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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2005.10
- 出版社: NTT出版
- サイズ:20cm/272p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-7571-4100-9
紙の本
グローバルスタンダードと国家戦略 (日本の〈現代〉)
著者 坂村 健 (著/編集),猪木 武徳 (編集),北岡 伸一 (編集),松山 巖 (編集)
ユビキタスとも関係の深いRFIDをきっかけとして、標準化を含む技術戦略がこれからどう変わるのか。研究開発の当事者として、グローバルスタンダードのあり方の変化と、その中で日...
グローバルスタンダードと国家戦略 (日本の〈現代〉)
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商品説明
ユビキタスとも関係の深いRFIDをきっかけとして、標準化を含む技術戦略がこれからどう変わるのか。研究開発の当事者として、グローバルスタンダードのあり方の変化と、その中で日本のやるべきことなどを論じる。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
坂村 健
- 略歴
- 〈坂村健〉1951年東京生まれ。東京大学大学院情報学環学際情報学府教授。TRONプロジェクトのリーダーとして、全く新しい概念によるコンピューター体系を構築。著書に「痛快!コンピュータ学」他。
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紙の本
著者ならではの説得力ある標準規格戦略論
2006/07/05 01:00
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:sheep - この投稿者のレビュー一覧を見る
TCP/IPプロトコルを使ったインターネットが今こうして世界で使われるシステムとなった背後には、アメリカの国防予算による長年の膨大な投資がある。
インターネットは、世界各国が集まってISOで決めた公的標準(デジュール・スタンダード)が、公的でない業界標準(デファクト・スタンダード)の簡素なTCP/IPプロトコルに破れてしまった見本だ。以後、ネット用機器も通信装置も、日欧企業の活躍の場は狭まり、アメリカ企業が圧倒的に強い。グローバル・スタンダードと一言で言うが、実はひとすじなわで決まる訳ではなく、一方、庶民生活とは全く無関係というわけでもない。経済に、生活に密接に関係している想像以上に大切なものだ。
著者はTRONというパソコン規格を構築したことで有名だ。この規格、一時は文部省が採用するパソコン規格の一つにになるかとも見えたが反対勢力につぶされた。ちなみに彼の漢字規格と現在覇権を握っている漢字規格とは、漢字の扱いが基本的に違う。形が違うと思われる文字には違うコードをあてのが彼の規格だ。後で同じとわかったらまとめればよい。標準規格はそうではない。極力まとめてしまう。違うと思われる文字を同じコードにしてしまえば、後に実は違っていたとわかっても、もう分けられない。後の祭り。日本人や中国人が古典を研究する限りにおいては、著者の考え方のほうがよいと思えるが、コンピューター・ソフトを開発する企業は圧倒的にアメリカが強いため、彼の方式は弱小派のまま。日本企業は、CPUもOSも完全にアメリカにおんぶにだっこ状態だ。
パソコンではなく、電子機器への組み込みという点では、しぶとくTRON規格は生き残っている。様々な家電を作るのに、公開標準規格が使えず、アメリカ標準ソフトを搭載しなければならない情況を想像すれば何がおきるかわかるだろう。メーカーにとって、費用は大変なものとなり、価格は消費者に転嫁されるだろう。
日本の国益を考えたコンピューター標準規格を作ろうとしてアメリカ大企業を相手に奮闘した著者が語る標準戦略の話が面白くないわけがない。またTRONの話題だろう、と勝手に想像して読みはじめたが、そうではなかった。今彼が標準化を目指して奮闘している規格は、話題のRFIDなのだ。バーコード的発想と、内部の人間による万引き対策から考え出されたアメリカ式RFIDをとるべきか、あるいは発想を全く切り換えて、内部の万引きがあまりない日本の情況にあわせた規格を推進すべきか、を検討するには基本的な技術論議は避けられない。
軍事・政治・経済でアメリカに下駄を預けたままの日本、えてして「グローバル・スタンダードはアメリカの考えたものを使わせてもらえば良い」と考えがちだ。さにあらず。所詮は工業規格というものも、お国柄や事業環境から自由ではない。用途、実態にあわせた規格をできる限り自ら努力して作り上げるべきなのだ。
そうした国際交渉を何度も経験している著者の観察は鋭い。学問や企業で研究開発部隊最前線にいる人々、必ずしも国際交渉に強くない。観念的な規格を確立するべく持論を説得力を持って主張できるような人材はほとんどいない。口角泡を飛ばすだけでなく、時には相手の意見を呑む腹芸も必要だ。それも基本的には英語で。とうてい日本の企業幹部やら役人の能力で太刀打ちできるものではない。国連に膨大な資金を出しながら見合った人数の職員をだせない現実と同根の問題がある。人材育成戦略の欠如。
本書を読んでからRFIDの記事を読むと、背後を読む力がついたような気がする。
個人的にデファクト、デジュール両規格の商品開発にかかわった経験からも思う。技術開発に利用できる膨大な国防予算も戦略もないわが国、せめて規格や法律は、安易に人任せにせず、自分たちのためになるのものを作り上げる努力をすべきなのだ。