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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:2006.4
  • 出版社: 中央公論新社
  • サイズ:20cm/330p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:978-4-12-003721-4

紙の本

ミーナの行進

著者 小川 洋子 (著)

美しくて、か弱くて、本を愛したミーナ あなたとの思い出は、損なわれることがない—懐かしい時代に育まれたふたりの少女と、家族の物語。【「BOOK」データベースの商品解説】【...

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ミーナの行進

税込 1,760 16pt

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商品説明

美しくて、か弱くて、本を愛したミーナ あなたとの思い出は、損なわれることがない—懐かしい時代に育まれたふたりの少女と、家族の物語。【「BOOK」データベースの商品解説】

【谷崎潤一郎賞(第42回)】美しくて、か弱くて、本を愛するミーナ。あなたとの思い出は、損なわれることがない−。懐かしい時代に芦屋の屋敷で育まれた、ふたりの少女と家族の物語。『読売新聞』連載を単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】

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みんなのレビュー235件

みんなの評価4.1

評価内訳

紙の本

セピア色の写真

2006/04/26 23:56

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ナカムラマサル - この投稿者のレビュー一覧を見る

 著者の『博士の愛した数式』と同じくらい、優しい気持ちにさせてくれる作品だ。
 主人公は母と二人暮しのトモコ。1966年、トモコが小学校に入学してすぐ、父は胃癌で亡くなっている。それ以来縫製工場の勤めと洋裁の内職で家計を支えてきた母は、トモコが中学へ入学するのを前に、意を決して東京の専門学校で勉強する決心をする。そういった事情でトモコは、芦屋に住む母の姉(トモコから見たら伯母)の家に一年間預けられることになる。伯母夫婦には子供が2人いる。伯母の夫は日本人の父親とドイツ人の母親を持つハーフ。飲料水会社の社長を務める彼の豪邸にはドイツ人のおばあさんも同居している。
貧 しい暮らしの少女が1人、お金持ちの親戚の家に預けられる話と聞いたら、意地悪な従兄妹にいじめられたり、少女がだんだん卑屈になっていく展開を考えてしまいたくなるが、本書はもちろんそんな話ではない。
 登場人物たちが一風変わっていて、特に、カバのポチ子の背中に乗って登校する従妹のミーナが作り出す物語がとても美しい。その中に「天使の伝言」にまつわる物語があるが、読み手にとっては、本書こそ「天使の伝言」だと感じられるに違いあるまい。
 ただ、裕福で表面上は幸せそうに見える一家にも、影の部分はある。そういった寂しさにも本書はしっかりと目を据えている。
 古いセピアの写真を見ているかのように懐かしさを感じさせる作品だが、特に、川端康成の自殺・ミュンヘン五輪・シャコビニ流星雨といった出来事を覚えている年代の方は必読の1冊だ。

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紙の本

2006年初夏、素晴らしい名作に出逢った。

2006/06/28 03:51

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る

美しくて心が安らぐ小説である。
小川さんは本作で小説で描きえる最大限の懐かしさやあたたかさを読者に披露してくれている。
小川さんの上手さに舌を巻いた読者のひとりとして感想を書かせていただこう。
まず、さらっと内容を説明しよう。
時代は1972年、ちょうどミュンヘンオリンピックが行われた年。家庭の事情で母親が単身で東京に裁縫の勉強をしに行くために、芦屋の伯母の世話になる朋子は12歳で中学1年生。
伯母のうちは大金持ちで“フレッシー”なる清涼飲料水を製造する会社を経営している。
そこで1つ年下の従兄弟ミーナと出会う。ミーナは小柄で喘息もちで大の本好き、ドイツ人の祖母の血を引く大変な美少女である。
そこで過ごした一年間を過去を振り返る回想で語られている。
一見した所、典型的な裕福な家庭と一般家庭とのはざまで、いじめか何か勃発するのではないかと思われるかもしれないが、それは余計なお世話。
逆にミーナを筆頭に屋敷の大変良い人たちで読んでいてとても心地が良いんですね。
ドイツ人のローザおばあさんとお手伝いの米田さん。すごくナイスガイであるが家に居る事が少ない伯父さん。誤植を探す事が趣味のタバコと酒好きの伯母さんなど・・・
ああ、ひとりというか一匹忘れていました(汗)
コビトカバのポチ子である。ポチ子は一家の平和の象徴として扱われている存在。
タイトルとなっているミーナの行進は、実は喘息持ちのミーナが学校へ通う際にポチ子に乗って登校する様のことである。
ミーナはマッチ箱を集めている。マッチ箱の絵柄に一つ一つ物語をつける。その物語も作品内に紹介されていて、それぞれが素晴らしい。
この作品ほどイラストが効果的に散りばめられた作品も近年類を見ないだろう。
実際、イラストがなければこの作品は生まれなかったと思う。
読みどころに1972年という時代がある。例えば、『博士の愛した数式』だと阪神とか江夏とかが時代を示したが、今回はミュンヘンオリンピック。男子バレーボールチームに熱中するミーナと朋子。ミーナがセッター猫田のファン、朋子がアタッカー森田のファンという設定。
あと川端康成が自殺したりとか、あるいはジャコビニ流星雨など実際に起こった事件を通してリアルさを増している。
ミーナの兄の龍一が父親とぶつかるシーンも印象的である。
そのあと、大人の事情として素敵な伯父さんがめったに家に戻ってこないところを朋子が追跡するシーン、ドキドキしました。
タイトルの意味合いとは全然違うのであるが、ミーナが今も人生を行進している姿が目に浮かぶ。
まるで素晴らしき人生を読者に分け与えてくれるかのように感じられる。
心がすさんで来ている私には叱咤激励してくれる1冊であった。
小川さんの卓越した筆力の表れとして、作中、ずっとミーナの病気がどうなるのか気になりながら読まれた方が大半であるという事実があげられると思う。
読書の興趣が大きくそがれるのでここでは触れないが、少なくとも主人公朋子の人生の大きなバネとなった1年間であったと信じたい。
ミーナのマッチ箱集めにも関連するのであるが、乙女心が滲み出ている淡い恋心も印象的である。
たとえば身近に好きになる異性が朋子の場合は図書館のとっくりさんでミーナはフレッシー配達の青年である。
フレッシー配達の青年の話では、巧みに朋子がミーナを傷つけないように演出しているのが意地らしい。
読まれた方なら誰でもわかると思いますが途中で凄く悲しいことが起こります。
ミーナの行進が出来ない状態ですね。
ただ、凄いのはその悲しいことを支えにして飛躍して生きている姿が胸を打つのである。
最後にミーナが猫田選手に出した手紙を再読してみた。
思わず涙が出たがそれはまさに“希望”の涙である。

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紙の本

ファンタジーとリアリティ

2006/07/10 10:47

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ひよこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

以前の小川洋子氏は、ゾクッとする怖さや冷たさの中にある温かさを感じる不思議な世界観をもつ作品が多かったと思うのだが、博士の愛した数式以降は、それが逆転したように思う。
ファンタジー的な温かさを感じる文章の中に、ほろ苦いリアリティが混ざっていて、その職人的なバランスのよさにうなってしまう作品。
彼女の使っている言葉は私達が日常使っているのと変わらないはずなのに、なんでこんなに美しいのだろう?

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紙の本

1970年代の芦屋のお金持ちって、きっとこんなだったんだろうなあ、って思います。なんたって、ポチ子が家にいるんだから・・・

2006/06/09 21:05

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

いきなり脱線しますが、我が家で取っている新聞は東京と読売の二紙です。といっても、同時期に読んでいるのではなくて半年後とに契約を変えています。で、今は読売の時期。ちょうど一年前も同じ読売。違っているのは巨人軍の監督と負けっぷり。ま、野球にはイチロー以外には興味がないので、このへんでやめておきますが、そのころ小川のこの小説を新聞で見つけました。
本の最後の方に、『読売新聞』2005.2.12〜12.24に毎週土曜日連載とあります。私の家の契約は四月から半年なので、このお話に関しては最初と最後、一番肝心な部分を読んでいないことになります。といっても、私は新聞小説をリアルタイムで読むことはないので、毎週土曜日になると、なんて素適な挿絵なんだろう、とこの本にも載っている寺田のイラストともオブジェともつかない作品にうっとりしていたものです。
その毎週楽しみにしていた挿画が30葉(多分、あっているでしょう)、それにカバー表紙と裏で2葉、さらに扉で1葉、見返しは共通なので1葉、計34もあって、しかもあの『博士の愛した数式』を書いた小川の小説がついている(実際は逆なんですよ、わかってます)。これは読まない手はない、っていうものです。
ちなみに、私は新聞連載当時からこのお話は、装幀・挿画担当している寺田順三の存在を抜きにしては語れない、そう思っているので、カバーに彼の名前がないことにいたく失望をしました(無論、巻末にはちゃんと記載されていますが)。そしてこの評を書くに当たって挿画の枚数を確認しながら、本当ならば章の数44と同じだけの絵があってもいいのではないか、そんなことも思いました。
閑話休題。お話の舞台となるのは兵庫県の芦屋です。高級住宅地として今も東の松涛、西の芦屋の位置付けは変わらないでしょう。無論、麹町だ、白金だ、田園調布だということは可能です。世田谷にだって凄いところがある。でも、やっぱり松涛と芦屋、いやこればっかりは芦屋の一人勝ちといっていいかもしれません。
しかも時代は1972年。まだまだ関西経済は東のそれに屈してはいない、或る意味名実ともに芦屋が真の日本のお屋敷街であった時代のお話です。ついでに小説に関連した出来事を書いておけば、ミュンヘン・オリンピックがあります。男子バレーが最も輝いていた、あの五輪。ゲリラ事件もありました。
これは三十数年経った現在から語り手が過去を回顧する話です。主人公は岡山で生まれ、中学入学を間近に控える朋子です。彼女は父親を亡くし、母と二人で暮していましたが、母親が裁縫の技術を身に付けるために東京に勉強に行くことから、一年間、芦屋の伯父一家の家に預けられることになります。その期間が回想の対象です。
一人新幹線に乗って上京した彼女を待っていたのは、ベンツにのったダンディな伯父と、誤植を探すのが大好きな伯母、そしてドイツ人であるローザおばあさん、おばあさんとそっくりな印象をあたえる住み込みのお手伝いさんの米田さん、庭師の小林さん、そして小学6年生になる従妹のミーナこと美奈子でした。そしてポチ子。
そう、この本のタイトルと密接な関係を持つポチ子です。「正確に言えばコビトカバ。偶蹄目カバ科コビトカバ属。」で「元々はおじいちゃまがパパの十歳のお誕生日に贈ったプレゼントやったんよ」「南アフリカのリベリアから買ってきたんよ。その頃日本の動物園にはまだ一頭もいなくて、車十台分くらいの値段がしたんだって」ということです。
いかにも小川らしい作品と言っていいでしょう。新聞小説ということもあって子供から大人まで楽しめる内容になっています。ユーモラスで、愛らしくて、それでいて男と女、生と死、当時の社会といったことも描かれています。挿絵と内容がここまでマッチした本というのは、本当に稀です。一家でお読みください。

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紙の本

小泉今日子が読売新聞の書評で「私は今、読者ということを忘れて、その物語の隅っこに確かに存在していたような錯覚に戸惑っている」と書いていたことに、大いに頷ける

2007/04/30 06:23

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る

母子家庭に育った朋子は小学校を卒業後、母と離れて芦屋の伯母夫婦のもとから中学に通うことになった。一緒に暮らすのは、フレッシーという清涼飲料水メーカーの社長でもある伯父、ドイツ人の祖母、そして喘息を持病にかかえる従妹ミーナ。
 これは今から30年以上も前、1972年の春から一年間の朋子の成長の記録。

 中学一年生という子供と大人の間に位置する年頃に、朋子は様々なことに触れていきます。川端康成の自殺のニュースに心震わせたり、ミュンヘン五輪で金メダルを目指す日本男子バレーボールチームをテレビで熱く応援したり、パレスチナゲリラによるイスラエル人選手虐殺事件に心痛めたり、ジャコビニ流星雨を待って人生初の徹夜をしたり。さらには、気立てがよくてダンディな伯父の秘密や、それを知っていながらあえて触れようとしない家族の姿を目の当たりにしていきます。

 世の中が清く正しいことに満ち溢れているわけではないことにうすうす感づいていく朋子は、どうにももどかしく思いながらも、人生は白黒つけることだけがすべてではないことを学んでいくかのようです。

 小川洋子の筆づかいはそうした少女の成長過程を、激しく外界へほとばしるような抵抗の物語としてではなく、また内界へと陰にこもる苦悩の物語としてでもなく、恬淡とした回想記として描いていきます。物語に大きな上下の振幅がないぶん、食い足りないと思う向きもあるかもしれません。

 しかし、私は自身が70年代に中学時代を送っているだけに、あの時代の自分を包んでいた空気のようなものを、この小説の中に懐かしく感じ取ったような気がしているのです。
 一人で人生を切り開くにはまだ幼すぎ、それでも今から振り返れば自分の人生が緒につく瞬間のようなものを確かな手ごたえとして感じたあの頃。そうした自分の記憶に思いを馳せることのできた書であったということはいえるのです。

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紙の本

あ、これは『博士の愛した数式』と同じ構造だな

2006/05/17 22:05

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yama-a - この投稿者のレビュー一覧を見る

 読み終えてまず何を措いても思うのはこの作家の飛び抜けた巧さである。しかし、そんなことが最初の感想として浮んで来るということは、僕がこの作品に100%のめり込むには至らなかったという証拠でもある。そして僕は今、この2つの点のどちらに力点を置いて書こうかと真剣に悩んでいる。
 僕が冷静な観察眼を失ってしまうほど登場人物に感情移入できなかったのは、恐らく40代の男性だからだと思う。多分これは少女向けの作品なのだろう。「少女向け」というのは決して「女子供の読み物だ」という男尊女卑の世界観に基づくものではない。多感な成長期の人間が読むにふさわしい物語であるということである。そういう意味では少年が読むのにもふさわしい。あるいは「本はあまり読まない」「小説なんて長いこと読んでいない」という人々にも打ってつけの本である。それは「初心者向けにグレードを下げた文章だ」というのではない。それどころか、この小説における語順の正しさ、選ばれた単語の適切さ、平易であるにもかかわらずイメージの広がる表現など、どれをとっても文章を書く上での手本として良い非常にグレードの高い文章である。それなのに非常に読みやすくすんなりと頭に入ってくるところがこの作家の巧さなのであり、小説の入門書としても最適なのである。
 40代男性の僕は最後まで少し醒めた目線で読んでしまった。読みながら「あ、これは『博士の愛した数式』と同じ構造だな」などと、物語の向こう側にいる作家の姿を見透かしてしまった面がある。この小説も『博士の…』も一様に構造的に優れた、つまり、しっかりと仕掛けの利いた小説である。一見何気なく描かれていたことが後でいろいろと繋がって意味を持ってくる(だからストーリーや設定はここではあまり紹介したくない)。それは登場人物の名前であったり、彼らのちょっとした設定であったり、あまり重要ではないように見えたエピソードであったりする。そして、この本のタイトル自体もそうである。このタイトルを見た時、僕はまず「行進ってひとりでするもんじゃないだろう?」と思った──その問いに対する作者からの答えはこの本の中にひっそりと書かれている。
 僕が没我的にではなく観察的に読んでしまったのは、『博士の…』が野球好きの少年と数学博士の物語であったのに対して、この小説が病気がちで本好きな少女とその従姉妹の物語であったからかもしれない。
 ミーナにはモデルとなった女性がいるらしい。実話ではカバではなくロバだったという話も聞いた。小川洋子は実話と創作を綯い交ぜにするのが大変巧い作家だ。例えば『博士の…』における江夏豊がこの小説におけるミュンヘン五輪バレーボール日本代表チームである。柴田元幸が「この作家は台所がそのまま異界に繋がっている」みたいなことを書いていたが、この表現はこの小説には少し当てはまらないと思う。むしろあまり突飛な「異界」を描いてもいないのに全体がファンタジーなのである。僕のように、舞台となっている芦屋に多少とも土地勘のある人間であれば面白さは倍加するといって良い。
 確かにのめり込むには至らなかったにせよ、おじさんが読んでも充分楽しめるし、やっぱり巧さに嘆息してしまう小説だった。
by yama-a 賢い言葉のWeb

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紙の本

読後すぐには強い印象がなかったが、ジワジワと後から効いてきました。

2006/08/11 21:06

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:栗太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「博士の愛した数式」もそうでしたが、最近の小川洋子の作品は(決して悪い意味ではなく)優等生が書いた作文という気がします。丁寧で正直で誠実で優しい。小悪人やちょっと嫌な奴は出てきても、本当の悪人というものは存在しません。絶望や虚無、荒んだ空気もなく、悲しみさえもどこか綺麗です。主人公の思い出という箱庭の中で、少しばかりエキセントリックな人たちが、ふわふわと夢見るように漂っているイメージでした。
 病弱だけど豊かな感性を持っている文学少女のミーナ、印刷物から誤植を探し出すことが生きがいである伯母、コビトカバのポチ子、一家を仕切るお手伝いの米田さん、格好良すぎて一つの家庭におさまりきらない伯父さん、みんな個性的だけど、今を生きている人ではなく、過去を、朋子の思い出の中を生きているのです。
 本書の中で、特別にドラマチックな事件が起こるわけではありません。平凡な中学生の女の子が出会う小さな出来事が、大切に拾い出され、きれいに磨かれてそっと飾られているといった感じで、読んでいると懐かしいような切ないような、不思議な気分になりました。とりわけ1970年代、朋子やミーナと同じ年頃だった読者には、たまらない魅力でしょう。
 心に残ったのは、ミーナが猫田選手に書いた手紙、そして彼女がマッチ箱から生み出した物語の数々です。特にマッチ箱の物語は、別役実の童話を思わせる小さな佳作たちでした。挿絵も物語の雰囲気にあっていて、いっそミーナ作の童話を絵本で読みたいと思いました。

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紙の本

ノスタルジーあふれるやさしい一年間の物語

2006/10/12 23:30

4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:クロ - この投稿者のレビュー一覧を見る

「今、何か動かなかった?」
「あれはポチ子、カバのポチ子」
「えっ…どうしてカバが…」
「うちで飼うてんの」
「カバを?ここで?」
「うん、そう」
正確にはコビトカバ。偶蹄目カバ科コビトカバ属。
西アフリカ・リベリア出身。
「もともとは、おじいちゃまがパパの十歳のお誕生日に贈った、プレゼントやったんよ」
「カバをプレゼント…」
庭にある池がポチ子のプールがわり。
「昔は、この庭は週末だけの動物園だったの」
「動物園…」
「ポチ子、今日から一緒に暮らすことになった従姉の朋子よ、ご挨拶しなさい」
父は私が小学校に入学して、間もなく胃癌で亡くなった。
母は縫製工場に勤め、洋裁の内職をして私を育ててくれた。
しかし、母は人生を見直したらしく、
東京の洋裁専門学校で一年間勉強する決心をした。
二人で話し合って、母は学校の寮に、
私は芦屋の叔母夫婦に預けられる事になった。
1972年3月16日、岡山から開通したばかりの新幹線に乗り込んだ。
私は12歳(中学一年生)になっていた。
30年以上たった今は既に、芦屋の家は跡形も無い。
しかし私の心の中では伯父さんの家はまだそこにあり、
家族達は皆、昔のままの姿で暮らしている。
朋子が、1972年から一年間あまりを過ごした芦屋の家とその家族達。
ドイツからお嫁入りしてきたローザおばあさんと魅力的なハーフの伯父さん。
母方の叔母さん、本好きで一歳年下の体の弱い従妹のミーナ(美奈子)
あと、老人が二人、住み込みのお手伝いさん米田さんと庭師の小林さん。
そしてカバのポチ子。
ノスタルジーあふれるやさしい一年間の物語。
ミーナと朋子の初恋(別々の人)とか、
ポチ子に乗って小学校に通うミーナ(喘息で車に乗れない)とか、
ミュンヘンオリンピックをTVで楽しむ二人とか、
色々なエピソードが楽しい。
寺田 順三さんのオールカラーのイラストがキュート。
(マッチの絵の雰囲気が素晴らしい)

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2006/04/29 21:21

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2006/05/17 08:21

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2006/05/23 21:05

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2006/06/14 01:23

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2006/06/22 10:38

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2006/07/02 15:29

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2008/05/27 23:27

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