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商品説明
【JCJ賞(第49回)】弱くて強い人々が、今アメリカを揺るがしはじめた…。世界の富の4分の1以上を収めながら、3100万人もが飢え、2億3000万丁もの銃が国内に散乱しているというアメリカ。その驚くべき実体を活写する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
堤 未果
- 略歴
- 〈堤未果〉東京都生まれ。ニューヨーク市立大学大学院国際関係論学研究科修士課程修了。著作家・ジャーナリスト。国際政治環境研究所理事。著書に「空飛ぶチキン」「グラウンド・ゼロがくれた希望」など。
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紙の本
アメリカになぜ、まだ希望があるのか?
2006/08/07 21:16
16人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:喜八 - この投稿者のレビュー一覧を見る
アフガニスタンとイラクの戦争以来、アメリカ合州国もアメリカ人も大嫌いになりかけていた私(喜八)ですが、本書『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』を読んで考えが変わりました。これは素晴らしい本です。アメリカの「弱者」。すなわち未成年者・女性・マイノリティ・貧困者にこそ希望はあるのだと力強く伝えています。
著者の堤未果(つつみ・みか)さんは東京生まれ。ニューヨーク市立大学大学院国際関係論学科卒業後、国連、アムネスティインターナショナルニューヨーク支局局員を経て、2001年、米国野村證券に勤務中世界金融センタービルで「9・11同時テロ」に遭遇。現在は著作家・ジャーナリスト・講演通訳として活動されています。
『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』で報告されているアメリカの現実のうち、私がもっとも激しい憎悪を覚えたのは米軍のリクルート(新兵募集)活動でした。「大学に進学できる」「劣悪な環境から脱出できる」「Be What You Want to Be!(なりたいものになれ!」等々、軍のリクルーターは貧困層の若者を狙い撃ちにします。
貧しい家庭、劣悪な環境に育った若者は大学に進学するのも容易ではありません。そして学歴社会のアメリカでは大学に行けなかった者は一生のあいだ時給5ドル(あるいはそれ以下)の仕事に甘んじるしかないため、リクルーターからいいことづくめの誘いを受けて軍隊に入る若者は少なくない・・・。
けれども現実は大きく異なります。兵役を勤め上げても実際に大学に進学できる者は全体のうち35パーセント、そして卒業できるのは15パーセントにすぎません。大学に入る最初の年に前金として1200ドルを払わなければならず、また近年大学の学費が急騰しているため、中途で諦めてしまう者が多いからです。
命がけで戦う一般兵士の給料は安くて、年間1万7000ドルから多くて2万ドル。そこから学資の積立金、生命保険を天引きされる。命を守るための防弾チョッキさえローンで個人購入しなければならず、除隊した後に月賦を払っている退役兵士もいます。
高校卒業(中退)したばかりの子どもたちを殺人マシンに作りかえる軍事訓練キャンプ。いきなりアフガニスタンやイラクの戦場に送られ、精神と肉体をすり減らす毎日。運が悪ければ死亡、または一生残る障害を負う。運良く生き残れても多くの者がPTSDに苦しみます。アルコール依存症・精神病・麻薬・犯罪・・・。なのにVA(Veterans Association = 退役軍人協会)の予算は削られるいっぽう。
結局のところ軍隊とは社会の縮図、貧しい若者たちを食い尽くす巨大なマシンなのです。アメリカの「新自由主義」すなわち行き過ぎた資本主義、原理主義的資本主義の下では貧しい者・持たざる者はどこまでも食い物にされる存在でしかありません。
そんなアメリカになぜ、まだ希望があるのか?
アメリカ社会に深く組み込まれた不正と戦う「弱者」たちが存在するからです。インターネットを武器に軍のリクルート活動を戦うザック・ロンドン、タミカ・ジョンソンといった高校生たち。除隊後反戦活動を開始したマイノリティの若者イヴァン・メディナ。ブッシュ大統領に面会を要求した戦死軍人の母親シンディ・シーハン・・・。彼ら彼女らこそがアメリカに残された「希望」です。
世界最大最強の軍事力に支えられた「悪の帝国」アメリカを激しく憎むようになりかけていた私ですが、当のアメリカ市民の中にも権力者によって踏みつけにされている「弱者」が存在する。そしてその弱者たちが最後まで決して希望を捨てずに戦っている。これらの事実に気づかせてくれた『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』著者の堤未果さんに「ありがとう」とお礼を言いたいと思います。
紙の本
揺れるアメリカ
2016/12/04 21:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:黄色い刀 - この投稿者のレビュー一覧を見る
トランプ候補が次期大統領に当選し、揺れに揺れているアメリカ。この大統領選の前に出版されていた本ですが、なぜ彼が支持されたのかはよくわかると思います。暗いことの多い社会の中にまだ希望もあることを伝えてくれてもいます。
紙の本
私の知らないアメリカ、知らなくてよいアメリカ、知る必要のないアメリカ
2008/07/03 11:31
23人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
私のような一流企業のビジネスマンが「アメリカ」と接する場合、接するアメリカ人は基本的に勝ち組の人間ばかりである。最低でもコロンビア大学のような一流大卒。多くはビジネススクール卒で、なかにはPhDを持っているものも多くいる。ワシントンDCやニューヨーク郊外の豪邸に住んでいて、奥さんも美人で金回りが良い人ばかりだ。幸せで善良なアメリカ人。豊かで教養深い分別あるアメリカ人。そういう人「しか」私は知らない。日本に来るアメリカ人だって、そうだろう。財務省や日本銀行、三菱商事、トヨタ自動車との取引で来日するアメリカ人は基本的に高学歴高収入の日本人と「しか」接触することがない。そういう環境にいる私のとって、ここで描かれるアメリカは非常に異質な違和感を覚える世界である。ちょうど現地に行ったとき「あそことあそこだけは近寄らないで下さいよ。犯罪に巻き込まれますから」と「注意」されるような「あそことあそこ」の住民しか出てこないからだ。ここにはニューヨーク郊外のスカースデールやワシントンDC郊外のベセスダは出てこない(多くの日本人駐在員は、しかしこうした高級住宅街に住んでいるんだが)。「こりゃあ、違うよ」と思わず叫びたくなる。ちょうど日本で言えば「山谷」や「あいリン地区」のみを取材し「日本はひどい社会だ。日本は崩壊寸前だ」と「偏った情報」を英字紙記者に流されると思わず感じてしまう「強烈な違和感」を本書を読んで覚えた。
何度もいうが、そんなにアメリカが弱者を痛めつけ、弱者に厳しく、強者のみが肥え太り、強者のみが得をする弱肉強食のひどい社会なら、どうして今日も世界中からたくさんたくさんの人間がアメリカに移住しようとアメリカ移民局の前に行列を作るんだろう。むしろ一刻も早くアメリカから逃げ出し、もっと弱者に優しく、公平でオープンでフェアな国(フランス?英国?ドイツ?)に移住しようと考えるのが普通なんじゃないか。しかし事実はそうなってはいない。フランスやドイツ、英国などの欧州諸国は、表向きの顔とは裏腹に非常に閉鎖的で陰湿で嫌な社会であることを私は知っている。ちょっとマシなのが英国で、大陸に行くともういけない。ユダヤ人が雪崩をうって欧州から逃げ出しパレスチナの地にユダヤ国家イスラエルを建国したのは、欧州での陰湿な人種差別が原因だったのである。だから、「豊かでオープンでフェアなアメリカ人」を知らない諸君に一言注意しておく。私のような恵まれた環境にないからと言って、タダでさえ歪んでいる諸君のバイアスを益々強めるようなことは、やめたほうがいい。アメリカには、その欠点をカバーして余りある長所と魅力があり、だからこそ松坂もイチローも海を越えて大リーグに渡っているのだということを。「別に天地の人間にあらざるあり」と中国の古人は言った。なぜ、アメリカが世界中から人材を吸い寄せ、今日もまたより強く、より美しく、素晴らしい国になり続けているか、その理由について、少しは無い知恵を絞って考える習慣を、今からでも遅くは無いから、付けておくようにしたほうが良い。
本書は私のようにアメリカの長所を十分知り尽くした人間が参考程度に目を通せばよい書物であって、そうでない人間には益よりも害のほうが多いのではないかと、ふと思った。