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商品説明
ヴァイオリニスト・千住真理子が巨匠ストラディヴァリ製作のバイオリンを手に入れた。300年の眠りから目覚めた名器は、いかにして千住家の一員となったのか。真理子の母が綴る感動のドキュメント・エッセイ。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
千住 文子
- 略歴
- 〈千住文子〉エッセイスト、教育評論家。夫・鎮雄とともに、日本画家の博、作曲家の明、ヴァイオリニストの真理子を育てた。著書に「千住家の教育白書」など。
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紙の本
私には楽器の良し悪しを聴きわける耳はない。けれど、このヴァイオリンは確かに凄いのだろうと思う。
2006/01/29 21:39
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:栗太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
久々に勇気をもらった。自分で選んだ道であるなら、どんな困難にも怯まず突き進むべきなのだ。結果はどうであれ、そのことが人生の勲章なのだと思った。
本書は、ヴァイオリニスト千住真理子氏が、名器ストラディヴァリウスと出会い、困難を乗り越え手に入れるまでを、母親である文子氏が描いたドキュメント・エッセイである。プロフェッショナルとして立つ者の覚悟と、家族の絆と愛情、ヴァイオリンの魅力が詰まっていて、ハラハラしたりホロリときたり、最後まで一気に読んでしまった。
困難を乗り越えてと書いたが、運命が味方するかのごとく、ストラディヴァリウスは真理子氏のもとに引き寄せられてくる。買入れ交渉エントリーナンバー4の彼女のもとまで、ヴァイオリンはスルスルとやって来て、あなたに時間をあげると言わんばかりに、日本での滞在日数を延ばしてくれる。そのあたりの展開は、おとぎ話のように不思議でロマンチックだ。そしてまた、ストラディヴァリウスを千住家の一員とするため奔走する人たちの、なんと愛情深く誠実で粋なことだろう。綺麗ごと過ぎると、受けつけない人もいるだろうが、ストラディヴァリウスを借りに行くため新しい背広を仕立てたC氏や、足を棒にして融資先を探してくれた会計士など、その姿を思うと、胸がジンとする。
最後に立ちはだかるのは、お金の問題だ。億という単位の莫大なお金を、いったいどう工面するか。銀行の融資を受けようにも担保のない個人では難しい。借入ができても、今度はその借金を背負っていかなければならない。おそらく一生。それだけの覚悟が、情熱があるか? 真理子氏は、ためらわず怯まず突き進んでいく。
私には、楽器の良し悪しはわからないと思う。100万円のヴァイオリンと1億円のヴァイオリンを聴き比べても、違いがわかるかどうか……。だがそれは、ストラディヴァリウスを手に入れようと奮闘する千住家の面々に対する共感と応援の気持ちを、いささかなりとも損なうものではなかった。ストラディヴァリウス「デュランティ」300年の眠りからさめた音色を聞いてみたいと、素直に思った。