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紙の本
影を踏まれた女 新装版 (光文社文庫 怪談コレクション)
著者 岡本 綺堂 (著)
秋の月が鮮やかに冴え渡る宵、子供たちは往来で歌いはやしながら影を踏んで遊ぶ。糸屋の娘・おせきは、影を踏まれて以来、自分の影を映し出すものすべてを恐れるようになった。外出を...
影を踏まれた女 新装版 (光文社文庫 怪談コレクション)
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商品説明
秋の月が鮮やかに冴え渡る宵、子供たちは往来で歌いはやしながら影を踏んで遊ぶ。糸屋の娘・おせきは、影を踏まれて以来、自分の影を映し出すものすべてを恐れるようになった。外出を怖がる娘を心配した父母は、偉い行者の話を聞きつけ、祈祷を願うが…(表題作)。英米の怪奇小説に造詣が深い綺堂の怪談ものは、時代を超えて、怖い。15編収録。【「BOOK」データベースの商品解説】
収録作品一覧
青蛙神 | 7-27 | |
---|---|---|
利根の渡 | 28-47 | |
兄妹の魂 | 48-67 |
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紙の本
江戸風鈴の夜
2006/08/04 17:17
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うみひこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
夏休みだ、怪奇を読もう。
この夏は、断然、岡本綺堂と決めている。
実は先日、ふと立ち寄った神田明神の茶店で、一すじの涼やかな風が天井に吊してあったガラスの江戸風鈴を鳴らしていった時、ああこの夏は断然綺堂だなと思ったのだ。
綺堂の怪談は怖いのに、何かその恐怖に耐えられるような涼やかな読後感があるのだ。震えながら読み終わるのではなく、恐怖に満ちた現世を渡っていった、昔の人々の知性を仰ぎ見るような感がある。
例えば、この短編集。 三本足の青蛙を床の間に飾り、人々を招き寄せて怪談の会が催される。この蛙の由来から始まり、次々に男女が奇怪な話を語っていく。その中に五感を震わせるような、中世の物語を思わせる話がある。
『一本足の女』。
この物語は、かの『八犬伝』の舞台房州の里見家に繋がる百石取りの侍が主人公。里見の家が滅びたと同時に、江戸に夫婦で出て来て暮らし始める。ところが、寺子屋を開いて普通の生活を送ろうとするのに、女中が何故か居着かない。夫婦の仲が良すぎていたたまれないというのだ。やがてこの夫婦の奇妙さが周りの人々を遠ざけ、ついには食べるものにも困るようになる。男は、人を襲って金を奪おうとして、相手を殺してしまう。家に戻って血の付いた刀を拭おうとした時、妻がその血を舐めさせてくれと言って、刀を嬉しそうに舐るのだ…。
正しく今昔物語を思わせる残酷な美しさのある物語なのだが、最後に男は自分を早くお仕置きして欲しいと牢役人に頼み、女の魔力から逃れ出る。抗いがたいほど美しく愛しい女の魔力を振り切る男の理性に、リンと鳴る江戸風鈴の音を聞くような気がしないだろうか。
15編の短編集だが、語られる怪異は実に19。夏の長い夜を、江戸の先人たちが見た怪異の夜に重ねて楽しもう。
紙の本
半欠けの日本の月の下を 一寸法師の夫婦が急ぐ
2009/04/01 23:36
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:東の風 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「三浦老人昔話」に続いて、1924年から25年(大正14年)にかけて雑誌に連載された「青蛙(せいあ)堂鬼談」と、同時期に書かれた「異妖編」「月の夜がたり」「影を踏まれた女」を収めた怪談集。格別、「青蛙堂鬼談」の十二篇はどれも第一級の出来栄えで、ほうっと思わせられたり、ぞっとする心持ちになったり。ひたひたと身に迫ってくる語り口が見事なので、いつの間にか話に耳を傾けている按配になります。また、作者の綺堂が、中国の志怪綺譚と西洋の怪談に通じている人だったせいか、洗練されたモダンな味わいが話のスパイスとして効いている印象を持ちました。
月の光が冴え返るカバーイラストもいいですね。「青蛙堂鬼談」のいくつかの話で、あるいは「月の夜がたり」「影を踏まれた女」の話の情景に、さやかな月の光が出てまいります。その折々、本書のカバーにある明月が脳裏に浮かびました。
「青蛙堂鬼談」の十二篇のなかでひとつだけ選ぶとすればどの話か?と聞かれたら、うーん、すごく迷いますねぇ。一番にぞっとさせられたのは、「一本足の女」でしょうか。最初のほうと最後のほうとでは、話の明暗ががらりと違っているんですよね。一種の吸血鬼ものとしても独特の妙味がある短篇。
都筑道夫氏による「解説」、縄田一男氏による「解題」。巻末の文章はともに読みごたえがありました。
蛇足ながら・・・。タイトルに引用させていただいた詩は、富永太郎の「影絵」からの二行。本文庫の怪談と、どこか響き合うものがあるかなあと、何となく引っ張ってきちゃいました。夜空にぽっかり浮かぶ満月に、とても心惹かれる私。「影絵」の詩の中の月は、半分欠けていますけれど。松岡正剛『ルナティックス』(中公文庫)からの孫引きです。