紙の本
平成マシンガンズ
著者 三並 夏 (著)
【文藝賞(第42回)】あたしの夢には死神が降臨する。ボロのジーンズに出刃包丁をもって夢に現れる男。あたしはそいつが差し出すマシンガンを撃っては、頭を撫でられていた…。言葉...
平成マシンガンズ
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
【文藝賞(第42回)】あたしの夢には死神が降臨する。ボロのジーンズに出刃包丁をもって夢に現れる男。あたしはそいつが差し出すマシンガンを撃っては、頭を撫でられていた…。言葉という武器で世界と対峙する史上最年少15歳による文藝賞受賞作。【「TRC MARC」の商品解説】
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
日常というバトル・フィールド
2008/08/22 12:01
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:けんいち - この投稿者のレビュー一覧を見る
『平成マシンガンズ』、この本は、タイトルも小気味よいし、装幀もカッコいいのだけれど、やはり文芸賞とか受賞年齢とかに関係なく、何よりひたすらに小説として素晴らしい。言葉が、カユイところを見事に掻いていく。
古き良き(あるいは、悪しき)文学に比べれば、『平成マシンガンズ』の文章は「軽い」し「薄い」よみに見えもするだろう。だけれども、かつてと書くべき事柄や、それらに対する「感性」が多き変わっていることを忘れてはならない。何より、この主人公にとっては、学校や家庭といった日常を形作る環境それ自体が、大げさな言い方でも比喩としてでもなく、ただしくバトル・フィールドなのだ。そこで、何を感じ、どう振る舞い、何を選び何を失っていくのか、その切実な「大事件」として、日常は、ある。そうした新しい現実を書くのに、かつての文学の言葉は、あまり役に立たない。
三並夏の文章は、スピード感もある上に、そのリズムの内に、またたくまに、上記のような環境を生きる主人公の「現実」を、リアルなそれとして巧みに捉えていく。内容のセンセーショナリズムに気を取られすぎる必要はない。デビュー当初の綿矢りさにも比肩しうる、この見事な文章を、現代文学のそれとして、まずは正当に評価すること。その上で、このバトル・フィールドの戦慄を味わうこと。それはこの時代の息吹を感じることでもある。
紙の本
鋭い言葉
2005/12/12 11:02
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:メル - この投稿者のレビュー一覧を見る
綿矢りさの小説に出てくる女の子以上に斜に構えた女の子が語り手だ。小説は「喧嘩と仲直りの規則的な羅列が句点も読点もなくノンストップでただつらつらと続いていくような、そういうお付き合いだった」という文章で始まる。句点はともかく、読点がかなり少ない文体がこの作者の特徴だ。まさに語り手が言うように「ノンストップでただつらつらと続いていくような」文体なのである。このような文体の選択からは、自分自身のことをあるいはこの理不尽な世界のことを一気に語ってしまいたい、そのようなややせっぱ詰まった焦りが感じられる。のんびりと自分のことを語っている余裕などないのだろう。読点を挿入して言葉を途切れさせたくない、言葉をいつまでも発し続けていたい、その願望だけが彼女をこの世界に結びつけている唯一の方法なのかもしれない。
主人公で語り手の「朋美」は、自分に無関心な父親と暮している。母親は家出をしており、家には父の愛人がやってくる。朋美は学校では「地味」に振る舞い、「いじめ」の対象にならないように仮面を被っていたわけだが、父の愛人のことで友人関係にひびが入り、他の生徒から無視されるようになる。そうして不登校となり、一方家の中では嫌いな父の愛人との争いも耐えない。どこにも居場所が無くなった朋美は、最後に頼るべき場所として母親の住んでいるところに行くが、その母親も朋美を受け入れてくれない。不毛な言い争いが続く。そのとき、ちょうど朋美の母親に離婚届を書いてもらおうとして来ていた父の愛人の弟が、朋美と母親の二人の様子を見かねて、こう言い放つ。
《「そんなこと知らないよ俺聞いてないし。あんたたち、幼稚園児並の醜さ」》
この一言が、朋美に「出刃包丁」のように突き刺さり、朋美は自分自身の「恥ずかし」さを感じる。この言葉によって、それまでの朋美の語る「物語」が一気に相対化されるのだ。このような鋭い一文が書かれているという点だけで、この小説は肯定的に評価できると思う。この場面までは、なんとなく舞城王太郎みたいだなあ、ライトノベルのような雰囲気だなあと思って、ちょっと退屈していたが、この一文に「ハッ」とした。この後、物語は一気に問題解消してしまい、その展開はご愛嬌かなとは思うが、それにしてもこの一文の衝撃は大きい。このように、自分を見つめる視点を持っているということは、小説家として、ひとつの才能なのではないか。この視点は、これから先もずっと持ち続けて欲しいものである。
紙の本
過酷な境遇を撃ってしまいたい
2007/02/17 17:17
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルのように弾丸のごとく言葉を連ねて
中学1年の「あたし」の日常をつづります。
両親は別居し
父親は若い愛人を引っ張り込み
その愛人はすっかり母親気取り。
赤いマニキュアの爪で、下手な料理を作り
あたしにあれこれ指図します。
平凡なあたしは、ちょっと落ち込んだ友だちを
ひとこと優しい言葉でフォローするキャラクター。
けれどささいなことをきっかけに
あたしはハブされ始めます。
不登校を始めたあたしに
教師は理由を問いただしますが
あたしを理解しようとする教師はいません。
なかなか過酷な境遇で言葉を連ねながらも
友だちや教師との間がずれ
その溝が深まっていくのが
状況を見ているかのように理解できます。
特に秀逸なのは
別居する母親の気持ちが全く伝わってこないこと。
一人称なので
あたしの気持ちだけはストレートにわかります。
同時に、読者にもこの母親の気持ちが全く理解できない。
これがいい。
紙の本
頑是無い想いを静かに語る。
2006/11/13 20:07
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:奏那 - この投稿者のレビュー一覧を見る
個人的には、もう少し、あともう少し、というのが収斂した作品。確かに現代社会や大人を風刺する感性はあると思います。ですが、あまり現実味が感じられないのが残念です。
現役の中学生だからこそ書ける、という評価をするには、いかに内容が現実的か、というのが求められると思うのですが、この作品はそれが薄い印象を受けます。
「すぐに折れそうな細いプラスチックの櫛」など、ところどころの小物類には生活感があるのですが(ああ、中学時代使ってたな、という)どうも会話に真実味がないのです。
そもそも主人公が友人から無視をされる際の理由。「あんたさぁーまず、腹割って話してないんだよね。すごくわかるよ、そういうの」だの「こっちからすれば侮辱なのよ」だの、今時の中学生が苛められる理由にしては、少しばかり不可思議。そういういかにも自分は人を見てます、本当は何を考えているかも分かってます、という素振りをしたがる子は、面と向かって話して苛めるよりは、じっと黙って腹の内に抱えているものなのではないかと私は思うのですが。
文章は十代にしてはしっかりとしていますが、一人称なためか全体的に口語体(台詞ではない部分に『何してんのかしら』『笑っちゃうね』というような表現が出てきたり)で書かれているので、センスは感じられますが美しい日本語とは言い難いです。私個人がそういう文体を好まないので、誇張して見ている部分もあるのかもしれませんが。
全体的にはやはり社会風刺というか、聡い学生の目から見た他者、という感じで、主人公と同じ目線に立ってみると楽しめる作品かもしれません。とりわけマシンガンで撃つ、という行為に、学生特有の願望が込められているような気がします。
ともあれ、余計な先入観を攫って読めば感心させられる作品ではあるので、少しでも興味を持たれた方はまずお手に取ってみられるのが一番だと思います。
紙の本
はい?
2006/05/15 12:47
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:由季 - この投稿者のレビュー一覧を見る
文藝賞作品が好きです。
若い小説家を著しく輩出するのはこの賞のような感じがするし、河出書房新社の本は装丁がかわいい。
この作品も、野ブタ〜の次の年。今年の文藝賞に選ばれた15才の作品です。
感想…。
なんだこの雑魚小説は!!щ(-д-*щ)
若者のセンチメンタルな感じを、どっかで読んだものをごちゃごちゃくっつけて安っぽく仕上げてみました☆的な感じ。。
どの部分もどっかで読んだような感じで個性がない。
肝心の「夢に出てくる死に神」も結局、物語に効果的に働いてる感じがしないし。
発想はいいと思うんだけど、物語との絡まりが弱すぎる。
てか…これよりイイ作品、なかったの?って感じ。文藝賞の好みの範疇な感じはするけど、なんかイマイチね〜。
まぁ今年の文藝賞受賞した作品だっていうのに、図書館で予約したら「予約数ゼロ」だったからね、(こういうことか)と若干納得しちゃいました。