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我が儘な食卓 (プラチナ文庫)
著者 秀 香穂里 (著)
編集者の槇は、昔の恋人・芳沢に12年ぶりに再会する。彼は立派なシェフになっていたが、振られた恨みか言葉に棘がある。つい口論になり、押し倒され一方的にイかされてしまう。「相...
我が儘な食卓 (プラチナ文庫)
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商品説明
編集者の槇は、昔の恋人・芳沢に12年ぶりに再会する。彼は立派なシェフになっていたが、振られた恨みか言葉に棘がある。つい口論になり、押し倒され一方的にイかされてしまう。「相変わらず淫乱。滲み出してんじゃねえか」昔と違う抱き慣れた手つき。確実に性感を擽る舌先。別れた後、誰が彼の下で啼いたのだろう?喘ぎながら彼の相手に嫉妬する自分に気付く。だが別れた相手に今更縋れない。諦めようとするが、彼のパトロンが現れて…!?食通好みのまったりコクある復活愛。【「BOOK」データベースの商品解説】
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料理より脇役がおいしそうでした。
2007/05/30 14:05
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hamushi - この投稿者のレビュー一覧を見る
高校時代に一方的に切り捨てた相手との十二年ぶりの予期せぬ再会と、お互いに過去を過去にしきれないまま続いていく愛憎と葛藤という、いかにもドロドロになりそうなお話であるのに、なんだか妙にスッキリさばさばした展開で、イヤな気持にならないまま読み進められました。
たぶん主人公の槙という人が、ウジウジしない性格だからなのでしょう。かつて手ひどく傷つけて捨てた相手である芳沢に対して、自分がまだ深い思いを残していることを悟ると、どんなに強い侮蔑の態度を向けられても、果敢に会いに出かけ、自分の気持ちや関係に決着をつけようとします。この潔さと勇気が、ドロつきそうな状況や、十二年もの間ずっと重く澱を溜め込んでいたであろう芳沢の気持ちまで、スカッとさばいて前進させていくのが、ちょっと爽快でした。
蛇足ですが。このお話、奇妙に濃い印象でありながら、ほとんどストーリーに絡んでこない脇役が二人出てきます。
まず、芳沢のパトロンである黒田。有名なファンドマネージャーで、おそろしく男前な男色家という彼は、槙と芳沢の間にどう割り込んで絡むのだろうかとハラハラさせるような登場をしながら、虚を突いて槙にいきなり迫ってきたかと思うと、たった四ページ半で諦めるという、爽やかにすっぽ抜けたファールボールをかっとばすような役を演じただけで、あっさり退場。あの無駄な存在感は一体なんだったんだろうと思いつつも、笑いを誘う人物でした。この人の存在も、話をドロドロにしない好要素だったと思います。
そしてもう一人は、六本木のクラブ・キラの椎堂。金髪をベリー・ショートに切りそろえ、表向きは健全な飲み屋、裏では眼鏡男専門のデートクラブの超美形な経営者という、とてもハデな設定を持つ彼の、このお話での主な役割は、客である槙が酔っぱらって芳沢への愛の告白の予行練習をするときの聞き役という、実に地味なものですが、この怪しげな椎堂が、槙の素朴で率直な告白を聞かされて、まるで自分に向けられた言葉であるかのように仰天するシーンは、ストーリーには直接必要のないエピソードでありながら、妙に印象に残りました。
ストーリーに深く絡まない脇役が分不相応なほど魅力的というのは、小説としていいことなのかどうかよく分かりませんが、お話に奥行きが出て、読後になんとなくお得感が残るのは確かだろうと思います。
蛇足ですが、クラブ・キラの椎堂は、本書の次に読んだ「今宵、眼鏡クラブへ。」という冗談のようなタイトルのお話の、痛いトラウマに満ちた毒舌で守銭奴な主人公として、華々しく活躍していました。もしかしたら黒田のほうも別のお話を持っているのかもしれませんが、まだ書かれていない様子です。