部分がとても共感できます。この「プラナリア」は短編集。仕事を持たない女性の心理を描いています。そして、いろいろな女性(今回は男性も)の心の揺れ動きを繊細に捉えていて、また引き込まれました。強がって頑張っていたのは自分の弱さを隠すため…。いいじゃない?もう。気持ちのまま生きていこうよ。そしたらきっと楽になれるのに…、そんな風なメッセージを受け取った気がしました。
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現代の「無職」についての短編集です。
すごくうわっと思って、
何か自分のために感想を残しておきたくなってしまったので、
私なりの感想です…。
なんだか身に突き刺さるようでした。
最後の話以外は、読んでいてとてもじゃないけど、「良い気分」にはなれない。
読書が娯楽の一環だとしたら、この本は
「無職の人」にも「働く人」にも逃げ場のない短編。
ドラマなど見ていないで鏡を見ろ!とつきつけられている感じ。
完全なハッピーエンドなんて無くて、グレーゾーンが多いのが現実だし、
この本の短編の多くも、「希望」で終わってはくれないし、
かといって「どんぞこ」で終わるわけでもなく、
答えを提示してはくれず。すごくリアルでした。
「勝ち・負け」と人を二つの組に分ける言葉が一時期流行っていた。
私は好きな言葉じゃないけれど、テレビや中吊り広告でよく目にしました。
今はインターネット上で、誰でも自由に言葉を書けるから、
派遣切りや無職にたいして、あからさまに見下す言葉や、
自分の方が「勝ち」と思うから書けるだろう文章を発表してる人も多い。
実社会でそう言ったことを思い切り口に出す人は少ないだろうけど、
自分はあの人とは違う、と思いたい気持ちを皆持っているのだと思う。
「自分は無職とは違う。」
「自分は犯罪者とは違う。」
そんなのいくらでもある、稼ぎ・美貌・学歴・大企業・都会などなど。
私は自分のことがあるから「派遣」も「無職」も見下したり…出来ない。
でも私だって、例えば殺人犯や強盗が、自分と同一線上に立ってると思いたくない。
もしかしたら「自分は違うんだ」と思うことで、何かを確認したいだけなのかもしれない。
会社でばりばり仕事をこなしている人の中には、
自分は無職とはほど遠いところにいるのだと、思っている人も多いのかもしれない。
余程の事が無ければ会社を辞めないつもりでも、
実際は、辞めてしまえば無職だ。
勝ち組も善良な人も、この本から引用すれば「薄氷の上に立っている」だけなのかも。
備えあれば憂いなし、とは言え、明日何が起こるのかすら誰にも分からない。
この本の主人公たちは、皆少しひねくれていて、正直言って性格悪そう…。
所謂「イタい奴」と言われたり、引かれたりするようなタイプかも。
「あまりネガティブなことを言うな」と言われたり、
所謂イタい奴な私が書くのもおかしいけど。
でも、多くの「善良」は実は排他的だと思うことが、私にはよくある。
汚い部分は、絶対に見ない・触れないようにする人も多い。
気がつけないことって、沢山あるけれど、考えの違うものを排斥することで、
実は人を傷つけていることに気がつかない善良さよりも、
傷つけているかもしれないことに、気がつくことが出来る人の方が、
捻くれて見えても、私は好きだなと思った。
現実はドラマだったり、一時間に纏められたドキュメンタリーみたいに上手くはいかないし、
明確な「答え」なん���あんまり出ない。
何かの拍子で薄氷が割れて、氷水の中に落ちてしまうのはすぐでも、
また薄氷の上に立つのはなかなか大変だから。
本の帯の、
「働かないって悪いこと?」と書かれた問いに、
「悪い」とも「悪くない」とも思えなかった私の感想。
人には本当に色々な時があって、
自分が同じ立場になってみて初めて分かることは、本当に多いもの。
…かなり長くなっちゃったけど、色々思って、書けてよかった。
すごい本だったけど、読んでいて苦しかったから★3つ。
いつもレビューとか後で読み返すと恥ずかしくなるから、
これも恥ずかしくなっちゃうかもしれないなぁ…。
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働かない話。みんなすごい嫌な性格だけど人間って本当はそうなのかも。きれいごとじゃない部分が逆に気持ちよい。
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働くことのincentiveを見出したくて読んでみた。オムニバス形式で出てくる主人公たちは(パートのおばさん除き)みんなやる気ない。自分がやっちまったときにそれを美化や正当化することなく「あたしあほやったな」と客観的に見れるように、こういう「いやなイメージ」も大事やと思う。
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山本文緒は無気力やめんどくささを書かせたら右に出るものはいない?というくだりをどっかでみかけて、まさに..とうなづいてしまった。でも働かないことがそんなにいけないこと?と主人公達はいうけど、無職と有職がどうのこうのじゃなくて、心持ちの問題ではないかと..。働かないと暮らせない人間にとっちゃそんなこといってられないよて、思ってしまう..。
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暇だったので購入。短編集だとは思っていませんでした。一話一話が重くて深い印象。作者は読み手に、この嫌な感じを持たせたかったのかなぁ。ただ、ラストの話は何を伝えたかったのかはっきり分かりませんでした。
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山本文緒さんの小説に出てくる女性って少し癖があるというか、イヤな感じがある。だけど、それは誰もが持っているであろう感情を出しているだけで、読んでいて共感出来る部分が私にはたくさんある。だけど、この作品に出てくる女性の気持ちはわからなくもないけど、共感は出来なかった。
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おお、山本文緒だ。
男って女のことわかってない。女って男のことわかってない。親は子どものこと、他人は他人のこと、自分は自分のこと。わかってなんかいやしない。