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失われた時を求めて 完訳版 1 第一篇 スワン家の方へ 1 (集英社文庫 ヘリテージシリーズ)
語り手が眠りに引き込まれてゆく描写から、小説は始まる。夢現の状態、目ざめ、そのときに思い起こすコンブレーでの幼年時代、母が与えてくれた「おやすみ」のキス…。しかしこれらの...
失われた時を求めて 完訳版 1 第一篇 スワン家の方へ 1 (集英社文庫 ヘリテージシリーズ)
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商品説明
語り手が眠りに引き込まれてゆく描写から、小説は始まる。夢現の状態、目ざめ、そのときに思い起こすコンブレーでの幼年時代、母が与えてくれた「おやすみ」のキス…。しかしこれらの記憶は断片的で、本当に生きた過去を返してはくれない。ところが後になって、ある冬の日に、何気なく紅茶に浸したプチット・マドレーヌを口に入れたとたん、幼年時代に味わった同じマドレーヌが思い出され、それと同時に全コンブレーの生きた姿が蘇る(第一篇第一部)。【「BOOK」データベースの商品解説】
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コンブレーの少年時代の回想
2018/09/30 21:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
親切で豊富な注釈や家系図や主要登場人物の解説もあり、ページ往復も苦にさせないとても大変な意気込みを感じさせる作り。訳文も噛み砕いてわかりやすくなってさほど難儀もせずに読める。冒頭、うたたねから喘息発作に目覚めてから夜通しの取りとめのない連想を言葉で紡ぐ。やがて有名なマドレーヌによる無意識の喚起によって、主人公は歓喜に包まれる。そこからコンブレーの教会やマルタンヴィル尖塔の描写、サンザシやカトレアなど植物のメタファーの群れ、祖母たちやフランソワーズ、家族の日常会話の描写、並はずれた繊細さと鋭さ。それに今後を予感させるジルベルト、スワン、シャルリュスの登場など全編の魅力のエッセンスがここにある。
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一年かけて「失われた時を求めて」を読む。
2010/07/05 22:37
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:king - この投稿者のレビュー一覧を見る
「失われた時を求めて」のこの巻については実は六年ほど前に一度読んでいるので、再読ということになる。その時の記事はこちら。
徹底して読みやすさに配慮したつくり
以前のはハードカバーのものを二巻まで読んだところでふいと中断してしまって(安価な中古で端本を集めていたので、揃えてはいなかったのもある)、そのあいだに文庫版が出始めたので、じゃあ、文庫を買いそろえてから再開しようと思っていたらいつのまにか文庫完結から三年経っていた。
で、年明けに今年こそは全巻通読してみようと決意。あんまり中断しすぎたので三巻から再開するのはどうかと思われたので、今度は中断しないように第一巻からペースを月一冊ずつと決めて読み進める予定だ。これを投稿しているいまは既に半年が経過して六巻を読み終えたところ。
検索していてビックリしたのだけれど、bk1では文庫版「失われた時を求めて」にはまだ一つも書評が書かれていない。ハードカバー版には私の以前書いたものしかないし、ちくま文庫版にも第一巻にひとつしかない。
あんまりなので、メモがてら各巻に簡単にコメントしていこうと思う。だいたいのことは前に書いたので。その時の文章を一部転載しておく。
「あらすじを説明しても仕方がないのだけれど、この作品は語り手がかなり後の時間から子供時代を回想している作品なので(原語では時制が正確に書かれているのでそうでもないらしいのだけれど)、けっこう語りの現在時と語られている時間とが、こんがらがってしまう。はじめに語られているのは、もはや記憶の彼方にありほとんどのことを覚えていないコンブレーという街での夜のことである。いま現在の語り手が、寝入りばなや寝起きの時にまつわる夢想と記憶の不思議さについて考察しているうちに(この部分、冒頭からなかなか魅力的なところ。「私」は起きてから周囲の情報を得ていくなかで再構成されるのだ、というような面白い描写がある)、コンブレーという街でのことがほとんど思い出せないことに気づく。思い出せるのは寝入りばなに母親にキスしてもらえず、悶々としていた夜のことばかり。母親と父親、祖母や叔母などの印象的な人物が現れ、スワンという人物が呼び鈴を二回鳴らすという訪問の記憶などがわずかに触れられる。
そして語りはまた現在に戻り、紅茶に浸した帆立貝型のマドレーヌを食べた瞬間、言いようのない不思議な感覚に襲われる。ここでも微に入り細を穿った考察が続く。そして思い出されたコンブレーでの記憶が、あふれ出す。
以降語られるのは、コンブレーの街でのさまざまなエピソードで、ここではまだ物語は始動していないという感じがする。スワン家の方と、ゲルマントの方、という階級を異にする二つの象徴的な方角を散歩する描写が続く。末尾の方で語り手が作家になるという文学的野心を抱いていることが明らかにされ、この作品に通底するテーマ(とは、作家になるということらしい)の萌芽を見ることができる。
というわけで、とりあえず第一巻を読み終えてみての感想は「長い」だった。
この時点ですでに長い。それはもう、畳みかけるような比喩と描写の積み重ねで主語と述語を見失ってしまうときがしばしばあるようなワンセンテンスの長さもさることながら、ひとつの事物、風景、心理について費やす文章の長いこと長いこと。まさにその長く細微で熱のこもった描写が読みどころでもあり、一番面白いところでもあるのだが、そこはさすがに気力が続かないこともあり、けっこう頻繁に中断して読みやすい他の本に寄り道したりもしてしまう」
さて、文庫ではハードカバー版にあった挿絵や月報の類、そして登場人物一覧の栞がなくなっている点は残念だけれど、系図、人物紹介、あらすじ、各場面ごとの索引などの豊富な付録はそのままで、再読や中断、拾い読みに好適な編集になっているのはうれしい。
この巻ではまだ動きが少なく、さまざまな人物の紹介というか物語の土台固めという印象がある。フランソワーズという女中のキャラクターや二人の叔母の遠回しな感謝の表し方など、コミカルな部分もあって楽しい。とはいっても、この巻だけ読むとちょっとなあ、という人もいるかも知れない。そう言う人は二巻の「スワンの恋」から読むっていう手もあると思うけれど、どうだろう。
ここでは有名なマドレーヌからあふれ出す記憶の描写があるけれど、各登場人物の描写をじっくりと読んで次巻以降に備えておきたい。
しかし、函なしハードカバー版をどうしようか。
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過去を鮮明に思い出す鮮やかな感触の発見が際立つ
2023/04/25 17:17
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マーブル - この投稿者のレビュー一覧を見る
時というものを考える際に、様々な場面で多くの人々に語られてきた本作品。紅茶に浸したマドレーヌというキーワードを幾度となく目にしてきた。その最初の出逢いは学生時代に遡るのだけれど、誘われながらも踏み切ることのなかなかできなかった深い森。ここのところまた時について考える機会が巡ってきて、再びスポットライトを浴びる。マドレーヌ以外にも過去を鮮明に思い出す鮮やかな感触の発見が際立つ。読み進み、語り手のいつのこととも判然としない思い出話に沈み込むうちに、何故か自分の過去も記憶に甦ってくる。彼の語りが触媒となって。