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商品説明
「ロルの原理」は最大値の存在定理を使って証明される。この最大値が存在するという事実が成り立つのはどうしてだろうか? 微分積分学の基礎理論を見つめ直し、現在の解析学の基盤となる、位相空間論の諸概念まで解説する。【「TRC MARC」の商品解説】
目次
- 第1章 ロルの定理を見直す
- 1.1 微分積分学の根底に流れているもの
- 1.2 微分係数と微分、導関数
- 1.3 平均値の定理、テーラーの定理を見直す
- 1.4 テーラーの定理の内容
- 1.5 ロルの定理を証明してみる
- 第2章 実数の連続性ということ
- 2.1 ロルの定理の問題点
- 2.2 実数の性質(1)四則演算と大小
- 2.3 実数の性質(2)稠密性とアルキメデス性
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紙の本
将来の進歩につながらない
2021/10/12 21:47
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Eternal Kaoru - この投稿者のレビュー一覧を見る
この著者は本当に数多くの本を執筆しておられますが、管見の限り良い本は一冊もありません。この本も例外ではなく、わざわざレビューする価値もないかと思いましたが、大学1年生がこの本を読むとデメリットが大きいので注意を喚起しておきます。この本に手を出すのは本格的な微積分がわからない、という大学1年生でしょう。そういう読者に誤解を与えると思いますし、最初に刷り込まれた誤解はなかなか修正困難です。
まず、アルキメデスの原理の扱いです。アルキメデスの原理が「上限公理」から導かれることは、詳しい微積分の教科書に必ず書いてあります(例:杉浦光夫、黒田成俊、金子晃先生の教科書)。「上限公理」、「有界単調数列の収束性」、「デデキントの切断公理」は問題なく同値です。しかし「区間縮小法」はこれらと同値ではありません。本書p73で「区間縮小法⇒デデキントの切断公理」となっていますが、正しくは「区間縮小法+アルキメデスの原理⇒デデキントの切断公理」です。アルキメデスの原理が必要です。この点は金子先生の教科書に印象深く書かれています。
もちろん、こんなことを職業数学者である著者が知らないはずはありません。本書はアルキメデス的順序体+切断公理で実数体を定義しており、アルキメデスの原理は当然の前提であるという立場で書かれています。この立場では「区間縮小法⇒デデキントの切断公理」でよいわけです。問題はそれが初学者にとって妥当であるか、です。妥当ではないと思います。まず、アルキメデス性がない順序体は山のように存在して、現に杉浦先生、黒田先生の教科書には実例が書いてあります。杉浦先生の教科書にはアルキメデス性の意味するところもきちんと書いてあり、これが数学の理解に資することは言うまでもありません。つまりアルキメデス性は自明でない、ということはきちんと説明した方が将来の進歩につながると思うのです。次に、本書で「区間縮小法は実数の連続性の表現である」と刷り込まれた読者が、上記のようなきちんとした教科書に進むと、「???」となるはずです。このように実用面での弊害が予想されます。
全般に易しく書けばいいだろう、というスタンスで記述されているようですが、厳密性が大幅に犠牲になっています。厳密な議論は理解が難しいです。しかし、厳密でなければ理解しやすいというものではありません。端的な例はp121の部分列の「定義」です。「数列{bn}の各項が数列{an}のどれかになっているとき、{bn}を{an}の部分列という(nは下ツキ)」。そもそも意味不明で、定義になっていません。『距離空間と位相構造』という本に「{pn}に対し、適当なn'を抜き出して得られる点列{pn'}を{pn}の部分点列あるいは部分列という」という「定義」があり、Twitterで嘉田勝先生が怒っておられます。これは嘉田先生のおっしゃる通り、定義になっていません。これ以上にひどい部分列の「定義」を見る機会はないだろうと思っていましたが、本書の部分列の定義はこれ以上にひどく、新鮮な驚きでした。
本書の代替参考書は和書なら田島一郎先生の『解析入門』等でしょうか。洋書なら沢山あります。アメリカの大学1年生の微積分は日本の数III程度で、2年生以降の厳密な微積分とのギャップが大きく、ギャップを埋めるための本が多く出版されています。字数が尽きましたのでいちいち挙げられませんが、Doverで何冊か出ていて、いずれも安価かつ良質なので、そちらを求めるのが良いと思います。