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佐高信の新・筆刀両断 (講談社文庫)
佐高 信の新・筆刀両断
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紙の本
「真面目で上品な記者では権力と戦えない」と過激にかますコラム集
2006/08/16 22:21
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:uwasano - この投稿者のレビュー一覧を見る
小泉政権の時期に、反小泉の思想を出し続けた評論家・佐高信氏のコラム集である。2004年から2005年にかけて『週刊新社会』に連載されたコラム「毒言毒語」と、2000年から2001年にかけて『サンデー毎日』に連載されたコラム「政経外科」の抜粋が収録されている。解説を著者との対談本『だまされることの責任』もある、ジャーナリスト・魚住昭氏が書いている。
魚住氏の解説「佐高信と反ファシズム」でも取り上げられている、コラム「立派な強盗に」(p112)がよい。佐高氏は、新聞労連の集会で「記者の仕事はユスリ、タカリ、強盗の類いなのだ」とアジった。「言い過ぎだったかな」と思いながらアジったわけだが、講演後、女性記者から「サタカさん。私、立派な“強盗”になります」と言いにきたという。新聞労連という、政権チェックの役割を担う人々に、一発かましてやらねば、と過激にアジる佐高氏。それに対し、ナイスなリアクションが返ってきたというオチである。佐高氏の考えるジャーナリズム精神が伝えられたな思った。
私は子供のころ、バスツアーで東京を観光したことがある。読売新聞社で社員から話を聞くというコースだった。その社員がずいぶん力を入れてツアー客相手に話をした。エリートのイメージはなく、泥臭いというイメージだった。あれから20年以上たった。今、記者達はどうなっているだろう。政権に近づきすぎて、書くべきことを書けない状況になっていないか?
北朝鮮のマツタケ問題が出た時、「食っても書け」と佐高氏は言う(p68)。これは、知り得た情報を全部書くという『編集長を出せ! 『噂の真相』クレーム対応の舞台裏』の「噂の真相」編集長・岡留安則氏の主張とつながる。接待されても書いてしまうことが正義なのだ。
魯迅の言葉「フェアプレーは時期尚早」(p96)が紹介されているが、マツタケをごちそうになったとか、知り合いだからとか、そんなことで書かないようなら、記者失格である。。「沖縄返還の密約を暴いて不当逮捕された毎日新聞の元記者、西山太吉」(p112)は、「烏天狗の群れ」(p230)と呼ばれる警官=権力に逮捕された。このことを、絶対に忘れてはならないだろう。
ジャーナリズム精神は権力をチェックすることに意義がある。在野の精神と言い換えてもいい。大新聞の場合、新聞記者が政権内部に取り込まれてしまわないか、心配である。
放送局や雑誌やフリーの記者についても同様である。ジャーナリストでも、政権内部に食い込む過程で、自身が権力を得てしまうという、渡辺 恒雄氏や猪瀬直樹氏の例もあるだろうが、本来ジャーナリストは権力チェックに撤するべきだ。この二人も昔は在野の精神を持っていたらしいが、いつしか堕落してしまった。この二人はあくまで特殊な例なので、他のジャーナリストはまっとうな道を歩んでほしい。