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隠し部屋を査察して (創元推理文庫)
7月7日、日曜日の朝。カナダのある町に突然、幅100メートル、深さ30メートルの溝が出現、時速1600キロで西に向かいだした。触れるものすべてを消滅させながら…。世界じゅ...
隠し部屋を査察して (創元推理文庫)
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商品説明
7月7日、日曜日の朝。カナダのある町に突然、幅100メートル、深さ30メートルの溝が出現、時速1600キロで西に向かいだした。触れるものすべてを消滅させながら…。世界じゅうを混乱に陥れる怪現象を淡々と描く「刈り跡」、不可解な死の真相を迷宮に追う警部「窓辺のエックハート」、全体主義国家のもと、想像力の罪を犯し幽閉された人々をめぐる表題作など、奇想きらめく20の物語を収録。【「BOOK」データベースの商品解説】
日曜日の朝、カナダのある町に突然、巨大な溝が出現、高速で西に向かいはじめた。触れるものすべてを消滅させながら……。世界中を混乱に陥れる奇妙な現象「刈り跡」、不可解な死の真相を街角の迷宮に追う警部「窓辺のエックハート」、想像力の罪を犯し幽閉された人々を描く表題作など、謎と奇想に満ちた二十の物語。◆解説=柴田元幸【商品解説】
収録作品一覧
穏し部屋を査察して | 13-40 | |
---|---|---|
断片 | 41-48 | |
パタゴニアの悲しい物語 | 49-66 |
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これほど相当な作家を、先日まで見逃していたのは迂闊。奇怪な発想が頻出。ポピュラリティを獲得しないのは、地味な本の作りのせいか、グロテスクな内容のせいか、そのグロテスクを突き抜けさせない優しさのせいか。
2007/04/21 00:34
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る
表紙ジャケット他に付された本の紹介で、「刈り跡」という所収作品の筋が紹介されている。この作品集の奇っ怪な発想の数々を伝えるのに最適な見本として取り上げられている。その「刈り跡」を読んでいるとき、片山健のシュールな絵本『どんどんどんどん』を思い起こした。
片山健は、澁澤龍彦・訳『長靴をはいた猫』のエロかわいい挿画でも知られる画家で、その絵本はやたらインパクト強い子どもがどんどん歩いてきて、どんどん歩いていき、おそらくこの世の果てまで歩き倒すだろうという、わけの分からない、しかしやたら強烈な展開だ。
こういう絵本によって日常的に荒唐無稽なものに接している私は、「奇想」小説を読んでいても、「いや、これより子ども向けのあの話の方がとてつもない発想だ」と思うことも多い。そのため、よほどのひらめきの作品でないとビビらないのだが、『隠し部屋を査察して』の奇想の水準は相当レベルであった。
絵本の場合、表現は話や展開だけに留まらず、むしろ絵が伝える要素が大きい。よって、「歩いていくのみ」というワン・アイデアでも行ける。しかしながら、小説世界ではワン・アイデアではスケッチとはなっても物語としては成立し難い。
「刈り跡」では、ある日地球を跋扈し出した得体の知れない存在が、地球の多くの地域をどんどん進んでいく。けれども、その奇妙な存在の進行だけを描くワン・アイデアではない。刈りっ放しだけでなく、「収斂」の局面が訪れる。「そう展開していくのか!」という、驚きと興奮がある。だが、できれば結末は、その収斂だけでまとめて済ませていたならば、よりクールでスタイリッシュではなかったかとも思える。
ここで詳しく説明はできないが、最後にエピローグが加えられている。そこに作者のぬくもりが宿る。「刈り跡」の場合は、読者を煙に巻くに足りるアイデアが、そのぬくもりあるエピソードで毛布のようにくるまれる。
「刈り跡」の場合、グロテスクさはほとんどなく、どこか文学的な香りするSF作品といった趣きなのだが、他の作品にはかなりグロテスクな要素の内容も多い。よくよく確かめてみると、そのグロテスクなものはどれも毛布にくるまれている。正確に言うなら、「枠物語」という形式が取られている。奇っ怪なアイデアは誰かによって語られたものとなっていたり、書物に書かれた記録だとされたり、うわさとして伝えられているというように設定されている。つまり「素」の話ではないのだ。
『どこにもない日——現代アメリカ幻想小説集』(松柏社)という柴田元幸氏・編訳の1冊を「こういう面白そうな本が出ていたのか」と眺めていて、本の最初に収められた「地下室の査察」の作者エリック・マコーマックの人気がいまひとつぱっとしないことを氏が残念がっている様子を知った。そうは言っても他の作家の作品と抱き合わせの短篇集に収められた1篇だけでは真価が分からないと思っていた矢先、本書を見つけた。
この作家の作品は、すでに上下巻にわたる長篇『パラダイス・モーテル』が翻訳され、通好みの読書人たちに評価されていたようだ。しかし、今は版元品切れとなっている模様。もっとも入手し易い状態であったにしろ、こちらのような短篇集の方が食いつき良いのは確かだ。
圧倒的にグロテスクな要素が、期待される突き放された調子で書かれてはいない。この奇妙なアンバランスが極めてチャーミングな個性を発揮している。
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最初は、★4つのつもりだったんでえすが、評を書きながら読み直しているうちに、これって実は面白いかも、なんて思えてきました。そのけっか五つ★
2006/06/30 22:38
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
カバーは基本的に初出時と同じ、カバー絵=Jacques PREVERT、”Ange et demon”、カバーデザイン=柳川貴代+Fragment。マコーマック、全く知らない作家ですがこの、ちょっとキャロルの本を思わせるカバー絵に惹かれて読むことにしました。おそるべし、第一印象・・・
今回も、20篇全てを上記の文章を利用しながら簡単に紹介しましょう。
「隠し部屋を査察して」 全体主義国家のもと、想像力の罪を犯し〈隠し部屋〉に収容された人々
「断片」 バートンが引用している文章はどこにある
「パタゴニアの悲しい物語」 上陸した地で探検隊のメンバーが語る不可思議な物語
「窓辺のエックハート」 不可解な死の真相を迷宮に追う警部の物語
「一本脚の男たち」 ぼくたちがいるのは彼らの縄張りのなか。彼らを見分けるのは・・・
「海を渡ったノックス」 宗教改革者なんてもとを正せば・・・
「エドワードとジョージナ」 町の人からは本当は夫婦、とか近親相姦とか噂される姉弟は・・・
「ジョー船長」 老人が見る夢と若者が見るそれは・・・
「刈り跡 」 7月7日、日曜日、午前6時。北緯52度、西経108度に位置するカナダのある町から、それは始った。突然、幅100メートル、深さ30メートルの溝が地上に出現、時速1600キロの猛スピードで西に向かい始めたのだ。触れるものすべてを消滅させながら・・・・・・。奇妙な現象が世界じゅうに巻き起こす大騒動を淡々と描く
「祭り」 ふたりが祭りに行って、一人が帰ってきた。不思議な儀式が毎日行なわれて・・・
「老人に安住の地はない」 老人が語るのは、昔自分が殺した少年兵のこと
「庭園列車・1」 第一部:イレネウス・フラッド、とサブタイトル。誰もあったことがない、という男の名前
「庭園列車・2」 第二部:機械。フラッドが乗り込んだのは一号車。彼が目指すのは七号車まで旅すること・・・
「趣味」 鉄道会社を退職した老人は、一人地下室に住み込んで・・・
「トロツキーの一枚の写真」 死人と交わることで子供を孕むことを願う女たちの・・・
「ルサウォートの瞑想」 ルサウォートが考えようとするのは、アゾレス諸島の捕鯨の名人ダ・コスタ・・・
「ともあれこの世の片隅で」 骨董品、宝くじ、引っ越し、パトロン、プロフィール・・・
「町の長い一日」 亡くなった娘を荷車に乗せて女が向かうのは・・・
「双子」 もしかしてこんな双子に出会ったら・・・
「フーガ」 コルタサールの引用に、読後納得・・・
解説はお馴染み柴田元幸。
その柴田によれば、スティーヴン・ミルハウザー、バリー・ユアグロー、レベッカ・ブラウンといった作家たちは本国より日本での方が人気が高い、ということですが、どうでしょう。エンタメ一色の我が国では純文学ですら先細り状態、まして海外の純文学となれば、あのクレストブックですら増刷されるのは映画化された作品のみというありさま。
で、この作品集ですが、一読した印象は、ちょっと難しいエンタメという感じで、ユアグローよりは分かりやすい。人によっては話が落ちきっていない、という意見もあるようですが、いいんじゃあないでしょうか、ユアグローより。それに、この手の話にそれを求めても・・・。といって楽しめないか、っていうと何度か読めば絶対に楽しめることは間違いない。
いや、繰り返し読めば読むだけ評価はあがる、と思うんですね。ただ、ボーっとして読んでいると、スッと話が飛ぶような、そんなところがあります。無論、実際にはちゃんと書かれているんですが、さり気無く場面や人が変っているところがあったりして・・・。個人的には神様・筒井康隆を思わせる「刈り跡 」が好きです。