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現代政治理論 (有斐閣アルマ Basic)
おもに20世紀の政治理論の流れをカバー。難解に感じられる現代の政治理論の主題や概念を、丁寧に解きほぐした本格的政治入門書。社会的規範理論の新展開を踏まえ、現代的な問題関心...
現代政治理論 (有斐閣アルマ Basic)
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商品説明
おもに20世紀の政治理論の流れをカバー。難解に感じられる現代の政治理論の主題や概念を、丁寧に解きほぐした本格的政治入門書。社会的規範理論の新展開を踏まえ、現代的な問題関心にフィットする新しいテキスト。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
川崎 修
- 略歴
- 〈川崎修〉立教大学法学部教授。
〈杉田敦〉法政大学法学部教授。
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邦語、最良の入門書
2007/07/03 19:37
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:半久 - この投稿者のレビュー一覧を見る
有斐閣のアルマシリーズは、学生向けの教科書として良質なものが多い(非学生にもお勧めしたい)が、本書もその一つだ。
用語的には政治理論は=政治哲学と同じものとして使われることもあるが、前者を名乗っているのは、「哲学」のイメージには収まらない経験的な学問とも接点が多いから、とのことだ。
その現代の政治理論の中から、リベラル・デモクラシーに関わる主要なものを紹介している。体系的な構成をとり歴史的議論にも配慮しながら、テーマに沿う形で各理論を布置し、その概要について簡潔な解説が施される。文章は練られていて、読みやすい。
キムリッカの『現代政治理論』を読まれる前に、こちらに目を通しておかれることをお勧めしたい。あちらは単独でよくあそこまでカバーしているものだと感心するが、フーコーやダールについては、直接的には言及していない。本書は彼らも取り上げている。
複数執筆制により、幅広い視野が得られるという利点が生きている。そうなると往々にして損なわれがちなのが統一感だが、本書はある方だ。編者の功績だろう。キムリッカ版と比べると、より教科書としての性格に忠実であり、著者自身の主張は抑え気味である。
紹介されるのは欧米の政治理論が中心になっている。それなら(語学力のある人は)原書や、あるいは翻訳物から捜せばいいという考えもあるだろう。だが、出来の悪い翻訳物も多い。特に私のような一般読者にとっては、日本の研究者による良質の解説書は、翻訳物をよく理解するための手引きとしてもありがたい存在だ。
内容は、前半(1〜6章)では比較的古典的なテーマを扱うが、後半(7〜11章)でより新しい現代的な理論に取り組む。
より新しい理論とは、ネーションとナショナリズムの問題、多文化主義、フェミニズムと政治理論との関係、公共圏とデモクラシーの関係、現代の市民社会論、討議デモクラシーとラディカル・デモクラシー、グローバリゼーションとデモクラシー及びリベラリズムとの関係・・・・・・などの、まさに喫緊の課題とクロスしている理論群である。
人名的には、ロック、ホッブス、ミルなども登場するが、それ以降の理論家に比重がかけられている。アレント、フーコー、ハーバーマス、ダール、ロールズ、ドゥウォーキンなどの著名どころが中心だが、ムフ、ヤング、ヘルド、ウォルツアー、パットナム、その他にも照明を当てている。
こうした現代的な理論を、一望に見渡すことができる。よく整理されているので、中級者にとっても活用できると思う。
ところで、日本の政治学では、政治の規範的・理念的要素についての研究は、主に政治思想史が担ってきたそうである。政治思想史が歴史研究的な性格を強める中で、政治理論を独立的に研究することが盛んになってきたそうだ。
そのように、分けて学ぶ意義はどこにあるのだろうか。それは、《現在、私達が直面しているさまざまな政治課題のどれ一つを取っても、それらは具体的な制度や政策の問題であると同時に、価値や規範にかかわる問題を含んでいる。》からである。
望ましい価値や規範が何かは、論者によって異なる。しかし、多くの理論に共通して内在しているもの、それは、自由を基本としながらも、もっと「公正で民主的」な世界を作りたいという切実な希求の意志だ。
そのような政治理論は、複雑な現代社会が抱える数々のアクチュアルな問題群に対して、どのように応用できるだろうか。現実との懸隔が大きいものもあるだろうが、さまざまな政治理論を比較検討することで、より良い「課題解決」への方向性を探ることができるだろう。そのための道案内としても、本書は役に立つ。
邦語による、現代の政治理論の入門書としては最良のものの一つだろう。