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紙の本
ちんちん電車 (河出文庫)
著者 獅子 文六 (著)
「私は、東京の乗物の中で、都電が一番好きである」。『てんやわんや』『自由学校』で知られる昭和のベストセラー作家が、失われゆく路面電車への愛惜を軽妙に綴っていく。車窓に流れ...
ちんちん電車 (河出文庫)
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商品説明
「私は、東京の乗物の中で、都電が一番好きである」。『てんやわんや』『自由学校』で知られる昭和のベストセラー作家が、失われゆく路面電車への愛惜を軽妙に綴っていく。車窓に流れる在りし日の東京、子どもの頃の記憶、旨いもの…。読み進んでいくうち、次第に時間がゆったり流れていく傑作エッセイ。【「BOOK」データベースの商品解説】
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紙の本
都電というタイムマシンに乗って訪れる昭和の東京の隅々
2006/07/28 23:16
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たむ - この投稿者のレビュー一覧を見る
味わい深いノスタルジックな枯淡の随筆かと思っていたら、けっこうとぼけた味もある作品でした。おかしくもまったりとした、昭和の匂いの懐かしい名エッセイです。
著者は言います。「私は、東京の乗物の中で、都電が一番好きである」。なぜなら揺れないし、空いているし、汚れていないし、車掌さんのキャラがいいし。
そんな都電好きの著者が連載小説『バナナ』に都電好きの男を登場させたことについて、「新聞小説というやつも、書く方の身になると、相当、退屈なものであって、それくらいの道楽は、やってみたくなる」と身も蓋もない。読む方の身にもなってよ、と思う。著者にそんなこと言われたら読者としては悲しいぞ。
品川の遊郭にある料理屋で決まって朝飯を食う老人がいました。なぜこんなところで朝飯を食っているのかといぶかる著者でしたが、事情がわかったあとでつけるコメントがふるっています。「それにしても、遊びに出かけるのに、ハカマをはいた心理は、どう考えても、解きがたい」。そこかよっ。どう考えても、つっこむところ間違ってますよ。
要するに、のんびりとした都電が大好きな著者は、筆運びもマイペースなのです。車掌さんが無口なだけで変人扱いしてしまうし、寿司や泉岳寺の料金には一家言持っている(けれどさほどの根拠があるわけじゃなし)、銀座の柳についてトリビアを披露したかと思えば、日本橋の大架橋に苦言を呈したり。
そうした自由闊達なおしゃべりを聞きながら、東京の町並みをゆっくり訪れている気分になれます。
都電に揺られながら町並みを眺めているような気にさせられるだけじゃありません。だんだんとその町に暮らしているような気分になってくる。つづられるのが単なる紀行文のようなものではなく、食べ物だったり寺社だったり娯楽施設だったり町の来歴だったりと、著者が若いころから馴染んできた町の隅々まで紹介してくれるからです。
ウズラの吸いものとかウナギ屋とか、馴染みの女中さんとか建物とか、そういういどうってことないようなものについてのエピソードがいくつも寄せ集められると、ひとつの町のイメージが浮かんできてしまうものなのだと驚きもした一冊でした。
紙の本
都電を巡る昔の話
2015/12/01 10:03
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
昔の都電の面影を感じたくこちらの本を購入。各章の始まりは都電であっても、懐かしい停車場で降りては町を散策しているうち、話はいつしか食べ物を巡る昔話になってしまう。思い出と食べ物は切っても切れない仲のようだ。浅草近辺はだいぶ馴染みがあるらしく、とても細かく描写されていて、わたしも一緒に散歩している気分になれた。話がどうしても食べ物などの昔話になってしまうことに「題名がちんちん電車なのに昔話になってしまうこと、読者も諒されよ」と書かれていて、獅子さんのユーモアを感じた。諒すなんて!めいっぱい楽しみました!