「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
一組のカップル、一組の夫婦、そして一人の男の物語。さらけださない人間関係。【「BOOK」データベースの商品解説】
さらけださない人間関係とは−。1組のカップル、1組の夫婦、そしてひとりの男が繰りひろげる、ボタンのかけ違った恋愛模様。『JJ』連載に加筆・修正して単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
吉田 修一
- 略歴
- 〈吉田修一〉1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。「パレード」で第15回山本周五郎賞、「パーク・ライフ」で第127回芥川賞を受賞。ほかの著書に「東京湾景」など。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
“都会人の持つ空虚感”を的確に描写。
2006/05/27 01:30
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本作は雑誌“JJ”に連載されていたものを大幅改稿したもの。
やはり女性読者を強く意識して書かれたものだと容易に想像できる。
主な登場人物は大路浩一・桂子夫妻と浩一の弟である大路尚済と彼の恋人新堂レイの4人。
春・夏・秋・冬、4人それぞれの視点から描かれている。
ちょっと簡単に4人を説明すると・・・
新堂レイは元ヤンキーであるが、大学でフランス語を習得しフランス本社の外資系有名ブランド“H”に就職。
その恋人、大路尚済はレイと同級生であるが一浪しているために大学4年生。
尚済の兄、浩一は中堅信用金庫に勤めている。
浩一の妻、桂子は出版社で編集の仕事をしていて帰りが遅くなることが多い。
物語は別居していた浩一夫婦が尚純と両親の家にて同居をはじめるところからスタートする。
あと浩一の友人・田辺もキーパーソン、どんな人物かは読んでからのお楽しみということで・・・
本作は簡単に言うと、吉田作品の十八番である“都会人の持つ空虚感”を的確に描写している作品である。
特に考えさせられるのは“主婦のあり方”
そして“人と人との距離感の取り方”
特にここでは大路桂子について語りたい。
凄く異性の私が共感出来る人物である。
女性の方が読まれたら逆かもしれないな。
でもやはり仕事をやめるにあたって、桂子もかなり葛藤していたんですよね。
特に男性読者の私としたら桂子の言動って本当に気になるのである。
桂子が遠野に魅かれているところがとっても人間らしいと言うか、ちょっと誤解を招く言い方かもしれないが、可愛げのある女性として強く認識出来るのである。
でもやはり桂子に専業主婦は似合ってないような気がする。
私の出した結論です。
こんな小説連載したら、本当に早く結婚したくなくなるよな(笑)
逆に桂子の夫、浩一の存在がやはりみじめなんだろうか。
『いったいどこまで嫌いになれば、私はこの男に会いたくないと思えるのだろうか。会いたいのを必死に我慢するのと、会いたくなくなるまで相手と会い続けるのでは、いったいどちらが、夫や家族をより裏切っていることになるのだろうか。(本文より引用)』
桂子は家庭に入ってからも葛藤するのである。
あと、この物語においてはいくつか問題点を取り上げたい。
まずは大路兄弟の浩一と尚済が血がつながってないと言う点。
読むにあたってかなりのウェートを占める大きなポイントなんだが、読者の先入観を覆させられるような展開が待ち受けています。
展開というかひとつのドラマですね。少し泣ける話なのでお楽しみに。
単行本化にあたりどの程度改稿されてるのかわからないが、少なくとも独身の女性が読まれたら結婚というものに対してどうなんだろう、少なからず後ろ向きに感じても致し方ないかな。
独身時代=ひなたという図式も当てはまるような気がする。
もちろん、世の男性って作中の浩一みたいなどちらかと言えばおっとりした性格の男ばかりじゃないので、主婦の方が読まれたら桂子以上に私って愛されているのかしらと思うことでしょう。
本作は少し現実における危機感を持たせるリアルな小説です。
リアルなんですが、そこが吉田修一。
たとえ不倫を描こうが、決してドロドロじゃなくって読者はそれを許容してしまう。
言い換えれば、“常に周りの人との距離感を考えて生きていかなければならないんだ。だけど、常にリラックスして!”
吉田修一の凄さってそういうさりげなさなんだなと再認識した。
吉田作品のストーリーに陶酔し本を読み終えた瞬間、私たちはバトンを引き継ぐ。
兄弟、夫婦、恋人、親子。
私たちの身の回りの大切な人たち。
少しは身近に感じられるようになったのであろうか?それとも・・・
人生も吉田作品のように“心地よく”生きたいものである。
活字中毒日記
紙の本
テレビの原作、っていうレベルかな。登場人物が少ないので、お安く制作できるかもしれませんねえ。ちょっぴり悲哀もあるし。この作品で吉田を評価しちゃあいけないんでしょうが、凄さは感じませんねえ
2006/05/05 10:25
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
吉田修一『ひなた』(光文社2006)
光文社から純文学かあ、似あわねえなあ、なんて思って読み始めたら、要するに単なるエンタメなんですね、それも極めて軽めの。なんたって政治性、哲学性皆無ですから。ま、エラソーに言ったところで、私、吉田修一、読むのは今回が初めて。どっちかと云うと若者文学、映画原作作家のイメージが近かったんですが、読み終わった感想も変わりません。これなら直木賞でよかったじゃん・・・
カバー写真は安村崇、ブックデザインは鈴木成一デザイン室。正直、タイトルの「ひなた」なんですが、カバーの字体はカクカクしていてとても素敵なんですが、もしかして主人公たちが暮らすことになる家が文京区の小日向(こひなた、私は「こびなた」だと思っていました、そこに20年住んでいましたが)にあるということでその「ひなた」だとしたら、ヒデーナー、なんて思いますけれど、他に意味あるんでしょうか。でも、意味不明の写真と共になんともいえない味をだしています。
で、目次がとっても面白くって、これは実物を見てもらうしかないけれど、要するに頁のど真ん中に、縦一列で「目 次 春5 夏65 秋125 冬185」て並んでいるだけ。これがそっけないけれど、なんとなく笑いたくなるようなシンプルさで、美しい。鈴木さんのデザイン、光ってます。
さてさて小説ですが、内容にはあまり触れません。とりあえず、四人の中心人物がいます。そして各章ごとにその四人の視点で四つの文章がありますから、大きくは春夏秋冬の四章構成なんですが、実際は十六章構成といってもいいでしょう。で、彼らを順番に紹介すると
新堂レイ22歳、千葉県出身の元ヤンキーながら、どこかで上手く社会と歯車が噛み合ってしまい、偏差値の高い大学にスンナリ入って、何故かお嬢様たちに混じってフランス語を熱心に勉強し、そのせいかお仏蘭西の有名ブランド会社の広報に就職が決まっています。
もう一人が、レイの恋人である大路尚純22歳で、レイが二年間だけ東京で暮らしていた小学校時代の同級生。ということは現在、大学4年生で就職も内定しているはずなのに、そういう気配はなくて、それでいい、と思っている節があります。どちらかというと大らかな性格。で、彼には兄(実は従兄)がいて、浩一といいます。
大路桂子は浩一の妻ですから、尚純にとっては義姉。出版社勤務のキャリアウーマンで美女。レイの憧れの人でもあります。で、桂子は何故か浩一の実家で暮らしたい、といい始めます。この若夫婦、新婚ということですから、現代的に云えば異常な発想に近い。親が言っているんじゃなくて、嫁から姑と暮らしたい、っていうんです。
で、大路浩一、信用金庫勤務。休みになると友人の田辺から声がかかってよく呑みに行ったりしている。趣味といえば、学生時代の友人達と小さな劇団を作って、年に一二度公演をすること。桂子とは大學の同級生。実は、桂子と浩一についてあまりはっきりとは年齢が書かれていないのですが、30前後ということでしょう。ただし、桂子の職場での地位からいうと、30半ばでないと不自然か気もするのですが、そうはなっていません。
ま、私の好きでないタイプのベタベタした人間関係があって、ざけんじゃないよ、って思ったりしますね。ま、義理の姉との恋愛、なんていう安っぽいパターンに陥らないのは見識ではあるんでしょうが、こういうダラダラ続く不倫ていうのは、私個人に言わせればテレビドラマの世界であって、リアリティな〜い、って云う感じです。
吉田の話がなんで映画やテレビの原作になるのか、それがよくわかった作品、とでもしておきましょうか。感動はありません。ただし、人間の悲哀なんていうのは、伝わってきます。でもねえ、それで芥川賞はないでしょ。ま、山本周五郎賞っていうのは、納得ですが。